Trademark Appeal Case
立体商標の普通表示
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2016−2719(T2016−2719/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第19類「手すり(金属製及び金属製を主とするものを除く。)」を指定商品として、平成27年2月4日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係において、『手すりの一類型』を表したと認められるから、これをその指定商品に使用するも取引者・需要者は、通常採用し得る手すりと認識するに止まり、単に該商品の形状のみからなる立体商標を表したにすぎないものとみるのが相当である。そうすると、本願商標は、単に商品の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成28年9月21日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。
4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
請求人は、前記3の証拠調べ通知に対し、平成28年11月2日付け意見書を提出し、要旨以下のように主張した。
「手すり」は、掴部と脚部の両方が備わっていなければ、「手すり」の一類型とはいえず、証拠調べ通知書で示された証拠は、全て、それら両方が揃った「手すり」として不可欠な形状をしたものばかりであるが、本願商標に係る立体的形状は、「手すり」の脚部に相当する部分を有さないことから、該証拠をもって、「手すり」の一類型を表したものとはいえない。
したがって、本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、よって、商標法3条1項3号に該当するものではない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
ア 立体商標における商品の形状に係る判示
商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決)。
イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲1のとおり、角を丸くした長方形外枠内に、縦に2本、横に3本の棒をそれぞれ等間隔に配した格子状矩形の立体的形状からなり、指定商品を第19類「手すり(金属製及び金属製を主とするものを除く。)」とするものである。
ところで、本願指定商品を含む「手すり」は、「手すり」に関する事典(別掲2の後掲1)の記載によれば、「手すり」を取り扱う業界においては、「手すり」には、人間の行動をスムーズにするために、階段、廊下、トイレや浴室等に設置される「補助手すり」と、高所からの墜落を防ぐために、バルコニーや屋上に設置される柵や壁である「墜落防止手すり柵」の二つがあることが認められる。また、「手すり」という場合には、実際に手で握る「笠木」の部分を指す場合と、「手すり子」(笠木を支える縦の棒(縦桟)のことで、縦桟の部分が面の場合もある。)を含む全体を指している場合があることが認められる。
そして、「手すり」を取り扱う業界においては、別掲2の後掲2(1)に見られるとおり、使用者が様々な位置で安定して「手すり」につかまることができるよう、「笠木」を縦及び横に組み合わせて連続的に設置したり、U型、O型、はしご状、波型等、使用する場所に合わせた様々な形状の「手すり」が販売されている事実が認められる。
また、別掲2の後掲2(2)のとおり、「墜落防止手すり柵」については、その「手すり子」の部分に、縦格子、横格子、ひし形格子、井桁格子等の形状が採用されているほか、装飾を施した「手すり子」の面材が使用、販売されている事実も認められる。
そうすると、「手すり」を取り扱う業界においては、商品の機能性及び美観等の向上の観点から、「笠木」や「手すり子」等の部分を含む「手すり」の形状に変更又は装飾が施されることは一般的に行われているといえる。
以上の状況を踏まえると、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品である「手すり」との関係においては、これを見た需要者に対して、機能性、美観又はその両方を向上させた、格子状矩形の「補助手すり」の「笠木」部分を認識させるというのが自然である。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「手すり」の「笠木」部分の一類型を表したと認識するに止まり、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を表したにすぎないものであるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、平成28年9月21日付け証拠調べ通知に対する意見書において、「手すり」は、掴部と脚部の両方が備わっていなければ、「手すり」とはいえず、証拠調べ通知書で示された証拠は、全て、それら両方が揃った「手すり」として不可欠な形状をしたものばかりであるが、本願商標に係る立体的形状は、「手すり」の脚部に相当する部分を有さないことから、該証拠をもって、「手すり」の一類型を表したものとはいえない旨主張する。
しかしながら、証拠調べ通知書で示した証拠は、「手すり」が「笠木」の部分を指す場合と「手すり子」(請求人のいう「脚部」)を含む全体を指す場合があること及び「手すり」の形状が多種多様であることについて証拠を示したうえで、本願商標は、「手すり」の「笠木」部分の一類型と認定しているところ、請求人は「手すり」は、掴部と脚部(「笠木」と「手すり子」)の両方が備わっていなければ、「手すり」とはいえない旨を主張するばかりでこれを裏付ける証拠の提出も無いことから 、請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。