sokuhyo

Trademark Appeal Case

周知商標の混同判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2016−900201(T2016−900201/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5843192号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5843192号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成27年10月13日に登録出願され,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として,同28年2月25日に登録査定,同年4月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当すると主張して本件登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は,以下の2件であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。

1 登録第829144号商標

登録第829144号商標(以下「引用商標1」という。)は,「TOPSIDER」の欧文字を横書きしてなり,昭和43年2月20日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同44年8月22日に設定登録され,その後,平成21年10月14日に指定商品を第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類」とする指定商品の書換登録がされたものである。

2 登録第5462438号商標

登録第5462438号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2に示すとおりの構成よりなり,平成23年2月21日に登録出願され,第25類「履物,運動用特殊靴」を指定商品として,同24年1月13日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当するから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第79号証を提出した。

1 引用商標の周知・著名性について

申立人は,1935年に靴底に細かい溝を設けた靴を開発し,「TOP−SIDER」と名付けてアメリカにおいて販売を開始した。第二次世界大戦ではアメリカ海軍の支給品として採用され,戦後はケネディー家が愛用したことにより,アメリカンスタイルの象徴的なアイテムとなった。その後,「プレッピーハンドブック」に掲載されたことにより,アメリカのアッパーミドルが好む趣味のよい靴として認知され,さらに,1987年にデニス・コナー率いるアメリカ代表チームが国際的ヨットレースであるアメリカズカップで優勝して以来,アメリカズカップの公式シューズとなった(甲4)。このようにして,「TOP−SIDER」ブランドの靴はアメリカ全土で広く知られるようになった。申立人は,若干のバリエーションはあるものの,発売当初から現在に至るまで,一貫して引用商標2の「TOP−SIDER」の字体とヨットの図形を申立人が製造・販売する靴に使用してきた。

我が国においては,1971年に東京・銀座で「TOP−SIDER」の靴の販売が開始され,1977年にはファッション誌において紹介され(甲5),遅くとも1979年頃には,ファッション誌及びヨット専門誌において,知名度を獲得していたことがうかがえる記載がある(甲6,甲7)。

申立人は,その後も代理店を通じて「TOP−SIDER」の靴を40年以上継続的に販売しており,「TOP−SIDER」「トップサイダー」は,たびたび新聞・雑誌等に掲載されている(甲8〜甲69)。

「TOP−SIDER」「トップサイダー」は,継続的かつ頻繁にファッション誌に取り上げられたことにより,歴史あるブランドとして需要者に広く知られていたことは明らかである。

また,ランダムハウス英和辞典(第2版)には商標「top―sider」が,申立人の靴を表す「柔らかい皮,布製でかかとが低いゴム底のカジュアルシューズ」として記載されている(甲75)。さらに,ウェブ辞書アルクで「トップサイダー」を検索すると,申立人の靴を表す「トップサイダーのモカシン」の記載がある(甲76)。

インターネットで「TOP−SIDER」を検索すると2004年から現在に至るまで約193万件,「トップサイダー」を検索すると約85万3千件のヒットがあった(甲77)。

申立人は,日本において,代理店であるABCマートを通じて順調に売上を伸ばしており,2015年の売上数量は約22万足であった。さらに,アメリカ以外でも世界37か国以上の国で靴を販売している(甲78)。

以上を総合すると,引用商標は,使用商品が販売された時には,申立人が製造・販売する靴を表示する商標として取引者・需要者に広く知られていたことは明らかである。

2 本件商標と引用商標との類似の程度について

本件商標は,欧文字「TOP−SIDER」の中央上部にヨットの図形を配した構成からなる。図形部分からはヨットの観念が生じ,文字からは「トップサイダー」の称呼が生じる。「TOP−SIDER」には「(組織の)上層部,指導部,首脳部」といった意味があるが,本件商標の指定商品の品質等を直接表すものではないから,需要者にはむしろ造語として認識されるものであり,特定の観念は生じない。

引用商標1は,欧文字「TOPSIDER」を横書きしてなり,「トップサイダー」の称呼が生じる。したがって,引用商標1と本件商標の称呼は,同一である。文字商標を含む商標は称呼をもって取引されることが多いため,称呼が同一である引用商標1と本件商標とは,相紛れるおそれのある商標であり類似する商標であるといえる。

引用商標2は,「TOP−SIDER」を横書きしてなり,「TOP−」と「SIDER」の聞を貫くように中心にヨットの図形を配し,左上部に「SPERRY」の文字を配し,全体を雲形の図形で囲む構成からなる。文字部分からはそれぞれ「スペリー」及び「トップサイダー」の称呼が生じる。いずれの語も造語であるため特定の観念は生じない。図形部分からは「ヨット」及び「雲」の観念が生じる。

引用商標2と本件商標とを比較した場合,称呼において「トップサイダー」の称呼が共通する。観念において「ヨット」の観念が共通する。外観において,中央にヨットの図形を配した構成が共通し,さらに,文字部分のみを比較するとその書体は完全に一致する。引用商標2が「SPERRY」の文字及び雲の図形を有するものの,本件商標の全ての要素,すなわちヨットの図形及び同一の書体で書された同一の文字列が引用商標2に完全に包含されているため,需要者に極めて近似した印象を与えると思料する。

さらに,本件商標権者は,本件商標権者が請求した登録第5488474号商標に対する無効審判において「TOP−SIDER」と「SPERRY TOP−SIDER」とは類似する旨を自ら主張している(甲79)。

よって,引用商標2と本件商標とは称呼,観念及び外観の全てにおいて極めて類似する商標であるといえる。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

上述のとおり,申立人は,ヨットの図形と「TOP−SIDER」の文字からなる商標を1935年から一貫して使用している。構成にはバリエーションはあるものの,「TOP−SIDER」の文字には引用商標2の書体を一貫して使用している。本件商標権者が,完全に同一の書体の「TOP−SIDER」とヨットの図形とを組み合わせた商標を偶然に選択したとは考えにくい。

以上をもってすれば,本件商標権者は,本件商標の登録出願当時,申立人の所有に係る著名な引用商標の存在を知り得ていたにもかかわらず,不正の目的をもって,本件商標を登録出願したものであると推認できる。

本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,商標の構成自体が公序良俗に反する場合だけでなく,一般に国際信義に反する場合及び当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合なども含まれると解される。

本件商標は,我が国のみならず世界的に知られている引用商標の持つ出所表示機能を希釈化させ,申立人の業務に係る商品との出所混同を生じさせるおそれがあるだけでなく,申立人の使用する商標に化体した信用,顧客吸引力等を毀損させるおそれがあるものであって,我が国の国際的な信頼をも損なうおそれがあるというべきであり,ひいては国際信義に反するものと思料する。さらに,引用商標が靴以外に登録されていないことを奇貨として,申立人の国内参入を阻止する目的で本件商標を登録出願したものであって,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると思料する。したがって,本件商標の登録を認めることは公序良俗を害する行為であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の製造・販売する靴の出所を表示するものとして,取引者及び需要者に広く知られた商標になっていたといえるものであり,上記2のとおり,本件商標と引用商標とは類似する商標である。また,本件商標と引用商標はいずれも造語であり創造標章である。さらに,引用商標は,申立人のハウスマークの一部を構成するものである。その上,本件商標権者は申立人が80年以上使用してきた「TOP−SIDER」の書体と同一の書体を採用している。

引用商標は申立人の靴の表示を表示するものとして需要者等に広く知られているところ,本件商標の指定商品は,「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」であり,いずれも第25類に属する商品である。靴と被服等は,いずれも身に着ける商品であり,同じブランドで統一したいという消費者の要望に応じて同じ店舗で販売するといったことも通常行われている。実際に申立人は,日本以外の国において靴と被服・ベルト等を同時に販売している。したがって,本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品とは,その需要者において互いに密接な関連性を有する商品といえる。

以上のことをもってすれば,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する需要者は引用商標を連想し,申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

5 商標法第4条第1項第19号該当性について

上記3のとおり,本件商標権者は,不正の目的をもって,本件商標を登録出願したものであると推認できる。

さらに,本件商標権者は,申立人の靴がヨット用の滑らない靴として有名であることに着目し,あえてヨットの図形を採用したと推測される。ヨットの図形に申立人の周知な商標と同一の書体で書した「TOP−SIDER」を組み合わせることにより,申立人の商標の名声及び信用にただ乗りしようとする意図があったと推認できる。

したがって,本件商標権者は,引用商標に蓄積された名声,信用,顧客吸引力にただ乗りし,不正の利益を得る目的,申立人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

6 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知性について

(1)申立人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。

申立人が提出した甲第5号証ないし甲第72号証の新聞及び雑誌等の記事の写しにおいて,引用商標1(これと社会通念上同一といえる商標を含む。)は,甲第58号証の3枚目の右下の商品「靴」に使用されているのみであり,ほかに,商品「靴」に,引用商標1に近似する「TOP SIDER」の商標(「TOP」の文字と「SIDER」の文字の間に空白がある。)が,甲第37号証,甲第45号証,甲第58号証,甲第59号証,甲第66号証,甲第68号証及び甲第72号証において使用されている。

また,商品「靴」に引用商標2が使用されているのは,甲第7号証,甲第34号証,甲第42号証,第43号証,甲第45号証,甲第49号証ないし甲第51号証,甲第65号証及び甲第67号証である。

このほか,上記甲各号証中には,引用商標とは異なる「SPERERY TOP−SIDER」や「SPERERY TOPSIDER」の商標が商品「靴」に,かなりの程度で使用されていることが認められる(甲7,甲34,甲42,甲45,甲47,甲50〜甲52,甲54,甲56,甲57,甲59,甲60,甲62,甲67,甲69)。

そして,上記甲各号証の新聞及び雑誌等の記事においては,「トップサイダー」,「トップ・サイダー」,「スペリー・トップサイダー」,「スペリー トップサイダー」の片仮名よりなる商標が多数使用されている。

さらに,引用商標が外国における需要者の間において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,広く認識されていることを示す証拠は提出されていない。

(2)引用商標の周知性についての判断

以上によれば,申立人の提出に係る新聞及び雑誌等の記事の写し(甲5〜甲72)において,申立人の商品「靴」には,主として,「トップサイダー」,「トップ・サイダー」,「スペリー・トップサイダー」,「スペリー トップサイダー」などの片仮名よりなる商標が使用されており,欧文字よりなる商標についても,引用商標1よりも,「SPERERY TOP−SIDER」の商標が主として使用されていることが認められる。

してみれば,前記甲各号証において,引用商標が商品「靴」に使用されている程度は決して高いとはいえず,また,甲各号証からは,新聞及び雑誌以外のマスコミなどによる申立人の商品「靴」の宣伝広告の程度やその費用なども明らかではなく,同業他社の商品「靴」の販売数や申立人による商品「靴」の市場占有率を示す証拠も提出されていないことから,申立人が主張する2015年の売上数量(約22万足)が,取引上,多いと認めることはできない。

そうすると,甲各号証をもってしては,引用商標が,使用された結果,本件商標の登録出願前及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたということはできないというべきであり,また,引用商標が外国における需要者の間において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されているということもできない。

さらに,片仮名「トップサイダー」の商標の使用の程度も決して高いということはできず,当該商標が,本件商標の登録出願前及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたということはできない。

2 商標法第4条第1項第7号について

申立人は,引用商標が著名であるとの主張を前提にして,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると主張している。

しかしながら,引用商標が本件商標の登録出願前及び登録査定時において我が国の取引者及び需要者の間で,申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたとはいえないことは,前記1のとおりであり,申立人はほかに,本件商標権者が不正の目的をもって,本件商標を登録出願したことを認め得る証拠を提出していない。

また,申立人は,商標権者が引用商標2と完全に同一の書体の「TOP−SIDER」とヨットの図形とを組み合わせた本件商標を偶然に選択したとは考えにくい旨主張している。

この点については,申立人の主張するとおりと推測できるものの,我が国の商標法は,先願登録主義を採用しており,申立人は,本件商標の登録出願の経緯に,申立人との取引上の信義則に反する事実や事情等があったこと,あるいは社会的相当性を欠くことなどを示す証拠を提出してはおらず,本件商標における「TOP−SIDER」の書体が引用商標2のそれと酷似し,かつ,ヨットの図形とを組み合わせているとしても,これらのことのみでは,本件商標が公の秩序を害するおそれがある商標ということはできない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号について

前記1のとおり,引用商標が本件商標の登録出願前及び登録査定時において我が国の取引者及び需要者の間で広く認識されていたとはいえないから,本件商標をその指定商品について使用しても,これに接する需要者が,引用商標を連想・想起することはなく,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第19号について

引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間において広く認識されているとはいえないこと前記1のとおりであり,また,申立人は,本件商標権者が本件商標を不正の目的をもって使用をすることを示す証拠を提出していない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 まとめ

以上,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第15号及び同項第19号に該当するとは認められないから,同法第43条の3第4項に基づき,その登録を維持すべきである。

よって,結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。