Trademark Appeal Case
欧文字2字商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2015−17737(T2015−17737/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「HP」の欧文字を標準文字で表してなり,第16類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として,平成26年7月17日に登録出願されたものである。
そして,その指定商品については,原審における平成27年3月4日付け手続補正書により補正された結果,第16類「紙類,コンピュータ及び情報技術(IT)の分野における技術開発に関するパンフレット及び印刷物,コンピュータ及び情報技術(IT)の分野における解説書,コンピュータ及び情報技術(IT)の分野における定期刊行物,コンピュータ及び情報技術(IT)の分野におけるデータシート印刷物,コンピュータ及び情報技術(IT)の分野における製品のカタログ,コンピュータ及びコンピュータ周辺機器の取扱説明書,印刷物」となったものである。
2 原査定における拒絶の理由の要旨
原査定は,以下(1)及び(2)のとおり認定,判断し,本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は,「HP」の欧文字を標準文字で表してなるところ,本願の指定商品を取り扱う業界においては,ローマ字2字からなる標章が,商品の種別,品番等を表示する記号,符号として,取引上普通に採択・使用されている実情をうかがい知ることができる。そうすると,本願商標は,商品の種別,品番等を表示する記号,符号の一類型とみられるものにすぎないものであるから,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標と認める。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。
(2)出願人は,本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当する場合でも,同法第3条第2項が適用されるべきと主張し,甲第1号証ないし甲第30号証を提出しているが,提出に係る証拠からは,本願商標が,その指定商品(「紙類,印刷物」等)の需要者等の間で,出願人の業務に係る商品の出所表示として,広く認識されるに至っているとは認められず,本願商標は,補正後の指定商品に使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができるに至っているということができない。したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものと認められない。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第5号該当性について
本願商標は,前記1のとおり,「HP」の欧文字を標準文字で表してなるものである。
そして,一般に,欧文字2字からなる標章は,商品の品番,型番,種別,形式,規格等を表した記号又は符号(以下「商品の記号又は符号」という。)として,取引上普通に採択・使用されているのが実情であり,別掲のとおり,本願の指定商品の分野においても,同様の実情が見受けられる。
してみれば,本願商標は,これをその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が商品の記号又は符号の一類型を表示したものと理解するにとどまるものであって,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第5号に該当する。
なお,請求人は,本願の指定商品との関係において,本願商標と同一の欧文字2文字「HP」が記号,符号として使用されている事実はないと主張する。
しかしながら,商標登録を受けようとする商標が商標法第3条第1項第5号に該当するか否かは,これに接する取引者,需要者の認識を基準として判断されるべきであるところ,上記で述べたとおり,本願商標と同様に欧文字2字からなる標章は,我が国において,商品の記号又は符号として取引上普通に採択・使用されているものであって,かつ,本願商標は標準文字で表されたものであり,ありふれた表記といえるものである。
そうすると,「HP」の欧文字2字を,標準文字で表したにすぎない本願商標は,これに接する取引者,需要者に,商品の記号又は符号の一類型を表示したものと理解させるにとどまるというのが相当であって,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標といわざるを得ない。
したがって,請求人の上記主張は採用することができない。
(2)商標法第3条第2項の要件について
請求人は,仮に本願商標が,商標法第3条第1項第5号に該当するとしても,本願には商標法第3条第2項が適用されるものであるから,商標登録されるべきと主張し,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。
ア 請求人の主張及び提出に係る甲各号証によれば,次の(ア)ないし(タ)のとおりである。
(ア)甲1は,日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下「日本ヒューレット・パッカード社」という。)の会社案内であり,「Company Profile」(15頁)に,米国のヒューレット・パッカード社が1939年,日本ヒューレット・パッカード社が1963年にそれぞれ創業されたこと,その事業内容がコンピュータ,コンピュータシステム,コンピュータ周辺機器,ソフトウェア製品の開発・製造・輸入・販売・サポート・リース及びITサービスであることの記載がある。
(イ)甲3は,2004年から2013年までの新聞記事(549件)であり,これらの記事においては,日本ヒューレット・パッカード社又は米国のヒューレット・パッカード社を表す文字として,「HP」,「日本HP」,「日本ヒューレットパッカード(HP)」「米HP」及び「米ヒューレットパッカード(HP)」等の文字が使用されているが,これらの記事は,上記(ア)に記載の事業内容に則したものであり,記事のなかには,コンピュータの周辺機器であるプリンタについてのものが散見されるものの,本願の指定商品に係る紙類又は印刷物の製造,販売に関するものは見いだせない。
(ウ)甲4は,2006年から2012年までの雑誌記事(278件)であり,これらの記事においては,日本ヒューレット・パッカード社又は米国のヒューレット・パッカード社を表す文字として,「HP」,「日本HP」,「日本ヒューレットパッカード(HP)」,「米HP」及び「米国Hewlett−Packard(HP)」等の文字が使用されているが,これらの記事は,主にコンピュータ(特にパソコン)に関するものであり,記事のなかには,コンピュータの周辺機器であるプリンタについてのものが散見されるものの,本願の指定商品に係る紙類又は印刷物の製造,販売に関するものは見いだせない。
(エ)甲6は,「IT用語辞典」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,「Hewlett−Packard 【ヒューレット・パッカード】 HP」の項に,「アメリカの大手コンピュータメーカー,パソコンやサーバ,プリンタ,携帯情報端末,および関連するソフトウェアなどの開発・製造・販売が主な事業で,近年ではネットワーク機器やITサービスなどにも力を入れている。」の記載がある。
(オ)甲7ないし甲14は,日本ヒューレット・パッカード社のウェブサイトを打ち出したもの等であり,同社が,コンピュータ及びその周辺機器の製造,販売及び保守サービス並びにソフトウェアの開発等を行っていること,その販売代理店が日本全国に存在すること,サーバやパソコンに係る機械器具の分野では相当程度のシェアを有していることの記載がある。
(カ)甲15ないし甲19は,ノートパソコン及びタブレットパソコンに関するテレビコマーシャルの表現事例と称する資料である。
(キ)甲20は,雑誌における広告(152件),甲21は,新聞における広告(375件)であり,円図形内に「hp」が白抜きされた標章や「HP」の文字等が使用されているが,これらの広告は,主にコンピュータ(特にパソコン)に関するものであり,記事のなかには,コンピュータの周辺機器であるプリンタについてのものが散見されるものの,本願の指定商品に係る紙類又は印刷物の製造,販売に関するものは見いだせない。
(ク)甲22の1葉目は,日本ヒューレット・パッカード社のウェブサイトを打ち出したものであり,「HP インクジェットプリンター 純正用紙製品一覧」として,日本ヒューレット・パッカード社のプリンタに対応した6点の印刷用紙が掲載されている。
同2葉目は,「ASKUL」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,「『HP(ヒューレット・パッカード)』,『コピー用紙/プリンター用紙』の検索結果」として,19件(23商品)が該当し,1件目として「HP(ヒューレット・パッカード) hp純正用紙 スタンダード普通紙 ヒューレット・パッカード純正プロッタ用紙 スタンダード普通紙」が掲載されている。
(ケ)甲23は,日本ヒューレット・パッカード社の印刷用紙のカタログであり,「HPインクジェット用紙」の見出しの下,「さまざまなHP純正用紙であなたの作品作りをバックアップします。」の記載とともに,同社の製品に対応した各種印刷用紙が紹介されている。
(コ)甲24は,日本ヒューレット・パッカード社のウェブサイトを打ち出したものであり,「インクジェットプリンター最新ラインアップ」の見出しの下,「HPはインクジェットプリンター シェアNo.1!・・・HPはインクジェット技術の生みの親。1984年に世界初の汎用インクジェットプリンターを世に送り出して以来,4億台以上を出荷し,世界シュアNo.1を18年も続けています。」の記載がある
(サ)甲25は,「建設ITワールド」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,その5葉目に「HPはプリンター用紙の品質もいいですね。一番安いインクジェット用の紙も真っ白なので,色味が正確に出ますので特に気に入っています」の記載がある。
(シ)甲26及び甲27は,「ASKUL」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,いずれも「HP(ヒューレット・パッカード) hp純正用紙・・・のレビュー」が掲載されている。
(ス)甲28は,「SYC Online Shop」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,「hp純正用紙について」の見出しの下,「『高品質,しかも経済的』を両立させたHP純正スタンダード系用紙」の記載がある。
(セ)甲31は,日本ヒューレット・パッカード社のウェブサイトを打ち出したものであり,「HP DesignJetプリンター−検証済用紙」の見出しの下,「下記に記載のメディアは,日本HPで一定の条件の下で検証し使用できることを確認した用紙となります。」の記載があり,その表に「HPインクジェット普通紙」等の記載がある。
(ソ)甲32は,「販促Express」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,「HP ロール紙」の見出しの下,「HP社インクジェットプリンタ一覧」として,ロール紙の一覧の記載がある。
(タ)甲33は,「オフィス用品通販【たのめーる】」と称するウェブサイトを打ち出したものであり,「HP インクジェット用普通紙」の見出しの下,メーカー名を「HP」とする商品が6件掲載されている。
イ 判断
出願人に係るヒューレット・パッカード(以下,グループ企業も含めて「HP社」という。)は,1939年に米国において創業され,コンピュータ,コンピュータシステム,コンピュータ周辺機器,ソフトウェア製品の開発・製造・輸入・販売・サポート・リース及びITサービスを事業内容としている(甲1,甲6)。HP社は,1963年以降,我が国にもグループ企業(日本ヒューレット・パッカード社)を有し,現在,その販売代理店は日本全国に展開され,サーバ,パソコン,プリンタに係る機械器具の分野では相当程度のシェアを有していることが認められる(甲1,甲7〜14,甲24)。
また,HP社は,「IT用語辞典」と称するウェブサイトに,「アメリカの大手コンピュータメーカー,パソコンやサーバ,プリンタ,携帯情報端末,および関連するソフトウェアなどの開発・製造・販売が主な事業で,近年ではネットワーク機器やITサービスなどにも力を入れている。」と掲載され(甲6),当該商品分野に関しては,新聞及び雑誌の記事として多数掲載され,その記事においては,HP社を表す文字として「HP」や該文字を含む略称が多く用いられている(甲3及び甲4)。さらに,HP社は,主にコンピュータ(特にパソコン)に関しては,雑誌及び新聞で多数の広告,テレビでも積極的に広告を行っており,その広告には,円図形内に「hp」が白抜きされた標章等が使用されている(甲15〜21)。
そうすると,本願商標は,パソコン,サーバ,プリンタ等のコンピュータに関する機械器具の分野においては,HP社の取り扱いに係る商品を表すものとして,相当程度知られているといえる。
他方,上記の記事,広告のなかには,コンピュータの周辺機器であるプリンタについてのものが散見されるものの,本願の指定商品に係る紙類又は印刷物の製造,販売に関するものは見いだせない。また,HP社が,同社のプリンタに適した印刷用紙(純正用紙)について,「HP」の文字を使用していることが認められるものの(甲22〜33),その使用態様は,HP社のプリンタに適しているという商品の用途又は品質を表したものと認識され得るものが多いというべきであり,必ずしも商品の出所を表示したもの認識されるとはいい難い。
さらに,HP社の商品がサーバ,パソコン,プリンタ等のコンピュータに係る機械器具の分野で相当程度高いシェアを有しており,紙類に含まれる印刷用紙がプリンタにも使用されるものであるとしても,パソコン等の機械器具と本願の指定商品に係る紙類及び印刷物とは,一般に製造部門,販売部門,原材料及び品質,用途等を異にするというべきであり,関連性が強い商品同士とはいい難いから,前記シェア等をもって本願の指定商品におけるシェアを推認することはできない。
そうすると,本願商標は,コンピュータに関する機械器具の分野においては,相当程度知られているものであったとしても,本願の指定商品の取り扱いに係る取引者,需要者の間で,HP社の取り扱いに係る商品を表す文字として,広く一般に知られているものとはいえない。
してみれば,本願商標は,使用された結果,本願の指定商品の取引者,需要者において,その商品の出所を表示するものとして,認識されるに至ったものと認めることはできない。
なお,請求人は,平成27年11月5日付け手続補正書において,「出願人は商標法第3条第2項の適用との関係で,本願の指定商品を『印刷用紙』に限定することも検討するので,本願が第3条第1項第5号に該当すると判断される場合には,指定商品の減縮補正の機会を頂きたい。」とも述べるが,仮に本願の指定商品が「印刷用紙」のみに補正されたとしても,本願商標がその補正後の指定商品との関係において,商標法第3条第2項の要件を具備しないことは上記のとおりであるから,補正を指示することなく審理を進めた。
ウ 小括
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,同条第2項の要件を具備するものとはいえないから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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