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Trademark Appeal Case

品質表示と識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2015−16825(T2015−16825/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,「TrickArt」の欧文字を標準文字で表してなり,第16類,第19類,第27類,第28類,第37類,第41類及び第42類に属する願書記載のとおりの指定商品及び指定役務について,平成25年11月26日に登録出願されたものである。

その後,指定商品及び指定役務については,当審における平成27年9月14日付けの手続補正書及び同28年11月2日付けの手続補正書により,第16類「絵本,絵画作品集,イラスト作品集,印刷物」及び第41類「美術品の展示,絵画の展示,娯楽施設の提供,公開・展示を行う美術館の提供,美術品の展示施設の提供」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

本願商標は,「TrickArt」の欧文字を標準文字で表してなるところ,別掲1に記載の情報によれば,「TrickArt」の欧文字は「視覚的な錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意味をもって理解されているトリックアートの英語表記として,一般的に使用されている実情がある。さらに,トリックアートに関連する絵画,絵本,ポストカード等の商品が販売され,また,全国各地の観光地や商業地に,近年,体験型のトリックアート美術館が建設され,全国各地でトリックアート展が開催されている実情がある。

そうすると,本願商標は,これをその指定商品及び指定役務中,第16類「はがき,絵はがき,複製画の絵はがき,ノート,本カバー,クリアファイル,下敷き,シール,ステッカー,文房具類,ホログラムシール,絵本,絵画作品集,イラスト作品集,カレンダー,印刷物,複製画,書画,グラフィック複製画」及び第41類「美術品の展示,絵画の展示,博物館・美術館の展示に関する情報の提供」に使用しても,トリックアートに関連する商品及び役務の意味合いを表したものと需要者に容易に理解,認識させるにとどまり,単に商品の品質及び役務の質を表示するにすぎないものと認められる。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,前記商品及び役務以外の指定商品及び指定役務に使用するときは,商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがあることから,同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)商標法第3条第1項柱書の要件不備について

本願商標の第16類及び第41類の指定商品及び指定役務については,広い範囲にわたる商品及び役務を指定しているため,出願に係る商標をそれらの指定商品及び指定役務の全てについて使用しているか又は近い将来使用することについて疑義がある。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

3 当審における審尋

当審において,原審において掲げる証拠に加えて,別掲2に係る証拠を新たに示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨,加えて,同法第3条第2項に基づく主張をするのであれば,その主張立証をするよう審尋し,請求人に回答を求めた。

4 審尋に対する請求人の回答

請求人は,上記3の審尋に対して,本願商標の指定商品及び指定役務を補正するとともに,審尋で通知された各証拠に対する意見を述べて,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものではないこと,仮に該当するにしても,補正後の指定商品及び指定役務については,同法第3条第2項の規定に該当することを主張し,それを証明するための証拠を提出した。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項柱書の要件不備について

本願商標の指定商品及び指定役務については,上記1のとおり補正された結果,第16類及び第41類の指定商品及び指定役務は,それらの商品及び役務における使用又は近い将来の使用について疑義を生じるものではなくなったと認め得る。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備する。

(2)商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は,上記1のとおり,「TrickArt」の欧文字を標準文字で表してなるものである。原審が拒絶理由通知書で引用した証拠(別掲1)及び当審が審尋で引用した証拠(別掲2)によれば,「トリックアート」及びその英語表記である「trick art」の語については,以下のとおり認めることができる。

ア 「トリックアート」及び「trick art」の語の辞書における記載

本願商標の構成中「Trick」(トリック)の語は「人をだますようなたくらみ。」の意味を,「Art」(アート)の語は「芸術。美術。」の意味合いを有する語として,いずれも我が国でも親しまれた語である(参照 広辞苑第6版,岩波書店発行)。そして,「トリックアート」及び「trick art」の語は,その意味が複数の辞書に掲載され(別掲1(1)〜(3),別掲2(1)),それらに共通する記載を参照すると,「視覚における錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意味合いを有する語ということができる。そうすると,本願商標「TrickArt」の欧文字は,その構成文字が我が国でも親しまれていることも相まって,前記意味合いを有する「トリックアート」の語の英語表記であることが容易に理解できる。

イ 「トリックアート」の語の取引上及び一般的な用語としての使用

(ア)展示施設及びイベントにおける使用

「トリックアート」の語は,展示施設やイベントなどにおいて,視覚における錯覚を利用した作品としての展示物及びその作品分野を指称するために広く用いられている。

例えば,「トリックアート美術館」,「3Dトリックアート水族館」,「トリックアート展」,「トリック・アートの世界展」と称する,錯覚を利用した作品を展示する施設やイベントが開催されており,そこでの展示作品や作品分野を指称する語として「トリックアート」の語が用いられている(別掲1(4)〜(6),別掲2(25)〜(27))。また,駅前広場や店舗外壁に描かれた絵画や広告物をトリックアートと指称して紹介するものもある(別掲1(7),別掲2(7))。

(イ)一般的な用語としての使用

「トリックアート」の語は,新聞記事やインターネット情報及び書籍など,多様な媒体を通じた記事において言及,解説されており,美術の専門分野だけに限らず,広く社会一般においても,人の目の錯覚を利用した作品を指称する語として,浸透している実情がうかがえる。

例えば,用語解説として,「トリックアート」の語を,目の錯覚を利用した芸術分野やだまし絵を示すと記述する新聞記事やインターネット上の記事,当該語を用いながら,錯覚を利用した作品の画像を掲載する記事がある(別掲2(2)〜(6))。また,錯覚を利用した手法で描かれた建物やデザインを「トリックアート」の語を用いつつ紹介する記事,目の錯覚を利用して立体的に見える画像や写真,写真撮影機能や方法などを,「トリックアート」の語を用いつつ紹介する記事もある(別掲2(34)〜(41))。

書籍としても,例えば「トリックアート図鑑」,「錯覚体験!!3Dトリックアート 1 立てたらびっくり!!」,「決定版! トリックアートベストセレクション」,「トリックアート大百科<2013>」,「超ふしぎ体験!立体トリックアート工作 キットブック」及び「福田繁雄のトリックアート・トリップ」の題号ないしシリーズ名称からなる書籍が発行されており,その中に,錯覚を利用して立体的に見える作品画像が多数収録され,紹介されていることがうかがえる(別掲1(8),別掲2(8)〜(13))。

(ウ)指定商品及び指定役務における取引上の使用

「トリックアート」の語は,印刷物や文房具を含む種々の商品との関係においても,錯覚を利用して立体的に見える模様やデザインなどを指称する語として用いられている。具体的には,例えば「年賀状」,「ポストカード」,「カレンダー」,「ノート」,「付箋」,「メモ帳」,「マスキングテープ」,「ペンケース」,「ペーパークラフト」などとの関係において,商品のデザインや模様を表示する語として用いられている(別掲2(14)〜(24))。

また,知識の教授や広告物の制作などとの関係においても,教授や描写の対象が「トリックアート」であることを示す学習教室や広告会社がある(別掲2(28)〜(33))。

ウ 判断

本願商標は,上記アのとおり,「視覚における錯覚を利用した作品。だまし絵。」の意味合いを有する「トリックアート」の文字の英語表記であることを容易に理解できる「TrickArt」の欧文字を普通に用いられる方法で表示してなるところ,上記イのとおり,「トリックアート」の語は上記意味合いを有する語として広く取引上及び一般的に使用されている実情があり,その指定商品及び指定役務の分野においても,その商品及び役務の内容が上記トリックアートに関するものであることを表す語として,取引上普通に使用されていることが認められる。

そうすると,本願商標をその補正後の指定商品及び指定役務,すなわち,第16類「絵本,絵画作品集,イラスト作品集,印刷物」及び第41類「美術品の展示,絵画の展示,娯楽施設の提供,公開・展示を行う美術館の提供,美術品の展示施設の提供」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,その商品及び役務がトリックアート(視覚的な錯覚を利用した作品)を内容とするものと理解するにとどまるものであるから,本願商標は,商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないというべきである。

エ 請求人の主張に対して

(ア)他人による使用の事実に係る主張

請求人は,トリックアートは,請求人の創業者が,トロンプ・ルイユ(騙し絵)の技法を応用し,独自に創作したアミューズメントを示す造語であり,原審において引用する辞書,新聞記事情報や,その他のインターネット情報などは,それぞれの著者が誤解や誤認などから勝手に紹介するものであり,そもそも信用できないことから,証拠として採択すべきでない旨主張する。加えて,辞書においても,例えば「カップヌードル」,「セロテープ」のように商標名として紹介されているものだけでなく,「ブルートゥース」のように登録商標でありながら商標名との記載なく紹介されているものがあるため,著名な辞書であっても,事実を全て正確に記載されていることは何ら担保されておらず,辞書の記載だけをもって普通名称と断定することは適切ではない旨主張する。

しかしながら,本願商標の識別性の判断にあたっては,上記ウのとおり,辞書の記載,種々の媒体を通じて把握できる取引上及び一般的な使用状況などを総合的に勘案して,需要者又は取引者における一般的な認識を認定しているのであり,これらの判断の基礎となった出版物やインターネット上の記事情報なども,悪意や偏向など意図的な偏りを示す証拠ではないため,これら記事情報を社会一般における語の認識や使用状況を判断するために参酌することは,特段不合理なことではない。

また,請求人は,辞書や新聞記事情報,インターネット情報などの中には,請求人が制作又は経営に関与する作品や施設に関する記事もあること,請求人が使用の中止を求めているものもあること,書籍を発行する一部の出版社とは使用許諾契約を結んでいることなどを主張するが,一般的な需要者,取引者は,出版物やインターネット情報,商品及び役務等に関連して表示された,外形上判読できる情報に依拠せざるを得ないのだから,そのような内情に関わらず,外形上把握できる証拠に基づき上記ウのとおりの判断をすることに,特段の支障はない。

(イ)諸外国の登録例に係る主張

請求人は,韓国,中国及び東アジア各国において商標登録又は出願をしており,我が国の審査結果は当該国の審査にも影響を与える可能性があるため,このような実情を我が国の審査において考慮すべき旨主張する。

しかしながら,海外の商標登録例にしても,我が国の審査結果が海外の審査結果に与える影響にしても,国内外の法制度や取引の実情の違いなどを鑑みても,それらが我が国の審査判断を拘束する合理的理由はなく,我が国における取引の実情や法制度にしたがって,上記ウのとおりの判断をすることに特段の不合理はない。

(ウ)過去の登録例・出願例に係る主張

a 請求人は,「Trick Art」の語を図案化した文字からなる登録第5539378号商標(別掲3参照。以下「請求人登録商標」という。)を有しており,本登録は決してデザイン性のみが登録査定された理由ではないため,本件の審理においても参考にすべき旨主張する。

しかしながら,当審における職権による調査によれば,請求人登録商標の審査過程においては,審査官から商標法第3条第1項第3号などの拒絶理由が通知された後,出願人(請求人)からは,請求人登録商標について,そのレタリング手法などを強調しつつ,特殊な態様で表示されており,普通に用いられる方法の域を脱する旨が申し述べられており,これは上記主張とは相容れないものである。そして,本願商標は,請求人登録商標とは,商標の構成や文字種,図案化の程度などにつき明らかな相違があることから,本願商標の審査における判断に影響しない。

b 請求人は,「トリックアート」の文字を表してなる商標につき,第16類「雑誌,新聞」を指定商品として商標登録(登録第4138556号)を有していたことを主張するが,本願商標は,その指定商品中に「雑誌,新聞」以外の商品も含んでいるのであるから,本件とはその指定商品において事案を異にするといわざるを得ない。

c 請求人は,請求人登録商標に関する判定事件(判定2013−600020,判定2013−60021)において,別掲3に示す「Trick Art」の語を図案化した商標と,「トリックアート」の片仮名を横書きしてなる標章及び「TRICK ART」の欧文字を横書きしてなる標章が,当該商標権の効力の範囲に属しないと判断されたものの,その判断に全く納得していない旨,また,「トリックアート」の文字を横書きしてなる商標を商標法第3条第1項第3号に該当すると判断した拒絶査定不服審判事件(平成10年審判第7650号)についても,その確定した審決内容を容認したものではない旨主張するが,そのような請求人の意思表示は,客観的な証拠に基づく上記ウの判断に対して特段の影響はない。

(エ)請求人に使用の独占権があるとの主張

請求人は,トリックアートは請求人により命名,創作されたアミューズメント文化であり,トリックアートのビジネスモデル自体は誰でも自由に行うことができても,その名称は請求人作品を示すものとして独自の信用を構築すべきで,第三者がただ乗りすることは不正競争行為に該当する旨主張するが,本件審決時における取引の実情や一般的な用語使用の実情を踏まえて,上記ウのとおりの判断をすることに特段の問題はない。

(オ)以上のとおり,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。

オ 小括

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

(3)商標法第3条第2項の適用について

ア 使用による自他商品識別力の獲得

商標法第3条第2項の規定によれば,商標法第3条第1項第3項に該当する商標であっても,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができるところ,ある標章が同項の規定に該当するかは,出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の販売数量又は売上高等,当該商品又はこれに類似した商品又は役務に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。(平成25年1月24日 平成24年(行ケ)第10285号 知的財産高等裁判所第4部判決参照)

イ 本願商標の使用実績

請求人提出の証拠(以下,請求人が,平成26年6月10日付け意見書に補足して提出した資料1ないし27及び同28年11月16日付け意見書に補足して提出した資料1ないし22は,それぞれ,甲第1号証ないし甲第27号証及び甲第28号証ないし甲第49号証と読み替えて挙示する。)及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。

(ア)トリックアート(TrickArt)は,請求人の創業者である故剣重和宗が命名した造語であって,中世ヨーロッパのトロンプ・ルイユ(騙し絵)の技法を基礎にして,1980年代半ばから作り上げてきた新分野のアミューズメントであり,請求人は,1991年にJAIB美術館を最初のトリックアートの商業施設としてオープン,1992年には「トリックアートの館」を開館し,その後,閉館したものも含めると,2014年4月の時点で,全国にトリックアート美術館を29か所開設した(甲1〜9)。

(イ)2016年現在では,請求人は,栃木県那須,東京お台場を筆頭に,全国18か所にトリックアートの常設展示施設を有しており,来場客数は約198万3千人(2015年)である(甲28)。また,全国各地のデパートや科学館等の施設で実施した期間限定でのトリックアート展は,31か所で開催,総来場客数は約59万人(2015年)であり(甲29),両方を合わせると,年間の来場客数は257万人を超え,売上高は約15億640万円になり,2014年も2016年もほぼ同様の数字で推移している。

(ウ)請求人による常設展示施設の広告宣伝費は,約9,941万円(2015年)であり,その展示施設(「那須とりっくあーとぴあ」,「東京トリックアート迷宮館」及び「高尾トリックアート美術館」)を紹介するテレビ番組が,主なものだけでも,計67番組(2008年〜2016年)ある(甲30)。

(エ)その他,請求人は,著名な漫画やキャラクターを所有する会社からのコラボレーション請負作成を手がけており,株式会社テレビ朝日のイベントにおける「ドラえもんトリックアート ふしぎBOX展」(甲34),その他著名キャラクターとのコラボレーションとして,トリックアートの名称を使用した企画を実施した。公的施設においても,請求人が作成したトリックアート(TrickArt)作品は,JR福井駅(甲36)及びJR大阪駅(甲37)に壁絵として描かれている。

ウ 本願商標と使用商標の同一性

甲1及び甲28に掲げる,請求人が開設した又は運営する美術館や常設展示施設のうち,「東京トリックアート迷宮館/TOKYO TRICK ART MUSEUM」(甲2),「トリックアート美術館/TRICK ART MUSEUM」(甲4),「熱海トリックアート迷宮館/ATAMI TRICKART MUSEUM」(甲7)のカタログにおいて,その名称中に「TRICK ART」の語の表記が含まれていることが確認できるが,いずれも「博物館。美術館。」の意味を有する「MUSEUM」の語と結合させた構成よりなることから,本願商標と同一の語が単独で使用されているものということはできないばかりでなく,当該名称中の「TRICK ART」の語も,本願商標とは,大文字・小文字,字間の有無などの相違があり,外観において同一のものということもできない。また,請求人施設「那須とりっくあーとぴあ」のカタログの表紙には,別掲3に掲げる商標と近似した構成よりなる「Trick Art」の語が独立して表記されているが(甲3),当該表記と本願商標とは,図案化の有無や字間の配置などの外観的特徴に顕著な差異があり,外観において同一のものとはいえない。

なお,本願商標は,「TrickArt」の欧文字を表してなり,上記(2)アに記載のとおり,それを片仮名表記した「トリックアート」の語とは,その「トリックアート」の称呼及び「視覚における錯覚を利用した作品。だまし絵。」の観念は共通するとはいえ,表示される文字種が相違することから,その外観においては同一のものということはできない。

これを踏まえて検討するに,上記イ(ア)に掲げる,請求人が開設した29か所の美術館(甲1),及び上記イ(イ)に掲げる,請求人が現在運営する18か所の常設展示施設(甲28)において,例えば「トリックアートの館」,「軽井沢トリックアート美術館」,「東京タワートリックアートギャラリー」,「那須とりっくあーとぴあ」,「東京トリックアート迷宮館」,「高尾トリックアート美術館」などのように,「トリックアート」の片仮名文字又はその平仮名表記がその名称中に含まれていたとしても,それらは「トリックアート」の語を単独で使用するものではないばかりでなく,本願商標と外観において同一の語を含むものということもできない。

そして,上記イ(エ)に掲げるイベントにしても,「ドラえもんトリックアート」の表示は確認できるが,これも単に「トリックアート」の語をイベント名称中に含むにすぎず,当該語が単独で出所識別標識と使用されているものとは理解し難いばかりか,「TrickArt」の語は表示されていないし,その他のイベント及びトリックアート作品にしても,そこで具体的にどのように「TrickArt」の欧文字が使用されているのかは示されていない。

なお,請求人は,書籍などにおける使用について,複数の出版社(株式会社あかね書房,株式会社汐文社,株式会社金の星社など)との間で,請求人登録商標「Trick Art」(別掲3)の商標権及びその片仮名表記である「トリックアート」に係る使用許諾契約を締結しており,それら出版社から発行された書籍等を,請求人による本願商標の使用実績に同視できる趣旨の主張をしている。

しかしながら,契約書及び警告状の一例(甲48,甲49)によっても契約相手や実際の契約内容は確認できないことから,これら出版社の使用が,請求人との契約に係るものであることを示す具体的な証拠を見いだすことができず,これら出版社による使用を,請求人による使用ということはできない。そればかりでなく,それら出版社から発行されている,別掲2(8)から(10)及び(12)に掲げる,「トリックアート図鑑」(あかね書房),「錯覚体験!!3Dトリックアート 1 立てたらびっくり!!」(汐文社),「決定版! トリックアートベストセレクション」(汐文社),「超ふしぎ体験!立体トリックアート工作 キットブック」(金の星社)にしても,単に書籍の題号中に「トリックアート」の語を含むにすぎず,本願商標と外観において同一の商標が,単独で出所識別標識として使用されているものとはいい難い。

上記を踏まえると,請求人が提出する証拠からは,請求人により,「トリックアート」の語を名称中に含む施設やイベントが運営,開催されていることがうかがえるにしても,本願商標と外観上同一の商標が使用されているとはいい難い。

エ 本願商標の指定商品及び指定役務と使用商標の商品及び役務の同一性

甲第1号証から甲第21号証,甲第28号証から甲第37号証によれば,請求人が運営するトリックアートの展示施設においては,「美術品の展示,絵画の展示」の役務が提供されているものとは理解できる。

他方,甲第1号証から甲第42号証のいずれによっても,本願商標の指定商品及び指定役務中,第16類「絵本,絵画作品集,イラスト作品集,印刷物」の商品及び第41類「娯楽施設の提供,公開・展示を行う美術館の提供,美術品の展示施設の提供」を請求人が行っていることは把握できない。

書籍等に関する使用にしても,上記ウのとおり,請求人との契約に係るものであることを示す具体的な証拠が提出されてないことから,本願商標が,請求人により,書籍等に関連して使用されたものということはできない。

オ 第三者による使用

別掲2によれば,例えば「3Dトリックアート」(別掲2(30)),「ハイクのトリックアート『TRIC』」(別掲2(31)),「トリックアート・3Dアート」(別掲2(32)),「“トリックアート”による屋内外の広告」(別掲2(33))のように,広告物の制作などと関連して,目の錯覚を利用した絵や壁画をトリックアートと表示する事業者がいることが確認できる。

請求人は,このうち別掲2(32)に関しては,請求人による許諾を受けている事業者によるものと主張するが,その許諾が別掲2(32)における「トリックアート」の語の使用態様において与えている影響は,その外形上は読み取ることは困難である。

カ 判断

上記のとおり,本願商標「TrickArt」と外観において同一の標章が,請求人により使用されている事実を見いだすことができず,請求人によって実際に提供されていると認められる商品又は役務も「美術品の展示,絵画の展示」のみと,本願商標の指定商品及び指定役務の一部を含むにすぎない。このような状況においては,上記イに掲げる請求人による使用実績に示された施設数,来場客数,売上高,広告実績などにしても,本願商標の識別性に影響を与える使用実績として勘案することは難しく,これら使用が,需要者における,本願商標の識別性への認識に与える影響は,非常に限定的なものといわざるを得ない。そして,目の錯覚を利用した絵や壁画をトリックアートと表示する事業者(他人)も存在している。

そのため,本願商標は,請求人により使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができたものに至ったものということはできず,商標法第3条第2項の規定を適用することはできない。

(4)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同法第3条第2項の要件を具備するものではないから,これを登録することはできない。

よって,結論のとおり審決する。

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