結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2015−900388(T2015−900388/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5795381号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成26年6月10日に登録出願,第3類「シャンプー,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,つけづめ,つけまつ毛」並びに第8類,第9類,第14類,第16類,第18類,第20類,第21類,第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同27年8月4日に登録査定,同年10月2日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標の指定商品中,第3類「シャンプー,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,つけづめ,つけまつ毛」について,登録異議の申立ての理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。
[登録異議の申立ての理由]
本件商標は,英文字で「CYAN」と横書きしてなるものである。
しかるに,「シアン(CYAN)」の語は,「青緑色」の意味を有する語であり,「JIS・日本工業規格 慣用色名 269色 見本」に記載されているほか,ジェルネイル,インク,Tシャツ,風呂敷,暖簾等の商品においても,「青緑色」の色調を表す語として普通に使用されているものである(甲1〜7)。
また,「シアン(CYAN)」は,「マゼンタ(MAGENTA)」及び「イエロー(YELLOW)」と並ぶ「色料の三原色」の一つとして認識されているものでもある(甲8〜9)。
すなわち,本件商標「CYAN」は,これを本件商標の指定商品に使用するときは,「青緑色の商品」を直感させ,単に本件商標の指定商品の品質を表す標章にすぎないものであることから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
また,本件商標「CYAN」を,「青緑色の商品」以外の本件商標の指定商品に使用するときは,あたかもその商品が「青緑色の商品」であるかのごとく直感させ,その商品の品質について誤認を生ずるおそれのあることは明白であって,商標法第4条第1項第16号に該当する。
以上の理由により,本件商標は,登録の要件を具備しないものとして,その登録は取り消されるべきである。
(1)証拠及び職権調査によれば,以下の事実が認められる。
ア 「CYAN」の語の意味等について
(ア)「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)によれば,「シアン」の見出し語で,「【cyaan オランダ・cyan イギリス】澄んだ青緑色。カラー写真・絵具・印刷インクなどの三原色の一つで,赤の補色。」の記載がある。
(イ)「新英和中辞典」(1999年,株式会社研究社発行)によれば,「cyan」の見出し語で,「青緑色(の)。」との記載がある(甲1)。
(ウ)「コンサイス外来語辞典 第3版」(1982年12月1日,株式会社三省堂発行)によれば,「シアン」の見出し語で,「cyan・・青緑色.」等の記載がある。
(エ)「学研 新世紀大辞典」(1968年2月1日,学研(学習研究社)発行)によれば,「減算混合 2つ以上の色を混合するとき,混合する色数が多くなるほど,混合結果の色の明度が低くなる。上は色フィルターを重ね合わせた混合例で,ふつう原色として,マゼンタ・黄・シアンの3色を用いる。」との記載がある(甲8)。
(オ)「日本語になった外国語辞典 第2版」(1990年8月15日,株式会社集英社発行)によれば,「シアン」の見出し語で,「cyan・・青と緑の中間の色.青緑色.」等の記載がある。
イ 「CYAN(シアン)」の語に係る取引の実情について
(ア)「街図鑑.net」のウェブページにおいて,「JIS・日本工業規格 慣用色名 269色 見本」の見出しの下,「このページは,JIS・日本工業規格が『物体色の色名』と規定している慣用色,269色を並べたものです。・・・印刷では,シアン(青:シアン),赤(マゼンタ),イエロー(黄:イエロー)を混ぜると,『黒色』になります。このページの作成には,雑誌『Mr.PC2011年6月号特別付録』の『JIS規格269色カラー事典』を参考にしていますの,記載の番号の順序は同じです。」の記載及び「231 Cyan(シアン)bgcolor: #009cd1;」の記載とともに青緑色の色見本が掲載されている(甲2)。
(イ)「wwdjapan.com」のウェブページにおいて,2014年3月20日付けインタビュー記事中に,「Q.2014−2015秋冬シーズンのメイクトレンドは?」の見出しの下,「2014−15年秋冬コレクションは面白いトレンドがみられた。・・・色みのトレンドも面白かった。アイシャドウはオークにモスやセージグリーンをブレンドし,アイライナーでペトロールブルーやシアンなどの鮮やかなブルーをアクセントにいれるアイメイクが多く見られた。」との記載がある。
(ウ)「beauty news tokyo」のウェブページにおいて,2014年5月14日付けニュースには,「クロマグラフィック ペンシル 限定4色 ¥2,000(税抜)」の見出しの下,「写真左から,ジェニュインオレンジ(ブライトオレンジ),ハイデフ シアン(シアン),プロセス マジェンタ(マットマゼンタ),ブラック ブラック(ディープブラック) この夏はファンタジーな色彩で,もっともっとメイクを楽しみたいですね♪」との記載と共に,鉛筆のような形状の4色の化粧品の写真が掲載されている。
(エ)「@cosme」のウェブページにおいて,「色で選ぶ!色で楽しむ!色で魔法をかける!2013年春夏 新作コスメベストセレクション」の見出しの下,「Vol.1 アイシャドウ編」に「デュオアイシャドー【発売中】新2色/各4,410円 ・・・2色アイカラー『デュオアイシャドー』からは,ソフトピンク×ブライトピンクとグリーン×シアンが登場。単色でも重ねても,印象的でモダンな目元がつくれます。」との記載と共に,ケースに2色ずつ組み合わされた化粧品の写真が掲載されている。
(2)以上を総合すれば,本件商標の登録査定時において,「CYAN」(シアン)の文字は,「青緑色」の色彩を示す語として,一般に親しまれているといえるものであって,化粧品業界においても,その商品が青緑色の色合いのものであることを表すものとして,普通に使用されているものである。
本件商標は,「CYAN」の欧文字を横書きしてなるところ,これは,上記2(2)のとおり,「青緑色」の色彩を示す語であると直ちに看取,認識されるものである。
そして,上記2(2)のとおり,化粧品業界においても,「CYAN」(シアン)の文字は,商品の色彩を表す語として普通に使用されているといえるものである。
そうすると,本件商標は,これを本件異議申立てに係る指定商品中,色彩がその商品の特性上重要な要素となる商品「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」(以下「本件商品」という。)に使用しても,これに接する取引者・需要者は,該商品が青緑色の色彩であること,すなわち,単に商品の品質(色彩)を表示するにすぎないものと認識するというのが相当であり,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって,本件商標は,本件異議申立てに係る指定商品中,本件商品については,商品の品質(色彩)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと認められるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
以上のとおりであるから,本件商標は,本件異議申立てに係る指定商品中,本件商品については,商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
(1)本件商標の構成
本件商標を構成する各構成文字「C」「Y」「A」「N」は全て大文字で太い線が用いられている。そして,各構成文字には以下の特徴がある。
ア 「C」の文字は,右側の開口部が鋏あるいは口のように広がっている。また,中央部の空間は縦長に構成されている。
イ 「Y」の文字は,その上部の2本の線がそれぞれ中央部より上部にかけて広がるように徐々に太く構成されている。
ウ 「A」の文字は,左右の線が上端から下端にかけて広がるように徐々に太く構成され,下部の横線は比較的細い線で構成されている。
エ 「N」の文字は,縦線がそれらを連結する斜めの線より太く構成されている。
このように,本件商標は,各構成文字それぞれについて独特の書体で構成しつつ,線の太さや細さのバランスをとることでまとまりと安定感,力強さがあるものである。かかる構成からなる本件商標は,商品の品質表示として「普通に用いられる方法で表示してなるもの」ではない。
本件商品は,いずれもファッション性の高い商品である。そして,本件商品に接する需要者,取引者は,それなりのセンスを持って商標に接するから,かかる需要者等にとって,本件商標はその独特の書体によって本件商品の目印としての機能を十分発揮するものである。
(2)本件商標の意味合い
「CYAN」の欧文字から「シアン」の称呼が生じる。この「シアン」から想起される観念には,化合物の「シアン化カリウム」があり,毒物の代名詞的存在の「青酸カリ」である(乙1)。また,「シアン」の称呼は,「思案」,「試案」,「私案」などの漢字の称呼でもある。
このように,片仮名「シアン」には,色としての意味合いがあるとしても,化合物や漢字の称呼としての意味合いもある。また,欧文字「CYAN」については,絵の具やプリンターの印刷インキの色として親しまれてきたものである(乙1)。
以上のように,「シアン」及び「CYAN」には多くの意味合いがあり,さらに,欧文字「CYAN」を本件商標のように独特の書体で構成すれば,本件商品の需要者等にとって商品の色彩表示であるとの一義的認識は生じない。
(3)本件商標は,商標権者が発行する雑誌の題号と同じである(乙2)。
この雑誌は徐々に女性の間に周知となってきており,本件商品の需要者はこの雑誌の需要者と重なっている。
したがって,この雑誌を知っていて本件商標が使用された本件商品に接する需要者は,この雑誌の題号を想起する。この点においても,本件商標を本件商品の単なる色彩表示と認識するより,商標として認識する需要者が多いものと考えられる。
(1)本件商品は「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」であるところ,申立人が提出した証拠は,「ジェルネイル」に関するもののみであって,一つの会社が「ジェルネイル」に筆記体の「cyan」又は片仮名の「シアン」を使用したことを示すだけである。
また,取消理由通知における取引の実情で示された商品は「アイライナー」と「アイシャドー」に関するもののみであって,「アイライナー」については,取材記事の発言の中に「シアン」の言葉があるものと(上記第3の2(1)イ(イ)),4本のアイライナーが並べられ,その2本目のものを「ハイデフシアン(シアン)」と説明したものである(上記第3の2(1)イ(ウ))。また,「アイシャドー」については「グリーン×シアンが登場」と説明されているだけである。そして,これらは,いずれも片仮名「シアン」に関するものである。
すなわち,上記のいずれの証拠においても,欧文字「CYAN」の使用例は示されておらず,まして本件商標と同じ構成態様からなる標章が使用されている事実は示されていない。
(2)ここで,「化粧品」は,「紅・白粉などをつけて顔をよそおい飾ること」に用いるためのもの(株式会社岩波書店発行「広辞苑」)(乙3)である。
しかしながら,「化粧品」の概念はより広く,丸善株式会社発行「化粧品辞典」によれば,「薬事法第2条第3項において,化粧品とは人の身体を清潔にし,美化し,魅力を増し,容貌を変え,又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために,身体に塗擦,散布その他これらに類似する方法で使用されるもので,人体に対する作用が緩和なものをいうと定義されており,特に安全性が重要視されている」とある(乙4)。
そして,「化粧品として代表的なものとしては,スキンケア化粧品,メークアップ化粧品,ボディケア化粧品,ヘアケア化粧品,フレグランス化粧品があげられる」とある(乙4)。
これらの化粧品において色彩が商品の特性上重要な要素となる商品は,メークアップ化粧品の「ベースメークアップ化粧品」と「ポイントメークアップ化粧品」(乙4)であると考えられる。上記のいずれの証拠で示された商品はいずれもこの「ポイントメークアップ化粧品」に属する。
商品区分の第3類に例示されている商品「化粧品」の概念には,多種の商品が含まれるが,例えば,「化粧水」,「クリーム」,「香水類」は色彩と関係がない。
さらに,商品「化粧品」の概念には,色彩が商品の特性上重要な要素となるものであったとしても,「シアン」という化合物のイメージから肌に直接用いることに抵抗を感じる商品,例えば口紅,も含まれる。
また,本件商品の中には色彩が商品の特性上重要な要素ではないものや本件商標との関係で商品に使用することに困難性があるものが存在する。
商標権者は,上記第3の取消理由に対して,上記第4のとおり意見書を提出するが,以下のとおり,その主張はいずれも採用することができない。
(1)商標権者は,本件商標を構成する各構成文字は,それぞれについて独特の書体で構成され,まとまりと安定感,力強さがあるものであるから,本件商標は普通に用いられる方法で表示してなるものではない旨主張する。
しかしながら,商標権者が主張する本件商標の書体の特徴は,一般的な太字のゴシック体と比べて,いずれも子細に観察しないと気づかないような僅かな相違にすぎないから,それらの特徴は格別特異なものであるとはいえず,本件商標は,本件商品の品質(色彩)を普通に用いられる方法の範囲で表示するものとして,その取引者,需要者によって一般に認識されるものと解されるから,それらの特徴により,自他商品の識別力があるとは認められない。
(2)商標権者は,「シアン」及び「CYAN」には「シアン化物」等の多くの意味合いがあり(乙1),さらに,欧文字「CYAN」を本件商標のように独特の書体で構成すれば,本件商品の需要者等にとって商品の色彩表示であるとの一義的認識は生じない旨主張する。
しかしながら,「シアン」及び「CYAN」の文字は,上記第3の2(2)のとおり,「青緑色」の色彩を示す語としても,一般に親しまれているといえるものであって,化粧品業界においても,その商品が青緑色の色合いのものであることを表すものとして,普通に使用されているものであるから,本件商品の色彩表示のために何人もその使用を欲するということができる。また,本件商標の書体が特異なものとはいえないことは,上記(1)のとおりである。そうである以上,「シアン」及び「CYAN」の語に別の意味があるとしても,本件商品の品質(色彩)を表示するために,取引に際し必要適切な標章として何人もその使用を欲するものについて,特定人によるその独占使用を認めることは妥当でないというべきである。
(3)商標権者は,本件商標は,商標権者が発行する雑誌の題号と同じであって,当該雑誌が徐々に女性の間に周知となってきており,かつ,本件商品の需要者はこの雑誌の需要者と重なるから,本件商標に接する需要者は,当該雑誌の題号を想起し,本件商標を単なる色彩表示と認識するより,商標として認識する需要者が多いことが考えられる旨主張する。
しかしながら,商標権者が発行する雑誌「CYAN 2016 SUMMER」の表紙及び裏表紙(乙2)を提出するのみでは,本件商標が,同雑誌の題号として,本件商品の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないし,仮に,そのことが周知であったとしても,本件商品の品質(色彩)を表示するために,取引に際し必要適切な標章として何人もその使用を欲するものについて,特定人によるその独占使用を認めることが妥当でないことは,上記(2)のとおりである。
(4)商標権者は,申立人及び上記第3で示された証拠は,「ジェルネイル」,「アイライナー」及び「アイシャドー」に関するもののみであって,これらは,いずれも片仮名「シアン」に関するものであり,欧文字「CYAN」の使用例は示されていない旨,更には,本件商品には色彩が商品の特性上重要な要素ではないもの,また,「シアン」という化合物のイメージから肌に直接用いることに抵抗を感じる商品,例えば口紅,が含まれるから,欧文字で独特の書体からなる本件商標は,その意味合い等と合わせて本件商品の色彩を普通に用いられる方法で表示するものではない旨主張する。
しかしながら,「商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,指定商品に関する取引者,需要者が当該商標に接した場合,これをどのように認識し理解するかが重要なのであるから,取引者,需要者が,商品の品質,すなわち,商品の内容を表示したものと一般に認識することをもって足りる。そして,「シアン」及び「CYAN」の文字は,上記第3の2(2)のとおり,「青緑色」の色彩を示す語としても,一般に親しまれているといえるものであって,化粧品業界においても,その商品が青緑色の色合いのものであることを表すものとして,普通に使用されているものであるから,本件商品の取引者,需要者が本件商標に接した場合,取引者,需要者が,商品の品質,すなわち,商品の内容(色彩)を表示したものと一般に認識する可能性は十分にあるといえる。
以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品中「化粧品,つけづめ,つけまつ毛」については,商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。
また,その余の指定商品については,取り消すべき理由がないから同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持するものとする。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
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