Trademark Appeal Case
「お好み」と料理名の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−19847(T2015−19847/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「お好み焼肉」の文字を標準文字で表してなり,第43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成26年7月14日に商標登録出願されたものである。その後,その指定役務については,平成27年4月27日付けの手続補正書において,第43類「お好み焼き及び焼肉料理を主とする飲食物の提供」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は,「本願商標は,『好むこと。』等を意味する『好み』の語に『丁寧の気持ちを表す』ときに使用する『お』の語を付した『お好み』の文字と『牛・豚などの肉をあぶって焼いたもの。』を意味する『焼肉』の文字からなり,いずれもよく親しまれている語であることから,本願商標をその指定役務に使用した場合には,これに接する取引者・需要者は,『各自が好みに合わせて肉を焼いて食べる料理』を直ちに認識するものである。したがって,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し,前記以外の役務に使用するときは,役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
3 当審における審尋
当審において,平成28年6月17日付けで,別掲1及び2の事実を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものである旨の審尋を発し,期間を指定して,請求人に意見を述べる機会を与えた。
4 審尋に対する請求人の回答(要旨)
前記3の審尋に対し,請求人は,平成28年8月1日付けの回答書において,要旨以下のように述べた。
(1)本願商標は,その構成が同書・同大・等間隔でまとまりよく表されていることに加え,「お好み焼」の文字は,「焼肉」と同様,一般に親しまれた料理を表し,「肉」の文字も,料理の材料の一つを表す普通名称的な語である。さらに,本願の指定役務「お好み焼き及び焼肉を主とする飲食物の提供」の分野では,「お好み」よりも「お好み焼」の方が明らかに使用頻度が多いから,本願商標は,「お好み」と「焼肉」よりも,「お好み焼」と「肉」の構成からなると捉えられる可能性が高いことは明らかである。よって,本願商標に接する需要者,取引者は,本願商標をあえて「お好み」と「焼肉」の文字とを分離して認識することはなく,むしろ,特定の観念を生じない造語としてのみ認識されるとするのが妥当である。
(2)審尋は,本願の指定役務以外の飲食物の提供の分野における「お好み」の使用状況をも勘案し,さらに,本願の指定役務の分野での「お好み焼肉」の使用例はわずか3件ほどであり,この非常に少ない使用例をもって,本願商標が「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程度の意味合いを理解させるものであるとの判断は短絡的である。
(3)仮に本願商標が「お好み」と「焼肉」に分離されるとしても,「客の好み」とは,個々の需要者によって様々であって,「客の好みにあった焼肉」という意味合いは極めて抽象的であるばかりか,この意味合いから本願の指定役務との関係で「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程の観念が直接的に理解されることはなく,したがって本願商標が本願指定役務の具体的な質を表すものとは到底考えられない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,「お好み焼肉」の文字を標準文字で表してなるものである。
ところで,飲食物の提供を取り扱う業界において,「お好み」の文字は,「お好みで料理が選べる」「お好みの味付けが選べる」などのように,「客の好み」程の意味合いを表すものとして普通に使用されていることが認められる(別掲1)。また,「焼肉」の文字は,一般に親しまれた料理を表すものである。
さらに,飲食物の提供を取り扱う店舗の紹介やメニューの表示において,「客の好み」程の意味を理解させる「お好み」の文字と料理名等を表す文字とを組み合わせて,例えば,「お好み焼鳥盛り合わせ」について「お好きな串5本」,「お好み鍋」について「すっぽん,ふぐ,しゃぶしゃぶ,たらちりなど,お客様のご希望でおつくりします。」のように表示して使用することも行われている(別掲2)。
また,「焼肉」を主に提供する分野においても,「お好み」の肉が選べることを宣伝・広告している実情のもとに(別掲1(9)ないし(12)),「お好み焼肉」の表示が,例えば,「お好み焼肉定食 焼肉メニューの中からお好みのお肉をお選び頂き,プラス¥250でライス,スープ,小鉢がついた定食にできます。」のように使用されていることが認められる(別掲2(14),(15))。
以上のことから,「お好み」の文字と料理名を組み合わせた「お好み○○」(「○○」は料理名,以下同じ。)の構成文字全体が,いくつかの選択肢の中から好みのものを選択できる料理を表示するものとして広く使用されていることが認められるところ,「焼肉料理の提供」の分野においても,「お好み」の文字と「焼肉」の文字とを組み合わせて,「お好み焼肉」の文字が「好みの種類の肉を選択できる焼肉料理」程の意味合いを表すものとして使用されているといえる。
そして,本願の指定役務は,「焼肉料理の提供」も行われるものである。
そうすると,「お好み焼肉」の文字からなる本願商標は,これに接する需要者,取引者が,「お好み」の文字と「焼肉」の文字とを結合したものとして認識するものであって,全体として「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程の意味合いを理解するものというのが相当であり,本願商標をその指定役務に使用しても,「好みの種類の肉を選択できる焼肉料理の提供」を理解させるにとどまり,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって,本願商標は,その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわざるを得ないから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,本願商標はまとまりよく表されている構成であることに加え,「お好み焼」の文字は「焼肉」と同様に料理を表し,「肉」の文字も普通名称であること,本願商標の指定役務の分野において,「お好み」よりも「お好み焼」が使用頻度が多いことを挙げて,本願商標は,「お好み焼」と「肉」の構成からなると捉えられる可能性が高いから,本願商標に接する需要者,取引者は,本願商標をあえて「お好み」と「焼肉」の文字とを分離して認識することはないものであり,本願商標は,一体的な商標として,特定の観念を生じない造語としてのみ認識される旨主張する。
しかしながら,本願商標の構成中に「お好み焼」の文字を有するとしても,上記(1)で述べたとおり,本願の指定役務を含む飲食物を取り扱う業界における,「お好み」の文字及び「お好み」の文字と料理名を組み合わせた「お好み○○」の文字の使用の実情を踏まえると,本願商標に接する需要者,取引者が,本願商標の構成について,「お好み」の文字と「焼肉」の文字を結合したものとして理解するとみるのが自然である。
そして,本願商標に接する需要者,取引者が,その構成中の「お好み焼」の文字に着目する場合があることにより,上記実情及び本願商標が出所識別標識としての機能を果たし得ない商標として判断されることが否定されるものではない。
イ 請求人は,仮に本願商標が「お好み」と「焼肉」に分離されるとしても,「客の好み」とは,個々の需要者によって様々であって,「客の好みにあった焼肉」という意味合いは極めて抽象的であるばかりか,この意味合いから本願の指定役務との関係において「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程の観念が直接的に理解されないから,本願商標が,その指定役務の具体的な質を表すものとは考えられない旨主張する。
しかしながら,本願の指定役務が含まれる飲食物の提供において,客の好みに応じることができる場合に,「お好みで」「お好み○○」等と表示し使用されている事実により,需要者,取引者は,(料理の)選択肢があるという役務の質を理解するといえるものであり,本願商標は,需要者等が,役務の内容を表示したものと一般に認識するものというべきである。
そして,既に述べたとおり,本願商標は,その指定役務に使用しても,役務の質を記述した表示であって,自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。
ウ 請求人は,審尋は,本願の指定役務以外の飲食物の提供の分野における「お好み」の使用状況をも勘案し,さらに,本願の指定役務の分野での「お好み焼肉」の非常に少ない使用例により,本願商標が「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程度の意味合いを理解させると判断したことは短絡的である旨主張する。
しかしながら,飲食物の提供において,「お好み」の文字は,役務の質を表すものとして一般に使用され認識されていることが認められるものであり,このことは,需要者及び提供を受ける目的において共通性を有する本願の指定役務においても,同様に認識されるというべきである。
そして,商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号の役務の質の表示に該当するというためには,取引者,需要者が役務の質を表示するものと認識するものであれば足りるのであって,実際に役務の質を表示するものとして使用されていることまでは必ずしも必要でないと解すべきであって,「お好み焼肉」の使用例が少ないとしても,本願商標は,取引者,需要者に「好みの種類の肉を選択できる焼肉」程の意味合いを認識させるものであることは,上記(1)で述べたとおりであり,本願の指定役務の質を表示するものに該当するというべきである。
エ したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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