Trademark Appeal Case
地域ブランドと出所混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2014−24027(T2014−24027/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「加賀野菜ものがたり」の文字を標準文字で表してなり、第30類「加賀野菜を使用した菓子,加賀野菜を使用したパン」を指定商品として、平成26年2月7日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同年8月5日付け手続補正書により、第30類「金沢市産の野菜を使用した菓子,金沢市産の野菜を使用したパン」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成中に、金沢市農業協同組合が商品『金沢市産のさつまいも,金沢市産のれんこん,金沢市産のたけのこ,金沢市産の太きゅうり,金沢市産のスイゼンジナ,金沢市産のだいこん,金沢市産のかぼちゃ』について使用した結果、取引者、需要者間において広く認識されている商標『加賀野菜』(地域団体商標:商標登録第5078472号)の文字を有してなるから、出願人が本願商標をその指定商品に使用するときは、その商品があたかも金沢市農業協同組合又は同組合と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 地域団体商標(商標登録第5078472号)
登録第5078472号商標(以下「地域団体商標」という。)は、「加賀野菜」の文字を標準文字で表してなり、平成18年4月3日に登録出願、第31類「金沢市産のさつまいも,金沢市産のれんこん,金沢市産のたけのこ,金沢市産の太きゅうり,金沢市産のスイゼンジナ,金沢市産のだいこん,金沢市産のかぼちゃ」を指定商品とする地域団体商標として、同19年9月21日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、その権利者は、石川県金沢市松寺町未59番地1所在の金沢市農業協同組合(以下「JA金沢市」という場合がある。)であり、通常使用権者は、石川県金沢市入江1丁目1番地所在の金沢中央農業協同組合である。
4 当審における手続の経緯
当審において、請求人に対し、平成28年4月28日付けで、別掲1ないし別掲3の事実を示した上で、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとして審尋をし、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。
5 審尋に対する請求人の回答
請求人は、上記4の審尋に対して、要旨次のように回答している。
(1)JAの多角化経営の可能性について
地域団体商標の権利者であるJA金沢市は、農業者(農民又は農業を営む法人)によって組織された農業協同組合法に基づく法人であり、民間企業とは異なり事業内容などが法律によって制限・規定されていることから多角化経営の可能性はない。JAの加入者は大半が米作農家であり農家の共済事業を中心とする組合であることは一般の需要者も同様の認識であり、本願商標をJA金沢市又はJA金沢市と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し出所について混同するというおそれはない。
(2)指定商品の関連性等について
本願商標と地域団体商標の指定商品とは、加工品と原材料という関連性を有しているが、本願の指定商品の分野においては、需要者が原材料の生産者や生産地よりも加工者に着目して商品を購入する傾向があるから、指定商品「菓子、パン」等の加工品において「加賀野菜」を含む商標を使用する場合は加工者の出所が重要となる。JA金沢市においては、農業者の作った「野菜」のみの消費拡大を追求している実情があり、各加工者は各自の商品として消費拡大の努力をしていることから、需要者は、JA金沢市が加工者であるとは考えることはなく、本願商標と地域団体商標の指定商品について出所混同は生じない。
(3)地域ブランドの原材料表示について
地域ブランドの中には野菜以外にも農産物や畜産物も多く、その物自体が取引される場合のほか、原材料ないし素材として用いられており、この場合原材料を表示しているに過ぎない商標を排除することは、本来の目的であるブランド力の向上、生産振興や消費拡大に反する。
6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「加賀野菜」の文字の周知性について
(ア)JA金沢市は、農業団体、流通業界、消費者、生産者、行政等と一体となって「金沢市農産物ブランド協会」(以下「JA金沢市」と「金沢市農産物ブランド協会」を併せて「JA金沢市等」という場合がある。)を運営しているものである。そして、JA金沢市等は、同協会が発足した1997年(平成9年)から地元の伝統野菜を「加賀野菜」として統一ブランド化し、その際「加賀野菜」を「昭和20年以前から栽培され、現在も主として金沢で栽培されている野菜」と定義し、「加賀野菜」の文字を使用した野菜の生産振興や消費拡大、ブランド力の向上に努めている(別掲1(1)ア、(2)ア、ウ、(3)ア、エ、(4)ア、ウ)。
(イ)JA金沢市等は、「加賀れんこん」、「源助だいこん」、「さつまいも」、「金沢一本太ねぎ」、「せり」、「二塚からしな」、「くわい」、「たけのこ」、「加賀太きゅうり」、「金沢春菊」、「金時草(※合議体注:『スイゼンジナ(水前寺菜)』)」、「打木赤皮甘栗かぼちゃ」、「ヘタ紫なす」、「加賀つるまめ」、「赤ずいき」の15品目(以下「認定野菜」という。)を「加賀野菜」に認定している(別掲1(2)イ)。
以下、この認定野菜に使用する「加賀野菜」の文字を、「引用商標」という。
(ウ)認定野菜の生産振興や消費拡大、ブランド力の向上のための取組の一環として、JA金沢市は、「加賀野菜」を標準文字で表した商標について、認定野菜のうち「金沢市産のさつまいも,金沢市産のれんこん,金沢市産のたけのこ,金沢市産の太きゅうり,金沢市産のスイゼンジナ,金沢市産のだいこん,金沢市産のかぼちゃ」を指定商品とする地域団体商標(商標登録第5078472号)として、平成19年9月21日に設定登録を受けた(前記3)。
(エ)JA金沢市等は、認定野菜の出荷用段ボールや小売店における認定野菜への「加賀野菜」の文字を表示したブランドシールの貼付、「加賀野菜」のイメージキャラクターを用いたPR活動、認定野菜を取り扱う小売店における「加賀野菜」の文字を表示したのれんやのぼり旗の掲揚(別掲1(1)エ、(2)エ、オ、(3)ア、ウ)、認定野菜の販売店と料理店を登録する「加賀野菜取扱店登録制度」の設置(別掲1(2)カ、(4)ク)、「『加賀野菜』の料理教室」や収穫体験等のイベントの開催(別掲1(1)ウ、(4)オ)、ウェブサイトを利用したこれらの活動等に関する情報発信など(別掲1(1)〜(3))、「加賀野菜」の文字を地域団体商標として権利取得した後も、認定野菜の需要拡大とブランド力の向上を図っている。
加えて、伝統野菜のブランド化の先例としての「加賀野菜」のブランド化や(別掲1(4)エ、カ、キ、ケ)、出荷情報等の認定野菜に関するニュースが、新聞やウェブサイトで取り上げられている(別掲1(3)エ、(4)イ)。
(オ)以上によれば、引用商標は、本願商標の登録出願時において、JA金沢市等の業務にかかる認定野菜に使用する商標として、我が国の取引者、需要者間に広く認識され、その周知性は、現在においても継続しているものと認められる。
イ 本願商標と引用商標との類否について
本願商標は、「加賀野菜ものがたり」の文字を表してなるところ、その構成中、後半の「ものがたり」の平仮名は、「話し語ること。また、その内容。」の意味を有する一般に親しまれた「物語」の語の読みである。
これに対し、前半の「加賀野菜」の文字部分は、上記アのとおり,JA金沢市等がその業務にかかる認定野菜に使用する商標として我が国の取引者、需要者間に広く認識されているものであるから、本願商標のかかる構成においては、その構成中、該文字部分が着目され、独立して出所識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
そうすると、本願商標は、その構成中「加賀野菜」の文字部分から「カガヤサイ」の称呼を生じ、「(JA金沢市等の業務にかかる認定野菜としての)加賀野菜」の観念を生じるものである。
他方、引用商標は、「加賀野菜」の文字からなるものであるから、構成文字に相応して「カガヤサイ」の称呼を生じ、上記と同様の理由により、「(JA金沢市等の業務にかかる認定野菜としての)加賀野菜」の観念を生じるものである。
以上からすると、本願商標と引用商標とは、外観において「ものがたり」の文字の有無という差異を有するものの、本願商標の要部である「加賀野菜」と引用商標とは、同一の文字構成からなるものであるから、近似した印象を与え、「カガヤサイ」の称呼及び「(JA金沢市等の業務にかかる認定野菜としての)加賀野菜」の観念を共通にする類似の商標というべきである。
ウ 出所混同のおそれについて
上記アのとおり、引用商標は、本願商標の登録出願時ないし現在において、JA金沢市等がその業務にかかる認定野菜に使用する商標として、我が国の取引者、需要者間に広く認識されているものである。
また、上記イのとおり、本願商標と引用商標とは、類似の商標というべきである。
さらに、本願商標の指定商品は「金沢市産の野菜を使用した菓子,金沢市産の野菜を使用したパン」であるから、これらは金沢市産の野菜を使用した加工品であり、その金沢市産の野菜にはJA金沢市等の業務に係る認定野菜を含むこと明らかである。
また、JA金沢市等のウェブサイト及び新聞記事情報によれば、JA金沢市等は、認定野菜そのもののほか、これを使用した茶や菓子、総菜、そば麺などの加工品を企業等と共同で開発したり、商品化したりしている事実がある(別掲3(1)ウ、(2)ア)。
そして、上記の認定野菜を使用した加工品のパッケージに「加賀野菜」の文字が表示されていたり、JA金沢市等が認定野菜を使用した加工品と認証した商品のパッケージなどに「加賀野菜加工品認証マーク」の表示がされているなど(別掲3(1)ア、イ、ウ)、JA金沢市等の業務にかかる認定野菜を使用した商品に、「加賀野菜」の文字が使用されている。
以上からすると、本願商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、「加賀野菜」の文字に着目し、該文字部分をJA金沢市等がその業務に係る認定野菜に使用する商標と理解し、その商品をJA金沢市等又は同人と何らかの関係を有する者を出所とする加工品と認識して、JA金沢市等又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、金沢市農業協同組合(JA)は、農業協同組合法に基づく法人であり、民間企業とは異なり事業内容などが法律によって制限・規定されていることから、多角化経営の可能性はない旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品は「金沢市産の野菜を使用した菓子,金沢市産の野菜を使用したパン」であるところ、各地のJAが農産物を使用した加工品(例えば「菓子」)を取り扱っていたり、JAと企業等とのコラボレーションによる農産物の加工品が製造、販売されていたりという事実が存在し(別掲2(1)ア、(2)オ、別掲4)、JA金沢市においても、農産物を使用した茶や菓子、惣菜、そば麺などの加工品を企業等と共同で開発したり、販売したりしている事実が存在する(別掲3(1)ウ、(2)ア)。
イ 請求人は、地域ブランドの中には野菜以外にも農産物や畜産物も多く、その物自体が取引される場合のほか、原材料ないし素材として用いられることがあり、この場合、原材料を表示しているに過ぎない商標を排除することは、本来の目的であるブランド力の向上、生産振興や消費拡大に反する旨主張する。
しかしながら、「野菜」が多くの加工品の原材料又は素材として用いられることがあるとしても、前記(1)アのとおり、「加賀野菜」の文字がJA金沢市等の業務にかかる認定野菜に使用される商標として、我が国の取引者、需要者間に広く認識されているような現状においては、該文字は、単に商品の原材料を表示しているにすぎないものと認識されるというよりは、むしろ、商標としての「加賀野菜」と理解され、その出所であるJA金沢市等やその取扱いに係る商品を連想、想起させるものというのが相当である。
そして、本件は「加賀野菜」の文字を含む本願商標が、商品「金沢市産の野菜を使用した菓子,金沢市産の野菜を使用したパン」について使用された場合、取引者、需要者に、JA金沢市等との間において、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると判断したものであるから、「地域ブランドのブランド力の向上、生産振興や消費拡大に反する」旨の請求人の主張は、本願商標の商標法第4条第1項第15号該当性の判断に影響をおよぼすものではない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。