結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第31384号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2538367号商標(以下、「本件商標」という。)は、「リストマスター」の文字を横書きしてなり、第24類「おもちゃ、人形、娯楽用具、運動具、つり具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコード、これらの部品および附属品」を指定商品として、平成3年1月25日登録出願、同5年5月31日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)本件商標の商標権者は、日本国内において、本件商標を継続して3年以上「運動具」について使用していない。
また、商標登録原簿上は、本件商標に専用使用権或いは通常使用権が設定、許諾されている事実も見当たらない(甲第1号証)。
よって、本件商標の登録の指定商品中「運動具」については商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
本件商標の使用は、平成10年秋項の日付を裏付ける具体的な立証はなく、僅かに、印刷業者株式会社システムエイトから被請求人に宛てたカタログの納品書及び請求書(乙第3号証)が提出されているに過ぎない。
被請求人は、前記カタログの配布の事実(配布先・配布日等)を示す証拠も提出していない。
被請求人は、カタログの印刷日が「DEC.1998」と記載されていることに反し、本件商標がそれ以前から使用されていることを立証せんがため、「カタログ作成のための準備活動」を一般的な意味でのセールス活動と同視し、これを商標の使用と解している。
しかしながら、一般的な意味での商品販売活動が始まった後に、商品カタログを印刷するというのは不自然であるし、実際に本件商標が使用された事実があるのであれば、敢えて「写真撮影」「ゲラ刷り」「校正」「校正刷り」「再校正」といったカタログ作成工程に先行する「販売商品の企画・決定」を商標の使用事実として捉える必要はない。即ち、被請求人が、このような「販売商品の企画・決定」過程を商標の使用事実と結びつけようとしているのは、カタログ納入日以前には、本件商標の使用の事実がないからにほかならない。
本件におけるカタログ頒布前の行為を法上の商標使用行為として理解することは不可能である。勿論、商品の企画段階で商標が需要者・取引者に示され、出所表示標識として機能することはあろうが、如何に被請求人が本件商標の使用開始を早い時期に設定しようとしても、この点に関する客観的な証明がない以上、平成10年12月10日以前の使用とすることはできない。
よって、「営業活動に支障なきよう直ちに配布を開始」の意味合いを最も善意に解釈したとしても、商標の使用は、平成10年12月10日以降になされたものと解するのが相当であるから、本件商標の使用が「平成10年秋頃より開始」されていたという被請求人の主張は失当、或いは虚偽を含むと考えざるを得ない。
本件商標の使用は、概ね平成10年12月10日以降の事実に係るものと目されるから、予告登録日の前三年に相当する平成8年1月20日から、審判請求の予告登録である平成11年1月20日(甲第2号証)までの使用という意味では、商標の使用には該当するやもしれない。
本件取消審判は、平成10年12月21日に請求されているので、当該使用は、審判の請求前三月から請求の予告登録日までの使用にあたり、これが登録商標の使用に該当するか否かについては、商標法第50条第3項本文の適用を検討する必要がある。
この点について被請求人は、審判請求書副本等が送達された平成11年2月2日以前は「本件商標に対し審判請求されること、或いはされようとしていることを知る由も、知る術も無く予見することもできない。」と述べている。
しかしながら、請求人は、平成10年8月11日付小伝馬町郵便局長の証明に係る第78844号内容証明郵便で、被請求人に対し本件商標の譲り受けを申し入れたところ(甲第3号証)、被請求人専務取締役名義の同年8月31日付(平成10年9月1日付受領)書面で「申し出でには応じられない。」旨の回答を得ている(甲第4号証)。譲渡交渉の結果が常に不使用取消審判請求に結びつくわけではないが、譲渡の申し出でを断っている以上、少なくとも、本件商標について取消審判が請求され得ることは十分予見できるはずである。
商標法第50条第3項本文にいう「審判の請求がされることを知った」を、「交渉不調の場合には取消審判を請求する旨が譲渡申入書に明記されている場合」と解すこともあろうが、不使用商標の駆け込み使用による取消免除を防止しようとする平成8年改正法の趣旨を勘案し、且つ、最初から交渉決裂の誘因となるような文章は書かないという譲渡交渉の一般的手順を勘案すれば、審判請求をする旨の意思を相手方に明示することは必ずしも必要でないと考えられるから、「審判の請求がされることを知った」は「審判請求のされる可能性があることを認識した」の意で解すべきである。
よって、被請求人は、前記譲渡交渉の不調により、場合によっては本件商標について不使用取消審判を請求されるかもしれないという認識を持ち、或いは持ち得たと評価するのが合理的であり、商標法第50条第3項本文の規定により、本件商標は登録商標の使用には該当しないと解するのが相当である。
このように、仮に、カタログ納入日以前に本件商標が何らかの形で使用されていたとしても、被請求人のいう「平成10年秋頃」が、平成10年9月22日(審判請求の三月前)から平成11年1月20日(予告登録日)という期間と重なり、且つ、本件商標の使用が取消審判請求をされることを知った後であると解することに合理的理由がある以上、商標法第50条第3項本文の適用は免れない。
なお、商標法第50条第3項ただし書きは、「登録商標の使用をしたことについて正当な理由のあること」の立証を被請求人に課したものであるところ、被請求人のいうカタログ頒布等の行為が、前述の譲渡交渉の経過とは全く関係なく行われたものであることについては何ら主張・立証がされておらず、所論が使用を開始した「正当な理由」を根拠付けるものでないことも明らかである。
したがって、本件商標の使用は、正当理由なき駆け込み使用に相当すると解するのが自然である。
請求人は、譲渡交渉開始前に本件商標に関する情報を入手すべく、平成10年6月17日、都内大手の著名なスポーツ用品店(複数)に対し、被請求人の取り扱いに係る商品「リストマスター」の有無を確認したことがある(口頭での確認なので立証は不能)。ところが、何れの店舗においても当該商品の存在を認知することができなかった。
以上述べた理由により、本件商標の指定商品中「運動具」についての登録は商標法第50条の規定により取り消されるべきである。
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)本件商標は、「リストマスター」と表示した構成よりなるものである(乙第1号証)。
被請求人使用中の商標使用態様は、「リストマスター0.5kg」「リストマスターlkg」「リストマスター1.5kg」と表示構成されたものである(乙第2号証)。
そして使用している商品「手首鍛練具」は、請求に係る指定商品「運動具」に包含されることは明白である。
(2)本件商標の使用は平成10年秋頃より開始し、平成10年12月10日に印刷を完了したカタログの納品を受け、営業活動に支障なきよう直ちに配布を開始している(乙第3号証)。
カタログ裏表紙に印刷日の表示がなされているが、通常カタログに商品を掲載して販売を開始するということは、それ以前に該商品を展示したり或いは営業部員が持参して説明し、時には試供品を配布する等のセールス活動を行った後、写真撮影に入り、ゲラ刷り、校正、校正刷り、再校正と少なくとも2回程行った後、本印刷を迎えることは業界各社の通常一般的に行われている工程である。
つまり、カタログに印刷され納品されるまでには、販売商品の企画・決定を含めれば、少なくとも6ケ月程を要し、その間、該商品は少量とは言え既に実質的な商標の使用がなされているということになる。
(3)更に、本件審判請求は平成10年12月21日になされたもので、被請求人に「副本」と「審判番号および審判官氏名の通知」の送達がなされたのが、平成11年2月2日である。
したがって、被請求人はそれ以前に本件商標に対し審判請求されること、或いはされようとしていることを知る由も、知る術も無く予見することもできないから、商標法第50条第3項ただし書きに該当し、登録商標の使用に当たる。
(4)仮に、前記カタログに有効期限”99.2〜”01.1の表示があることを以って、審判請求前から行っている商品の展示や持参しての売り込み、予約受注等の営業活動並びに、既に印刷されて納品されたカタログの配布を完了とまでは行かなくとも、半数以上配布し、商標の使用に当たる事実を以ってしても、登録標の使用をしてないことについて、正当な理由があることは差し出した乙各号証によって明々白々であるから、商標法50条第2項ただし書きに該当する。
(5)以上により、取消請求に係る「運動具」に包含される商品「手首鍛練具」につき、本件商標を使用しているばかりでなく、少なくとも本件審判請求前の平成10年の秋頃からその使用を開始している。
(1)被請求人の提出した乙各号証によれば、次の事実が認められる。
(イ)被請求人は、「SPORTS’EQUIPMENT CATALOG」と題したカタログ「1999―2000」、「2年版」を発行し、該カタログの裏表紙に、「DEC.1988 PRINTED IN JAPAN」及び「有効期間 ’99.2〜’01.1」と記載されていること、かつ、該カタログには、商品「手首鍛錬具」に「リストマスター0.5kg」「リストマスターlkg」「リストマスター1.5kg」と表示していること(乙第2号証)。
(ロ)株式会社システム・エイトより、被請求人宛に平成10年12月10日付けで、前記(1)のカタログの納品書及び請求書が作成されていることが認められる(乙第3号証)。
(2)してみれば、上記の事実からすると、本件審判の請求の登録前三年以内に商標権者が取消請求に係る商品「運動具」に包含される「手首鍛錬具」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものというのが相当である。そして、本件商標を使用している証左は、前記カタログのみであるから、その使用時期はカタログが作成、納品された平成10年12月10日以降の使用といわざるを得ない。
(3)次に、請求人の提出した甲各号証によれば、次の事実が認められる。
(イ)本件取消審判請求は、平成10年12月21日(商標登録原簿上は、当庁到達日の平成10年12月22日)になされ、その予告登録日は平成11年1月20日であること(甲第2号証)。
(ロ)請求人は、被請求人に対し、平成10年8月11日の申込書において、本件商標の指定商品中「運動用具」に係る商標権の分割譲渡を申し入れた事実(甲第3号証)。
(ハ)被請求人は、請求人に対し、前記(ロ)の申し出でには応じられない、旨の回答をしていることが認められる(甲第4号証)。
(4)そこで、請求人の主張する商標法第50条第3項の規定に該当するか否かについてみるに、該規定は、「商標権者等が本条の審判の請求がされることを知った後に登録商標の使用(いわゆる『駆け込み使用』)をしたことを請求人が証明した場合には、その使用は同条第1項に規定する登録商標の使用に該当しない。ただし、その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときはこれを適用しない。」ことを趣旨とした規定である。
すなわち、被請求人による使用が審判請求前三月から審判の請求の登録の日(予告登録日)までの間におけるものであって、本条の審判の請求がされることを商標権の譲渡交渉等で被請求人が知った後の使用であることを、請求人が証明したときは、その使用は駆け込み使用であって同法第50条第1項に規定する登録商標の使用とは認められないことになる。
(5)これを本件に照らせば、被請求人による使用が審判請求(平成10年12月21日)前三月から審判の請求の予告登録の日(平成11年1月20日)までの間における使用であって、商標権の分割譲渡交渉で被請求人が分割譲渡には応じられない旨の回答をした日(平成10年8月11日)以後の使用であることからすれば、被請求人(商標権者)は、不使用取消審判の請求があり得ることを察知し、審判請求の登録前に駆け込み使用することにより取消を免れようとしたものと推認せざるを得ない。また、これを覆すにたりる証左も認められない。
この点について、被請求人は、「カタログに印刷され納品されるまでには、販売商品の企画・決定を含めれば、少なくとも6ケ月程を要し、その間、該商品は少量とは言え既に実質的な商標の使用がなされているということになる。」等主張しているが、審判請求がされることを知る前から本件商標について、販売商品の企画・決定、使用計画や準備があり、これに基づいて使用したものであるとする証左は見あたらないから、この主張のみをもって、本件商標の不使用について正当な理由があったものということはできない。
そうとすれば、本件商標は、審判請求の登録前三年以内に日本国内において、取消請求に係る商品「運動具」について使用していたとしても、その使用は商標法第50条第3項の規定に該当するものというのが相当である。
したがって、本件商標の指定商品中、結論掲記の商品についての登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。