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Trademark Appeal Case

商標の要部抽出類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2016−890029(T2016−890029/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5802481号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5802481号商標(以下「本件商標」という。)は、「吉兵衛」の文字を標準文字により表してなり、平成27年4月15日に登録出願、第43類「すしを主とする飲食物の提供,和食を主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供,すしを主とする飲食物のケータリング,和食を主とする飲食物のケータリング,行事用・パーティー用料理のケータリング」を指定役務として、同年8月31日に登録査定、同年10月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する登録第5262835商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成21年2月25日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同年9月4日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

2 同じく、請求人が引用する商標は、その業務に係る役務「かつ丼を主とする飲食物の提供」に使用されている「吉兵衛」の文字からなる標章及び「かつ丼 吉兵衛」の文字からなる標章(以下これらをまとめて「引用商標2」という。)である。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第78号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。

2 利害関係

(1)請求人について

請求人は、1979年(昭和54年)に現取締役の上村勉により「かつ丼吉兵衛」の名称でかつ丼専門店の創業を開始し、その後、2010年4月16日に「吉兵衛」の称号をそのまま使用して法人となった株式会社である。

(2)利害関係について

請求人は、平成27年9月18日に第43類「飲食物の提供」等を指定商品及び指定役務として「吉兵衛」の文字を含む商標登録出願を行っており(商願2015−90816号)、この出願に対して、本件商標を引例とする拒絶理由通知が発せられている。

したがって、請求人は、本件審判請求を行うことにつき、利害関係を有する。

3 本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性

(1)本件商標について

本件商標は、「吉兵衛」の文字を標準文字で表してなるところ、「ヨシベイ」「ヨシベー」又は「キチベイ」「キチベー」の称呼、及び「吉兵衛という人の名」の観念を生じる。また、後述する請求人店舗の名称としての「吉兵衛」の周知性より、請求人店舗の観念も生じるものである。

(2)引用商標1について

引用商標1は、別掲のとおり、「かつ丼 吉兵衛」の文字を上段に、そのローマ字表記「KATSUDON YOSHIBEI」の欧文字を下段に、それぞれ書してなるところ、これよりは「ヨシベー」及び「ヨシベイ」の称呼及び「吉兵衛という人の名」の観念が生じる。また、請求人店舗の名称としての「吉兵衛」の周知性より、請求人店舗の観念も生じるものである。

(3)本件商標と引用商標1との類似性

ア 外観について

本件商標は、引用商標1の要部である「吉兵衛」の文字部分と同一の文字からなることから、両商標は外観上極めて類似する。

イ 称呼について

本件商標と引用商標1は、「ヨシベー」及び「ヨシベイ」の称呼を共通にする。

ウ 観念について

本件商標と引用商標1は、「吉兵衛という人の名」の観念を共通にする。

また、本件商標は、請求人店舗の名称として周知性を獲得している「吉兵衛」と同一の文字からなるため、本件商標の指定役務、特にかつ丼やとんかつ等を含む飲食物の提供やケータリングに使用された場合には、請求人店舗が想起されることは容易に想定される。

(4)本件商標と引用商標1の指定役務の類似性

本件商標の指定役務「すしを主とする飲食物の提供,和食を主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供,すしを主とする飲食物のケータリング,和食を主とする飲食物のケータリング,行事用・パーティー用料理のケータリング」と引用商標1の指定役務「飲食物の提供」は、同一又は類似するものである。

(5)小括

以上により、引用商標1の要部である「吉兵衛」及び「YOSHIBEI」を本件商標と対比し、取引の実情を考慮して、両商標の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両商標が各指定役務に使用された場合には、本件商標と引用商標1に接する取引者、需要者は、それらが同一又は関連ある者による営業であると理解、認識することは明らかである。

したがって、本件商標と引用商標1とは、商標及び指定役務共に同一又は類似の関係にあることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 本件商標の商標法第4条第1項第10号の該当性

(1)請求人店舗の出店状況及び引用商標2の使用状況

請求人は、1979年(昭和54年)の請求人店舗の創業以来、請求人店舗の名称として引用商標2を使用し、さらには2010年4月16日以降、社名としても「吉兵衛」の文字を使用している。

請求人店舗の出店状況は、神戸三ノ宮駅(JR、阪急)のすぐ近くに位置する「センタープラザ西館」に入居する1号店(本店)をはじめ、いずれも交通の便が良く人通りの多い場所や集客数の多い商業施設に店を構えている(甲3、甲42)。

例えば、3号店が入居する「プロメナ神戸」は、神戸で人気の観光スポット「神戸ハーバーランド」の中の複合商業施設であり(甲43)、請求人店舗はその地下一階のフードコートに出店している(甲44)。

また、4号店の所在する「道具屋筋商店街」(甲45)は、大阪の繁華街「なんば」に所在する全長150mの商店街であり、料理道具が揃う専門店が集まる場所として明治15年からの歴史があるが、近年は食品サンプル等が人気となり、大阪で人気の観光スポットとなっている(甲46、甲47)。

請求人は、引用商標2を請求人店舗の名称として、各店舗の看板や暖簾(甲48)、箸袋(甲49)、従業員のユニフォーム(甲50の10)及びエプロン(甲50の17)、チラシ(甲71)等に使用している。

(2)引用商標2の周知性

請求人店舗は、カウンター6席から始まった本店開店当初の1980年代から本件商標の登録査定時(平成27年(2015年)8月31日)に至るまで、行列ができる人気店として、テレビ、雑誌、新聞、ガイドブック、グルメ本等に頻繁に取り上げられてきた。

また、請求人自身、特に4号店が出店した2012年頃からは、様々なキャンペーン活動を行い、「全国丼グランプリ」でも二年連続(2014年、2015年)で金賞を受賞し、さらに、東京の百貨店(恵比寿三越)の催事や九州大分県のイベント等、関西圏以外にも活動範囲を広げてきている。

ア テレビ放映

請求人店舗は、1989年に、当時の全国放送の高視聴率番組「クイズ世界はSHOW・by!!」で「大人気 専門食堂」として紹介されて以来、関西の情報番組やニュース番組から全国放送の人気番組に至るまで、様々な番組から、行列のできる人気店として取材を受け、少なくとも計36回はテレビで放映されてきた(甲50)。

イ 新聞雑誌、ガイドブック、グルメ本等

請求人店舗は、主に関西圏の情報誌を中心に、全国版週刊誌や新聞、ガイドブック、グルメ本等でも頻繁に取り上げられ、引用商標2が掲載されてきた(甲51)。発行部数の多い情報誌だけでも、「KANSAI 1週間」に計8回、「Lmagazine」に計5回、「ぴあ関西版」に計4回、「Meets Regional」に計5回、「関西ウォーカー」及び「神戸ウォーカー」に計9回、新聞には計17回、請求人店舗が取り上げられている。

創業5年目の1984年には一般紙「神戸新聞」(甲51の57)、1985年にはスポーツ紙「デイリースポーツ」(甲51の58)において、請求人店舗(本店)が人気店として紹介され、1991年には関西版情報誌「Meets Regional」(甲51の25)で「カウンターにわずか6席というキャパが噂になった超有名店」として紹介されている。

その後、創業から37年が経過した現在でも請求人店舗の人気は継続し、2015年には、「日経トレンディ(2015年12月号)」の「2016ヒット予測100」において、「2016年注目の『観光&ご当地』キーワード」のタイトルの下、請求人店舗が「行列が絶える日はない老舗」「噂は広がりメディア出演も多数」と紹介され、見開き(片面)で掲載されている(甲51の1)。

なお、同誌の発行日は本件商標の登録査定日(2015年8月31日)から約二ヶ月後であるが、登録査定時点における請求人店舗の人気と注目度を裏付けるものである。

ウ 全国丼グランプリ受賞

一般社団法人全国丼連盟(甲52)主催の「全国丼グランプリ」の第一回(2014年、一般応募数1、262丼、甲53)及び第二回(2015年、一般応募数1、345丼、甲54)のいずれも、請求人店舗は「カツ丼部門」で金賞を受賞している(甲55〜甲57)。

エ 催事・イベント・キャンペーン等

請求人は、関西圏内外の集客数の多い百貨店の催事やイベントに出店し、また、様々なキャンペーン等を行い、それらの様子をfacebook等のソーシャルネットワーキングサービスを利用して広く紹介している(甲58〜甲78)。

以上のとおり、請求人店舗は1980年代には創業の地である神戸において既に人気が定着していたところ、現在に至るまで関西圏のみならず全国的にも頻繁にメディアに取り上げられ、さらに、請求人店舗の出店数が増える中、請求人自身も様々な催事・イベントへの参加やキャンペーン活動、インターネットを通じた請求人店舗の普及活動を行ってきており、これに伴い、引用商標2は請求人店舗の名称として広く一般消費者(需要者)に露出してきた。

商標法第4条第1項第10号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」は、ある一地方で広く認識されている商標をも含むところ、上述した状況(甲3、甲42〜甲78)からすれば、引用商標2が本件商標の登録出願時(2015年(平成27年)4月15日)及び登録査定時(同年8月31日)において、少なくとも関西一円において需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。

(3)本件商標と引用商標2との類似性

本件商標は、引用商標2の「吉兵衛」と同一である。また、「かつ丼」を前に付けて使用されることがあるとしても、「吉兵衛」の文字部分が独立して自他役務の識別標識として機能を発揮することに変わりないため、いずれにせよ、本件商標は引用商標2と同一又は極めて類似する。

(4)本件商標の指定役務と引用商標2を使用する役務の類似性

請求人が引用商標2を使用している「かつ丼を主とする飲食物の提供」は、本件商標の指定役務に含まれるものである。

(5)小括

以上により、本件商標は、請求人が「かつ丼を主とする飲食物の提供」について使用し、本件商標の登録出願時(2015年(平成27年)4月15日)及び登録査定時(同年8月31日)において需要者の間に広く知られた引用商標2と同一又は類似し、また、請求人の役務と同一又は類似の役務に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

5 まとめ

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第10号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第5 当審の判断

1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、上記第1のとおり、「吉兵衛」の文字を標準文字により表してなるところ、これは名前を表したものであって、「キチベイ」、「ヨシベイ」、「キチベー」及び「ヨシベー」と読まれ、名前として認識、理解されるものである。

してみると、本件商標からは、「キチベイ」、「ヨシベイ」、「キチベー」及び「ヨシベー」の称呼及び名前としての「吉兵衛」の観念を生ずるというのが相当である。

(2)引用商標1

引用商標1は、別掲のとおり、「かつ丼 吉兵衛」の文字と、「KATSuDON yOSHIBEI」の欧文字とを上下二段に横書きしてなるところ、下段の欧文字は、上段の文字の欧文字表記と容易に認識されるものであり、また、上段の「吉兵衛」の文字は、他の文字より大きく顕著に表されているものであるから、視覚上、注目されやすいものといえる。

また、その構成中、上段の「かつ丼」の文字及び下段の「KATSuDON」の文字は、指定役務との関係において役務の提供の用に供する物又は役務の質を表したものと容易に理解させるものであるから、自他役務の識別標識としての機能はないか、あるとしても極めて弱いとものといえる。

そうすると、引用商標1は、上段に大きく顕著に表された「吉兵衛」の文字部分が、取引者、需要者に、出所識別標識として強く印象に残るものといえ、該文字部分が独立して、自他役務の識別標識としての機能を発揮し得るものというのが相当であり、下段の「yOSHIBEI」の文字が上段の文字の欧文字表記と容易に認識されることから、該文字部分に相応して、「ヨシベイ」の称呼が生じ、名前としての「吉兵衛」の観念が生じるものである。

(3)本件商標と引用商標1との類否

本件商標と引用商標1とは、全体としての外観は異なるものの、「吉兵衛」の文字において、その外観が近似するものであり、また、「ヨシベイ」の称呼及び名前としての「吉兵衛」の観念を共通にするものであるから、両者は、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であるというべきである。

そして、本件商標の指定役務である第43類「すしを主とする飲食物の提供,和食を主とする飲食物の提供,その他の飲食物の提供,すしを主とする飲食物のケータリング,和食を主とする飲食物のケータリング,行事用・パーティー用料理のケータリング」と、引用商標1の指定役務である第43類「飲食物の提供」とは、同一又は類似する役務である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、他の請求の理由について判断するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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