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Trademark Appeal Case

結合商標の要部と識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2016−900188(T2016−900188/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5838038号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5838038号商標(以下「本件商標」という。)は、「金の食パン さっくり」の文字を標準文字で表してなり、平成27年9月24日に登録出願、第30類「食パン」を指定商品として、同28年2月2日に登録査定、同年4月8日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5054290号商標(以下「引用商標」という。)は、「さっくり」の文字を標準文字で表してなり、平成16年9月3日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同19年6月15日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)

申立人は、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。(以下「甲第○号証」の表示は、「甲○」と簡略する。)

(1)「金の食パンさっくり」の意味するところ

本件商標は、「金の食パン」の文字と、1文字分のスペースをはさんで「さっくり」の文字とを標準文字で表した商標であり、「金の食パン」の称呼は、「キンノショクパン」と読むことが極めて一般的である。

「金の食パン」を構成する「金」の文字は、広辞苑第六版によれば、後に「食パン」をつなげていることから、二番目の意味の「立派な、固い、美しい、貴重な」などの意味を表す語である(甲2)。コンテストなどにおいて最もすぐれた作品に「金賞」を与える場合、「金」は優れていることを、最も貴重な金属である「金」になぞらえた比喩的な表現にすぎない。

食品分野においては、昨今は他社類似製品との差別化が困難なため販売者は、なんらかの優良を示す表現、例えば「○○分野における売上第1位」「○○に関する消費者調査で人気No.1」といった言葉で他社製品より優れていることを訴求しようとする。例えば、食品をはじめとする多くの商品の品評会で授けられる賞である「モンドセレクション金賞受賞」などといった言葉である(甲3及び甲4)。

次に、助詞の「の」は、「連体格を示す。前の語句の内容を後の体言に付け加え、その内容を限定する」とある(甲5)から、「金」に「の」をはさんで「食パン」を続ければ、「優れたもの」であるところの「食パン」、すなわち「立派な食パン」「貴重な食パン」などの品質を直接的に表すものである。「金の食パン」は、確かに本件商標権者の登録商標ではあるが、購入者においては「優れた食パンであること」を認識させるにすぎず、その自他商品識別力は相当に薄い。

一方、「さっくり」(引用商標)は、食感を暗示する言葉ではあるが、不服2005−10460でも示されているとおり、「『さっくり』の文字がそれのみで、取引者、需要者の間に食感を意味する語として認識され、普通に使用されているという事実も見いだせない。」という事実があり、「食感としての意味合いを直接的かつ具体的に表しているとまではいえないと判断するのが相当である」と断じられている(甲6)。品質表示と判断されているのは「さっくりとした歯応え」、「口当たりはさっくりと軽く」、「さっくりとした食感」のように、助詞「と」を伴って使われる事例のみである。

本件商標については、「金の食パン」と「さっくり」の間に一文字分のスペースが開けられており、あきらかに分断して看取される。

(2)本件商標の構成

本件商標は、その構成からみる限り、無意識のうちにまず、「金の食パン」ということにより、「それは『立派な食パン』『貴重な食パン』なのだ」という印象を特徴づけた後、「その食パンは名前を『さっくり』という」ということにより、パンを特定しているように思われる。「さっくり」の側が食パンの名前(本件商標の要部)として機能しているというように考えるのが、構成からみる限りもっとも自然である。

(3)食品業界における「金」

「金」のみで「優れたもの」を表すとされている業界はいくつか存在する。例えば、アイスクリーム類及び氷菓公正取引協議会においては、「ゴールド」をいう表現は、「特級」「スペシャル」などと並んで、「それだけで『優れたもの』であると考えられ、相応の品質がなければ表示できない言葉」とされている(甲7)。

缶コーヒーにおいて、「金」が自由には使えないことを大々的にCMで流したことがあるが、これは、コーヒーの表示において「金」が品位を表すにすぎないからにほかならない(甲8)。

各種の酒、あるいは製法上、酒と関係性のある「醤油」の場合、「金ラベル」「ゴールドラベル」で検索をすれば、多くの企業がワンランク優れた製品に付して販売していることがわかる(甲9ないし甲16)。

「金の食パン」の文字は、本件商標の構成において品質表示程度の意味合いとみられる蓋然性は高く、ゆえに、本件商標は、要部が「さっくり」部分ととらえられるから、引用商標と類似する。

4 当審の判断

(1)本件商標

本件商標は、「金の食パン」の文字と「さっくり」の文字を各文字の間に1文字分の空白を介して「金の食パン さっくり」と標準文字で表してなるところ、その構成文字全体に相応して「キンノショクパンサックリ」の称呼を生じるものである。

そして、本件商標の構成中、「金の食パン」の文字部分は、「金」の文字が「金属元素の一種。立派な、固い、美しい、貴重ななどの意を表す語。こがね色。」等の意味を有する語であることから、助詞である「の」の文字を介して「金の食パン」と表した場合に「立派な食パン」、「貴重な食パン」、「こがね色の食パン」等の意味合いを想起させることがあるとしても、該意味合いはあくまでも漠然とした意味合いにとどまるものというべきであって、直ちに特定の意味を理解させるものとはいい難いものである。

そうすると、本件商標の構成中、「金の食パン」の文字部分は、特定の意味合いを有さない造語というのが自然である。

一方、本件商標の構成中、「さっくり」の文字は、「切れ味や噛みごたえが軽く、小気味よいさま。」(株式会社岩波書店 広辞苑第6版)の意味を有するところ、別掲のとおり、本件指定商品である「食パン」を取り扱う分野において、食感を表す語として一般に使用されている実情が認められることから、該文字部分の自他商品の識別標識としての機能は、極めて弱いものというのが相当である。

してみると、本件商標は、「さっくり」の文字部分を捨象した「金の食パン」の文字部分も独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。

そうすると、本件商標は、構成全体から生じる「キンノショクパンサックリ」の称呼のほか、「金の食パン」の文字部分から「キンノショクパン」の称呼をも生じ、それぞれ特定の観念は生じないものである。

(2)引用商標

引用商標は、「さっくり」の文字を標準文字で表してなるところ、これからは、「サックリ」の称呼を生じ、「切れ味や噛みごたえが軽く、小気味よいさま。」程の観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との類否

本件商標と引用商標とは、上記(1)及び(2)のとおり、その全体構成において、「金の食パン」の文字の有無という差異を有するものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。

また、本件商標から生じる「キンノショクパンサックリ」又は「キンノショクパン」の称呼と引用商標から生じる「サックリ」の称呼とは、語頭における「キンノショクパン」の音の有無や構成音が相違するから、称呼上、明確に区別できるものである。

さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念が生じないものであるから、引用商標と比較することができず、観念上、類似するとはいえない。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。

したがって、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品に含まれる商品であるとしても、本件商標と引用商標とは、上記のとおり、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(4)申立人の主張

申立人は、食品分野において「金」は、コンテストなどにおいて「金賞」を与える場合は「優れていること」を表すことや、「金」のみで「優れたもの」を表すとされている業界がいくつか存在することから、「金の食パン」の文字は、本件商標の構成において、品質表示程度の意味合いとみられる蓋然性が高い旨主張する。

しかしながら、上記(1)のとおり、「金」の文字が複数の意味を有するものであり、本件指定商品との関係から、該文字部分より生じる意味を特定し難いものであることからすれば、「金」の文字のみで常に「優れたもの」の意味を理解させるとはいい難い。また、申立人が提出した証拠を検討するに、アイスクリーム類、氷菓、缶コーヒー、酒及び醤油の業界において、「金」及び「ゴールド」の文字が「優れたもの」を表すものとして使用されていることが窺えるが、「金」の文字が、本件指定商品である食パンについて品質等を表示するものとすべき証拠はない。また、職権調査によっても、「金」の文字が食パンの品質等を表示するものとすべき事実は発見できないから、申立人の上記主張は、認めることができない。

(5)まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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