結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成9年審判第19994号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2603318号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)の構成よりなり、平成3年3月28日登録出願、第21類「かばん類、袋物、その他本類に属する商品」を指定商品として、同5年11月30日に登録されたものである。
請求人の引用する各商標(以下「引用A商標」及び「引用B商標」という。)は、別掲(2)及び(3)の構成よりなるものである。
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第19号について
ザ・ブリティッシュ ペトローリアム カンパニー ピー・エル・シー(平成11年9月24日付名称変更届によりビーピー アコモ ピーエルシーと改称された。)(以下「BP社」という。)は、1909年に設立された英国国家を代表する企業であり、全世界に存在する1900余りの子会社及び関連企業の親会社である。また、世界最大規模を誇る国際石油・石油化学会社の1つであり、石油資本のメジャーとしても世界的に著名である。実際、本件商標の出願以前の1990年版の年次報告書(甲第2号証)にも示す通り、当時既にBP社の株式は英国、米国、日本、カナダ、スイス、フランス、ドイツ及びオランダの各証券取引所に上場されていたという世界的な大企業であり、BP社のグループ企業は、石油生産販売からガス、化学品、鉱業、各種精密測定器械、電気機器、医薬品、食品など広範囲な事業を世界的に展開する多角経営の事業体となっていた(甲第3号証)。
引用各商標は、1920年に考案され、1923年の実際の使用開始以来、ほとんどその態様を変えずに、一貫してBP社の事業に関連して使用されてきた標章であって、BP社の名声と共に世界的に周知著名な商標となっている。実際、引用各商標は、BP社の石油を運ぶタンカーや、石油採掘現場で使用するへルメット等に使用される他、町中を走るガソリン輸送用トラックやガソリンスタンドのシンボルマーク等として公衆が日常的に目の当たりにするような状態で、長年に渡り欧米諸国を中心として世界中で使用されてきた。ちなみにBP社は、ガソリンスタンド経営と共にコンビニエンスストアのチェーン店も経営しており、1990年の時点で300店舗を超えていたことが甲第2号証に記載ぎれている。また、BP社企業グループは、雑誌広告、新聞広告、自動車レースのスポンサーなどの宣伝活動を積極的に行っているが、これらの宣伝活動には常にこの引用商標が使用され、例えば販促品としての衣類、身飾り品などにもこの商標が必ず付されてた(甲第4号証)。
マクミラン社出版の「THE WORLD’S GREATEST BRANDS」(甲第5号証)にも引用商標が掲載されており、同書によれば引用商標は世界のトップブランド70位にランキングされている。このトップブランドのランキングは、ブランド研究の専門家として定評があり、欧州、米国、アジア各国にオフィスを構えるインターランド社が分野を問わずに世界の著名商標をランキングしたものであるが、CocaCoLa」や「Sony」等の大衆向け商品に係る商標が上位を占める中で、重工業中心の商品に係る引用商標が「Louis vuitton」等のブランドよりも上にランキングされていることが如何に引用商標の周知度が高めかを如実に物語っている。引用商標は、知的所有権分野ではヨーロッパ有数のマークグラフが発行の「Famous Brands」にも掲載されており、このように複数の異なる出所の出版物に共通して引用商標が周知商標として掲載されているという事実は、客観的に引用商標が周知であることを示すものである。更に、本国である英国において1921年にその最初の商標登録がなされたのを皮切りに、欧州各国、米国、アフリカ諸国、中南米諸国の世界数十カ国において多数の商標登録を受けている(甲第7号証)。したがって、引用商標がBP社の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内及び外国において一般公衆に広く認識されている周知著な商標であることに疑いの余地はない。
引用商標は(BP)の欧文字を顕著に表してなるものであるから、その欧文字部分に相応して「ビーピー」の称呼を生ずることは明らかである。請求人が「BP」の略称でもって知られていることは顕著な事実である。甲第8号証に一例を示すとおり、20年以上も前に請求人は「BP」の略称でもって我が国の書籍の中で紹介されている。これは、当時から我が国でも既に請求人は「BP」の略称でもって知られていたからこそ、第三者たる出版社がこの略称を用いたに他ならない。甲第9号証として提出する1997年版「外国企業年鑑」においても「通称BPで知られる国際石油資本」として請求人を紹介しており、20年以上前の1975年版 「外国会社ハンドブック」(甲第10号証)にも既に「BP」という略称が随所に記載されている。「在日外資系企業ファイル(甲第11号証)にも請求人を「通称BPで知られる国際石油資本」として紹介している。その他、英和辞典や現代用語の基礎知識(甲第12号証)で「BP」をひけば請求人の名称「British Petroleum」が出てくるし、商品名辞典(甲第13号証)にも請求人の略称「BP」が記載されている。
以上により、引用商標からはBP社の著名な略称「BP」が「ビーピ−」と発音されることとも相俟って、「BP」の欧文字を顕著に表したその構成より「ビーピー」の称呼を生ずることば明白である。
一方、本件商標は上述の通り楕円形線輪郭の中に「BP」の欧文字を顕著に表してその下方に小さく「Big Prosperity」の欧文字を表示して構成されている。したがって、その顕著に表された「BP」の欧文字部分より「ビーピー」の称呼が生ずることは明白である。
また、甲第14号証に例示する実際の使用態様を見ても、宣伝文句や説明に「BP商品」、「BPバッグ」等の言葉を用いており、殊更「BP」の欧文字を強調している。したがって、このような使用態様とも相俟って、本件商標から「ビーピー」 の称呼が生ずることは確実である。即ち、本件商標は上述の周知著名なBP社の引用商標と同一の称呼を生ずる類似の商標であることには疑念の余地はない。東京高裁判決(行ケ)第91号(甲第15号証)では、モノグラム化されたローマ文字の結合から特別の称呼は生じないとする審決が取り消され、LとVの文字の結合と認識される以上「エルヴィ」の称呼が生ずるとの判断が示されたことを申し添える。本件の場合のようにモノグラム化されたローマ字2文字からすらローマ字に対応した称呼が生ずる場合があるから、「BP」の欧文字から「ビーピー」の称呼が生ずるのは極く自然である。
次に、被請求人の本件商標の使用は、不正の目的を持つものであることを説明する。
BP社の総合的技術力をバックとするBPブランド商品は、世界的に高い評価を得ている。我が国経済界とも古くから密接な関係を有し、新聞記事(甲第16号証)にも、1967年に三菱商事や三菱重工ほどの日本有数の大企業が請求人から20万トンタンカーを受注できたことが夢のような話であったとして掲載されており、本件商標の出願時の新聞記事(甲第17号証)でも、日韓共同の石油開発計画にBP社が参画すること、宇部興産がBP社から技術導入すること等が大々的に報じられている。このように、請求人は古くから日本の大手企業にとり大事な顧客であり、我が国経済界、産業界に与える影響は計り知れないものがある。ある事業分野で顕著な企業は、事業分野の枠を超えて一般常識として世人に広くその名を知られるものである。したがって、BP社ほど顕著な企業は、当業界のみならず、我が国社会の一般常識として公衆にその名を認識されているといえる。被請求人とても、事業人としてBP社の名声及びそのブランドイメージの高さについては、本件商標の採用以前より聞き及んでいたことに疑念の余地はない。実際、平成7年審判第10194号事件において本件被請求人が提出した平成7年10月23日付審判事件答弁書でも、BP社が「いわゆる石油資本メジャー(元売り)として著名である点」を被請求人は認めている(甲第21号証)。にも拘わらず、「BP」の欧文字を顕著に表した本件商標を採用し、また先の甲第14号証に示す通り、それを「BP商品」、「BPブランド」、「BPのものづくり」等の文言と共に使用しているのは、殊更「BP」の2文字を強調してBP社が有する引用商標の周知著名性に只乗りせんとする不正の意図によるものに相違ない。甲第18号証の使用態様例を更に提出するが、この使用態様例では本件商標の表示と共に「BPサイフ」等の文言を掲載している他、驚くべきことに「BP社の小銭入れ」という虚偽の文言すら用いられている。被請求入の名称は株式会社大栄であるから、商標と共に社名の略称表示をするなら「(株)大栄」やせいぜい「大栄社」等の表示が適当であって、どう転んでも「BP社」という略称表示は生じない。甲第18号証に係る雑誌写しは、元々被請求人が平成7年審判第10194号につき乙第10号証の6として提出したものであるが、このような虚偽の社名表示を本件商標と共に行い、それをはばかりなく証拠資料として提出していることからも、被請求人がBP社の名声に只乗りするために本件商標を使用していることは明白である。
以上の通り、本件商標は、世界的に周知著名なBP社所有の引用商標に類似する商標であって、その使用例よりBP社の引用商標の周知著名性に只乗りせんとする不正の目的を持って使用されるものであることが明らかであるから、商標法第4条第1項第19号の規定に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
このような悪意による不当な使用を黙認することは、英国を代表する世界的企業であるBP社の信用を害する行為である。BP社はかって、イギリス海軍省がその株式の56%を保有し、BP社が緊急時にはイギリス海軍への石油を供給することを保証した、等の時代があり、歴史的経緯からして英国国家と切り離せない事業体である。したがつて、BP社の信用を不当に害する本件商標は、英国国家及び英国国民を侮辱する国際信義に反する商標であって、商標法第4条第1項第7号の規定にも該当する。
よって、本件商標は商標法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件商標が、商標法第4条第1項第19号の規定に違反するとした点に付いて
請求人は「BP」の略称で石油関連業界のみならず広く一般公衆にも、請求人の略称として知られていると主張するが、何らその点の証明はされていない。請求人は甲第8号証で、「20年以上も前に請求人は「BP」の略称でもって我が国の書籍の中で紹介されている。」と述べているが、単に文章中には「ブリティッシュ・ペ トロリアム(以下BPと略称)」と、請求人の長い社名をいちいち表記する煩わしさがあるため、社名を略しただけである。甲第9〜13号 証では、「第三者の出版による客観的資料であり、また特定分野の業界紙という訳でもないから、石油関連業界においてのみならず一般的に請求人が「BP」の略称をもって知られていることを端的に示すものである。」と主張しているが、甲第9〜11号証は、在日外資系企業の紹介に過ぎず、石油メジャーとして、請求人の「ブリティッシュ・ペトロリアム」が「BP」と略されることがあることを称しているのであって、石油関連業界でのみ、略称が通用することを述べているに過ぎない。また、英和辞典や現代用語の基礎知識等において、掲載があるとしても、石油関連業界でのみの略称があることを掲載しているに過ぎず、広く一般公衆の認知がある ことを証明するものではないことは明白である。甲第16〜17号証では、「請求人は古くから日本の大手企業にとり大事な顧客であり、我が国経済界、産業界に与える影響は図り知れないものがある。」と、独りよがりの主張を述べているが、これも石油関連業界での新聞記事に過ぎず、広く一般公衆に知られているとの証明がなされているものではない。
更に、請求人の知名度は、我が国では石油メジャー企業として一般に知られていない事実がある。これは、他の石油メジャー企業が古くより多数の直営店(系列店)を有しているにも関わらず、請求人は直営・系列のガソリンスタンドがつい最近まで無かったため知名度が低いからである。平成9年7月30日付け日本経済新聞夕刊(乙第1号証)において、請求人が我が国のガソリンスタンド市場に初めて進出する旨の記事が掲載された。この記事によれば、他のメジャースタンドは昭和シェル石油が6,700店、モービル石油が3,500店、エッソ石油が2,400店を既に展開していることから考えれば、被請求人が我が国において全く知名度が低いことは明白である。
請求人は、「ある事業分野で顕著な企業は、事業分野の枠を越えて一般常識として世人に広くその名を知られるものである。」と主張する。その主張に誤りはない。確かに、例えば、時計、被服、かばん等の商品は、それぞれ事業分野が異なり非類似の商品であるが、これらはファッションの対象となる商品であり、身飾り品として同一の用途に使用されるものであるから、いずれかの商品において著名な商標が存在する場合等において、一般にも広くその名を知られることもある。このような場合、第三者によって異なる商品に著名商標と同一・類似の商標の使用がなされると、出所混同などが生ずるおそれがあることは、被請求人においても認めるものである。しかしながら、請求人の石油関連製品と本件商標のかばん類などの身の回り品とは何ら関連がなく、また、我が国における、請求人の印象は、石油及び石油化学に関 連する多角経営の企業として強く、取引者、一部の一般需要者に与えるだけであり、その石油メジャーとしての知名度も我が国においては低いものである。ましてや、一般に石油元売り会社及びグループ企業が、多角経営により衣服業界、かばん類に進出し、もしくは進出する傾向にあることについても、被請求人は聞いたことがないし、かつ、そのような証拠資料の提出はなされていない。事実、特に、先の無効審判(審判平7−10194号)で請求人が自ら提出した営業案内(乙第2号証)第30頁の「事業の概況:会
社の目的」には、ファッション関係への展開が明記されておらず、何上にファツンョン業界においても、請求人目身の略称とする「BP」が周知となると主張しているのか不可解である。更に、請求人自身も、甲第5号証のブランドの有力誌において周知著名である点を主張する請求書で、自らを「重工業中心の商品に係る引用 商が...」とはっきりと自らの事業の認識を示していることに他ならない。従って、我が国の石油関連業界以外の業界、及び一般公衆には、「BP」の文字から、直ちに請求人を指称する略称と周知になっているとは認められない。
乙第3号証は請求人の拒絶査定不服審判[審判昭62‐19524号]における審決公報(審決日:平成6年6月7日)であるが、この審判における判断は明快である。出願商標「BP」が欧文字2文字からなる、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章であって、商標の自他識別標識としての機能を果たし得ないものであることを先ず認定した上で、請求人の提出した証拠を検討し、請求人等を紹介するパンフレット、新聞には請求人の略称を表すのに、「BP」の文字を使用してることは認められるとしても、何れも、請求人の略称として使用することを明記したから使用しているもので、いわば、限定されたなかで「BP」を請求人の略称として使用しているのが通常であり、一般的に、独立して「BP」の文宇のみを持って、請求人を指称するものとして使用され、その「BP」の文字から、直ちに、請求人を指称するものとなっているとは認められないと判断されている。このように、請求人の商号の略称である「BP」の著名性については、この審決による判断と、法第3条第2項の適用によって登録された第1576451号(乙第4号証)の商標における指定商品の範囲によって、容易に理解されるものであり、請求人は石油関連業界以外においても周知性を有する如く主張しているが、特許庁における請求人の著名性の範囲は、既に明確に示されている。この拒絶査定の審決における認定は、本件無効審判においても同様の判断がなされるはずである。無効審判においても拒絶査定不服審判における証拠と同じ様な主張が繰り返されているが、拒絶された審決における商標登録出願は、請求人の石 油関連業界に最も関連深いと思われる「化学品」を指定商品とする商品において、このような判断がなされたのであるから、石油関連業界以外において、欧文字「BP」の2文字からなる構成が請求人の商号の略称と認識することなど全くあり得ないことであり、請求人の主張が全く詭弁なものであることは明白である。
請求人は、引用A商標と引用B商標の2つの商標を示している。なお、欧文字「BP」2文字の商標は、甲第1号証によれば、盾の図形がほとんどの請求人の登録商標の中で、唯一例外として、商標法第3条第2項の適用を受けた、旧日本分類第5類「液体燃料、気体燃料、石炭、コークス、工業用油」を指定商品とする登録第1576451号である。請求人は、自ら英国を代表する石油資本メジャーとして、石油関連業のみならず広範囲の事業展開を行っており、海外においてその使用の実績があり、また、我が国においても宣伝活動をとおして、販促品である衣類、身飾り品等にも引用商標を使用している旨を主張する。また、請求人が自己の周知商標を証明する証拠として、世界の著名商標をランキングした出版物を証拠として提出しているが、いずれも楯型の図形商標である。これに対し、欧文字2文字のみでの引用商標の使用例は、請求人の業務と関連深いガソリンスタンドにおける表示と、国内のエンジンオイルなどの商品に付されたものでしか見られない。従って、請求人の引用商標の内、欧文字2文字のみでの「BP」については、「液体燃料、気体燃料、石炭、コークス、工業用油」の指定商品のみ自他商品識別力を発揮するものであるから、本件商標における指定商品においては、単なる欧文字2文字の商標として自他商品識別力を発揮するものでないため、本件商標と同一・類似を論ずるまでもない。
引用商標中、欧文字2文字の「BP」については、本件商標と類否を判断する対象ではないので、請求人の楯型図形商標と、本件商標が同一・類似するかについて検討する。既に、本件商標が非類似であることは、先の無効審判(審判平7‐10194号)で主張尽くされていることであり、請求人の楯型図形商標とは非類似であることは明白である。従って、既に本件商標は、この点を持ってしても請求人の法第4条第1項第19号に該当しないのである。
本件商標は、楕円形線輪郭内に横書きで欧文字「BP」と、その下段に「BP」の文字よりも小さな欧文字で「Big Prosperity」と二段に表記された構成である。本件商標に表されている「BP」及び「Big Prosperity」の欧文字の意味するところは、被請求人の社名「大栄」に由来する。すなわち「大栄」の文字は「大きく栄える=大いなる繁栄」を意味するものであるとして、乙第5号証の「名刺」の裏書きに記載されているとおり、本件商標を付した商品を購入した需用者すべての方が大いに栄えていただきたいとの願いを込めて「大栄=大いなる繁栄=Big Prosperity」とイメージを発展させたものである。従って、「BP」の2文字は「Big Prosperity」の略称として用いたものである。請求人は、「引用商標は『BP』の欧文 字を顕著に表してなるものであるから、その欧文字部分に対応して「ビーピー」の称呼を生ずることは明らかである。これは後述する請求人の周知著名な「BP」の略称とも相僕って、極めて自然な称呼である。」と主張する。しかしながら、商標審査における欧文字2文字の取り扱いは、特段の事情がない限り、商品の種別、形式、内容、規格、商品番号などを表示する符号・記号などとして使用されていることから、自他商品の識別標識としては機能し得ないものとされている。請求人の石油関連業界での「BP」の略称の周知度は、本件商標の指定商品分野においては、全くないのと同じであるから、両商標の構成中の「BP」の欧文字2文字自体も、自他商品の識別標識としては機能しないとみるのが相当である。
そうすると、本件商標及び引用各商標における自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、引用各商標にあっては、その構成全体として黒地の盾型の図形と、その図形内に白抜きした欧文宇「BP」との不可分一体の図形を形成しているものと認識し理解されるとみるのが相当であり、「BP」の文字部分のみが独立して認識されることはない。また、商標の構成中に同一の欧文字を有すものであっても、デザイン的に異なる図形商標においては、特定の称呼・観念が生じるものでないとして取り扱われており、過去の特許庁での登録例からも明らかである。
請求人は、甲第15号証において「ローマ字2字を組み合わせたモノグラムとした商標から特定の称呼は生じない。」とした審決が、高裁判決で取り消されたことを根拠とし、本件商標及び引用商標は「BP」の文字を有することから「ビーピー」の称呼を生ずると主張する。この判決は、裁判で争われた商標について、審決における「モノグラム化された構成からは特定の称呼を生ずるものとは認められない」との判断が取り消されたに過ぎず、依然、モノグラム化された商標において称呼が生じないとする特許庁の審査基準が変更された事実はない。また、モノグラム[monogram]とは、名前の頭文字などを組み合わせて図案化したものを指すのであるから、引用商標の楯型図形商標はモノグラムとはいえないものである。
本件商標及び引用各商標の類似性について比較検討すると、まず、観念において、引用各商標は図形商標であり、特別の観念が生じるものでないことは明らかである。一方、本件商標も図形商標ではあるが、構成中の「Big Prosperity」の語から「大いに栄える=大いなる繁栄」の観念が生じるため、両商標は観念において非類似である。次に、外観において、引用各商標と本願商標を全体観察により比較すれば、引用各商標は、黒地の盾型の図形に縁取りされた内部に白抜きした欧文字で「BP」の文字を左横書きしたものである。一方、本件商標は、楕円形線輪郭内に横書きで欧文字「BP」と、その下段に「BP」の欧文字よりも小さな欧文字で「Big Prosperity」と二段に表記された構成であるから、一見して顕著な差異があり、相混同を生ずる虞がない外観であるので、互いに非類似であることは明白である。
また、称呼においても、引用各商標は特定の称呼を生じない図形商標であるが、本件商標は構成中に「Big Prosperity」の語を有することから、「ビックプロスペリティ」の称呼が生じると容易に理解される。従って、単なる図形商標である引用商標と、同じく図形商標であり、かつ、「Big Prosperity」の称呼(観念)を生じる本件商標とは非類似であることは明白である。なお、請求人は引 用各商標と本件商標とは、その構成中の欧文宇「BP」が共通する点から、同一の称呼を生ずる類似の商標であると主張するが、そもそも、2つの商標の類否判断に関し、商標の類否は同一又は類似の商品に使用された商標が、その外観・観念・称呼等によって取引者、需用者に与える印象、記憶、連想などを総合して全体的に考察すべきである(最高裁判決平成4年9月22日第三小法廷平3年(オ)第1805号)旨、判示されており、また、商標の類否の判断において、商標の外観・観念・称呼の各要素は、あくまでも総合的な観察の要素の1要素にすぎないとして、称呼において類似する商標であるとした審決について、双方の発音が近似するとはいえ、他の要素との関連性について検討することなく、称呼の類似性に基づいてのみ両商標が類似すると判断しているものであり違法であるとしている(平成4年(行ケ)第93号平成5年2月17日東京高裁第13民事部判決)。今日のように情報媒体が多様化し、国内的国際的情報量が飛躍的に増大した社会においては、人々は多量の情報を識別認識することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習性が培われていることは顕著な事実であり、特に限られた時間内に自己商品の特徴を取引者・需用者に訴え、顧客の購買力を喚起しなければならない広告媒体・商品表示等においては、従来から、一見して認識可能な図形の持つ情報伝達力が重視されて来ており、現時においては、これらに限られず、図形の持つ情報伝達力が文字の持つ情報伝達力と比肩するに足りる大きさを有するに至っている分野が多くなっているということができることは経験則上明らかな事実である。このことからすると、商標の類否の判断において、商標の外観・観念・称呼の各要素は、あくまでも総合的全体的な考察の一要素にすぎず、たまたま1要素が近似するからといって、他の要素との関連を無視して直ちに商標そのものが類似するとの判断に至ることは許されないことは明白である。
更に、被請求人の本件商標の使用が不正の目的を持つものであるとの主張が、請求人の「BP」の略称として認知されているのは、石油関連業界にしか過ぎないのは、既に述べているとおりである。被請求人が請求人を石油資本メジャーとして知っているに過ぎず、「BP」が請求人の略称として著名である点を何ら認めているものではない。本件商標と関連ある、かばん、衣服などに引用各商標の使用例が存在するが、請求人が認めているとおり、石油関連商品の販促品ないしは宣伝を目的としたモータースポーツの関連販売商品に過ぎないので、かばん類における通常の流通形態が異なる上、商標が非類似であるから混同が生じようがないことは明らかである。
被請求人は、本件商標の使用態様例として甲第14号、第18号証において「BP商品」、「BPブランド」「BPのものづくり」「BP社の小銭入れ」等を揚げ、社名と異なることを不正の意図と主張し、名声に只乗りするため等と主張するが、本件商標に関連するかばん業界などにおいて、石油関連業界のような「BP」の欧文宇が請求人の略称などとの認識がなくて、なぜ、不正が生じたり、名声に只乗りすることが生じるのであろうか?それこそ、本末転倒なことである。
また、社名と異なる使用態様を不正の意図と主張しているが、それでは、我が国での産業界各社の宣伝態様は、すべて不正を生じさせる使用であることとなる。例えば、航空業界では全日本空輸は「ANA」、衛陶機器の東陶機器は「TOTO」、自動車業界の三菱自動車は「MMC」と正式社名、社名の略称がそのまま使用されずに、ブランド名から使用される例は数多い、「INAX」は、伊那製陶がブランド名に合わせて社名を変更したほどである。
更に、被請求人がBP社などと使用することは、被請求人に何ら関係のないものでなく、被請求人にとって本件商標に表されている「BP」及び「BIg Prosperity」の欧文字の意味するところであり、被請求人の社名「大栄」に由来する。すなわち「大栄」の文字は「大きく栄える=大いなる繁栄」を意味するとして、本件商標を付した商品を購入した需用者すべての方が大いに栄えていただきたいとの願いを込めて「大栄=大いなる繁栄=Big Prosperity」とイメージを発展させたものである。 従って、「BP」の2文字は「Big Prosperity」の略称として用いたものである。従って、BPブランド商品として品質の高い手作りの革製品の提供に企業努力を重ねたことにより、業界内において大きな信用を築き上げたのである。
以上のように、被請求人は登録商標を数々の宣伝媒体(乙第6号証の1及び2)などによって使用しているが一度たりとも、請求人のグループ企業と間違えられたり、誤認を生じるようなことはなかったのである。このことは、被請求人は地道な販売活動によって、上記のように多大なる業務上の信用を保持しているのであるから、この商標に化体した業務上の信用を失わせるようなことは許されるものではない。
(2)本件登録商標が、商標法第4条第1項第7号の規定に違反するとした点に付いて。
請求人は、「BP社の信用を不当に害する本件商標は、英国国家及び英国国民を侮辱する国際信義に反する商標」等と述べているが、本件商標は、正当な手続・審査を経て登録されたものであり、また、引用商標とは非類似なものであって、その商標の使用も不当でないことは、先の主張で明らかである。従って、請求人の主張する同法第4条第1項第7号に該当しないことは検討するまでもない。
(3)以上述べたとおり、本件商標は請求人の主張する何れの事項にも該当するものでないことは明白であり、本件審判請求は理由がない。被請求人は請求人の会社と比べれば、全く立ち向かうことが出来ないほどの資本力の差はあるが、自らのブランドを地道に築き上げており、着実な販売実績を上げているのである。
よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。
(1)商標法第4条第1項第19号について
請求人は、本件商標が著名なBP社所有の引用商標に類似すると主張しているので、この点について検討する。
本件商標は、別掲(1)のとおり、楕円形線輪郭内に「BigProsperity」欧文字を、その上に「BP」の欧文字をバランスよく大きく表しているものである。
この「BP」の欧文字部分についてみると、一般に欧文字の2文字は、商品の規格、型式等を表示するための記号、符号として普通に採択使用されているのが実情であることからすれば、該「BP」の欧文字部分は、欧文活字の基本書体であるローマン体で表されていることと相俟って、記号、符号等の類型の1つとして取引者・需要者に理解されるか、或いは、本件商標における「BigProsperity」の欧文字部分と「BP」の欧文字部分との構成上の関係は前記したとおりであるから、「BP」の欧文字部分が、その下に書されている「Big」及び「Prosperity」の各欧文字の頭文字を表したものと取引者・需要者に理解されるとみるのが自然である。
そうとすると、「BP」の欧文字部分が、前者の如く取引者・需要者に理解される場合にあっては、「BP」の欧文字部分は、自他商品の識別標識として機能し得ず、自他商品の識別標識機能を有する文字部分は、「BigProsperity」の欧文字部分にあると認められ、後者の如く理解される場合にあっては、前記した理由により、「BigProsperity」の欧文字部分と「BP」の欧文字部との一体性は強く、いずれの場合においても、本件商標を構成する「BP」の欧文字部分のみが、他の文字部分より分離独立して自他商品の識別標識として機能することはないと認められる。
そして、本件商標よりは、「ビーピービッグプロスパリティー」及び「ビッグプロスパリティー」の称呼を生ずるとするのが相当である。
他方、引用A商標は、別掲(2)のとおり、楯型の図形内に「BP」の欧文字を表してなるものであるが、この楯型の図形と「BP」の欧文字とは一体不可分の構成よりなるものであり、構成中の「BP」の欧文字部分のみが分離独立して認識されるものではない。また、引用B商標は、別掲(3)の構成であり、その構成に相応して、「ビーピー」の称呼を生じるとしても、該商標が商標法第3条第2項の適用によりその登録が認められたものであることを考慮すれば、前記した指定商品に関して、その称呼をもって取引に資されているとみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用各商標とは、観念において比較すべくもなく、外観及び称呼のいずれの点においても同一又は類似の商標ということはできない。
次に、請求人は、甲第1号証ないし甲第23号証(枝番を含む。)を提出し、引用各商標は、何れも「ビーピー」の称呼を生じ、著名であり、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国において一般公衆に広く認識されている周知著名な商標である旨主張しているが、請求人の提出に係る証拠を総合勘案すると、請求人の略称「ビーピー」及び引用各商標が著名なものと認め得るのは、エンジンオイル等石油関連事業に係る商品についてであり、甲第4号証(’94HighPerformanceChampaign、小売店様対象キャンペーン)に「Tシャツ」等の各種商品に引用商標を付している事実が認められるとしても、これはいわゆ販促商品といわれるものであって、エンジンオイルと思われる「BPオイル」を購入した顧客に対して、BP潤滑油日本総代理店「ペトロルブ インターナショナル株式会社」が一般の流通ルートを経由すること無しに商品を顧客に引き渡すものであって、該販促品は、商標法の商品とは認められないから、本件商標の指定商品を含むファッション関連商品についてまで引用各商標が周知著名なものとなっているということはできない。
したがって、本件商標と前記略称「ビーピー」及び引用各商標とは、観念において比較すべくもなく、外観及び称呼のいずれの点においても同一又は類似の商標ということはできないことと、かつ、引用各商標が、本件商標の指定商品を含むファッション関連商品についてまで周知著名なものとなっているということはできないことを考え合わせると、本件商標が例え、「BP」の文字を有すといえども、本件商標が、前記略称「ビーピー」及び引用各商標を何ら想起させるものではないから、請求人業務に係る商品等の出所表示機能を希釈化させ、或いは、その名声を毀損させるなど不正の目的をもって出願されたものとは認められない。
なお、請求人は、甲第14号証(革製品のカタログ)を示し、「BP商品」、「BPブランド」、「BPのものづくり」等の文言と共に使用しているのは、殊更「BP」の2文字を強調してBP社が有する引用商標の周知著名性に只乗りせんとする不正の意図によるものに相違ないと主張しているけれども、本件商標構成中の「BP」の文字部分については、前記認定のとおりであるから、その主張は採用できない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字と図形からなるものとはいい難く、かつ、本件商標を指定商品について使用することが、BP社の信用を不当に害し、英国国家及び英国国民を侮辱する等の国際間の信義則を損なう等の社会公共の利益・一般道徳観念に反するものではなく、他の法律によってその使用が禁止されているものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものということができないから、同法第46条第1項の規定により、登録を無効とすることはできない。
なお、請求人は答弁書に対し、平成11年9月24日付け弁駁書を提出しているが、その内容は、本件商標の登録無効審判事件(平成7年審判第10194号)の審決に対する論難と事案を異にする登録事例(甲第22号証ないし甲第23号証(枝番を含む。)を示すものであって、これらにより、本件についての判断は左右されないから、弁駁の主張は採用できない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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