Trademark Appeal Case
周知事業との混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−10627(T2015−10627/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「リニア特急」の文字を標準文字で表してなり,第14類,第16類,第18類,第24類,第25類,第28類,第30類,第32類及び第33類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成26年2月28日に登録出願され,その後,指定商品については,審判請求と同時に提出された同27年6月4日受付の手続補正書により,第16類「文房具類,印刷物,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,写真,写真たて,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標の構成中,「リニア」の文字が「リニア鉄道(線)」等の意味を,「特急」の文字が「特別急行の略。」等の意味を有することから,本願商標全体として「リニア鉄道特別急行」程度の意味合いを容易に認識させる。
また,「リニア中央新幹線」を,単に「リニア」と略称していることからすれば,「リニア特急」は,「リニア中央新幹線の特急」であること,すなわち「リニア中央新幹線」を指称しているものと認められる。
そして,「リニア中央新幹線」は,東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)が2027年開業予定の「超伝導リニアによる中央新幹線による輸送」に使用するものとして広く知られている。
そうすると,本願商標をその指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者が,広く知られている「リニア中央新幹線」を想起・連想し,その商品が,あたかもJR東海又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく誤認し,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 当審における証拠調べ
本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,意見を申し立てる機会を与えるべく,相当の期間を指定して,平成28年7月4日付けで証拠調べの結果を通知したところ,請求人は,同年8月20日に意見書を提出した。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要点)
(1)「超電導リニアによる中央新幹線」が「リニア中央新幹線」と称されている事実として証拠調べ通知で挙げられた根拠は,JR東海と直接関係のない第三者が使用しているという事実のみであるから,拒絶査定における「「リニア中央新幹線」は,JR東海が2027年開業予定の「超伝導リニアによる中央新幹線のよる輸送」に使用するものとして広く知られているものです。」との記載は誤りである。
(2)証拠調べ通知で挙げられた鉄道関連グッズは,車両のイラストや型番等,特定の車両が表示されているものがほとんどであるのに対し,「リニア特急」の文字は,具体的な車両や鉄道に関連する特定の物品を示すとはいえないので,鉄道関連グッズに,このような名称が採用される可能性は極めて低い。
(3)たとえ「新幹線」は路線名のみならず「新幹線を走る列車」の意味があるとしても,拒絶査定の記載における「リニア中央新幹線」は路線を意味していることは明らかであるから,「リニア中央新幹線の特急」,「リニア中央新幹線のエクスプレス」が「リニア中央新幹線」を指称するとの見解には合理性はなく,誤りである。また,将来中央新幹線に特急と言い得る列車が走るか否かという点は不明であるといわざるを得ないのであるから,あたかもリニア中央新幹線に特急が存在するであることとが前提となっている拒絶査定の記載には根拠がない。なお,「新幹線」が路線のみならず列車として認識されているとしても,新幹線を走る列車を総称しているのみで「ひかり」「のぞみ」等具体的な列車名を意味するものではない。一方で,現行新幹線では「ひかり」「のぞみ」等個別の列車に対して「スーパーエクスプレス」と表現され,新幹線を走る総称としての列車を「スーパーエクスプレス」即ち「超特急」と表現することはない。
(4)「リニア中央新幹線」の語が「リニア」と表記されるとしても,文脈によって「リニア」と省略されることがあることを示しているに過ぎない。また,「リニア中央新幹線」「リニア新幹線」「超伝導リニア」「山梨リニア実験線」と,対象を特定できる「中央」「新幹線」「超伝導」「山梨」「実験線」といった言葉と組み合わされて使用されている事実からすれば,「リニア」の語のみでは直ちに「リニア中央新幹線」を示すことができないと推認される。
5 当審の判断
(1)認定事実
上記3の証拠調べ通知(別掲)によれば,以下の事実が認められる。
ア JR東海が「超電導リニアによる中央新幹線」を計画,実験,建設,宣伝等している事実
(ア)1990年(平成2年)6月の運輸大臣通達等に基づき,JR東海は,超伝導リニア技術を開発するとともに,山梨リニア実験線を建設して走行試験に取り組んだ。その後,2013年(平成25年)8月に,営業仕様の車両L0系による走行試験を行った。
(イ)2011年(平成23年)5月,国土交通大臣により,建設コストが総額9兆円を超える整備計画が決定され,超伝導リニアによる中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業・建設主体としてJR東海が指名された。
(ウ)2014年(平成26年)10月の国土交通大臣による中央新幹線品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可後,JR東海は,沿線各地において様々な説明会を開催した。
(エ)JR東海は,2014年度(平成26年度)においても引き続き「超伝導リニア体験乗車」を実施し,その体験者は累計3万人を超えた。
(オ)JR東海は,自身の運営する「リニア・鉄道館」において,超伝導リニア技術を使った車両を展示・宣伝している。
イ 「超電導リニアによる中央新幹線」が「リニア中央新幹線」と称されている事実
(ア)事典,新聞,雑誌などの記載からすれば,「リニア中央新幹線」とは,全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画路線構想で,時速500キロメートルで走行する高速・安全かつ低公害の超伝導磁気浮上式鉄道(超伝導リニア)により,東京−名古屋−大阪間を約1時間で結ぶプロジェクトであって,国土交通省の審議会答申に基づき,国土交通相が,2011年(平成23年)5月,JR東海にゴーサインを出し,2027年度(平成39年度)東京−名古屋,2045年度(平成57年度)大阪までの開業を目指しているものといえる。
(イ)新聞,雑誌等のマスメディアにおいて,遅くとも2001年(平成13年)10月以降,JR東海が推進する「超伝導リニアによる中央新幹線」プロジェクトが「リニア中央新幹線」と称され,同プロジェクトの概要(「リニアモーターカーの一種で,正式には「超伝導磁気浮上式鉄道」という名前です。」等)及びJR東海による様々な活動が繰り返し報道されている。また,「リニア中央新幹線」は「夢の超特急」とも称されている。
(ウ)東京都,神奈川県,山梨県,長野県,岐阜県,愛知県,三重県,奈良県及び大阪府の各知事を構成員とする「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」は,1979年(昭和54年)11月7日に「中央新幹線建設促進期成同盟会」として発足し(2009年(平成21年)に現在の名称に変更),JR東海が推進する「超伝導リニアによる中央新幹線」を「リニア中央新幹線」と称し,国家的プロジェクトと位置付け,その早期実現を目指して,広報啓発,調査,要望活動などに積極的に取り組んでいる。
(エ)東京・大阪間の沿線経済団体により,1990年から「東京・大阪間沿線経済団体リニア中央新幹線早期建設促進大会」が毎年開催され,1995年には「リニア中央新幹線建設促進経済団体連合会」が発足し,リニア中央新幹線の早期実現に向け活動が進められている。
ウ 駅構内等において本願商標の指定商品を含む鉄道関連グッズが販売されている事実
駅構内やウェブサイトにおいて,鉄道関連グッズとして「新幹線」や「特急」等の文字が付された文房具等が販売されている。
エ 本願商標の指定商品とJR東海の連結子会社の事業とが関連する事実
(ア)JR東海の連結子会社には,2013年度末現在及び2015年度末現在で,小売業等を営む会社が含まれており,かつ,その子会社中の日本車輌製造株式会社が運営する鉄道グッズの企画・製作・販売チーム「日車夢工房」を通じて,JR東海が運営するリニア・鉄道館において,2011年3月から,「新幹線」や「SHINKANSEN SUPER EXPRESS」等を冠した文房具等の商品が販売されている。
(イ)JR東海が運営するリニア・鉄道館のミュージアムショップにおいて,文具・雑貨など様々な鉄道関連グッズや玩具,お土産菓子が販売されている。
オ 「新幹線」が路線のみならず列車として認識されている事実
「新幹線」は,主要都市間を高速で結ぶJRの鉄道のみならず列車の名称としても広く一般に親しまれている。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「リニア中央新幹線」の周知著名性について
「リニア中央新幹線」については,上記(1)ア及びイにおいて認定した事実によれば,JR東海が推進する「超伝導リニアによる中央新幹線」プロジェクトの略称・通称として,たとえJR東海自身が「リニア中央新幹線」の文字を使用していないとしても,我が国の取引者,需要者の間において,本願商標の登録出願日(平成26年2月28日)には,相当程度広く認識され,その周知性は,本願商標の審決日においても継続しているものということができる。
イ 本願商標と「リニア中央新幹線」の類似性の程度
本願商標は,前記1のとおり,「リニア特急」の文字を標準文字で表してなるところ,当該構成文字中の片仮名と漢字の文字種の相違から,本願商標は「リニア」の文字と「特急」の文字からなると容易に認識されるものである。
そして,「リニア」の文字は,「『直線の,線状の』の意味で複合語をつくる。『リニアモーターカー』ほか。」(コンサイスカタカナ語辞典第4版)の意味を,また,「特急」の文字は,「特別急行の略」であって「普通の急行よりも速く,停車数の少ない列車」(広辞苑第6版)の意味を有する言葉である。
そうすると,本願商標全体として,「リニア(モーター)による特別急行列車」ほどの意味合いを生じるものというのが相当である。
他方,「リニア中央新幹線」は,その構成中,本願商標と「リニア」の文字部分を共通にする一方,「新幹線」の文字部分は,上記(1)オで認定したとおり,「主要都市間を高速で結ぶJRの列車」を意味するものであり,また,上記(1)イ(イ)で認定したとおり,「リニア中央新幹線」が「夢の超特急」と称されていることも併せ考慮すれば,本願商標構成中の「特急」の有する意味と実質的な違いはないといえる。
してみれば,上記アのとおり,「リニア中央新幹線」の文字が,我が国の取引者,需要者の間において周知であること及び我が国におけるリニア(モーター)による新幹線の事業が「リニア中央新幹線」のみであることを考慮すれば,本願商標と「リニア中央新幹線」とは,外観において差異を有するとしても,語頭の「リニア」の文字の綴りを同じくし,また,「リニア」の文字部分の有する意味が共通し,かつ,「特急」の文字部分及び「新幹線」の文字部分の意味も近似するものであるから,これら要素が取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,両者は,類似性の程度が高いというべきである。
ウ 商品の関連性及び取引者,需要者の共通性について
本願商標の指定商品は,日用品あるいは生活雑貨であるところ,当該商品を購入する最終消費者は,一般的な消費者であるといえる一方,JR東海が,現在及び「リニア中央新幹線」により将来提供する,鉄道による輸送の役務の需要者も,一般的な消費者であるといえるから,その需要者も共通であるということができる。
また,上記(1)ウ及びエにおいて認定したとおり,駅構内やウェブサイトにおいて鉄道関連グッズとして文房具等が販売されていること,並びに,JR東海の連結子会社には小売業を営む会社が含まれており,その中には,文房具を含めた鉄道グッズを企画・製作・販売する会社も存在することからすれば,本願商標の指定商品中,特に「文房具類」については,JR東海のグループ企業の業務に係る商品と,取引者,需要者を共通にし,かつ,商品同士の関連性も相当に高いものというべきある。
エ 出所の混同のおそれについて
本願商標の指定商品の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として,以上のアからウを総合的に判断するならば,本願商標を請求人がその指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者が,周知著名性を有する「リニア中央新幹線」を想起,連想し,その商品が,あたかもJR東海又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は,(ア)証拠調べ通知によれば,「リニア中央新幹線」はJR東海と直接関係のない第三者が使用していること,(イ)「リニア特急」の文字が鉄道関連グッズに採用される可能性は極めて低いこと,(ウ)「新幹線」が路線のみならず列車として認識されているとしても,新幹線を走る列車を総称しているのみで「ひかり」「のぞみ」等具体的な列車名を意味するものではなく,また,「超特急」と表現することもないこと,(エ)「リニア」のみでは直ちに「リニア中央新幹線」を示すことができないことからすれば,本願商標を拒絶した原審の判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,証拠調べ通知において示した別掲の事実に基づき,本願商標の指定商品の取引者,需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断するならば,本願商標を請求人がその指定商品について使用するときは,これに接する取引者,需要者が,周知著名性を有する「リニア中央新幹線」を想起,連想し,その商品が,あたかもJR東海又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきであることは,上記(2)で述べたとおりである。
したがって,請求人の主張は失当である。
(4)まとめ
以上からすれば,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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