結論テキスト
本願商標は、登録すべきものとする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 不服2016−2573(T2016−2573/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第11類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成26年8月5日に登録出願されたものであり、指定商品については、原審における同年9月17日付け手続補正書により、第11類「汚水浄化装置,汚水浄化槽,し尿処理槽,浄水装置,家庭用浄水器,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽」となったものである。
原査定は、「本願商標は、『KUH KAI』の文字と『空海』の文字とを上下二段に書してなるところ、その構成中の『空海』の文字は、『平安初期の僧。日本真言宗の開祖。』として有名な歴史上の人物を表すものであって、平成26年は、空海が四国霊場を開いた開創1200年に当たり、空海ゆかりの地で各種のイベント等が開催され、また、平成27年も引き続き四国、和歌山・高野山など各地でいろいろな行事が行われ、加えて、空海の開祖による四国霊場も国内での世界文化遺産の候補に選ばれるなどゆかりの地ばかりでなく国内においても『空海』の名前が広がりを見せようとしている状況が認められる。そうすると、本願商標を、一法人にすぎない出願人が商標として採択し、使用することは、社会公共の秩序を損ねるおそれがあり穏当ではないとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
本願商標は、別掲1のとおり、「KUH KAI」の欧文字及び毛筆体の「空海」の漢字を二段に書してなるところ、その構成中の「空海」の文字は、歴史上の人物名である「空海」を、また、その構成中の「KUH KAI」の欧文字は、該漢字の字音を欧文字表記したものと容易に認識させるものである。
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきであると判示されている(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号判決)。
ところで、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、例えば、地方公共団体や商工会議所等の公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるところであり、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、当該地域においては強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。
そして、上記判決では、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとして、上記(1)ないし(5)の場合を例示として挙げており、その例示の一つとして、「(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」が挙げられている。
そうすると、周知・著名な歴史上の人物名からなる商標は、(ア)当該歴史上の人物の周知・著名性、(イ)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識、(ウ)当該歴史上の人物名の利用状況、(エ)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品との関係、(オ)出願の経緯・目的・理由、(カ)当該歴史上の人物と請求人(出願人)との関係に係る事情を総合的に勘案して、当該商標を特定の者の商標としてその登録を認めることが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものと認められる場合には、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきであるから、以下、本願商標について、上記(ア)ないし(カ)について検討する。
(1)事実認定
「空海」について、職権による調査(別掲2)及び請求人の主張によれば、次のことを認めることができる。
ア 「空海」の周知・著名性
「空海」は、別掲2(1)のとおり、歴史上の人物として、国語辞書、人名事典などの辞典に取り上げられており、真言宗の開祖として「弘法大師」の諡号でも知られるとともに、書に秀でた三筆の一人としても親しまれていることから、全国的に周知・著名な歴史上の人物名といえる。
イ 「空海」に対する国民又は地域住民の認識
「空海」は、上記アのとおり、全国的に広く知られているほか、別掲2(2)のとおり、「空海」を祀る霊場等のゆかりの地においては、従来から、「空海」の生誕日や命日等の記念の日に法会等の行事が行われるとともに、当該ゆかりの地及びその周辺地域で市等のイベントが開催されるなど、「空海」は地域住民や観光客に親しまれている。そして、近年、四国八十八ヶ所霊場及び高野山は、「空海」によって開創されてから、それぞれ、平成26年又は同27年に1200年記念を迎え、各霊場及びその周辺地域で記念法会等の様々な行事が行われ、真言宗信徒のみならず、多くの観光客が訪れていることが認められる。
そうすると、「空海」は、従来から継続して、真言宗信徒及び「空海」を祀る霊場等のゆかりの地における地域住民はもとより、我が国の国民に広く敬愛されているといえる。
ウ 「空海」の名称の利用状況
「空海」は、上記イのとおり、近年、「空海」を祀る各霊場の開創記念行事により注目を集め、これを好機として、別掲2(3)のとおり、地方公共団体や公益的な機関が、「空海」に関する展示会の開催など、地域振興や観光振興のために、「空海」の名称を利用していることが認められる。
また、別掲2(4)のとおり、「空海」の名称は、「空海」を祀る霊場等のゆかりの地との関係を謳う食品等の土産物、真言宗に関連した仏具、及び書道に関連した筆等の商品に利用されていることが認められる。
エ 「空海」の名称の利用状況と指定商品との関係
本願商標に係る指定商品は、前記第1のとおり、第11類「汚水浄化装置,汚水浄化槽,し尿処理槽,浄水装置,家庭用浄水器,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽」(以下「本願指定商品」という。)であるところ、当審において職権をもって調査するも、本願指定商品を取り扱う分野において、請求人商品以外に、「空海」の名称が利用されている事実を見いだすことができなかった。
オ 出願の経緯・目的・理由
本願商標の出願の経緯、目的及び理由についての具体的事情は確認できないが、請求人は、「空海」の文字からなる登録商標を所有しているものの、国際出願の基礎にするべく、該文字に「KUH KAI」の欧文字を加えたものを、新たに出願したと主張している。
カ 「空海」と請求人(出願人)との関係
請求人と「空海」との関連性は、何ら見いだすことはできない。
(2)判断
上記(1)ア及びイのとおり、「空海」は、周知・著名な歴史上の人物名であって、我が国の国民に広く敬愛されている。
そして、該名称は、上記(1)ウのとおり、近年、各霊場の開創1200年記念行事への注目を好機として、地方公共団体や公益的な機関によって、地域振興や観光振興に利用されるとともに、「空海」を祀る霊場等のゆかりの地との関係を謳う食品等の土産物、真言宗に関連した仏具、及び書道に関連した筆等の商品にその名称が利用されていることが認められる。
しかしながら、本願指定商品は、上記(1)ウのとおり、地域振興や観光振興において、「空海」の名称が利用されるイベント、土産物、仏具及び筆等の商品又は役務と密接な関係性を有するものとはいえない上、上記(1)エのとおり、本願指定商品を取り扱う分野においては、請求人商品以外に、「空海」の名称が利用されている事実を見いだすことはできない。
さらに、請求人が、上記(1)カのとおり、「空海」とは何ら関連性がない企業であるとしても、上記(1)オのとおり、本願の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くというべき事情も見いだせない。
以上の事情を総合的に勘案すれば、「空海」が周知・著名な歴史上の人物名であるとしても、本願商標は、その指定商品に使用した場合には、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえないというのが相当である。
したがって、本願商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものではない。
以上のとおり、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではないから、これを理由として本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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