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Trademark Appeal Case

結合商標の識別力と要部

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2015−890079(T2015−890079/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5724169号の指定役務中、第44類「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5724169号商標(以下「本件商標」という。)は、「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなり、平成26年9月5日に登録出願、第44類「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ,介護用医療器具の貸与」を指定役務として、同年11月7日に登録査定され、同年12月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が引用する登録第5287080号商標(以下「引用商標」という。)は、「くれない」の文字を標準文字で表してなり、平成21年7月8日に登録出願、第44類「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」を指定役務として、同年12月11日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した(合議体注:甲第13号証「定期刊行物発行にかかる請求書写し」及び甲第14号証「総勘定元帳写し」として提出された証拠方法は、それぞれ、甲第13号証を「総勘定元帳写し」、甲第14号証を「定期刊行物発行にかかる請求書写し」とした。)

1 請求の理由

本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。

2 具体的な理由

(1)請求人適格について

本件商標は引用商標と類似し、また、請求人の使用する商標との関係において、出所混同を生じさせるものであるため、請求人は、本件商標を無効にすることについて法律上の利益を有する。

よって、請求人は、本件審判の請求人適格を有している。

(2)本件商標を無効とする理由

ア 本件商標について

本件商標は、「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなるところ、かかる構成において、本件商標は、平仮名と片仮名とを組み合せて表されており、容易に「くれない」及び「ケアセンター」の二語の結合によるものと認識される。これら各語は、「くれない」が紅色(べにいろ)などを意味する「紅」の読み仮名として、また、「ケアセンター」が高齢者等へ介護サービスを提供するための施設を表す語としてそれぞれ理解される。

このうち、前者の「くれない」は上記観念を生じさせる文字として、指定役務との関係で十分に識別力が認められる。

他方、後者の「ケアセンター」は、高齢者や精神障害者に対するデイケアサービスのほか、病弱者に対する在宅生活の支援サービス、父母及び子どもに対する養育支援サービス、妊産婦に対する育児支援サービスなど、介護関連の医療・看護・保険といった福祉サービス全般について非常に幅広く使用されている事実が見受けられる(甲3)。

実際に、本件商標の権利者が住所を有する大阪府を例にとっても、府が所管する8市1町だけでも、実に47か所の指定事業所がその名称中に「ケアセンター」の語を含んでいる(甲4)。

かかる状況から、介護に関する役務との関係において、市場で「ケアセンター」は役務の提供場所を表しているにすぎず、単なる説明語として理解されることは明らかであり、「ケアセンター」は一般的な施設名の表示として認識されるものであって、役務の出所識別標識として役割を果たすことはない。

このことは、特許庁の過去の審査例からも裏付けられ(甲5、甲6)、従来の審査沿革に反し、本件商標のみ何ら特別な事情もなくして登録が許されるべきではない。

以上より、本件商標を構成する「ケアセンター」は役務の提供場所を表す説明語であり、他方の「くれない」が要部として機能するものである。

イ 請求人の使用する商標の周知著名性

(ア)請求人事業の内容・規模

請求人は、平成8年7月7日から現在に至るまでの間、19年間以上にわたって大阪市内で特別養護老人ホームを営んでおり、その事業内容は多岐にわたり、入所者への介護だけでなく、通所者への介護、高齢者への在宅介護、身体障害者のデイサービスに及ぶまで、総合的な介護福祉事業を展開している(甲7)。

当該施設の入居者は、開所当時から常時ほぼ満員の状態が続いており、平成25年度末の時点において、延べ利用者数は27,387人、短期入所者も合わせると、30,853人を数える。一日の平均利用者数をみても、通常入所者が82人の定員に対して75.03人、短期入所者が10人の定員に対して9.5人を誇っており、長年空きのない状態が続いている。また、このような利用状況に応じ、例年の介護保険収入は4億円程度にまで上っている(甲8)。

(イ)請求人の使用する商標について

請求人は、施設開所から現在に至るまで、商標「くれない」(以下「請求人商標」という。)を積極的かつ継続的に使用し続けてきた。

例えば、請求人は、平成8年7月の開所当時より、施設案内を目的としたパンフレットにおいて請求人商標を使用しており、このパンフレットの印刷には、少なくとも1,418,790円を支出している(甲9、甲10)。

また、請求人は、平成10年1月から毎年二回、1月と9月に独自の広報誌「くれない通信」を発行しており、第1号から第37号までの全出版において欠かさず請求人商標を使用し続けてきた(甲11)。本広報誌は入居者家族や介護関係者への送付に加え、平成11年3月からは、大阪市東住吉区全域、並びに、同市阿倍野区及び同市平野区の一部地域に配布される朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、読売新聞といった有名紙で定期的な折り込み広告も行っている(甲12)。その結果、本広報誌の総発行部数は少なくとも1,911,400部、その印刷・配布費用として9,409,881円以上を支出している(甲13)。このうち、直近三年の「平成24年9月号〜平成27年1月号」だけを例にとっても、発行部数は652,300部、印刷・配布費用は2,857,012円にもなり(甲14)、請求人商標の確固たる使用実績が認められる。

さらに、請求人は、様々な情報誌や会報などで積極的な宣伝活動を行ってきた。例えば、平成12年から欠かさず「NTTタウンページ(大阪市南部版)」で請求人商標を目立たせて表示しているし、平成18年から隔年で大阪市発行の情報誌「福祉・医療マップ」に、平成21・22年度版から「くらしの便利帳」の毎号に広告を掲載している。また、平成18年から隔年で請求人所在の地域マップにも広告を掲載している。ほかにも、請求人施設の設立五周年・十周年の記念事業として、講演会やイベントなどを実施し、請求人商標を様々な場面で使用してきた。このほか、請求人は自身の運営するウェブサイトでも請求人商標を長年使用している(甲15)。

加えて、請求人の経営する施設には、世界最高齢の人物である大川ミサヲ氏が最近まで入居していたことから、請求人商標は多数のメディアで頻繁に取り上げられてきた(甲16)。

(ウ)小括

以上より、請求人の長年にわたる大規模かつ多角的な福祉事業経営に加え、多方面における請求人商標の宣伝活動、また、数多くのメディア取材における請求人商標の表示の結果、以前より請求人商標は福祉業界において一際目立った存在となっており、本件商標の出願時及び審査時には、少なくとも大阪府を中心とする隣接県の範囲において、請求人商標が需要者の間で周知となっていたことは明らかである。

ウ 商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、指定役務との関係において、後半の「ケアセンター」が役務の提供場所として認識されるため、前半の「くれない」が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって、この部分から生じる称呼及び観念をもって取引に供される。

本件商標は、外観上、「くれない」と「ケアセンター」に分離して捉えるのが自然であること、簡易迅速を尊ぶ商取引の場において、「クレナイケアセンター」との称呼は余りに冗長であること、また、「くれない」の文字が請求人の出所表示として周知著名であるという実情を総合的に考慮すれば、当該商標全体が一体不可分として理解・認識されることはあり得ない。

他方、引用商標は、「くれない」の文字を標準文字で表してなり、その構成文字に相応して、「クレナイ」と称呼され、「紅色」などの意味合いを看取させる。

これら商標を比較してみると、「くれない」の文字が共通しており、「クレナイ」の称呼、「紅色」などの観念を同じくするものであって、商標が類似することは明白である。

また、本件商標の指定役務中、「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」は、引用商標の指定役務「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供、高齢者及び障がい者の養護又は介護」と抵触している。

請求人が、長年をかけて使用し続けてきた引用商標が既に登録されているにも関わらず、単に引用商標の後に「ケアセンター」の普通名称を付け足してなる本件商標が登録・使用されるとすれば、需要者に役務の出所混同を生ぜしめることとなる。同時に、請求人が市場でこれまで獲得した業務上の信用は少なからず失われることとなるため、本件商標の登録は容認されるべきでない。

したがって、本件商標は、引用商標に類似し、かつ、その指定役務が引用商標に係る役務と類似するため、商標法第4条第1項第11号に基づく無効理由を有する。

エ 商標法第4条第1項第10号について

請求人商標は、本件商標の出願時及び審査時には、少なくとも大阪府を中心とする隣接県の範囲において、請求人商標が需要者の間で広く知られていた事実が認められる。

そして、本件商標は、構成中の「くれない」を要部とするものであり、請求人商標に類似していること、及び本件商標が請求人商標と同じ介護関係の役務に使用されるものであることが認められる。

したがって、本件商標に接する需要者は、当該役務が請求人を出所とするものであると混同してしまうことは明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に基づく無効理由を有する。

オ 商標法第4条第1項第15号について

請求人商標は、施設開所時より大々的かつ継続的に使用されてきた経緯が認められるところ、本件商標は、「くれない」を要部とするものであり、請求人商標と外観、称呼及び観念のいずれにおいても紛らわしく、両商標は酷似している。かかる状況において、本件商標がその指定役務に使用された場合、需要者は当該役務の出所が請求人であると混同することは明白である。

実際、玄関マットのリース会社から、本件商標の権利者へ送るべき書類が請求人の元へ間違えて送られてきたという実例も複数生じており(甲18、甲19)、混同を生ずる「おそれ」は言うまでもなく、現に市場において少なからず出所混同が生じている。

仮に、直接的な混同のおそれ(狭義の混同)がないと判断される場合でも、請求人商標は介護福祉業界においてその名が知られていることから、本件商標がその指定役務に使用された場合には、少なくとも請求人との間に緊密な営業上の関係を有するか、あるいは、請求人が属するめぐむ福祉会グループの業務に係る役務であると誤信される事態は避けられず、ひいては、需要者の利益を損なうこととなる。さらには、請求人が長年にわたり大切に育ててきた請求人商標に化体する業務上の信用が希釈されることは明らかであり、このような本件商標の登録は決して認められるべきものではない。

また、現実の役務提供の場面において、本件商標は、「くれない」と「ケアセンター」に上下に分離して表示され、「くれない+(地域名)」を上段、「ケアセンター」を下段とする二段書きの態様で、あるいは、「くれない」を上段、地域名を中段、「ケアセンター」を下段とする三段書きの態様で使用されており(甲20)、これに接する需要者が「くれない」の文字に着目して出所識別標識と理解することは必至であり、本件商標と請求人商標との出所混同を防止すべき必要性は極めて高い。

以上より、本件商標と請求人商標とは全体として似通った印象を与えるものであり、需要者が出所を混同するほどに相紛らわしいことは明らかである。また、実際に出所混同をきたし、書類が請求人のところへ誤送信された事実もあることから、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。

したがって、本件商標は、請求人商標と類似の関係にあり、現実に使用される場面において、需要者に混同を生じさせるおそれがあるため、商標法第4条第1項第15号に基づく無効理由を有している。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に違反してされたものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 本件商標について

本件商標は、「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成中に「くれない」、「ケア」、「センター」の3つの文字が含まれてなるものである。

「くれない」の文字は、「鮮明な赤色、紅色」の、「ケア」の文字は、「注意、心遣い、配慮、世話すること、介護」の、「センター」の文字は、「中央、中心、その分野・部門の中心的役割をする機関や施設」の意味をそれぞれ有するものとして、いずれも広く知られており、本件商標は、これらの各文字が結合された商標である。

また、本件商標は、各文字が同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、まとまりよく表された商標として看取されるものであり、その構成文字に相応して生じる「クレナイケアセンター」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。そして、本件商標を、「くれない」、「ケア」、「センター」それぞれの各文字に分離して取引者、需要者に看取される特段の事情も生じないため、本件商標は、各語から生じる観念が個別に生じるものではなく、構成全体として一体不可分に看取される造語である。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)甲第3号証ないし甲第6号証、甲第17号証の証拠力について

ア 甲第3号証について

(ア)甲第3号証の1ないし4は、それぞれ、インターネット上におけるWEBサイトを検索するための検索エンジン「Google」の検索窓に「ケアセンター」に、「デイ」、「病弱者」、「親子」又は「妊婦、産婦」を併記して検索した結果を単に示すものであり、「ケアセンター」という文字が、いつから使用されていたのか、検索結果中のリンク先のWEBサイトがいつアクセス可能になったものなのか等を明らかにしていない。

(イ)甲第3号証の5は、国土交通省が平成23年7月22日に発表した「シンガポールからの仮設ケアセンターの寄附について」と題するWEBサイト上の報道・広報資料と見受けられるが、「仮設ケアセンター」に関する説明が何ら記載されておらず、「仮設ケアセンター」が何の役割を有し、何を意味するものであるかを明らかにしていないため、「仮設ケアセンター」に含まれる「ケアセンター」の文字が何を意味するものとして用いられているのか不明である。

(ウ)甲第3号証の6は、厚生労働省が発表した「緩和ケア推進検討会中間取りまとめ(報告書)」と題するWEBサイト上の広報資料と見受けられ、該WEBサイトには「緩和ケアセンター」の文字が表示されているが、「緩和ケアセンター」に関する説明が何ら記載されておらず、「緩和ケアセンター」が何を意味するものであるかを明らかにしていない。また、当該WEBサイトにリンクされている資料に「緩和ケアセンター」の説明があるとしても、単なる一使用例を示すだけにとどまり、「緩和ケアセンター」に含まれる「ケアセンター」の文字の意味を客観的に明らかにするものではない。

(エ)甲第3号証の7は、右上に「復興庁」と記載された「被災者の孤立防止と心のケア」と題する何らかの説明資料と推測されるところ、誰が作成した資料なのか等が明からにされておらず、さらに、「心のケアセンター」に関する説明が何ら記載されておらず、何を意味するものであるかを明らかにしていないため、「心のケアセンター」に含まれる「ケアセンター」の文字が何を意味するものとして用いられているのか不明である。

(オ)したがって、甲第3号証は、「ケアセンター」の文字が介護サービス全般について非常に幅広く使用されていることを客観的に証明する証拠力を有しないか、有るとしても微弱である。

イ 甲第4号証について

甲第4号証は、その第1頁の上部に「大阪府所管居宅サービス等事業所一覧(平成27年9月1日時点)」と記載されていることから、本件商標の出願日後の平成27年9月1日あるいはそれ以降に発表されたものと推測される。

したがって、甲第4号証は、居宅サービス等事業所の名称使用例を客観的に示す証拠としての証拠力を有しないか、有るとしても微弱である。

ウ 甲第5号証、甲第6号証及び甲第17号証について

甲第5号証、甲第6号証及び甲第17号証は、「ケアセンター」の文字を含む商標の審査事例や登録出願例が挙げられているものであって、「ケアセンター」の文字が取引の場において具体的に介護サービス等の役務の提供場所を示すものとして広く使用され認識されている事実を証明するものではない。

したがって、甲第5号証、甲第6号証及び甲第17号証は、居宅サービス等事業所の名称使用例を客観的に示す証拠としての証拠力を有しないか、有るとしても微弱である。

エ 以上より、甲第3号証ないし甲第6号証、甲第17号証によっては、「ケアセンター」の文字が「高齢者等へ介護サービスを提供するための施設」を表す語であり、介護サービスの役務の提供場所を表すための説明語であることを立証できない。

よって、上記甲各号証は、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当するということを立証する証拠とはなり得ない。

(2)本件商標が引用商標と類似していないことについて

ア 本件商標は、その構成中に「くれない」、「ケア」、「センター」の3つの文字を含む「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなるものであり、その外観及び称呼は上述したとおりである。また、「くれない」、「ケア」、「センター」の各文字の意味についても上述したとおりである。

一方、本件商標について、請求人は、本件商標が「くれない」と「ケアセンター」の二語の結合によるものであると主張している。

しかしながら、「ケアセンター」は、「ケア」及び「センター」それぞれが固有の意味を有する用語であることは明らかでありながら、請求人は、「ケアセンター」が一つの用語であると勝手に認識しており、「ケア」と「センター」とを結合した「ケアセンター」を一つの用語として認識しなければならない理由も証拠も示していないことからしても、本件商標は、「くれない」、「ケア」、「センター」の3つの文字が結合された商標であると認識するのが自然であり、請求人の上記主張は失当である。

イ 本件商標構成中の「センター」の文字は、「中央、中心、その分野・部門の中心的役割をする機関や施設」の意味を有していることから、「センター」の文字の前に他の用語が組み合わされた場合に、「他の用語」+「センター」で構成された結合商標から特定の観念や意味が生じることも考えられる。

そこで、本件商標の構成に含まれる「ケアセンター」の文字から生じる観念について検討すると、「センター」の文字に上述の意味があることから、「介護の施設」という観念が生じることがあるとしても、「注意の中心」、「注意の中央」といった観念も生じることは明らかである。また、「機関」には、「法人や団体などの意志を決定したり代表したりする組織、ある目的を達成する手段として設けた組織や機構」の意味があることから、「介護に関する組織」といった観念も生じることは明らかである。

そうとすれば、本件商標に含まれる「ケアセンター」の文字からは、介護サービス等の役務を提供する場所以外の観念が生じる。

また、「くれない」の文字は、「鮮明な赤色、紅色」の意味を有していることから、「くれない」の文字の後ろに他の用語が組み合わされた場合にも、「くれない」+「他の用語」で構成された結合商標から特定の観念や意味が生じることが考えられる。

そこで、本件商標の構成に含まれる「くれないケア」から生じる観念について検討すると、「くれない」の文字に上述の意味があることから、「赤色の介護」、「紅色の介護」、「赤色の注意」、「紅色の注意」という観念が生じることは明らかである。特に、「紅色」が「赤色」を示す用語として用いられること、また、一般に「赤色」は暖かい感じを与える暖色であることが知られており、このことから、「くれないケア」の文字からは、単純に「赤色の介護」という観念だけでなく、「暖かい介護」という観念も生じることが明らかである。また、「紅」を含むことわざには、優れていることを意味する用語として「紅」を用いたものが存在することから、「くれないケア」の文字からは、「優れた介護」、「目立つ注意」などの観念も生じる。

ウ 本件商標は、「くれない」、「ケア」、「センター」の3つの文字を含むとしても、各文字が同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、まとまりよく表された商標であり、本件商標は、構成全体として特定の観念を生じない造語である。

請求人は、本件商標の要部が「くれない」にあり、本件商標を外観上「くれない」と「ケアセンター」とに分離して捉えるのが自然であると主張している。

しかしながら、上述したように、本件商標においては、「くれない」、「ケア」、「センター」、「くれないケア」及び「ケアセンター」のいずれか一つの用語を要部として認識することは妥当ではない。また、本件商標中の「くれない」の文字部分が取引者、需要者に対して役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとする事情もなく、また、「くれない」以外の部分から出所識別標識としての称呼や観念が生じないと認めるに足りる事情も存在しないため、「くれない」の文字を本件商標の要部であるとする請求人の主張は失当である。

したがって、外観上「くれない」と「ケアセンター」とに分離して捉えるのが自然であるとする請求人の主張は認められるべきではなく、本件商標は、「くれないケアセンター」の構成全体が一体不可分のものであって、本件商標の構成全体が引用商標と比較されるべきである。

エ 本件商標と引用商標とを比較して検討してみるに、引用商標は、「くれない」の文字を標準文字で表してなるものであり、その文字は「紅色」の意味を有する語として広く知られていることからすると、「クレナイ」の称呼を生じ、「紅色」の観念を生じるものである。

本件商標と引用商標とは、外観において、両者は共に「くれない」の文字を有する点において共通するが、「ケア」及び「センター」の二語の有無に差異を有するため、外観上十分に区別することができる。

また、称呼については、本件商標から生じる「クレナイケアセンター」の称呼と引用商標から生じる「クレナイ」の称呼とは、共に「クレナイ」の音を共通にするが、「ケアセンター」の音の有無に差異を有するため、称呼上においても十分に区別することができる。

さらに、観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないため、観念上比較することができず、観念が類似するということもできない。

以上より、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても類似するものではないから、互いに非類似の商標である。

(3)請求人商標の周知性について

ア 甲第7号証ないし甲第16号証によると、請求人が「特別養護老人ホーム」の施設の開所当初から施設名称として「くれない」の文字からなる請求人商標を使用していることが認められ、パンフレットの発行があったこと、その発行部数や配付状況、新聞折り込みチラシが行われたこと、などが把握できたとしても、パンフレットの配布エリアが把握できないこと及びパンフレットの発行と需要者の認知度との関係性が証明できていないことから、パンフレットを所定部数、所定回数発行したことをもって直ちに請求人施設及び請求人商標に対する需要者の認知度が高まるとはいえない。

また、折り込みチラシについては、大阪市南部に限定されており、その配布範囲はさほど広範囲とはいえず、NTT西日本のタウンページにおける広告も大阪市南部版であり、くらしの便利帳における広告も東住吉区又は大阪市に限定されたものである。

イ 甲第9号証によると、請求人は、大阪市東住吉区の1か所で「特別養護老人ホーム」を営んでいるだけであり、その収容人数もたかだか82名程度の小規模施設であることから、当該地域の周辺において多少知られているとしても、請求人が主張するような「大阪府を中心とする隣接県の範囲」にまで請求人商標が取引者、需要者間において周知であるとはいえない。

ウ 甲第5号証から請求人の介護保険収入額(約4億円)が把握できたとしても、業界全体の介護保険収入総額が把握できる証拠は提出されておらず、業界全体の介護保険収入総額に対して請求人の介護保険収入額がどの程度を占めるのかも分からず、請求人の介護保険収入額が請求人商標の周知性に対してどの程度寄与しているのか不明である。

エ 大川氏の長寿関連記事の報道によっては、同氏の生活の場所などとして請求人の施設が紹介されているにすぎず、請求人商標の周知性獲得にさほどの影響はない。

オ よって、請求人商標は、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の業務に係る役務を表示する商標として、需要者間に広く認識されているとはいえず、請求人商標「くれない」の文字が請求人の出所表示として周知著名であるという実情は存在しておらず、本件商標が全体として一体不可分として理解・認識されることはあり得ない、との請求人の主張は失当である。

(4)小括

甲第3号証ないし甲第6号証、甲第17号証は、証拠適格に欠けており、証拠力を有しないか、有るとしても微弱であり、当該証拠を根拠として、「ケアセンター」が役務の提供場所を示す説明語であり、本件商標の要部が「くれない」にあるとする請求人の主張は失当である。

また、本件商標は、「くれないケアセンター」の構成全体が引用商標と比較されるべきであるところ、本件商標と引用商標とは、互いに非類似の商標であるため、本件商標と引用商標とが類似するとの請求人の主張は失当である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

3 商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、引用商標とは非類似の商標であって、別異のものというべきものである。また、引用商標はその周知性が認められないものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者において、その役務が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

4 商標法第4条第1項第15号について

(1)甲第18号証ないし甲第20号証によると、本件商標の出願日後にFAXの誤送信があったことが把握できるが、仮に、甲第19号証の報告内容が事実だとしても、本件商標の出願日前に行われたFAXの誤送信は1度だけである。

このような1度だけの誤送信を考慮したとしても、本件商標は引用商標とは非類似の商標であり、請求人商標は周知性を獲得できていないものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者において、その役務が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれはない。

なお、甲第20号証において、被請求人の事業所の名称が明らかにされているが、本件商標と被請求人の事業所の名称とは異なるものであるため、本号の該当性において、甲第20号証はその証拠適格を有しない。

(2)被請求人は、本件商標の登録出願時において、大阪府及び兵庫県内で合計12の訪問介護サービスの事業を運営しており、現時点では、大阪府内に10か所の事業所、兵庫県内に3か所の事業所を運営している(乙2)。被請求人が運営する「特別養護老人ホーム」の所在地域(東住吉区)には、請求人の事業所は存在していないことから、仮に、被請求人が本件商標を各事業所名称に使用したとしても、取引者、需要者が、請求人の運営する「特別養護老人ホーム」に関係する役務であると誤認混同することはない。

また、被請求人は、各事業所それぞれに、訪問介護の運営規定(乙1)を定めており、各事業所では、この運営規定に定められたサービス提供地域でのみサービスを提供している。被請求人の事業が訪問介護サービスであることから、運営規定に定められたサービス提供地域は極めて狭い地域である。

したがって、被請求人の各事業所においては、その所在する地域を大きく越えて訪問介護サービスを展開することはしておらず、被請求人の訪問介護サービスが、請求人が運営する「特別養護老人ホーム」の所在地域内で行われていないことが明らかであり、このことからも、誤認混同が生じることはないといえる。

(3)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

5 まとめ

以上のとおり、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号についての請求人の主張は、いずれも失当である。

第5 当審の判断

1 利害関係

請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有するものと認める。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標と引用商標の類否

ア 本件商標

(ア)本件商標は、前記第1のとおり、「くれないケアセンター」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字がひらがなと片仮名で表されていることから、外観上「くれない」の文字と「ケアセンター」の文字からなる結合商標とみるのが自然である。

そして、本件商標の構成中、「くれない」の文字は、「紅色」の意味を有する「紅」(広辞苑第六版)の語の平仮名表記と理解されるものであり、また、「ケアセンター」の文字は、「ケア」が「世話、保護、手当、介護、看護」などの意味を有し、「ケアプラン(介護サービス計画)」、「ケアマネージャー(介護支援専門員)」のように使用され、さらに、「センター」が「中心、中央、『中心地、中央機関、総合施設』などの意味で複合語をつくる。『医療センター、福祉センター』など」(いずれも「コンサイスカタカナ語事典第4版」)の意味を有するいずれも親しまれている語であるから、「ケアセンター」の文字部分は、指定役務との関係においては「介護の総合施設」ほどの意味合いを想起させるものである。

加えて、遅くとも平成23年頃から介護を提供する施設の名称の一部に「ケアセンター」の文字を使用している施設が存在し(甲3)、平成27年9月時点において全国で相当数存在していることが推認でき、さらに本件商標の登録査定の日(平成26年11月7日)以降、平成27年9月までの間に、介護保険法の改正法の施行などはあったものの、介護施設が急増するというべき要因は認められないことを併せみれば、「ケアセンター」の文字は、本件商標の登録査定時には、少なくとも介護に係る各種役務について、役務の提供場所を表示したものと理解され、自他役務の識別標識としての機能を有さない部分であると判断するのが相当である。

そうすると、本件商標は、「くれない」と「ケアセンター」の文字を組み合わせた結合商標であって、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められず、「ケアセンター」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるから、「くれない」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものというべきである。

してみれば、本件商標は、その構成中「くれない」の文字に相応し、「クレナイ」の称呼、及び「紅色」の観念を生じるものといわなければならない。

(イ)なお、被請求人は、本件商標は「くれない」、「ケア」、「センター」の3つの文字を含み、それら各文字の意味から「ケアセンター」が「注意の中心」、「介護に関する組織」など、また、「くれないケア」が「赤色の介護」、「暖かい介護」などの観念が生じるなどとし、本件商標は「くれない」の文字部分は要部とはいえず、「くれないケアセンター」の構成全体が一体不可分のものである旨主張している。

しかしながら、上記のとおり、「くれない」の文字部分を要部として抽出するのが相当であるから、被請求人のかかる主張は採用できない。

イ 引用商標

引用商標は、前記第2のとおり、「くれない」の文字からなるところ、「クレナイ」の称呼、及び「紅色」の観念を生じるものである。

ウ 本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標を比較すると、両者は、「くれない」の構成文字、「クレナイ」の称呼及び「紅色」の観念を共通にするものであるから、外観、称呼及び観念のいずれの点から見ても相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。

(2)指定役務の類否

ア 本件商標の指定役務

本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、第44類「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ,介護用医療器具の貸与」である。

イ 引用商標の指定役務は、前記第2のとおり、第44類「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」である。

ウ 両商標の指定役務の類否

本件商標の指定役務中「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」と引用商標の指定役務「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」とは、介護に係るサービスであって、共に、それらの提供の手段、目的及び場所、需要者の範囲並びに事業者などを共通にすることが多い類似の役務と判断するのが相当である。

しかしながら、本件商標の指定役務中「介護用医療器具の貸与」と引用商標の指定役務「高齢者及び障がい者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障がい者の養護又は介護」とは、両者の主とする提供者が、前者はレンタル事業者であるのに対し、後者は介護を提供する事業者であり、また、主とする需要者が、前者は介護を提供する事業者であるのに対し、後者は介護を受ける者であるなどといった点が異なっていることから、両者は非類似の役務と判断するのが相当である。

(3)小括

上記(1)のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標であり、上記(2)のとおり、本件商標の指定役務中、「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」は、引用商標の指定役務と類似するものと判断するのが相当であるから、本件商標は、その指定役務中「介護,介護に関するコンサルティング,介護に関する指導,介護に関する情報の提供,介護に関する相談,介護に関する取次ぎ」について、商標法第4条第1項第11号に該当する。

しかしながら、本件商標の指定役務中「介護用医療器具の貸与」と引用商標の指定役務とは、上記(2)のとおり、非類似の役務と判断するのが相当であるから、本件商標は、その指定役務中「介護用医療器具の貸与」について、商標法第4条第1項第11号に該当するといえない。

3 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について

(1)請求人の使用する商標の周知性について

ア 請求人提出の甲各号証及びその主張によれば、以下のとおりである。

(ア)請求人は、平成8年7月から大阪市東住吉区において、「特別養護老人ホームくれない」という施設名の特別養護老人ホームを開設し、現在まで継続して運営している(甲7〜甲10)。

同施設の建物上部には「特養 くれない」の表示がされている(甲9)。

(イ)同施設は、現在、通常入居者数(定員)82名、短期入所者数(定員)10名であり、平成25年度における延べ利用者数は、通常入居者が27,387人、短期入所者が3,466人であり、一日平均の利用者数は、前者が75.03人、後者が9.5人である(甲8〜甲10)。

また、平成21年度ないし平成25年度における同施設の介護保険収入は、毎年4億円前後である(甲8)。

(ウ)甲第9号証は、請求人のパンフレット(平成8年7月、平成11年4月、平成17年4月等)であり、いずれのパンフレットにも、「くれない」の文字が表示されている。

(エ)甲第11号証は、請求人の発行する「特別養護老人ホーム くれない」、「くれない通信」及び「めぐむ・くれない通信」を表題とする広報誌(1999年(平成11年)〜平成27年1月)であり、それらには、「くれない」の文字が表示されている(甲11)。

当該広報誌の総発行部数は少なくとも1,911,400部であり、直近3年(平成24年9月号〜平成27年1月号)の発行部数は652,300部である(甲11、甲13及び甲14)。

甲第12号証は、「くれない通信配布先一覧表」とされるものであるところ、2006年(平成18年)1月、平成21年9月、平成22年9月、及び平成26年9月に当該広報誌を、大阪市東住吉区、阿倍野区及び平野区に配布される朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、読売新聞によって配布した部数が記載されている(甲12)

(オ)パンフレットの印刷費は、約142万円(甲10)であり、広報誌の印刷・配布費は、約941万円(甲13)で、直近3年では約286万円である(甲14)。

(カ)請求人は、2014年(平成26年)2月発行の「NTTタウンページ(大阪市南部版)」に「特別養護老人ホームくれない」の文字を大きく表示し、平成25・26年度版「大阪市くらしの便利帳」、及び大阪市発行の情報誌「大阪市版福祉・医療マップ」及び請求人所在の地域マップに「くれない」の文字を表示した広告を掲載し、また、創立5周年記念の講演会、創立10年のイベントでも、「くれない」の文字を表示している。(甲15)

(キ)請求人の施設に世界最高齢者が入居していたことから、平成23年ないし翌24年には、新聞やテレビ等で同氏の入所先などとして「特別養護老人ホーム『くれない』」が紹介された(甲16)。

イ 上記アの事実からすれば、請求人は平成8年7月に大阪市内において特別養護老人ホームを開設し、その後現在まで継続して、高齢者などの介護に係る役務を提供していること、及び請求人は当該役務について商標「くれない」(請求人商標)を使用していることが認められる。

しかしながら、請求人の施設は大阪市内の1施設に限られていること、当該施設は定員が92名(短期入所者を含む。)と大規模な施設とはいえないこと、広報誌の配布先とする介護関係者の範囲は不明確であり、他の配布先は入居者家族、大阪市東住吉区全域、阿倍野区及び平野区の一部地域に限られていること、タウンページ、福祉・医療マップ及びくらしの便利帳などにおける広告も大阪市内に限定されたものであること、世界最高齢者に係る記事は平成23年及び翌24年に限られている上、入所先などとして「特別養護老人ホーム『くれない』」などの記載があるにすぎないことから、請求人商標「くれない」は、請求人の業務に係る役務(介護など)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものとまでは認めることができないと判断するのが相当である。

(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性

上記(1)のとおり、請求人商標は、請求人の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。

そうとすれば、本件商標をその指定役務中、第44類「介護用医療器具の貸与」に使用しても、取引者、需要者をして、請求人商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

なお、請求人は、証拠(甲18〜甲20)を提出し、被請求人への書類が請求人に誤って送付されことや被請求人の施設名の表示態様からも、本件商標は請求人商標との関係で出所の混同を生じさせるおそれがある旨主張しているが、その前提が事実であるとしても、送付の誤りは本件商標の登録査定の日前後を合わせてもわずか2回であること、本件商標の態様と施設名の表示態様は別異のものであることから、先の認定を左右するものとは認められない。

したがって、本件商標は、第44類「介護用医療器具の貸与」について、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものといえない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、「結論掲記の役務」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とし、その余の指定役務についての登録は、同法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも該当するものではないから、その登録を無効とすることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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