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Trademark Appeal Case

にぼしパイの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−21961(T2015−21961/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「にぼしパイ」の文字を書してなり、第30類「にぼしを用いたパイ,その他の菓子及びパン」、第35類「フランチャイズの事業の運営及び管理,フランチャイズの事業の運営及び管理に関する指導・相談及び助言,フランチャイズシステムに基づく経営の診断及び指導又は経営に関する助言,その他の経営の診断及び指導又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,にぼしを用いたパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成27年1月20日に商標登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、以下の(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

本願商標は、「にぼしパイ」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、その構成中「にぼし」の文字は「煮て干した食品。特にカタクチイワシなどを煮て干したもの。」を認識させるものであり、また、その構成中「パイ」の文字は「小麦粉・バターなどから作った生地で、果物の甘煮または肉類などを包んだり、生地の上にのせたりして、オーブンで焼いた洋菓子、または料理。」を意味するものであるから、全体として「にぼしを用いたパイ」の意味を理解させる。そうすると、本願商標は、これを本願の指定商品及び指定役務中の「にぼしを用いたパイ,にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供」に使用しても、単に商品の原材料、品質若しくは役務の質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品及び前記役務以外の「菓子及びパン」及び「飲食物の提供」の商品及び役務に使用するときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。

(2)商標法第3条第1項第6号について

本願商標は、「にぼしパイ」の文字を普通に用いられる方法で横書きしてなるところ、食品を扱う分野においては「煮て干した食品。特にカタクチイワシなどを煮て干したもの。」を意味する「にぼし」の文字及び「小麦粉・バターなどから作った生地で、果物の甘煮または肉類などを包んだり、生地の上にのせたりして、オーブンで焼いた洋菓子、または料理。」を意味する「パイ」の文字が普通に使用されているから、全体として「にぼしを用いたパイ」の意味を理解させる。そうすると、本願商標をその指定役務中の「にぼしを用いたパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用したときには、当該小売や卸売において取り扱われる商品である「パイ」が、その原材料として「にぼし」を用いたものであることを理解させ、認識させるにとどまるものであって、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 当審においてした証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、別掲のとおり、平成28年6月3日付けの証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

4 証拠調べに対する意見の要旨

請求人は、前記3の証拠調べ通知に対し、平成28年7月15日付けで意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。

(1)本願商標を構成する「にぼしパイ」の語は、いずれの辞書・辞典類にも掲載されていない。この事実は、本願商標が請求人の創出に係る造語であることを如実に示すものである。

(2)「原材料を想起させる語+『パイ』」という組み合わせからなる名称の「パイ」が取引されている事実については、各証拠に示されている「いりこ」、「焼干し」、「ちりめんじゃこ」、「うに」、「さんま」、「干しいも」、「かぼちゃ」、「桃」、「梨」と本願商標の構成の一部である「にぼし」との関連性は、「食品」という大概念以外に何らの関連性も共通性もないため、拒絶の根拠になり得ない。

(3)「いりこ」が菓子の原材料に用いられているという事実は、「にぼし」が菓子の原材料に用いられているという事実は存在しない、ということと表裏一体の関係にあるため、このような証拠が示されれば示されるほど、本願商標の独自性が際立つものとなる。

してみれば、本願商標が自他商品・役務の識別標識としての機能を十分に発揮し得るものであることに変わりはない。

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同第6号並びに同法第4条第1項第16号の規定に該当しないことは明らかであるから、本願商標は登録すべきものである。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について

本願商標は、前記1のとおり、「にぼしパイ」の文字を書してなるところ、その構成中の「にぼし」の文字は「煮て干すこと。また、煮て干した食品。特にカタクチイワシなどを煮て干したもの。主に、出しの材料にする。だしじゃこ。いりこ。」を意味する語として、また、「パイ」の文字は「小麦粉・バターなどから作った生地で、果物の甘煮または肉類などを包んだり、生地の上にのせたりして、オーブンで焼いた洋菓子、または料理。」(以上、株式会社岩波書店「広辞苑第六版」)を意味する語として、広く一般に使用されているものであるから、その構成は、「にぼし」の語と「パイ」の語を結合したものと容易に認識される。そして、「パイ」の文字については、「西洋たべもの語源辞典」(株式会社東京堂出版)において、「ミートパイ、アップルパイ、パンプキンパイというように、肉や果物、野菜などを小麦粉の生地に入れて焼いたものである。・・・果物を入れるパイはずっとくだって、イギリスで16世紀のエリザベス1世時代に、女王の所望で砂糖漬けのサクランボでつくられた。それまではパイといえばミートパイのことで、食事の主料理であったが、以後は菓子をもさすことになった。」と記載されているものである。

また、本願の指定商品又は指定役務を取り扱う分野においては、「ミートパイ」、「アップルパイ」といった一般によく知られる肉や果物を原材料に用いた「パイ」のほかに、別掲1のとおり、「にぼし」の別名と認められる「いりこ」を原材料に用いた「いりこパイ」や、「にぼし」が一般に魚のイワシを煮て干したものであるのに対し、魚のイワシを焼いて干したものを原材料に用いた「焼干しパイ」、魚のイワシ類の稚魚等をゆでて乾したものを原材料に用いた「ちりめんじゃこパイ」など、一般に魚のイワシを用いる点で「にぼし」と共通性を有する原材料を用いた「パイ」が生産されており、これらは「原材料を想起させる語+『パイ』」という組み合わせからなる名称をもって取引されている実情がある。

さらに、上記のとおり「パイ」は菓子を表す語でもあるところ、別掲2のとおり、「にぼし」の別名と認められる「いりこ」は、菓子の原材料に用いられている実情がある。

これらの実情に照らせば、本願商標は、全体として「にぼしを用いたパイ」の意味合いを容易に理解させるものというのが相当である。

そうすると、本願商標を、その指定商品中の「にぼしを用いたパイ」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者に、単に商品の品質を表示してなるものと理解させるにとどまるものというべきであり、また、その指定役務中の「にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供,にぼしを用いたパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者に、単に役務の提供の用に供する物を表示してなるものと理解させるにとどまるものというべきである。

したがって、本願商標は、商品の品質又は役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

また、本願商標は、その指定商品及び指定役務中の「にぼしを用いたパイ,にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供」以外の「菓子及びパン,飲食物の提供」に使用するときは、これがあたかも「にぼしを用いたパイ,にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供」であるかのごとく、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるといえるものであるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。

なお、原査定は、前記2(2)のとおり、本願商標をその指定役務中の「にぼしを用いたパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用したときには、商標法第3条第1項第6号に該当するとして、本願を拒絶したものであるが、その理由は、本願商標を上記指定役務について使用しても、本願商標は、取引者、需要者に自他役務の識別標識とは認識されないものであると認定、判断したものであるから、当審の判断と実質的に異なるところはない。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、本願商標を構成する「にぼしパイ」の語は、いずれの辞書・辞典類にも掲載されていないところ、これは本願商標が請求人の創出に係る造語であることを如実に示す事実である旨主張する。

しかしながら、本願商標を構成する「にぼし」及び「パイ」の各文字の辞書等による記載については上記のとおりであるところ、「パイ」は、例えば「ミートパイ」、「りんごパイ」のように、一般に「原材料を想起させる語+『パイ』」という組み合わせからなる名称をもって取引されることの多いものであり、加えて、別掲1のとおり、「にぼし」と共通性を有する食品を原材料に用いた「パイ」が、「いりこパイ」、「焼干しパイ」、「ちりめんじゃこパイ」のように、「原材料を想起させる語+『パイ』」の名称をもって取引されていることをも考慮すれば、本願商標を構成する「にぼしパイ」の文字が辞書等に掲載されていないとしても、これよりは、「にぼしを用いたパイ」の意味合いを容易に看取させるというのが相当である。

イ 請求人は、「原材料を想起させる語+『パイ』」という組み合わせからなる名称の「パイ」が取引されている事実については、各証拠に示されている「いりこ」、「焼干し」、「ちりめんじゃこ」、「うに」、「さんま」、「干しいも」、「かぼちゃ」、「桃」、「梨」と本願商標の構成の一部である「にぼし」との関連性は、「食品」という大概念以外に何らの関連性も共通性もないため、拒絶の根拠になり得ない旨主張する。

しかしながら、前記3の証拠調べ通知は、例えば「ミートパイ」、「りんごパイ」等の一般によく知られる「パイ」以外にも、「にぼし」と共通性を有する「いりこ」、「焼干し」、「ちりめんじゃこ」をはじめとして、様々な種類の食品を原材料とする「パイ」が生産されており、それらが、「いりこパイ」、「焼干しパイ」、「ちりめんじゃこパイ」のように、「原材料を想起させる語+『パイ』」の名称をもって取引されているという実情があることを示しているものであって、これらの実情をも踏まえれば、本願商標をその指定商品及び指定役務中の「にぼしを用いたパイ,にぼしを用いたパイを主とする飲食物の提供,にぼしを用いたパイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者に、単に商品の品質又は役務の提供の用に供する物を表示してなるものと理解させるにとどまるものというべきである。

ウ 請求人は、「いりこ」が菓子の原材料に用いられているという事実は、「にぼし」が菓子の原材料に用いられているという事実は存在しない、ということと表裏一体の関係にあるため、このような証拠が示されれば示されるほど、本願商標の独自性が際立つものとなる旨主張する。

しかしながら、「パイ」は菓子としても取引されているものであるところ、「にぼし」と同義の「いりこ」が菓子の原材料に用いられている多数の事実があることは、「にぼし」を原材料に用いた菓子が普通に取引されている実情を示したといい得るものであり、かかる取引の実情を踏まえれば、「にぼし」と「パイ」の文字の組み合わせは特異なものとはいえず、ごく一般的なものというのが相当であるから、「いりこ」が菓子の原材料に用いられているという事実は、本願商標が識別力を有する根拠とはなり得ない。

よって、いずれの請求人の主張も採用することはできない。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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