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Trademark Appeal Case

キラキラ商標の周知性判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−3136(T2015−3136/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「南三陸キラキラ」の文字を標準文字で表してなり、第43類「南三陸産の海産物を使用した海鮮料理を主とする飲食物の提供、南三陸産の具材を使用した料理を主とした飲食物の提供、飲食物の提供に関する情報の提供、宿泊施設の提供及びこれに関する情報の提供」を指定役務として、平成25年7月2日に登録出願されたものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨

原査定は、「本願商標は、宮城県本吉郡南三陸町地域の飲食店が『丼物やどんぶりを使った料理の提供』の役務について使用し、南三陸商工会、南三陸町観光協会等が地域を挙げて宣伝広告活動を行うことにより、本願商標の登録出願前から取引者、需要者の間に広く認識されている商標『南三陸キラキラ丼』と類似する商標であって、かつ、前記役務と同一又は類似の役務に使用するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成27年12月17日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

なお、原審における平成25年10月11日付け刊行物等提出書で提出された証拠(商標登録願2013−50903の同日付け刊行物等提出書で提出された証拠を参照)を、以下「刊行物資料○」と、平成25年12月12日付け上申書で提出された証拠を、以下「上申書甲○」と、また、当審において同27年1月30日付け審判請求書で提出された証拠を、以下「請求書甲○」という。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨

請求人は、前記3の証拠調べ通知に対し、平成28年2月22日付け意見書を提出し、要旨以下のように主張した。

(1)証拠調べ通知書で通知された証拠については、東日本大震災前、同震災後、本願出願後の時期に分けて検討すべきであり、各期に行われた「南三陸キラキラ丼」に係るキャンペーンは、その名称を共通にしているが、活動の実態は全く別異のものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するか否かの判断は、震災後から本願商標の登録出願前の間の証拠に基づき判断すべきである。

そうすると、震災後から本願商標の登録出願前の間の証拠は、そのほとんどが被災者の復興のために設置された仮設商店街で「南三陸キラキラ丼」が復活したという紹介記事や報道であり、「南三陸キラキラ丼」が取引者や需要者の間でどれほど浸透しているのかを、量的に認識したり、推測することができるようなものではない。

したがって、これらの証拠によって、商標「南三陸キラキラ丼」が需要者の間で広く認識されている事実を立証できるものではない。

(2)震災後の復活「南三陸キラキラ丼」キャンペーンがスタートしてから本願商標の登録出願時までの間に、引用商標の使用期間があまりに短いことから、需要者の間に広くその認識が浸透するための時間が充分ではなく、その時間的不足を克服するような積極的な宣伝広告が行われたという証拠も存在しない。

したがって、証拠調べ通知書の証拠では、引用商標の周知性を認定することはできない。

よって、証拠調べ通知に挙げられた事実があるとしても、本願商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

5 当審の判断

商標法第4条第1項第10号において、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」は、商標登録を受けることができない旨規定されている。

また、商標法第4条第3項が「第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」と規定しているとおり、本願商標が、商標法第4条第1項第10号に該当するというためには、商標登録出願時及び審決時において、同号の所定の要件を満たさなければならない。

以上を踏まえて、以下、本願商標について、本号の該当性について検討する。

(1)「南三陸キラキラ丼」の周知性について

ア 請求人の提出に係る証拠、刊行物等提出書、原審で示した証拠及び当審における職権調査並びに請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

(ア)本願商標の登録出願前(東日本大震災(以下「震災」という。)前)

a 宮城県本吉郡南三陸町地域の南三陸町飲食店組合に加盟する有志の飲食店(以下「提供店」という場合がある。)6店が、平成21年12月頃から平成22年2月の間に、町おこしのためのキャンペーンとして「南三陸キラキラいくら丼」の商標(以下「引用商標1」という。)を使用して「南三陸産の具材を含む丼物の提供」(以下「引用役務」という。)を始め、上記キャンペーンは、同期間に、東北地方紙である「河北新報」の記事に採り上げられたほか、旅行雑誌「東北じゃらん」2010年1月号にも紹介され、約3,300食を売り上げた(別掲2(1)に記載の上申書甲3、3(1)ア・オ・カ、4(1))。

b 平成22年3月から4月に、上記キャンペーンの「南三陸キラキラ丼」(以下「引用商標2」という。)シリーズ第2弾として、「南三陸キラキラ春つげ丼」の商標(以下「引用商標3」という。)を使用した引用役務が提供店7店により提供され、提供店一覧及び一般社団法人南三陸町観光協会(以下「観光協会」という。)を問合せ先として掲載したパンフレットが作成されると共に、このキャンペーンは、同期間に、「河北新報」で報道されて、約1,200食を売り上げた(別掲1(1)、2(1)に記載の上申書甲4、3(1)イ・オ)。

c 平成22年5月から8月には、「南三陸キラキラ丼」シリーズ第3弾として、「南三陸キラキラうに丼」の商標(以下「引用商標4」という。)を使用した引用役務が提供店7店により提供され、このキャンペーンは、同期間に、「河北新報」及び「三陸新報」の東北地方紙のみならず、「東京読売新聞」でも報道され、雑誌やインターネットで調べて来る宮城県仙台市や岩手県、近隣県等からの来店客をも取り込んで、約20,000食を売り上げるヒットとなった(別掲3(1)ウ〜オ・キ)。

d 平成22年9月から10月には、「南三陸キラキラ丼」シリーズを締めくくる第4弾として、「南三陸キラキラ秋旨丼」の商標(以下「引用商標5」という。なお、引用商標1ないし引用商標5をまとめて「引用商標」という場合がある。)を使用した引用役務が提供店8店により提供され、このキャンペーンは、一連のキャンペーンの経緯に関する説明と共に、「例年9月からは観光客が減るが、秋旨丼を食べに訪れる客は増えているという。・・・9月以降は観光客数がまばらになるが、今年の来店客数は例年比で2割ほど増え、1日30食売り上げる日もある。」等と、「河北新報」及び「東京読売新聞」で報道された(別掲2(1)に記載の上申書甲6、3(1)カ・キ)。

e キャンペーンは2巡目に入り、平成22年10月から平成23年1月に行われた引用商標1を使用した引用役務の提供によるキャンペーンは、「河北新報」及び「東京読売新聞」で報道され、また、JR東日本と県内自治体による観光キャンペーンである「仙台・宮城【伊達な旅】キャンペーン」に参加し、「みやぎ観光ガイドブック 三陸エリア」に紹介された(別掲2(1)に記載の上申書甲7、4(2)に記載の上申書甲12、別掲3(1)ク・ケ)。

f 平成23年2月から4月に行われる引用商標3を使用した引用役務の提供によるキャンペーンは、東北地方紙のほか、「東京読売新聞」及び「日本農業新聞」でも報道され、町長、観光協会、及び観光関係者を含め、町ぐるみで取り組んでいる様子が紹介された(別掲3(1)コ〜シ)。

g 引用商標1及び3ないし5を使用した引用役務の提供による「南三陸キラキラ丼」シリーズは、平成21年12月の提供開始から平成22年12月までに、年間45,000食を売り上げる町の名物となっていた(別掲3(1)シ・(2)オ、4(5))。

h 引用商標を使用した引用役務の提供店は、平成21年12月から平成23年3月までの期間において、当初の6店舗から8店舗に増えたが、宮城県本吉郡南三陸町地域の提供店であることには変わりがない(別掲1(1)に記載の刊行物資料12、2(1)に記載の上申書甲3・甲6、3(1)ア〜カ・ク〜シ、3(2)ウ、4(1))。

(イ)本願商標の登録出願前(震災後)

a 平成21年12月頃から提供店が引用商標を使用して提供していた引用役務は、震災により中断していたが、宮城県本吉郡南三陸町中心部にできた仮設商店街「南三陸志津川福興名店街」(通称『南三陸さんさん商店街』。以下「仮設商店街」という。)のオープンに合わせ、提供店の店主や観光協会が中心となり復活に向けて動きだし、平成24年2月25日から4月に、震災前の提供店4店を含む9店(仮設商店街に入居する5店及び被災を免れたり店舗を移転して再開した4店)が、「『南三陸キラキラ丼』復活」と銘打って、引用商標2を使用したいくら中心の引用役務の提供を再開し、10,000食以上を売り上げた(別掲2(2)に記載の刊行物資料17第1葉目、3(2)ア〜エ)。

b その後、平成24年4月29日から8月に引用商標4を使用した引用役務、平成24年11月から平成25年2月に引用商標1の商標を使用した引用役務、平成25年3月から4月に引用商標3を使用した引用役務、平成25年5月から8月に引用商標4を使用した引用役務が、それぞれ、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする8ないし10店の提供店(キャンペーンに参加した菓子店1店を除く。)で提供された(別掲1(3)に記載の刊行物資料13・(4)に記載の刊行物資料14、2(1)に記載の上申書甲9・(2)に記載の刊行物資料17第3葉目、4(3)・(4))。

c 上記の平成24年2月から平成25年8月の間において、引用商標を使用した引用役務の提供店一覧を掲載したパンフレットが、平成24年11月2日付け、平成25年3月2日付け及び5月1日付けで作成され、これらには問い合わせ先として観光協会や南三陸商工会(以下「商工会」という。)の記載がある(別掲1(2)〜(4))。

d 同じく平成24年2月から平成25年8月の期間において、仮設商店街のチラシに6回にわたり、引用役務について引用商標1、2及び引用商標4が使用されて宣伝された(別掲2(2)に記載の刊行物資料17第1・3・5・15・18・19・22葉目)。

e さらに、引用商標は、震災後から本願商標の登録出願(平成25年7月2日)までの間に、東北地方紙並びに「東京読売新聞」、「朝日新聞」及び「日本経済新聞」等の全国紙において15回にわたり採り上げられ、震災前に年間約45,000食を売り上げた町の名物であったことや、震災後の復興の目玉とされて平成24年には仮設商店街の飲食店だけで約10万人の客が来店し、復興に成功している仮設商店街の例として掲載された(別掲3(2)ア〜オ・キ〜タ)。

f 旅行雑誌「関東東北じゃらん」及び「じゃらん東北2013−2014完全保存版」、週刊誌「サンデー毎日」、情報誌「YELLOH!仙台・宮城」(「2013年冬・春」号)並びに雑誌「大人の休日倶楽部ミドル2013年4月号」には、引用商標を使用した丼及び提供店が紹介されている(別掲4(3)〜(7))。

g 引用商標2を使用した引用役務は、テレビ放送においても、平成25年6月19日に仙台放送で「南三陸の名物グルメ!南三陸キラキラ丼」として紹介された(別掲5(2))。

(ウ)本願商標の登録出願後

a 本願商標の登録出願後においても、平成25年8月に引用商標4(別掲2(2)に記載の刊行物資料17第22葉目)、平成25年9月から10月に引用商標5(別掲1(5)に記載の刊行物資料15・上申書甲17、2(1)に記載の上申書甲10)、平成25年11月から平成26年2月に引用商標1(別掲1(6)に記載の上申書甲18、3(2)チ)、平成26年3月から4月に引用商標3(別掲5(4)前段)、平成26年9月から10月に引用商標5(別掲3(2)ナ・ヌ)、平成26年11月から平成27年2月に引用商標1(別掲5(4)後段)の各引用商標を使用した引用役務が、6回にわたり、提供店により提供されている事実が、引用商標を使用した引用役務の提供店一覧が掲載されたパンフレット、仮設商店街のチラシ、新聞記事及びウェブサイトの記載から認められる。

b 引用商標2及び3を使用した引用役務の提供店一覧が掲載されたパンフレットが、平成26年3月1日、平成27年5月1日及び11月1日にも発行され、問合せ先に観光協会又は同協会及び商工会が記載されている(別掲1(7)〜(9))。

c 引用商標を使用した引用役務は、平成25年10月から平成27年10月の間に、全国紙及び地方紙(中部地方の地方紙を含む。)の12回にわたる記事並びに旅行雑誌「るるぶ仙台松島宮城’15」で、「仮設商店街『南三陸さんさん商店街』の駐車場は多くの県外ナンバーを含め、100台以上の車で埋め尽くされていた。・・・午後1時になっても地元産の魚介類をふんだんに乗せた名物『南三陸キラキラ丼』を提供する飲食店には行列が絶えなかった。・・・週末になると、この丼を目当てに県内外から観光客が足を運ぶ。」、「人気グルメのひとつ。」等と紹介された(別掲3(2)チ〜フ、4(8))。

d 引用商標2を使用した引用役務は、平成26年11月に、一般社団法人・全国丼連盟主催の「第1回全国丼グランプリ」で最高賞の金賞及び「フード・アクション・ニッポンアワード2014』で審査委員特別賞を受賞した(別掲3(2)ネ・ノ)。

e 引用商標2を使用した引用役務の提供店2店が、それぞれ、平成26年11月に阪急うめだ本店で開催された「元気東北物産展」及び平成27年11月にそごう広島店で開催された「第19回宮城県の物産と観光展」に出店し、各デパートのチラシに引用商標2を表示して掲載された(別掲5(3)後段・(5))。

f なお、本願商標の登録出願後における引用商標を使用した引用役務の提供店は、請求書甲第15号証によれば、2015年(平成27年)1月30日に印刷された観光協会公式ホームページにおいて、「南三陸キラキラ丼」の見出しの下に、年4回の提供時期別に提供店が紹介され、その所在地は、宮城県気仙沼市の1店を除き、全て宮城県本吉郡南三陸町内(仮設商店街内含む)であり、その他の証拠(別掲1(5)・(6)に記載の刊行物資料15及び上申書甲17・18、2(1)に記載の上申書甲10、3(2)チ・ナ・ヌ)と併せみれば、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする9店ないし10店であるといえる(キャンペーンに参加した菓子店1店を除く。)。

イ 上記アの事実を総合的に勘案すると、震災前である平成21年12月頃から、宮城県本吉郡南三陸町地域の提供店の団体が、町おこしのキャンペーンとして、引用商標1を使用した引用役務の提供を開始し、その後、引用商標1及び3ないし5を使用した引用役務の提供による上記キャンペーンを年に4回のシリーズで行うようになり、引用商標2は、引用商標1及び3ないし5を使用して提供された引用役務を総称する商標として使用されるようになったものといえる。そして、引用商標2は、提供店の団体、観光協会、商工会等が地域を挙げて、引用商標を使用した引用役務の提供店一覧を掲載したパンフレットの作成や新聞及び雑誌取材への対応等の宣伝広告活動を行った結果、本願商標の登録出願より前の震災前おいて、地方紙及び全国紙並びに雑誌等に多数掲載され、宮城県内のみならず県外からの利用客が増え、平成21年12月から平成22年12月の間に提供店が約45,000食を売り上げた。

その後、震災により、引用商標を使用した引用役務の提供は中断していたが、震災前からの提供店4店を含む9店の団体が、「『南三陸キラキラ丼』復活」と銘打って、引用商標2を使用した引用役務の提供を再開し、震災後に被災地の復興の様子を伝える報道が増えたことや、全国的に震災からの復興に関心が高かったことも相まって、引用商標を使用した引用役務の復活も、復興の成功例として東北地方紙及び全国紙、雑誌及びテレビ番組に採り上げられ、本願商標の登録出願より前の平成24年には、年間約10万人が引用商標2を総称とする引用役務を復興の目玉とする仮設商店街を訪れたことからすれば、引用商標2は、本願商標の登録出願時には、少なくとも宮城県及びその近隣県において、提供店の団体の業務に係る引用役務を表すものとして需要者の間で広く認識されていたといえるものである。

そして、平成25年8月から平成27年2月までに、6回にわたり、提供店の団体により引用商標を使用した引用役務が提供され、また、平成27年1月の観光協会公式ホームページに引用商標2を使用した年4回の引用役務の紹介が掲載された事実、並びに平成27年5月及び11月に引用商標2を使用した引用役務の提供店一覧を掲載したパンフレットが発行された事実からすれば、平成27年5月以降においても、提供店の団体による年4回のキャンペーンが継続されていることが推認される。

併せて、平成25年10月から平成27年11月の間に、引用商標2を使用した引用役務を求めて多くの県外ナンバーの車が仮設商店街を訪れたこと、引用商標2を使用した引用役務が2つの賞を受賞したこと、及び大阪府や広島県の物産展に提供店の内の2店がそれぞれ出店し引用商標2を使用した引用役務を提供したこと、並びにこれらの事実が全国紙及び地方紙(中部地方の地方紙を含む。)で12回にわたって報道されたこと等に鑑みれば、引用商標2は、現在においても、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする提供店の団体が引用役務について使用する商標として需要者の間で広く認識され、その周知性は継続しているといえるものである。

(2)本願商標と引用商標2の類否について

本願商標は、前記1のとおり、「南三陸キラキラ」の文字を標準文字で表してなるものである。

他方、引用商標2は、「南三陸キラキラ丼」の文字を書してなり、上記(1)のとおり、「南三陸産の具材を含む丼物の提供」について使用するものといえるところ、その構成中の「丼」の文字は、引用役務との関係では「『丼物(どんぶりもの)』の略。」(「デジタル大辞泉」)を意味し、引用役務の提供する丼物を表すものであって、自他役務識別標識としての機能が弱いものであることからすれば、本願商標の構成中、自他役務の識別標識としての機能を果たす部分は、「南三陸キラキラ」の文字部分にあるといえる。

そうすると、本願商標と引用商標2は、互いに類似する商標である。

(3)本願の指定役務と引用商標2の使用に係る役務について

引用商標2は、上記(1)のとおり、「南三陸産の具材を含む丼物の提供」について使用するものといえる。

本願の指定役務は、引用商標2の使用に係る役務と同一又は類似の役務と認め得る「南三陸産の海産物を使用した海鮮料理を主とする飲食物の提供、南三陸産の具材を使用した料理を主とした飲食物の提供、飲食物の提供に関する情報の提供」を含むものである。

(4)小括

以上のとおり、本願商標は、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする提供店の団体が引用役務を表示するものとして、本願商標の出願時及び現在において、需要者の間に広く認識されていた「南三陸キラキラ丼」と類似する商標であって、かつ、本願商標の指定役務中「南三陸産の海産物を使用した海鮮料理を主とする飲食物の提供、南三陸産の具材を使用した料理を主とした飲食物の提供、飲食物の提供に関する情報の提供」については、上記提供店の団体である他人の業務に係る引用役務と同一又は類似する役務であるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、震災前、震災後及び本願商標の登録出願後の各期に行われた「南三陸キラキラ丼」に係るキャンペーンは、その名称を共通にしているが、活動の実態は全く別異のものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するか否かの判断は、震災後から本願商標の登録出願前の間の証拠に基づき判断すべきである旨主張する。

しかしながら、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かは、本願の登録出願時及び審決時において判断すべきものであり、また、その間の周知商標の使用者は必ずしも同一人に限られず、当該商品又は役務に係る業務の承継があった場合には承継した者が周知商標主になれる(東京高等裁判所昭和38(行ナ)第53号、昭和43年10月4日判決言渡)と解されるところ、上記(1)アに記載のとおり、引用商標2を総称とする引用役務の提供は、宮城県本吉郡南三陸町地域の提供店6店によって開始され、年4回の各キャンペーン又は震災前後において、キャンペーンに参加する提供店の多少の入れ替わりはあるものの、その提供店は、引用商標の使用開始時から平成27年まで一貫して、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする提供店の団体であることに変わりはないことから、本願商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かの判断は、震災前を含めた該団体による使用の証拠に基づき判断すべきである。

そして、本願商標がその登録出願時及び現在において、宮城県本吉郡南三陸町地域を中心とする提供店の団体が引用役務について使用する商標として需要者の間で広く認識され、その周知性が継続しているといえることは、上記(1)イで述べたとおりである。

イ 請求人は、震災後から本願商標の登録出願前の間の証拠は、そのほとんどが被災者の復興のために設置された仮設商店街で「南三陸キラキラ丼」が復活したという紹介記事や報道であって、引用商標2の周知性について、量的に認識、推測することができるものではなく、また、震災後の復活「南三陸キラキラ丼」キャンペーンがスタートしてから本願商標の登録出願時までの間に、引用商標2の使用期間があまりに短いことから、需要者の間に広くその認識が浸透するための時間が充分ではなく、その時間的不足を克服するような積極的な宣伝広告が行われたという証拠も存在しないから、これらの証拠によって、引用商標2が需要者の間で広く認識されている事実を立証できるものではない旨主張する。

しかしながら、提供店の団体による引用商標2を使用した引用役務の提供は、上記アのとおり、震災前からの事業をも考慮すべきであることに加えて、該地域が震災により壊滅的な被害を受けたことは全国的に知られており、震災からの復興に全国的に関心が高まっていた本願商標の登録出願前後において、引用商標2を使用した引用役務が復活し、そのことが南三陸町地域の復興の目玉として仮設商店街のチラシ、提供店一覧のパンフレット、観光協会や仮設商店街の各公式ホームページ等に掲載されて宣伝されて、複数回にわたり新聞、雑誌、ガイドブック等に掲載されたこと、平成24年に年間約10万人が仮設商店街を訪れたこと、賞を受賞したこと、並びに関西及び中国地方での物産展のチラシに掲載されたこと等の事実は、引用商標2の周知性を判断する上で重要な証拠に値するものとみて差し支えないといえる。

ウ 請求人は、本願と同一の商標が、第30類の商品を指定商品として、引用商標2を総称とする引用役務の提供を行う別の当事者により登録されていることから(商標登録第5579047号)、本願も登録されるべきである旨を主張する。

しかしながら、本願商標と該登録例は、指定商品及び指定役務において相違し事案を異にするものであるから、同一に論ずることは適切ではなく、また、そもそも商標法第4条第1項第10号に係る判断は、当該商標の出願時及び査定時又は審決時において、その商標が使用される商品又は役務の取引の実情等を考慮し、本件の事案に即して本願商標と引用商標とを対比することにより、個別具体的に判断されるべきものであって、過去の登録例等の判断に拘束されるものではない。

エ よって、請求人のいずれの主張も採用することはできない。

(6)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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