Trademark Appeal Case
複合語の記述性と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−16830(T2015−16830/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「パッシブリノベーション」の片仮名を標準文字で表してなり、第42類「暖かい空気が上昇する煙突効果を応用した自然換気システムを活用した建築物の設計,建築物の設計,建築物のリフォーム設計,建築物の設計に関する助言・指導・コンサルティング及び情報の提供,測量,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,デザインの考案,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,地質の調査」を指定役務として、平成26年4月9日に商標登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『パッシブ』と『リノベーション』の片仮名を一連にして『パッシブリノベーション』と標準文字で表してなるものである。ところで、本願指定役務に係る建築業界においては、『パッシブ』の文字は、『建築設計の工夫によって、太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを建物内に取り入れようとすること。』程の意味を表す語として一般に使用されている。また、『リノベーション』の文字は、『建物の更新のための工事。通常の修理より大掛かりな化粧直しのことで、外壁の補修、建具や窓枠の取替え、設備の更新を含む』の意味を有する語であることから、これらの文字を一連に表した『パッシブリノベーション』の文字は『建築設計の工夫によって、太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを建物内に取り入れるための大掛かりな工事』程の意味合いを認識させるものである。そうとすると、本願商標をその指定役務中、例えば、『暖かい空気が上昇する煙突効果を応用した自然換気システムを活用した建築物の設計,建築物の設計,建築物のリフォーム設計,建築物の設計に関する助言・指導・コンサルティング及び情報の提供,測量,デザインの考案』に使用しても、その商標に接した取引者・需要者は、『建築設計の工夫によって、太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを建物内に取り入れるための大掛かりな工事を目的とする役務』程の意味合いを理解・認識するにとどまり、単に役務の質(内容)を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記意味合いに照応する役務以外の『暖かい空気が上昇する煙突効果を応用した自然換気システムを活用した建築物の設計,建築物の設計,建築物のリフォーム設計,建築物の設計に関する助言・指導・コンサルティング及び情報の提供,測量,デザインの考案』に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、別掲のとおりの事実を内容とする証拠調べの結果を通知した。
4 証拠調べに対する意見の要旨
請求人は、前記3の証拠調べ通知で示した証拠(別掲1ないし3)に対して、次の(1)ないし(3)の理由により、本願商標は、その構成全体をもって特定の語義を有することのない一種の造語として認識されるものとみるのが相当であるから、これをその指定役務について使用しても、役務の質を表示したものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであると述べている。
(1)「パッシブ」の語は形容詞であり、国語辞書には、先ず「受身、受動的な、受動態、従順な、不活性な、言いなり、活動的ではない」の意味合いが記載されているのみで、「自然の力(風、熱等)を利用すること」は、「利用すること」が名詞であるので形容詞と名詞が等しいと認定するものであり、事実認定を誤ったものである。
また、「パッシブデザイン」は、大辞林第三版に「建築の設計手法の一。特別な機械装置を使わずに,建物の構造や材料などの工夫によって熱や空気の流れを制御し,快適な室内環境をつくりだす手法」と記載があるものの、「パッシブハウス」の省エネ基準を満足すれば足りるのかどうか具体的意味合いが定着しているとはいえず、「パッシブデザイン」の意味合いにバラツキがあるので、いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまるものである。
(2)「リノベーション」の語は、「刷新。改革。」の意味に比較して、「修理。改造。修復。」及び「既存建物を大規模に改装し,用途変更や機能の高度化を図り,建築物に新しい価値を加えること。」の意味としては、左程親しまれているとはいえず、むしろ、後者を意味する語としては、「リフォーム」の語の方が親しみのある語といえる。別掲の情報では、「リフォーム」も「リノベーション」も同じ意味だとするものもあり、大規模な「リフォーム」が「リノベーション」であるとするものや、価値を高める修理が「リノベーション」であるとしているので、いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまるものである。
(3)「パッシブリノベーション」の語が記載されている情報は膨大なインターネット情報中僅か5件しかなく、残りは、「パッシブデザイン」の語を記載した情報であり、「パッシブリノベーション」の意味合いを抽出するためには、「パッシブリノベーション」の語が記載された情報によるべきであって、「パッシブデザイン」の語しか記載されていない情報によるべきではないから、「パッシブリノベーション」の語は、漠然とした意味合いに留まっているというべきであり、役務の質を具体的かつ直接的に表したものと認識、理解させるとまではいい難いものである。また、請求人が調査するも、本願の指定役務を取り扱う業界において、「パッシブリノベーション」の文字が、役務の具体的な質を表示するものとして普通に用いられていると認めるに足る事実を発見することができなかった。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、「パッシブリノベーション」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成は、「受け身であるさま。」の意味を有する「パッシブ」の語及び「既存建物を大規模に改装し、用途変更や機能の高度化を図り、建築物に新しい価値を加えること。」の意味を有する「リノベーション」の語からなるものである。
そして、別掲のとおり、建築大辞典第2版には、「パッシブ」の語と「太陽光を利用した」の意味を表す「ソーラー」の語を組み合わせた「パッシブ ソーラー」の語が、「ソーラーパネルや蓄熱槽等、具体的な機械設備を備えた太陽熱利用に対して、建物自体が自然換気や自然な蓄熱をして太陽熱利用をすること」として、また、上記「パッシブ ソーラー」の語に「ハウス」の語を組み合わせた「パッシブ ソーラー ハウス」の語が、「太陽光を機械設備のエネルギー源として用いるソーラーハウスに対し、太陽光をそのまま熱として利用するもの」をいうと解説されている(別掲1(4))。
さらに、建築に関するウェブサイトにおいて、「パッシブ」の語の使用についてみると、「パッシブ」の語と、材質や機能も含む建築や構築の際に行われる造形計画を表す「デザイン」の語とを組み合わせた「パッシブデザイン」の文字が、「機械(アクティブ)に頼らず、光や風など自然(パッシブ)の力によって、四季を通じて快適な住まいをつくる設計手法」として(別掲1(10))、「パッシブ」の語と「建築」の語とを組み合わせた「パッシブ建築」の文字が、「特別な動力機器を使わず、建築設計の工夫によって太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを利用して、暖房や冷房(室内気候調節)を行うもの」として(別掲1(11))、また、「パッシブ手法」の文字が、「自然の力を極力利用して省エネを実現しようと言う手法で、太陽の熱や光、風を利用することが最たるもの」として説明されている(別掲1(12))。
そうしてみると、「パッシブ」の語は、これと建築に関わる語とを組み合わせた表示の使用の実情に照らすと、住宅などについて、積極的に冷房暖房装置等の特別な措置を用いずに太陽光や風などの自然エネルギーの利用、建築物の構造の工夫などにより、快適な室内環境を設計することを説明する場合に使用されているものといえる。
また、建築に関するウェブサイトにおける「パッシブ」の語が、それ自体で、「自然の力を受けとり、自然と共存することを指します。」や「直訳すると『活気のない』とか『受身的』とかですが、そうではなく『受け入れる』とか『自然利用を促進する』という意味で使われています。」(別掲1(6)(7))と説明されている。
以上によれば、建築の分野において、「パッシブ」の語は、「設計の工夫等により、自然エネルギーを建物内に取り入れる」程の意味合いを表す語として用いられているものと認められる。
そして、本願商標を構成する「リノベーション」の語は、建築の分野において、別掲2及び3における該語の使用の実情からすると、「改修」程の意味を表すものとして一般に認識されているものといえる。
そうすると、建築の分野における上記意味合いを表す、「パッシブ」及び「リノベーション」の語からなる「パッシブリノベーション」の文字は、全体として「設計の工夫により、自然エネルギーを建物内に取り入れる改修」の意味合いを理解させるものであるというのが相当である。
なお、「パッシブリノベーション」の文字は、実際に、自然素材や自然エネルギーを活用し、それを取り入れた住宅の改修について記述する際に使用されていることが認められる(別掲3)。
したがって、本願商標は、これをその指定役務中、「暖かい空気が上昇する煙突効果を応用した自然換気システムを活用した建築物の設計,建築物の設計,建築物のリフォーム設計,建築物の設計に関する助言・指導・コンサルティング及び情報の提供,測量,デザインの考案」について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、「建物設計の工夫により、自然エネルギーを取り入れる建築物の改修(リノベーション)」に関する役務であると理解し、上記指定役務の質を表したものとして認識するというべきであるから、単に、役務の質を普通に用いられる方法で表示した標章のみからなるものであるといえる。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、別掲により示された証拠によって、「パッシブ」の語から、「自然の力(風、熱等)を利用すること」の意味合いを想起することはないこと、「パッシブデザイン」及び「リノべーション」については、各証拠に記載された意味合いにばらつきがあり、いまだ漠然とした意味合いを想起させるに止まること及び「パッシブリノべーション」の実際の使用の証左は、わずか5件であることから、本願商標は、その構成全体として一体の造語である旨主張する。
しかしながら、「パッシブハウス」、「パッシブデザイン」等の「パッシブ」の語に係る各ウェブサイトにおけるそれぞれの表現・説明が確実に一致していなくても、「パッシブ」の語は、建築・構築に係る分野において、機械的、強制的に住環境を作り出すのではなく、「設計の工夫等により、自然エネルギーを取り入れる」程の一定の意味合いを理解させる語として用いられているといえることは上記のとおりである。そして、「パッシブ」の語が「(ソーラー)ハウス」、「デザイン」と同様に建築・構築に係る分野において一般的に用いられている「リノべーション」の語と結合した本願商標は、「設計の工夫により、自然エネルギーを取り入れる建築物の改修」を理解させるものであって、建築物に係る役務の質を表すものとして認識させるというべきであり、自他役務の識別標識としての機能を有するものということはできない。
そして、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年9月4日判決〔平成12年(行ケ)第76号〕参照)から、たとえ、「パッシブリノベーション」の文字が、その指定役務を取り扱う業界において、役務の質等を表示するものとして、広く使用されているとまでいえないとしても、取引者、需要者によって、当該役務の質等を一般に認識されるものといえることは、上記のとおりであるから、本願商標が役務の質等を表示するものであると判断することの妨げにはならない。
以上のとおりであるから、本願商標が、外観上一体に構成されているとしても、何らの意味合いを生じない造語として認識されるとする請求人の主張は、採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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