Trademark Appeal Case
公序良俗と歴史人物名
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−18595(T2015−18595/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「謙信餅」の漢字を標準文字で表してなり、第30類「餅」を指定商品として、平成27年1月7日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『謙信餅』の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中『餅』の文字は、本願の指定商品を指称するにすぎないものであり、『謙信』の文字は、戦国時代に活躍した武将として著名な歴史上の人物である『上杉謙信』を容易に理解させるものである。そして、上杉謙信とゆかりの深い新潟県上越市で、地域興しや観光事業に、その名が使用されている実情がある。そうすると、上杉謙信との関係が認められない出願人が、本願商標を商標として独占して使用することは、上杉謙信に対する国民、上越市の地域住民の心情を害するおそれがあるほか、上越市での地域興しや観光事業の活動を阻害するおそれもあるため、穏当ではなく、本願商標は、公正な競業秩序を害するおそれがあって、社会公共の利益に反するおそれがあるものである。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は、前記1のとおり「謙信餅」の文字を書してなるところ、その構成中「餅」の文字は本願の指定商品を表すものであるから、商品の出所識別標識としての機能を有しないものと認められる。
そうすると、本願商標は、その構成中の「謙信」の文字部分が、独立して商品の出所識別標識として機能し得るものといえる。
(2)「謙信」の文字について
「謙信」の文字は、戦国時代に越後(旧国名。今の新潟県の大部分。)を領した武将として書籍やテレビ番組、ドラマ等でも取り上げられている著名な歴史上の人物である「上杉謙信」(以下「謙信」という。)を容易に想起させるものである(別掲1)。
そして、謙信とゆかりの深い地、例えば新潟県の上越市等では、以下の事実がある。
<新潟県上越市>
ア 謙信の武勇と遺徳をたたえる「謙信公祭」が大正15年から現在に至るまで90回開催されていること(別掲2(1))。
イ 春日山城跡を始め市内各所に謙信の像が複数建立されていること(別掲2(2)及び(3))。
ウ 謙信を祭神とする神社(「春日山神社」)があること(別掲2(4))。
エ 上越市産業振興課に事務局を置く「越後・謙信SAKEまつり実行委員会」が、「越後・謙信SAKE祭り」の名の下、上越地域の酒づくり文化を紹介するイベントを主催していること(別掲2(5))。
オ 公益社団法人上越観光コンベンション協会と上越商工会議所が、「謙信公・聖地(フィールドミュージアム)構想」の名の下、「春日山城跡を活かした観光振興方策の構想」を策定し、また、該構想の具体的な行動計画に、「観光客の滞在に必要となる食事や買い物で提供する物産品・食の開発を謙信公と関連づけて実施する。」との記載があり、商品のネーミングにも極力謙信の名を取り入れるとして、その一例に「けんしん米」を挙げていること。さらに、「謙信」ネーミングを既に活用している施設・商品を把握し、一定の品質に達しているものについては情報発信を行うとの趣旨の記載があること(別掲2(6)、(7))。
カ 上越市教育委員会が、「謙信Kids(キッズ)スクールプロジェクト海と山と大地の楽校」の名の下、上越市の自然や歴史、文化などの特色を活かした市内の小学生のための体験活動プログラムを開催していること(別掲2(8))。
キ 上越市が「謙信公アカデミー条例」の下、上越地域出身の学生向けの「上越学生寮奨学基金」を設置したこと(別掲2(9))。
<新潟県長岡市>
ク 長岡市で、謙信の遺徳を偲ぶ「とちお謙信公祭り」が開催されていること(別掲2(10))
<山形県米沢市>
ケ 米沢市で、米沢の礎を築いた上杉家と初代当主の謙信を敬う「米沢上杉まつり」が開催されていること(別掲2(11)。
コ 米沢市の謙信を祭神とする上杉神社には、季節を問わず多くの市民が訪れていること(別掲2(12))。
以上からすると、上杉謙信は、戦国時代の武将として広く一般に知られ、そのゆかりの地等において、今なお多くの人から敬愛の念をもって親しまれ、市や商工会議所などが行う公共性を有する各種施策や取組に、その名称である「謙信」の文字が活用されているものである。
また、地元にゆかりのある商品や謙信にゆかりのある商品の商品名や宣伝にも「謙信」の文字(名称)が活用されているといえる以下の事実がある。
<新潟県上越市>
サ 公益社団法人上越観光コンベンション協会が、「上杉謙信公を冠とした食の展開」として「謙信飯」の名の下、謙信にちなんだ食である「謙信公のかちどき飯」、「謙信公義のふるまい」、「謙信勝負飯」、「謙信公義の塩 ホワイト焼きそば」を紹介し、上越市内においてこれらを提供する店舗情報を提供していること(別掲3(1))。
シ 地元産の笹を使用した団子「謙信笹だんご」や、謙信にちなんだ酒「上杉謙信公 花水・出陣乃酒」など、地元や謙信ゆかりの商品の商品名や宣伝に謙信の名が活用されていること(別掲3(2)〜(4))。
<山形県米沢市>
ス 米沢市の推薦するせんべいが「謙信せんべい」の商品名で販売されていること(別掲3(5))。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「謙信餅」の文字からなるところ、その構成中、独立して出所識別標識としての機能を果たし得る「謙信」の文字は、我が国において広く知られている歴史上の人物名であって、ゆかりの地においては今なお多くの人から敬愛の念をもって親しまれている。
そして、「謙信」に関連する祭りが開催され、また、「謙信」の文字(名称)は、市や商工会議所などが行う公共性を有する各種施策、地域振興、観光振興のほか、各種の商品又は役務の提供等に、広く活用されていることが認められる。
上記実情を総合して検討すれば、「謙信」の文字を含む本願商標を、請求人の商標として登録することは、「謙信」の文字(名称)を活用した公共性を有する各種施策、地域振興、観光振興等の遂行を阻害するおそれがあり、ゆかりの地における各種の商品や役務等を取り扱う多数の事業者等の円滑な商取引を阻害し、ひいては社会公共の利益の妨げになるおそれがあるものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)請求人の主張について
請求人は、自身は上杉謙信との関係はないが、上越市住民として長年事業を営み、本願の指定商品「餅」の原材料となる「米」を毎年生産している者であり、本願商標を付した「地産米」を使用した「餅」が市の祭り、観光名所で販売されることにより、上越市の地域興しや観光事業の活動に協力、寄与するものと思い本願を登録出願しており、歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗する思いはない旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、謙信ゆかりの地等において、「謙信」の文字(名称)を活用して、公共性を有する各種施策、地域振興、観光振興や商取引等が行われるものであることに鑑みれば、「謙信」の文字を有する本願商標を独占権として登録することは、社会公共の利益の妨げになるおそれがあるといわざるを得ないものであるから、請求人の主張を採用することはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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