Trademark Appeal Case
品質表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2016−4301(T2016−4301/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「やわらか電線」の文字を標準文字で表してなり、第9類「電線及びケーブル」を指定商品として、平成27年3月6日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、指定商品との関係において、構成中の『やわらか』の文字が『しなやかなさま。柔軟。』等の意味を有し、『電線』の文字が、商品の一般的名称として広く用いられていることから、全体として『しなやかな電線』、『柔軟な電線』程の意味合いを容易に看取させるものである。そうすると、本願商標を、その指定商品中の当該文字に照応する商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者は、その商品が『しなやかな電線あるいは柔軟な電線であること』を表示したものと理解するにすぎないことから、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。また、出願人は、本願商標が、継続的に日本全国で使用された結果、需要者の間において、出願人の出所表示として、その商品の需要者の間で認識されており、かつ、周知・著名商標となっている旨主張しているが、提出された資料及び職権調査によっては、本願商標をその指定商品に使用して識別力を有するに至ったとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審においてした証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べをした結果、別掲に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成28年7月29日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、これに対する意見を述べる機会を与えた。
4 請求人の意見
前記3の証拠調べに対し、請求人は何ら意見を述べていない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「やわらか電線」の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標の構成中、「やわらか」の文字は「堅くないさま。しなやかなさま。ふっくらしているさま。柔軟。」など(広辞苑第6版)を意味する語であり、また、「電線」の文字は、本願の指定商品「電線及びケーブル」における普通名称を表すものであるから、本願商標全体としては、「やわらかな(堅くない、柔軟な)電線」ほどの意味合いを認識させるとみるのが自然である。
そして、前記3のとおり、当審において職権で調査したところ、別掲のとおり、本願指定商品「電線及びケーブル」を取り扱う業界において、「柔らかいこと」あるいは「柔軟性を有すること」を商品の品質(特徴)として販売されている事実及びやわらかい品質を有する商品について「やわらか」の文字と本願の指定商品「電線及びケーブル」における普通名称である「ケーブル」又は「コード」の文字とを結合あるいは近接して使用している事実が認められる。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標全体から看取される「やわらかな(堅くない、柔軟な)電線」の意味合いから、商品の品質を表示したものと認識、理解するというのが相当である。また、本願商標は標準文字で表されたものであるから、態様上顕著な特徴は認められない。
以上から、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人(出願人)は、本願商標は、出願人により、継続的に全国で使用してきた結果、既に需要者の間において、出願人の業務に係る商品として全国的に広く知られた著名商標となっており、商標法第3条第2項にいう「使用による識別性」を獲得している旨主張し、証拠方法として、証拠資料1ないし証拠資料9(枝番を含む。)を提出している(以下「証拠資料○」の表示は、「証拠○」と簡略する。)。
ところで、商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものである。
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて、出願人の提出した証拠及び主張を検討する。
ア 事実認定
(ア)2011年(平成23年)8月から2015年(平成27年)6月までの間、鉄鋼新聞、電線新聞、日刊工業新聞、日刊産業新聞、電波新聞、静岡新聞、電線電纜ニュース(証拠2−3、2−4、4−1、4−2、5−2、6−1、6−5及び9−1ないし9−5)において、出願人の商品(電線・ケーブル)に関する記事とともに「やわらか電線」の語が掲載され、該新聞のうち2つの記事がインターネットウェブサイト上にも掲載された(証拠2−1及び5−1)。
また、2011年(平成23年)8月26日付け鉄鋼新聞における出願人の記事において、「同社では建設用電線市場で脱コモディティー化に向けて、新製品の開発を加速しており今回の投資はその一環。施工性を高めた製品をラインアップし販売量の拡大を目指す。投資金額は約5億円。現在同社のCVTケーブルの国内シェアは17%だが、新製品の投入をテコに3年後には20%の大台に乗せたい考えだ。」と記載されている(証拠2−1、2−3及び2−4)。
(イ)2014年(平成26年)2月24日付け「日経BP環境経営フォーラム」と称するウェブサイトにおいて出願人の商品に関する記事とともに「矢崎エナジーシステムはこれまで、事業所や工場で一般的に使われる交流600VまでのCV系ケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)をやわらか電線600Vシリーズとして幅広く展開してきた。」との記事が掲載された(証拠1−1)。
(ウ)2013年(平成25年)から2015年(平成27年)の各年に開催された電設工業展「JECA FAIR」と称する展示会の資料に、出願人はブース出展し、「『やわらか』電線600Vシリーズ」、「『やわらか』電線600V・6KVシリーズ」あるいは「『やわらか』電線シリーズ」が主な出展商品として掲載された(証拠3−1ないし3−3)。
(エ)「矢崎グループ 社会環境報告書2014」と題する印刷物において、「矢崎グループは、エコプロダクツ2013に富士登山をモチーフとした体験型ブース(中略)を出展しました。この展示は『やわらか電線』(中略)など、矢崎の環境に配慮した製品の特長を楽しみながら五感で学ぶことができ、(中略)連日大盛況でした。」との記事が掲載された(資料3−7)。
(オ)「楽天市場」のウェブサイトにおいて、2015年(平成27年)7月28日付け及び2016年(平成28年)3月10日付けに掲載された記事として、ケーブルの画像とともに出願人の名称及び「やわらか電線600Vシリーズ」あるいは「『やわらか』電線600Vシリーズ」の文字が掲載された(資料7−1及び7−3)。
イ 判断
前記アの事実によれば、出願人が本願商標である「やわらか電線」の文字を含む標章を本願指定商品「電線及びケーブル」に包含される商品とともに、2011年(平成23年)8月ごろから2016年(平成28年)3月に至るまで、新聞、展覧会、インターネットによる販売等において使用している事実が認められる。
しかしながら、前記(1)で述べたとおり、「やわらか電線」という語が、本願商標の指定商品「電線及びケーブル」を取り扱う業界において一般に使用されている「やわらか」と「電線」という語を結合したものであること、本願商標を付した商品の販売数量及び「電線及びケーブル」全体に占めるシェアなどは不明であること、使用期間も5年あまりと短い期間であること、新聞等の掲載も10回程度、展示会への出展も4回ほどと、広告宣伝としては回数がそれほど多いとはいえないこと、また、前記の新聞(インターネットを含む。)及び展示会以外による広告宣伝の方法、範囲及び回数について確認できる証拠は提出されていないこと等を総合考慮すると、使用により本願商標である「やわらか電線」をもって、需要者が出願人の業務に係る商品であることを認識できるに至っていると認めることはできず、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
ウ 請求人の主張
(ア)請求人は、前記ア(ア)後段に記載の事実から、2011年8月時点には既に、本願商標「やわらか電線」は、需要者の間において相当程度の販売量(シェア17%)を示しており、かつ、記事にある投資は、更なる販売量の増加を見込んだ投資であったことが理解されることから、これは商品の拡大を宣伝・広告する記事であって、本願商標が指定商品について需要者の間で広く認識さている(著名である)ことを示す有力な証拠である旨主張する。
しかしながら、証拠2−1、2−3及び2−4(以下「証拠2−1等」という。)の記事の商品のシェアに関する記載については、その記載のみからは、本願商標を付した商品のシェアを表したものかは不明である。そして、本願の指定商品は「電線及びケーブル」であって、「CVTケーブル」に限られるものではないことから、仮に、CVTケーブルにおける本願商標を付した商品についてのシェアを表したものであるとしても、商品「電線及びケーブル」全体におけるシェアは更に低い数値であると考えるのが相当であるといえる。また、証拠2−1等に記載の「販売数量の拡大を目指す」とした、その後の販売量やシェア等についても、具体的な数値を示す証拠は、なんら提出されていないことから、請求人のこの主張は採用することができない。
(イ)請求人は、前記ア(イ)に記載の事実から、本願商標が指定商品について需要者の間で、継続的に、幅広く展開(使用)されてきたことは明らかである旨主張する。
しかしながら、当該記事のみからは、具体的にどの程度の期間、規模、範囲(地域)及びその販売数量等であったのか定かでなく、また、当該記事が「日経BP環境経営フォーラム」と称するウェブサイトに一度掲載されたことのみから需要者の間で周知であることが明らかであるともいえず、この主張も採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものするものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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