Trademark Appeal Case
欧文字称呼観念類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2016−900166(T2016−900166/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5836325号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成よりなり,平成27年10月22日に登録出願,第9類,第28類,第41類及び第42類に属する別掲2に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同28年2月19日に登録査定,同年3月25日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は,以下のとおりであり,現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4225767号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成4年9月30日に登録出願,第41類「ニュース及び事件の収集・発表・そのための連盟の組織,金融及び商業に関する知識の教授」を指定役務として,同10年12月25日に設定登録され,その後,同20年12月24日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(2)登録第4024029号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,昭和62年2月26日に登録出願,第26類「新聞」を指定商品として,商標法第3条第2項の適用を受けて,平成9年7月4日に設定登録され,その後,同19年7月10日に商標権存続期間の更新登録がされ,さらに,同20年12月10日に,指定商品を第16類「新聞」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第4225765号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成4年9月30日に登録出願,第35類「商業統計的情報の提供,企業の事業化に関する調査・企画・予測・助言・評価,経営の診断及び指導,商業に関する情報の提供」を指定役務として,同10年12月25日に設定登録され,その後,同20年12月24日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(4)登録第4225766号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成4年9月30日に登録出願,第36類「外国為替レート・その他金融に関する情報の提供,保険に関する情報の提供,金融分析,財務の査定及び評価,金融及び保険に関する助言」を指定役務として,同10年12月25日に設定登録され,その後,同20年12月24日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
(5)登録第3251842号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲3のとおりの構成よりなり,平成4年9月30日に登録出願,第38類「テレビジョン放送,報道をする者に対するニュースの供給」を指定役務として,商標法第3条第2項の適用を受けて,同9年1月31日に設定登録され,その後,同19年2月6日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
以下,上記引用商標1ないし5をまとめていうときは,「引用商標」という。
3 登録異議申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第7号及び同項第8号に該当するものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,黒色で表された欧文字「f」及びオレンジ色で表された欧文字「t」からなり,「エフテイ」又は「エフティー」の称呼を生じると認めるのが自然であるところ,引用商標1からは,「エフテイ」又は「エフティー」の称呼を生じる。そして,本件商標と引用商標1とは,その共通する欧文字において小文字か大文字かの差異を有するとしても,欧文字の小文字「f」と「t」の組み合わせであるとして,申立人の取引に係る商標であるとの観念を共通にすることは明らかである。そのため,たとえ外観に差異を有しているとしても,両者の称呼及び観念は同一であり,全体として酷似しているものと認められる。
また,本件商標の第41類の指定役務は,引用商標1の第41類の指定役務「ニュース及び事件の収集・発表・そのための連盟の組織,金融及び商業に関する知識の教授」と抵触する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は,1888年からの長きにわたり,金融を始めとする経済・社会・政治関係のニュースを中心に取り扱うメディア企業であり,その社名の略称である「FT」を引用商標の指定商品・役務について使用し,日本においても著名な商標となったものである。そして,申立人がニュースを始めとする情報を顧客に提供する企業であること,インターネットの発達に伴い情報の提供手段としてダウンロードの可否を問わず電子媒体によるものも多く存在すること,近年,申立人は上記商品・役務以外の分野においても広く事業を行っていること等の理由により,本件商標をその指定商品・役務について使用した場合には,これに接する需要者が申立人の業務に係る商品・役務と誤認し,その出所について混同を生じさせるおそれがある商標と認められる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,申立人を表す著名な引用商標を剽窃したものと認められ,著しく社会的妥当性を欠くものであるから,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,申立人の名称の著名な略称「FT」と酷似し,申立人の承諾を得ていないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同項第7号及び同項第8号に違反してされたものであるから,取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標1との類否
(ア)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,黒色が施された欧文字の小文字「f」とオレンジ色が施された欧文字の小文字「t」を組み合わせて図案化してなるものであるところ,これらは,かなり肉太の文字で表されており,また,その上部は,わずかの隙間を介して接近し,外周が円弧を描くように表され,さらに,それぞれの文字の横線は接合して表され,色彩を含め構成全体の図案化の程度は決して低いものとはいえない。
してみると,本件商標は,「f」と「t」の特徴的な組合せが需要者に強く印象付けられるものであって,構成全体をもって特異性のある図形商標を表したと認識されるとみるのが相当であり,これより特定の称呼及び観念は生じないものと認められる。
(イ)引用商標1
引用商標1は,別掲3のとおり,格別に特徴を有するものとはいえない欧文字の大文字「FT」をゴシックで横書きにしてなるところ,一般的には,ローマ字2字からなる商標は,商品の品番,型番,種別等又は役務の種別,等級等を表す記号又は符号等として普通に使用されているところから,「極めて簡単で,かつ,ありふれた標章」に該当するものとして,自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そうすると,引用商標1は,その構成文字から「エフティ」の称呼を生ずる場合があるとしても,特定の観念は生じないものとみるのが相当である。
(ウ)本件商標と引用商標1との類否
本件商標と引用商標1とは,これらを構成する文字の書体において顕著に相違し,かつ,図案化して表されたものか,あるいは,普通に用いられる態様の文字で表されたものであるかの相違があることに加え,色彩の点においても相違するものであるから,それぞれから受ける印象が大きく異なり,これらを時と所を異にして離隔的に観察した場合においても,外観上,互いに紛れるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標と引用商標1とは,外観上,類似する商標ということはできない。
また,称呼及び観念においては,本件商標は,構成全体をもって,一種の図形商標を表したと認識されるものであるから,これより特定の称呼及び観念は生じないものであり,引用商標1は,その構成文字から「エフティ」の称呼を生ずる場合があるとしても,特定の観念は生じないものとみるのが相当である。
したがって,本件商標と引用商標1とは,称呼及び観念において比較することはできない。
仮に本件商標が「エフティ」と称呼され,引用商標1と該称呼を共通にする場合があるとしても,本件商標と引用商標1は,前記のとおり,外観において大きく相違し,観念においても比較できないものであるから,両商標が使用される指定役務「知識の教授」における需要者の通常有する注意力を基準として考慮すれば,本件商標と引用商標1とを誤認,混同することは考え難いというべきである。
(エ)以上(ア)ないし(ウ)によれば,本件商標と引用商標1は,外観において顕著に相違し,かつ,観念においても類似すると認められる点を有しないものであって,仮に称呼を同じくする場合があるとしても,両商標を全体的に考察すれば,互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
イ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の著名性
(ア)前記2(2)及び(5)によれば,引用商標2及び5は,商標法第3条第2項の適用を受けて登録されたものである。すなわち,引用商標2は,その指定商品「新聞」について,また,引用商標5は,その指定役務「テレビジョン放送,報道をする者に対するニュースの供給」について,それぞれ使用をされた結果,需要者が申立人の業務に係る商品及び役務であることを認識するに至った商標と認めることができる。
そして,甲第8号証ないし甲第11号証,甲第14号証,甲第18号証,甲第19号証,甲第23号証及び甲第25号証によれば,申立人は,1888年に,経済紙「ファイナンシャル・タイムズ」を創刊し,当該紙は,2015年(平成27年)7月の時点において,紙面と電子版を合わせた発行部数は,73万7000部であり,紙面は欧州のみならず,米国,日本を含むアジアでも発行され,2014年(平成26年)の時点において,申立人グループ全体の売上高は約644億円であったこと(甲8,甲9),我が国おけるファイナンシャル・タイムズ紙の発行部数は,本件商標の登録出願日(平成27年10月22日)前の2011年(平成23年)1月から2015年(平成27年)12月までの間の半年ごとに,それぞれ約7000部前後であり(甲10),その電子版のページビューは,月平均約140万件であったこと(甲11),ファイナンシャル・タイムズ紙の紙面には,「FT」の文字が表示されており(甲14),他社のニュースにおいても,例えば,「マイケル・ブルームバーグも愛した英金融紙FTを日本の経済新聞が買収」,「英ファイナンシャル・タイムズ紙(FT)は,金融業界関係者に愛された新聞だった。」などのように,ファイナンシャル・タイムズ紙について「FT」の文字を用いていたり(甲18),申立人が2008年(平成20年)に東京で開催したイベントでのパンフレットには「FT BUSINESS OF LUXURY」と表記したこと(甲19),英語の辞書(小学館ランダムハウス英和大辞典)の「F.T.」の項目には,「the Financial Times」の記載があること(甲23),さらに,申立人は,2011年(平成23年)に,ファイナンシャル・タイムズ紙に掲載された各種情報を購読するための専用アプリを公開したこと(甲25),などを認めることができる。
(イ)前記(ア)で認定した事実によれば,「FT」の文字よりなる商標(引用商標と同様,普通に用いられる態様のもの。以下「FT商標」という。)は,申立人の業務に係る商品「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等を表示するものとして,本件商標の登録出願日前には既に,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ,その著名性は,本件商標の登録査定日(平成28年2月19日)の時点においても継続していたものと認めることができる。
しかし,FT商標が「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等以外の分野の商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,FT商標は,「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等を取り扱う分野を超えてなお,周知・著名性を獲得していたと認めることはできない。
イ 出所の混同
前記アのとおり,FT商標は,申立人の業務に係る「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等を表示するものとして,本件商標の登録出願日前には既に,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
しかし,前記(1)認定のとおり,本件商標と引用商標1とは,互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるから,本件商標は,FT商標とも非類似の商標というべきである。
また,本件商標は,第9類,第28類,第41類及び第42類に属する別掲2のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものであるところ,これらの商品及び役務は,FT商標が使用される「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等とは,用途,目的等において明確に異なるばかりか,取引の対象,形態,流通経路,提供場所等をも大きく異なるものである。
そうすると,本件商標の指定商品及び指定役務とFT商標が使用される商品及び役務とは,極めて関連性の低いものというべきであり,さらに,FT商標が格別に特徴的な商標であるとはいい難く,ややもすれば,商品又は役務の記号,符号等と捉えられる場合があることを併せ考慮すると,本件商標に接する取引者,需要者が,FT商標を想起又は連想することはないというべきである。
してみると,本件商標は,これをその指定商品及び指定役務について使用しても,該商品及び役務が申立人又は同人と組織的若しくは経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように,商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標と認めることはできない。
ウ したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
前記(2)のとおり,FT商標は,申立人の業務に係る「経済紙」ないしこれに関連するニュースの供給等を取り扱う分野を超えて,本件商標の指定商品及び指定役務の分野にまでその周知・著名性が及んでいたと認めることはできない。
また,本件商標とFT商標とは,互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
してみれば,商標権者による本件商標の登録出願は,剽窃的なものということはできないばかりか,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないような場合にあたるものとも認めることはできない。
そうすると,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとはいえず,その他,本件商標が公序良俗に反する商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人の提出した証拠を総合すると,「FT」が,申立人の発行に係るファイナンシャル・タイムズ紙の略称を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より使用されている事実を認めることができるものの,申立人の略称を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より使用されている事実を明らかにする証拠は極めて少ない。
したがって,申立人の提出した証拠をもってしては,「FT」が申立人の略称を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
また,前記(1)のとおり,本件商標は,構成全体もって特異性のある図形商標を表したと認識されるものであって,申立人の略称である「FT」を想起し,連想させないものである。
したがって,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標ということはできないから,商標法第4条第1項第8号に該当する商標と認めることはできない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第15号,同第項7号及び同項第8号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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