Trademark Appeal Case
著名略称「DB」の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2016−900317(T2016−900317/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5863765号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成26年10月23日に登録出願され、第7類、第9類、第11類及び第12類に属する別掲2のとおりの商品を指定商品として同28年6月8日に登録査定、同年7月1日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第815173号商標(以下「引用商標」という。)は、「DB9」の欧文字を横書きしてなり、2002年12月16日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2003年(平成15年)5月23日に国際商標登録出願、第12類「Automobiles, bicycles, motorcycles and parts and fittings therefor.」及び第37類「Repair, restoration, maintenance, reconditioning, diagnostic tuning, cleaning, painting and polishing services of land vehicles and parts and fittings therefor.」を指定商品及び指定役務として、平成20年1月24日に商標法第3条第2項が適用されて登録審決、同年4月18日に設定登録され、その後、同25年6月18日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証(枝番を含む。)を提出した。
1 申立人によるDBシリーズの製造の歴史及び引用商標の周知・著名性について
アストン マーチン ラゴンダ リミテッド(以下「アストン マーチン社」という。)の歴史は1914年の創業にさかのぼり、その長い歴史のなかで数々の名車を輩出し、実業家デヴィッド・ブラウン氏のグループ傘下に入った1940年代以降、高級高性能スポーツカーの少量生産を行う自動車メーカーとしての道を歩むこととなった。
それ以降、「デヴィッド・ブラウン」氏のイニシャルである「DB」をその車名の頭文字に付すようになり、1940年代に英国で上市された初代DB(後にDB1と呼ばれる)とDB2に始まってDB9に至るまで一貫して用いられた結果、「DBシリーズ」は、世界有数の車名ブランドの一つに数えられる程になった。DB6の生産終了以降、一旦、車種のラインナップから消えた時期があったが、1987年にアメリカのフォード・モーター傘下に納まることとなり、同社がデヴィッド・ブラウンを役員として迎えたことをきっかけに、「DB7」として復活し、それ以降の車種でも再び「DB」の車名を用いるようになった(甲3ないし甲43)。
出願人(合議体注記:「申立人」の誤記と認める。)は、「DB」の名の由来であるデヴィッド・ブラウン氏のグループ傘下に入った1940年代以来、その車名の一部に「DB」の頭文字として、数を表す文字1文字(1から11)を加えた標章を一貫して使用した結果、「DBシリーズ」は、数々のインターネット記事、書籍等で「DBシリーズ」と指称されている事実からも窺えるように(甲44ないし甲52)、世界有数の車名ブランドの一つとして、取引者、需要者の間で広く認識されるに至っている。
「あこがれの車」として評価される程(甲25及び甲26)、人気を博したモデルであった「DB9」、映画「007」の劇中車のためだけに開発された「DB10」、現行の最新モデルである「DB11」はもちろんのこと、過去に生産されてきた「DBシリーズ」のモデルについても、往年の名車として、クラッシックカー愛好家から絶大な支持を得ているところであり、このような特集の記事が新聞記事として度々取り上げられている(甲53ないし甲58)。
以上より、引用商標を含む「DBシリーズ」とも呼ばれる、DBとシリーズ番号からなる標章は、本件商標の出願時である平成26年(2014)10月23日時はもちろんのこと、登録査定時である平成28年(2016)6月14日当時においても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者間において広く認知されるにいたっていたものである。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標は、「db boeder」の欧文字(「db」の文字はやや図案化してなる)を書してなる。構成中の「db」「boeder」はいずれも、直ちにその意味合いを特定できない造語の如きものと理解されるものであるところ、「db」のみが図案化されていること、両文字の間に一文字分のスペースが配されていることからすれば、複数の文字を組み合わせた結合商標を構成するものと理解するのが自然である。
そうとすれば、本件商標の構成にあっては、「db」の部分が本件商標に接する取引者、需要者をして、脳裏に印象付けられるのであり、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分である。
してみると、本件商標の文字部分のうち「db」の部分が自他役務の識別標識としての機能を果たす要部として理解される場合も少なくないといえる。
(2)これに対して、引用商標は「DB9」を横書きした構成よりなるところ、上記1に述べたとおり、「DB9」を含む「DBシリーズ」が、申立人によって長年にわたって「自動車(及びその部品・附属品)」等について使用を継続され、我が国において周知なものになっているという取引の実情にかんがみれば、引用商標からは構成文字に照応した「ディービーナイン」の称呼とともに、「申立人であるアストン マーチン社とその提供に係る商品」を想起、連想する。
(3)そこで本件商標と引用商標とを比較対照して観察すると、まず、本件商標は「db」の文字列を含んでいることが明らかであり、その点で外観上において引用商標と類似している。
また、本件商標のうち、「db」の部分が需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部といえるので、本件商標は「ディービー」との称呼をも生じるものといえる。
したがって、本件商標の称呼も、引用商標の称呼もともに「ディービー」を含んでいる点において類似する。また、観念においても、前者は造語のようなものともいえるものであるが、申立人の周知・著名商標を含んでいるところから、「申立人であるアストン マーチン社とその提供に係る商品」を想起、連想する点において、観念上も、引用商標と相当程度類似する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知・著名性
引用商標及び「DB」とシリーズ番号を表す文字とを組み合わせた「DBシリーズ」標章が、長年にわたって、その指定商品である自動車及びその部品・附属品に使用され、アストン マーチン社の商標として我が国において広く認知されている。
(2)標章の独創性
引用商標及び「DBシリーズ」とも呼ばれる標章に含まれる「DB」の名の由来は、申立人のオーナーであったデヴィッド・ブラウン氏の頭文字をとったものであり、欧文字「D」と「B」との単なる結合文字ではない。また、「DB9」をはじめとする「DBシリース」の各標章は、この有意な「DB」の後に数字の「9」やその他の数を表す文字が付加されたものだが、この「9」などの数を表す文字は、歴代の「DBシリーズ」のうちの一車種であることを明確に誇示するために用いられたものである。
(3)類似性の程度
引用商標及び「DBシリーズ」とも呼ばれる標章と本件商標を比較した場合、本件商標は「db」の文字列を含んでいることが明らかであり、その点で外観において引用商標と類似している。
また、引用商標及び「DBシリーズ」とも呼ばれる標章が、アストン マーチン社の商標として我が国において広く認知されている事実、並びに、「db」の部分が図案化され顕著に表されている事実に鑑みれば、「db」の部分こそが需要者等に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部といえるので、本件商標は「ディービー」との称呼をも生じるものといえる。
したがって、本件商標の称呼も、引用商標の称呼もともに「ディービー」を含んでいる点において類似する。
さらに、観念においても、前者は造語のようなものともいえるものであるが、申立人の周知・著名商標を含んでいるところから、「申立人であるアストン マーチン社とその提供に係る商品」を想起、連想する点において、観念上も、引用商標と相当程度類似する。
そうしてみると、アストン マーチン社が製造してきた、歴代の「DBシリーズ」のうちの一車種であるかの如く、特に、現行の「DBシリーズ」の車種である「DB9」の後継車種、派生車種であるかの如く、本件商標に接する需要者、取引者をして理解、認識される場合も少なくない。
(4)商品の関連性
本件商標に係る指定商品中の第12類の「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を含む各指定商品は、引用商標に係る指定商品「Automobiles, bicycles, motorcycles and parts and fittings therefor.(自動車・自転車・オートバイ並びにそれらの部品及び附属品)」と同一・類似の商品に係るものであり、引用商標に係る指定商品と本件商標に係る指定商品の間には極めて高い関連性があるというべきである。
また、第7類の指定商品に係る「動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)及び動力機械器具の部品、機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」等は、陸上の乗物用ではない点で用途が異なるとしても、生産部門・原材料及び品質等を共通にする点で密接な関連性がある。
そして、第9類に属する各種通信機器、電子応用機器(コンピュータ関連商品)等であるのに対して、引用商標が周知著名性を獲得した商品は、自動車ないし車両に関する商品である。近年の自動車には高度な通信機能、音響・映像機能、ソフトウェアを用いた車載コンピュータ機能が搭載されている事実に鑑みれば両商品の間には密接な関連性がある。
最後に、第11類の指定商品に係る各種乗物用照明装置及び照明器具は、引用商標の指定商品との関係で完成品と部品の関係にある点で密接な関連性が認められる。
よって、引用商標に係る指定商品と本件商標に係る指定商品の間には少なからぬ関連性があるというべきである。
(5)まとめ
申立人の標章として広く知られる「DB9」、及び欧文字「DB」とシリーズ番号の組み合わせに係る「DBシリーズ」と極めて近似する構成からなる標章である、「db」の文字との組み合わせに係る本件商標が、その指定商品(役務)に使用された場合、取引者、需要者をして、その商品(役務)が申立人、アストン マーチン社の提供にかかわるものであるかのごとく、あるいは、同人と何等かの経済的・組織的関連がある者の提供に係る商品(役務)であるかの如く認識され、出所混同を生ぜしめる蓋然性が極めて高いといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、左側の図形部分と右側の「boeder」の欧文字の間にはやや空白があり、これらを常に一体のものとして観察し把握しなければならない特別な理由があるとはいえないものである。
そうすれば、本件商標の構成中、左側の図形部分も独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るというのが相当である。
しかして、本件商標の構成中の左側の図形部分についてみるに、その構成は、一筆書きで左右対称となる図形であって、上方から垂直に下方に向かった線が、左上方向に右回りの半円を描き、さらに、そのまま水平に右側に伸びた線が、右下方向に右回りの半円を描き、そのまま下方から垂直に上方に向かって、始点と終点の高さが同じになるように表したものである。
そして、この図形部分からは、特定の称呼及び観念は生じないというのが相当であり、この部分は、専らその外観をもって取引に資されるというのが相当である。
なお、申立人は、この点について、本件商標は、「db boeder」の欧文字(「db」の文字はやや図案化してなる)を書してなり、本件商標のうち、「db」の部分が需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部といえるので、本件商標は「ディービー」との称呼をも生じるといえる、旨を主張している。
しかしながら、本件商標を構成する図形部分は、上記したように、一筆書きで左右対称となる図形を表したものであって、ここから「d」と「b」の欧文字を直ちに想起させるということはできず、この部分について、「db」の文字をやや図案化してなるとみることは、妥当といえない。
よって、申立人の上記主張は、採用することができない。
2 引用商標及びDBシリーズの標章について
引用商標は、「DB9」の文字よりなるところ、甲第32号証に徴すれば、「DB9」の商標は、申立人の自動車の車名を表すものとして使用され、広告もされて広く知られているとの認定がされ、商標法第3条第2項が適用されて登録されたものである。
そうとすれば、引用商標は、「DB9」の態様全体をもって自他商品の識別標識としての機能を果たしているものであり、引用商標自体からは「DB」の文字が分離抽出されることはないというべきである。
他方、甲第3号証ないし甲第58号証を総合して検討すれば、申立人は、高級スポーツカーのメーカーとして知られていて、同人の製造した自動車もDBシリーズとして自動車に相当程度の関心がある者の間で知られていたということができるものである。
しかしながら、申立人の「DBシリーズ」と称されている標章が、単に「DB」と略され、広告されて知られていたことを示す証拠及び取引の実情は認められないことからすれば、申立人の「DBシリーズ」の標章が、単に「DB」として知られていたということはできないものである。
3 本件商標と引用商標及びDBシリーズの標章との類似性の程度について
本件商標を構成する図形部分は、前記1で判断したように、一筆書きで左右対称となる図形を表した図形というべきものであり、引用商標である「DB9」や、「DBシリーズ」の標章とは、その構成態様が顕著に異なる別異のものであって、本件商標と引用商標及び「DBシリーズ」の標章との類似性の程度は極めて低いというべきである。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
以上によれば、たとえ、引用商標及び申立人のDBシリーズの標章が一定程度知られているとしても、本件商標は、引用商標及び「DBシリーズ」の標章とは別異の商標というべきである。
してみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標あるいはDBシリーズの標章を連想、想起することはなく、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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