Trademark Appeal Case
地名・特産品・成分の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−14216(T2015−14216/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「五島つばき酵母」の文字を標準文字で表してなり、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料」、第30類「茶,調味料,菓子,パン,みそ,ドレッシング,こうじ,酵母」及び第33類「日本酒,果実酒,焼酎,薬味酒」を指定商品として、平成26年9月26日に登録出願され、その後、指定商品については、当審における平成28年4月20日付け手続補正書により、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料」、第30類「茶,調味料,菓子,パン,みそ,ドレッシング,こうじ,酵母」及び第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,果実酒,焼酎,薬味酒」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、長崎県五島列島にある市の『五島』の文字と、ツバキ科の常緑低木ないし高木の『椿』を平仮名で表した『つばき』の文字及び『酵母』の文字を普通に用いられる方法で『五島つばき酵母』と表示してなるところ、その指定商品を取り扱う業界において、椿の花から抽出した酵母を利用した酒やパン、または、椿以外の花から抽出した酵母を利用した石鹸などが製造、販売されている実情がみられる。そうすると、本願商標をその指定商品中、椿から抽出した酵母を原材料とする商品に使用するときは、『長崎県五島産の椿から抽出した酵母を原材料とするもの』等の意味合いを理解させるとどまり、単に商品の原材料、品質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における手続の経緯
(1)商標法第6条第1項について
当審において、請求人に対し、平成28年3月15日付け拒絶理由通知書で、要旨次のとおりの拒絶の理由を通知した。
指定商品は、商標とともに権利範囲を定めるものであるから、その内容及び範囲は明確でなければならないところ、本願の指定商品中「日本酒」の表示は、その内容及び範囲が明確でない表示であるから、本願は、商標法第6条第1項の要件を具備しない。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲1に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成28年3月15日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、上記3の証拠調べ通知(以下「証拠調べ通知」という。)に対し、要旨以下のとおり、意見を述べている。
(1)前記3の証拠調べ通知で挙げられた事実には、本願商標と同じ「五島つばき酵母」そのものの使用がないから、本願商標の識別力を希釈するものではなく、その一部のみが使用されている事実をもって、本願商標全体が識別力を有さないと判断することはできない。
(2)本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの判断は、先行する登録商標との関係において不合理である。
5 当審の判断
(1)商標法第6条第1項について
本願は、その指定商品について、上記1のとおり補正された結果、商品の内容及び範囲が明確なものになった。
その結果、本願は、商標法第6条第1項の要件を具備するものとなった。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「五島つばき酵母」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「五島」の文字は、「長崎県西部の島しょ群をさす称」、「五島列島の略。」の意味を有し、「つばき」の文字は、「ツバキ科の常緑高木数種の総称。」の意味を有し、「酵母」の文字は、「出芽によって繁殖する円形もしくは楕円形の微細な単細胞の菌類の総称。」の意味を有するものである(株式会社岩波書店発行「広辞苑第六版」の「五島」及び「椿」、「酵母」の項、株式会社三省堂発行「コンサイス日本地名事典第5版」の「五島」の項参照)。
そして、別掲2によれば、長崎県の五島は、江戸時代に五島藩から幕府へ椿油が贈られるなど、古来から我が国有数の椿の島として知られ、椿油のほかにもせっけんや手延べうどんなど、椿を使用した商品を生産、販売しており、近年においても、平成25年に「椿による五島列島活性化特区」の認定を受けたり、五島市観光協会の平成27年度事業計画の基本方針の中で、五島観光の魅力アップと販売戦略の三本柱の一つに椿を挙げるなど、椿を地域の資源として積極的に活用している。
また、別掲1(2)及び(3)の事実からは、昨今、各地において花から酵母を抽出し、その花の酵母を酒や食品、せっけんや化粧品などの商品の原材料として使用することが行われており、椿の花についても、これから抽出した酵母が、酒やパンの原材料として使用されていることが認められる。さらに、別掲1(1)の事実によれば、酵母は古来からビール、日本酒、ワイン等のお酒や、漬物、味噌、醤油、素、パンやチーズなどの食品といった、各種商品の原材料として活用されているものである。
以上からすると、「五島つばき酵母」の文字からなる本願商標に接する取引者、需要者は、本願商標全体から、「長崎県五島産の椿の花の酵母」ほどの意味合いを容易に理解し、これをその指定商品中「酵母」に使用したときは、その酵母が「長崎県五島産の椿の花の酵母」であることを表したものと認識し、指定商品中「酵母」以外の商品に使用したときは、その商品が「長崎県五島産の椿の花の酵母を使用した商品」であることを表したものと認識するにとどまるから、本願商標は、単に、商品の原材料、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるといえる。
また、本願商標は、これをその指定商品中「長崎県五島産の椿の花の酵母,長崎県五島産の椿の花の酵母を使用した商品」以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、前記3の証拠調べ通知で挙げられた事実には、本願商標と同じ「五島つばき酵母」そのものの使用がないから、本願商標の識別力を希釈するものではなく、その一部のみが使用されている事実をもって、本願商標全体が識別力を有さないと判断することはできない旨主張する。
しかしながら、商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それゆえに登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質等を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解される(最高裁昭和60年(行ツ)第68号昭和61年1月23日第一小法廷判決言渡、東京高裁昭和52年(行ケ)第82号昭和56年5月28日判決言渡、同平成12年(行ケ)第76号平成12年9月4日判決言渡)。
そして、本願商標は、上記(2)のとおり、「長崎県五島産の椿の花の酵母」又は「長崎県五島産の椿の花の酵母を使用した商品」を表したものと認識させるにとどまり、指定商品の品質等を表すものといわざるを得ないから、たとえ「五島つばき酵母」の文字そのものが本願の指定商品に使用されている事実がなかったとしても、そのことが本願商標について商標法第3条第1項第3号該当性の判断に影響を与えるものとはいえない。
イ 請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの判断は、先行する登録商標との関係において不合理である旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは,該登録出願の査定時又は審決時において、その商標の構成態様と指定商品の関係や、商品の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げる登録例は、いずれも本願商標とは、使用する商品が異なるものであったり、商標の構成態様が異なるものであるから、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例が存在することをもって、本願商標の上記判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第1項第16号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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