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Trademark Appeal Case

AKAの普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2015−890027(T2015−890027/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5640687号の指定役務中,第41類「医業に関する知識の教授,医業に関するセミナーの企画・運営又は開催」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は,その2分の1を請求人の負担とし,2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5640687号商標(以下「本件商標」という。)は,「AKA」の文字を標準文字で表してなり,平成25年8月1日に登録出願,同年11月18日に登録査定,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として,同年12月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録を無効にする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書,審判事件弁駁書及び上申書等において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第15号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の理由

(1)本件無効審判の請求に係る事情

ア 請求人は,「関節運動学的アプローチの治療法」を用いた整骨・整体・柔道整復等の業務を行っており,「とみおか整骨院」,「アクティブデイサービス笑顔」,「メディカル整骨アカデミー」,「前原フィットネスボクシング」,「治療家専門筋膜系・関節系セミナー」の企業をもって,この「関節運動学的アプローチの治療法」の活用と,普及と,セミナー企画を行っている。

請求人は,先人者のセミナー等から「関節運動学的アプローチの治療法(AKA治療法)」を学んで,平成23年からは上記業務を行っている。

イ 平成25年9月5日付で,「日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会」から「AKA」,「AKA−博田法」の商標を保有しているので,「AKA」,「AKA療法」の名称を使用しないようにとの警告状(甲2)を受けた。

ウ これに対して,請求人は,「AKA−博田法」の商標に対しては非類似であり,同一類似のものを使用していない。そして,「AKA」,「AKA療法」は,治療法を示す普通名称又はその略称・慣用商標であり,商標権の侵害でない旨及び先使用権がある旨を回答していた。また,併せて「AKA とみおか療法」の商標登録出願(商願2014−53443号)をした。

しかし,この商願2014−53443号は,本件商標及び登録第5525468号商標と類似するとの拒絶理由を受けた。

(2)「AKA」の標章について

ア 甲第3号証は,「日本リハビリ研修センター」による「関節モビリゼーション:AKA/実技セミナー」と題するセミナーの資料(テキスト)であり,その一つ「『関節運動学的アプローチ』/Arthro−Kinematic Approach(A.K.A)(秋津鴻池病院 植松作成)」のセミナーテキストのタイトルの頁,その目次の上のタイトル「『AKA(関節運動学的アプローチ)』」の表示,1頁目の18ないし19行目の「『関節運動学』を基礎理論とする関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,以下AKAと略す)」はこの関節包内運動障害に対する治療法であり,・・・」の記載,同12頁,61頁からわかるように,「AKA」は「arthrokinematic approach」の略称として知られていた。

また,63頁の[文献]の32では,「宇都宮,井端:関節運動学的アプローチ(AKA),『理学療法ハンドブック』細田ら(編),協同医書出版,1991,199−238」の記載で「AKA」が略称で使用されている。

イ 甲第4号証は,刊行物「関節運動学的アプローチ/AKA」博田編(医歯薬出版株式会社/1990年6月20日第1版第1刷発行)であり,この序(iii)15ないし22行目に,「・・・関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,AKA)という名称を用いることとした。」の記載がある。よって,博田氏も明白に「AKA」とは「関節運動学的アプローチ」の略称・普通名称であり,また「AKA療法」,「AKA」は関節運動学的アプローチの治療法を示すものと理解されているはずである。

ウ 甲第5号証は,刊行物「痛みの治療革命」住田著(株式会社冬青社/1995年4月15日第1刷発行)であり,「AKA」,「AKA治療法」が「AKA(Arthro Kinematic Approach)という療法が生まれました。これは“関節運動学的アプローチ”の略です。」として,そのプロローグ13頁12ないし13行に明記されている。その上で,本文で「AKA」,「AKA療法」を略称として多数使用している。

エ 甲第6号証は,刊行物「SJF/関節ファシリテーション」宇都宮編(丸善出版株式会社/平成24年(2012年)1月20日発行)であり,「AKA」は,関節運動学的アプローチとして使用されている。同号証の1は,甲第6号証の他社の初版本の表紙(シュプリンガージャパン社/2008年11月発行)である。

オ 甲第7号証は,刊行物「仙腸関節の痛み」村上著(株式会社南江堂/2012年3月20日第1刷発行)であり,その69頁には「AKA」の定義について,「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)とは,関節の機能を徒手的に回復させる方法で,“関節運動学に基づき,関節神経学を考慮して,関節の遊び,関節面の滑り,回転,旋回などの関節包内運動の異常を治療する方法,および関節面の運動を誘導する方法”と定義されている。」と記載されている。そして,70,71頁には「AKA−博田法」のその関節運動学による手技を具体的に説明している。このように「AKA−博田法」は「AKA」治療法の一つとして紹介されている。

カ 甲第8号証は「日本AKA(エーケーエー)医学会」のインターネットホームページであり,「AKA」は「関節運動学的アプローチ」の略称として表記されている。

(3)無効原因

「AKA」は,本件商標の出願時,査定時及び現在のいずれにおいても医治療法の「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)」の略称として,昭和の末の時期から長く使用され,医業業界では上記治療法を示す著名な略称又は普通名称である。

そして,「AKA」,「AKA療法」は,上記治療方法を示す普通名称又は著名な略称として,上記のいずれの時点でも認識されるに到っていたものである。

したがって,第41類「知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育用ビデオの制作,教育研修のための施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」の指定役務で使用されると,該役務の提供する対象物又はその内容を単に表示する普通名称又はその周知の略称あるいはそれらの質・使用の方法を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当する。

また,本件商標は,それ以外の役務では,役務の質の誤認を生じるおそれがあるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。

2 答弁に対する弁駁

(1)「AKA」は,1970年代前後に長く欧米で使用されてきた「arthrokinematic approach」の医学用語の英熟語の略語であり,この英熟語は日本語ではその原語のとおり,「関節運動学的アプローチ」と訳されるものであり,また,その英熟語は欧米では,「関節運動学的アプローチによる治療法」という治療手段を示す質表示の用語であるから(甲6の第1章,第2章,第4章等,甲3の文献等),「AKA」もその原語(英熟語)と同じ内容を簡略に表現したものであり,「普通名称」及び「質表示語」というべきものである。

(2)本件商標は,関節運動学的アプローチに関する指定役務では,指定役務の内容・対象を示す質表示となる。それ以外の指定役務では,役務の質の誤認を生じ,商標法第4条第1項第16号に該当する。

ア 「関節運動学的アプローチ(Arthrokinematic Approach)」について,被請求人が他人の医学雑誌記載の「Arthrokinematic Approach」の用語を初めて発見したとしても,また,それを「関節運動学的アプローチ」と訳したとしても,その発見されたものは欧米ではよく知られた医学用語であり,その訳も直訳のものであり,研究開発者であればそのように日本語訳するものである。そして,発見し訳したことでは,何ら独占排他の権利は発生しない。

「AKA」は,「関節運動学的アプローチ」,「関節運動学的アプローチを用いた治療法」という広い概念の用語(普通名称)であり,「AKA」が登録されると,被請求人以外のAKA研究開発者は「AKA」の用語を使用できなくなり,これは法律上不当なことである。医学界に悪影響を与える。

イ 医学用語について,欧米では,古くから「AKA」の略語(略称)を使用している事実があり,被請求人の「AKA」は,欧米での同じ用語の「AKA」の定義とは違っている。

よって,被請求人の独自改良のAKA技術を命名するならば,乙第17号証の英語表記にあるように「AKA−博田法」,「AKA−Hakata method」とすべきである。

そして,被請求人の門下及び指導によるものであるから一般的な使用でなく,及びすべて被請求人が開発したとしているが,それならば,他の文献の被請求人の名義がない研究開発者によるAKA技術の研究開発論文・刊行物はないはずであるが,被請求人名がない刊行物も複数ある。また,共著が複数あることも一人で全て開発したものでないことを証している。

3 上申書

本件商標の「AKA」は,「最新医学略語辞典<第5版>」(2010年(平成22年)5月1日発行,甲11),「プラクティカル医学略語辞典<第6版>」(2011年(平成23年)1月15日発行,甲12),「理学療法学事典<第1版第4刷>」(2006年(平成18年)4月1日第1版発行,甲13),「理学療法ハンドブック<改訂第4版>/第2巻治療アプローチ」(2010年(平成22年)2月26日発行,甲14),「医学略語辞典 改訂第4版」2011年2月20日,株式会社金芳堂発行,甲15)の記載内容から,医学用語の普通名称であることが明白であり,「AKA」関連の指定役務では,その役務の提供の質・態様若しくは提供の方法,あるいは,自他役務識別力のない商標である。

さらに,「AKA」は,それ以外の役務では,役務の質の誤認を生じるおそれがある商標ともなる。

第3 被請求人の主張

被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,答弁書,第2回答弁書及び意見書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第22号証(枝番を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

(1)「関節運動学的アプローチ(Arthrokinematic Approach)」について

ア 「Arthrokinematic Approach」という英熟語は,被請求人が,昭和57年(1982年)に発行されたアメリカ合衆国の医学雑誌「Physical Therapy」第62号1754頁に掲載されているのを発見し(乙1),「関節運動学的アプローチ」と訳したものである。

昭和59年(1984年)3月30日締切の第21回日本リハビリテーション医学会の発表用の「腰痛,腰下肢痛と仙腸関節のarthrokinematic dysfunction」と題する抄録において「関節包内運動の回復手段という本質を表わす関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach),以下AKAと略す」という用語を使用することとする。」と記載した(乙2)。

イ 「関節運動学的アプローチ」は,被請求人によって開発された治療法である。被請求人は,昭和54年(1979年)から研究開発に着手し,関節運動学的アプローチの理論構築は,すべて被請求人が行い,その技術は殆ど被請求人が開発した。

技術開発には,疾病の診断・治療を伴い,医師である被請求人しかできない。

したがって,技術の開発及び改良は,被請求人が行い,6名の理学療法士は,その助手を務めたにすぎず,被請求人の指示の下で関節運動学的アプローチを用いた治療を行った被請求人の門下である。

ウ 平成2年(1990年)に「関節運動学的アプローチ,AKA」(医歯薬出版)が出版された後,被請求人は,平成11年(1999年)9月20日に「関節運動学的アプローチ最新の技術」(第1版)を,平成12年(2000年)12月18日に「同」(第2版)を,さらに平成13年(2001年)9月26日に「同」(第3版)を発行し,平成19年(2007年)に,被請求人のみの編著に係る「AKA関節運動学的アプローチ博田法(第2版)」を出版している(乙4ないし乙6)。

エ 平成2年(1990年)に「日本AKA研究会」が設立され,平成5年(1993年)に「日本関節運動学的アプローチ(AKA)研究会会則」を発行し,「日本AKA研究会」が正式に発足した。その後,平成16年(2004年)に「日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会」に名称を変更した(乙7)。

この日本AKA研究会(現,日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会)は,平成2年(1990年)以来,平成26年(2014年)までに36回の学術集会を開催している他,平成11年(1999年)に「日本AKA研究会誌」創刊号を発行,第6号から「日本関節運動学的アプローチ医学会誌」に題号を変更した(乙8及び乙9)。

日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会は,平成10年(1998年)より指導医専門医制度を設け,同年3月20日に,14名の認定医を創出して以来,平成27年度は,58名の指導医,29名の専門医を認定している(乙10)。

また,日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会は,平成17年(2005年)8月1日付けで「日本関節運動学的アプローチ医学会 理学・作業療法士会」に名称を変更し現在に至っている(乙11)。

(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の非該当性について

各種医学用語辞典において,「AKA」が英熟語「Arthrokinematic Approach」の略語又は「関節運動学的アプローチ」を意味するものと掲載されている事実は,1件も見当たらない。

「ステッドマン医学大辞典」(改訂第5版)(乙12)はもとより,インターネット上で検索できる「医学用語辞典:翻訳のためのインターネットリソース」(http://www.kotoba.ne.jp/n.cgi?k=80&fsz)に掲載されている全ての医学用語辞典(但し,会員登録が必要なものは除く。)においても,一切掲載されていない(乙13の1ないし31)。

また,日本医学会の医学用語辞典においても,「AKA」及び「関節運動学的アプローチ」なる用語は見あたらず,「kinematics」が「運動学」と記載されているだけである(乙14)。

インターネットで「AKA」を検索すれば,被請求人が会頭を務める「日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会」のホームページがヒットし,そこには「関節運動学的アプローチ」を「AKA」と略している事実が掲載されている。

しかし,これは,あくまでも,当該医学会内,並びに,当該医学会が認定した指導医及び専門医が使用しているものであり,医学業界において一般に広く使用されているものではない。

請求人が提出した甲第3号証ないし甲第8号証はいずれも被請求人の門下生又は日本関節学的アプローチ(AKA)医学会の会員による文献であり,これらをもって,医学会において一般に使用されているということができない。

したがって,本件商標は,「関節運動学的アプローチによる治療法」を直接,かつ,具体的に表示するものではなく,また,医学界において「関節運動学的アプローチによる治療法」を意味するものとして広く一般に使用されているものではない。

また,本件商標が「関節運動学的アプローチによる治療法」を意味するものでない以上,役務の質について誤認を生じさせるおそれはない。

(3)請求人の主張に対する反論

請求人は,関節運動学的アプローチ(Artrokinematic Approach)」の意味について,甲第7号証には,「『AKA』の定義が,『関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)とは,関節の機能を 徒手的に回復させる方法で,“関節運動学に基づき,関節神経学を考慮して,関節の遊び,関節面の滑り,回転,回旋などの関節内包運動の異常を治療する方法,および関節面の運動を誘導する方法”と定義されている』」と記述しているが,これは,著者である村上の引用時の誤記である。

この定義は,「博田節夫(編著):AKA関節運動学的アプローチ−博田法.第2版,医歯薬出版,2007」となっているが,この文献には「AKA」の定義は書かれておらず,同書75頁「第4章基本原理」の冒頭に,関節運動学的アプローチ(arthorokinematic approach:AKA)−博田法の定義が,「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)−博田法は関節運動学に基づき,関節神経学(articular neurology)を考慮して,関節の遊び,関節面の滑り,回転,回旋などの関節内包運動の異常を治療する方法,および関節面の運動を誘導する方法と定義される.」と書かれている(乙15)。

つまり,「AKA−博田法」は,請求人がいうような「AKA」治療法の一つではなく,日本AKA医学会の認定した指導医及専門医によって提供される「関節運動学的アプローチによる治療法」そのものである。

2 第2回答弁書

(1)「arthrokinematics」,「arthrokinematic」,「arthrokinematic approach」の研究開発の歴史について,甲第6号証に記載されていることは認めるが,これらはあくまでも伝聞証拠であり,それが事実であるか否かは不明であり,また,「『AKA』,『arthrokinematic approach』,『arthrokinematics』,『arthrokinematic』なる文字は,欧米では1980年代において医学用語を示す『普通名称』又はその技術手法を示す『品質表示語』の用語・略称として確立していた」との主張事実は,何ら立証されていない。

(2)外国語(英語)の医学用語「arthrokinematic(s)」,「arthrokinematic approach」の訳語と略語(AKA)について,請求人は,「医学用語の訳語・略語は,その使用をオープンにし,共通の統一用語として使用できるようにする性質のものである。」旨主張するが,そこにいう「使用」とは,本件指定役務との関係上,「医業」に関する知識の教授やセミナーの企画・運営又は開催である。したがって,請求人の主張は,この「医業」すなわち「医療行為」に関する知識の教授を無資格者が行ってよい,と主張するのと同じであり,医師法第17条に違反するおそれがある。

(3)「答弁に対する弁駁」について

ア 請求人は,「本件商標は,関節運動学的アプローチに関する指定役務では,指定役務の内容・対象を示す質表示となるから,それ以外の役務について使用した場合,役務の質の誤認を生じる。」旨主張する。

しかし,そもそも,本件商標は,その指定役務との関係上,役務の質表示ではない。したがって,本号に該当するものではない。

イ 請求人は,「『AKA』が登録されると,被請求人以外のAKA研究開発者は『AKA』の用語を使用できなくなり,法律上不当であって,医学会に悪影響を与える。」旨主張している。

しかし,日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会は,任意団体であるため,法人格がないので,元理事長であり,「関節運動学的アプローチ」の研究開発を行ってきた被請求人の名義で商標登録をしているのである。

実際,「AKA」は,被請求人又はその門下生が,また,日本関節運動学的アプローチ(AKA)研究会及び日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会並びにその指導医及び専門医が使用してきたのである。

ウ 請求人は,「欧米では,古くから『AKA』の略語(略称)を使用している事実があり,被請求人の『AKA』は欧米での同じ用語の『AKA』の定義とは違っている。」旨主張しているが,その事実を立証していない。

エ 請求人は,「被請求人の門下及び使用によるものであるから一般的な使用でなく,及びすべて被請求人が開発したとしているが,それならば,他の文献の被請求人の名義がない研究開発者によるAKA技術の研究開発論文・刊行物はないはずであるが,被請求人名がない刊行物も複数ある。また,共著が複数あることも一人で全て開発したものでないことを証している。」と主張している。

しかし,問題は,誰が研究開発をしたかという点ではなく,本件商標が指定役務との関係上,自他役務識別力を有するか否かである。

そして,被請求人は,本件商標は,被請求人又は日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会若しくは日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会の認定した指導医若しくは専門医が提供する役務を指称するものであり,特定の者の業務に係る役務であることを認識,理解し得るものであって,自他役務識別力を有するものである,と主張しているのである。

(4)請求人は,「AKA」が医学用語の普通名称であることを立証しようとしている。

「医学用語の普通名称」なる意味が不明であるが,甲第11号証ないし甲第13号証は,本件商標の登録査定時前の発行に係る医学略語辞典である。

したがって,それらの発行時において,本件商標が登録されていなかったことは事実である。

しかし,これらの略語辞典に掲載されているからといって,「AKA」が医学用語の略称として広く一般に知られていたということはできない。とりわけ,これら略語辞典の発行部数については,何ら立証されていない。

また,甲第11号証は,昭和62年(1987年)7月15日,甲第12号証は平成3年(1991年)1月25日がそれぞれ初版であるが,その初版本にも,同様の記載があったのかは不明である。

3 意見書(平成28年6月17日付け)

(1)商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号の非該当性

請求人は,甲第11号証ないし甲第15号証及び甲第3号証ないし甲第8号証をもって,「AKA」が「arthrokinematic approach」(関節運動学的アプローチ又は関節運動学的療法)を意味する療法の医学用語の普通名称又は著名な略称であるから,本件商標は,商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当し,あるいは同法第4条第1項第16号に該当する,旨主張している。

しかし,そもそも本件商標が商標法第3条第1項第3号又は同項第6号に該当するというためには,本件指定役務との関係において,質表示又は自他役務識別力がないといえるものでなければならない。

しかるに,請求人は,本件指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」のうち,どの役務の普通名称又は質表示であると主張しているのか,不明である。

また,識別力がないとの指定役務を特定できなければ,それ以外の役務も特定できないのであるから,商標法第4条第1項第16号に該当するということもできない。

仮に,「AKA」が,「arthrokinematic approach」(関節運動学的アプローチ)を意味する医学用語又はその略称であると仮定したとしても,医学用語又はその略称であることによって,直ちに本件指定役務との関係を特定できるものでもなく,また本件指定役務の質表示になるものでもない。

したがって,医学用語又はその略称である旨の文献ないし記述が存在することによって,直ちに本件指定役務との関係が特定できるものでもなく,また,本件指定役務の質表示であるとか,本件指定役務との関係上,識別力がないとか,いえるものではないことは明らかである。

なお,被請求人は,「AKA」を「arthrokinematic approach」(関節運動学的アプローチ又は関節運動学的療法)を意味する旨の記述をした出版社に対し,「AKA」は登録商標であり,かかる記述は登録商標の普通名称化を招来しかねないので,かかる記述を削除するか,登録商標であることを明記するよう要請をし,既に一部の出版社から削除する旨の回答を得たことを付言する。

(2)請求人の利害関係について

請求人は,福岡県糸島市前原において「とみおか整骨院」を営んでいる者であり,そのウェブサイトによれば,「当院について」の説明中「とみおか整骨院は各種保険取り扱い医院です」との見出しがある。

また,「健康保険を適用しての診療の場合は,社会保険庁の『柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準』に準じた料金となります。」との記載(乙22の1)があることから,請求人は「柔道整復師」であると考えられ,少なくとも「医師」の資格を有している事実は窺えない。

請求人が「医師」でないのであれば,本件指定役務中,少なくとも「医業」に関連する役務,例えば,「医学に関する知識の教授」については,本件審判を請求する利害関係を有しておらず,請求人適格を欠くから,当該審判の請求は,審決をもって却下されるべきである。

(3)まとめ

以上述べたとおり,請求人は,本件審判を請求することについて請求人適格がないので,審決をもって請求が却下されるべきであり,また仮に請求人適格があるとしても,本件商標は,被請求人又は日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会若しくは日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会の認定した指導医若しくは専門医が提供する役務を指称するものであり,特定の者の業務に係る役務であることを認識,理解し得るものであって,指定役務との関係上,自他役務識別力を有するものであるから,商標法第3条第1項第3号又は同項第6号のいずれにも該当せず,かつ,指定役務の質について誤認を生じさせるおそれがないから,同法第4条第1項第16号に該当するものでもないことは明らかである。

第4 当審の判断

1 利害関係について

請求人は,「関節運動学的アプローチの治療法」を用いた整骨・整体・柔道整復等の業務を行っており,「AKA とみおか療法」の文字よりなる標章を商標登録出願(商願2014−53443号)したが,本件商標及び登録第5640687号商標を引用商標として拒絶理由通知を受けた旨を主張している。

他方,被請求人は,請求人は少なくとも「医師」の資格を有している事実は窺えない,請求人が「医師」でないのであれば,本件指定役務中,少なくとも「医業」に関する役務,例えば「医学に関する知識の教授」については,本件審判を請求する利害関係を有していない旨を主張する。

しかし,職権をもって調査したところ,請求人の上記商標登録出願は,本件商標を含む商標を引用し商標法第4条第1項第11号該当を理由とする平成26年10月7日付けの拒絶理由通知を受けたものであるから,請求人は,本件商標の商標権の存否によって,その権利に対する法律的地位に影響を受けるものであるから,本件商標の登録を無効にすることについて法律上の利害関係を有するものであって,本件商標登録の無効の審判を請求する請求人適格を有するというべきである。

2 請求人及び被請求人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。

(1)刊行物,ウェブサイト等による「AKA」の文字について

ア 被請求人が関与又は編集したもの

(ア)昭和59年3月30日(金)締め切りの「第21回 日本リハビリテーション医学会 抄録用紙」(写し)によれば,「腰痛,腰下肢痛と仙腸関節のarthrokinamatic dysfunction」に,「今回から,関節包内運動の回復手段という本質を表す関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,以下「AKA」と略す)という用語を使用することとする。」の記載がある(乙2)。

(イ)「関節運動学的アプローチ/AKA」(博田節夫編 1993年10月10日第1版第6刷発行,医歯薬出版株式会社,一部)によれば,その「序」には,「この治療法は欧米の関節モビリゼーションと異なり,関節運動学に基づく関節包内運動の治療法であるとの意味を正確に表現するため,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,AKA)という名称を用いることとした。」の記載があり,第1章「概要と歴史」には,「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,AKA)とは,『関節運動学(arthrokinematic)にもとづく治療法で,関節面の滑り(sliding),回転(rollong),回旋(spin)などの関節包内運動を改善する手段 である』と定義される新しい運動療法の治療技術である。」の記載がある。

また,85頁の「4 治療」には,「・・・AKAの治療対象は痛みそのものではなく,障害された関節包内運動であり,関節包内運動が回復する結果,症状である痛みが消失するということである。」の記載と,一般原則,慢性期治療,急性期治療等についての記載があり,「5章 治療技術」について記載されている(甲4)。

(ウ)「関節運動学的アプローチ/最新技術/博田節夫/Arthrokinematic approach(AKA)」(1999年9月20日第1版第1刷発行と主張)によれば,「AKAの定義」に「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,AKA)は関節運動学に基づき,関節の遊び,関節面の滑り,回転,回旋などの関節包内運動の異常を治療する方法であると定義される。」の記載があり,「評価と診断」及び「技術」等についての記載がある(乙4)。

<新改訂版>「関節運動学的アプローチ/最新技術/博田節夫/Arthrokinematic approach(AKA)」(日本AKA研究会,2001年9月26日第3版第1刷発行)においても,上記と同様の記載があり,〈追補〉の「関節運動学的アプローチ(AKA)−痛みにおける治療関節の選択」と題する書面の「要旨」に「AKAを用いて関節原性の痛みを治療するには,・・・」,「AKAは単なる痛みの治療に止まらず,・・・」の記載がある(乙5)。

(エ)「AKA PT OT会」のウェブサイト(2015年6月9日印刷)によれば,「日本関節運動学的アプローチ医学会/理学・作業療法士会」の表示があり,「運動療法の再生」の表題の下,2葉目の「はじめに」には「わが国で誕生した関節運動学的アプローチ(AKA)も1979年の開発段から30年,・・・」及び「関節運動学的アプローチ(AKA)の名称について」には「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)は関節包内運動の治療技術として紹介されてきたが,・・・日本語では関節運動学アプローチ−博田法,英語はarthrokinematic approach−Hakana methodという名称を用いることとした(2003年4月)。なお,省略形としてそれぞれAKA−博田法またはAKA−Hakana methodと呼ぶこととする。」の記載がある。

そして,1葉目の「入会のご案内」には「各種講習会への優先的受講や各種情報・資料提供等の会員限定の特典があります。」及び「研修会のご案内」には「・・・日本全国各地の研修会をご案内いたします。」の記載がある(乙11)。

イ 被請求人以外の者によるもの

(ア)日本リハビリ研修センターの「関節モビリゼーション:AKA/実技セミナー」(理学療法士,植松名)によれば,その「【はじめに】」には,「『関節運動学』を基礎理論とする関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach,以下AKAと略す)はこの関節包内運動障害に対する治療法であり,また従来からある運動療法技術との併用により,他の障害のより円滑な治療を可能にした。」の記載があり,「1.AKAとは」には,「○関節運動学的アプローチの定義」及び「関節運動学的アプローチは関節包内における関節面の動き,滑りや回転,すなわち関節包内運動に着目し,この動きの異常により起こる(関節機能異常−joint dysfunction)を治療する手段であり,他動的に行われる」の記載がある。

そして,その4頁の「2.AKAへの経緯」には,「AKAは,・・・関節モビリゼーションのうち,宇都宮等によって導入されたParis(【文献】によれば,1979年)の『関節モビリゼーション(joint mobilization)』から出発し,・・・それとともに関節運動学に基づいた新しい評価,治療法であることをより明確にするためにAKAと名称も変更され,運動療法の中に位置づけられた。(【文献】によれば,「運動療法における関節運動学的アプローチ.第9回運動療法研究会講演論文集,1984年)」の記載がある(甲3)。

(イ)「痛みの治療革命 AKAで腰,肩,膝,手,足の痛みが消えた」(住田憲是著 2005年3月20日第5刷発行,株式会社冬青社,一部)において,その表紙の帯には「本職の整形外科医が悩みに悩んだあげく出会った痛みの究極療法『AKA療法』。」の記載があり,その13頁には「整形外科の一分野として,AKA(Arthro Kinematic Approach)という療法が生まれました。これは“関節運動学的アプローチ”の略です。」の記載,及びその15頁には,「近年,AKA療法を行う医師が増えてきました。」の記載がある(甲5)。

(ウ)「SJF 関節ファシリテーション」(宇都宮初夫編 平成24年12月30日第3刷発行,丸善出版株式会社,一部)において,その276頁の「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)」には,「AKAというのは関節内運動を治療に用いたアプローチの総称であり,・・・」の記載,281頁の「筋機能に対する運動治療法技術の発達」の「1970年代」に「AKA」及び「関節運動学の応用」の記載,283頁の「運動の要素と運動療法」の「運動療法技術」には,「関節運動学的アプローチ/arthrokinematic approach(AKA)」の記載がある。

そして,最終頁の下段には,「本書は,2008年11月にシュプリンガー・ジャパン株式会社より出版された同名書籍を再出版したものです.」の記載がある(甲6)。

(2)辞典類等による「AKA」の文字について

ア 「理学療法学事典 第1版」(2006年4月1日第1刷,2011年10月1日第4刷発行,株式会社医学書院,一部)によれば,その164頁には,「関節運動学的アプローチ arthrokinematic approach:AKA 関節運動学に基づく治療法で,関節の遊び,関節面の滑り,回転,回旋などの関節包内運動を改善する目的で行う徒手的治療技術。」の記載がある(甲13)。

イ 「理学療法ハンドブック 改訂第4版」(2010年2月26日発行,株式会社 協同医書出版社,一部)によれば,その6頁の「3 技術の改良」には,「・・・滑膜性の関節のみを治療対象とし,体幹においても単関節に対する技術のみを使用し,治療の効果が特定の関節を治療することで得られるということを証明できるようにした。1984年,これらの技術は関節モビリゼーションと異なることから,その名称を“関節運動学的アプローチ(AKA)”とした。」の記載があり,「4 新しい技術の開発」には,「・・AKAは医師にはなくてはならない治療技術となっている。」の記載がある。

そして,その22頁の「表12 運動療法の歴史」には「運動療法」の治療対象を「Joint関節」とする「基礎医学」の欄には,「1970/Arthrokinematic Approach(AKA)/関節運動学的アプローチ」の記載がある(甲14)。

ウ 「最新 医学略語辞典 第5版」(2010年5月1日第5版,2014年11月15日第5版第3刷発行,中央法規出版株式会社,一部)によれば,その40頁の「AKA」の欄には,「〔arthrokinematic approach〕関節運動学的アプローチ 関節面の滑りや回転などの関節包内運動の障害を改善する方法。」の記載がある(甲11)。

エ 「プラクティカル医学略語辞典 第6版」(2011年1月15日発行,株式会社南山堂,一部)によれば,その19頁の「AKA」の項には,「関節運動学的療法 arthro kinematic approach[整形]関節や骨格,背骨の歪みを矯正することにより痛みを取り除こうという治療法.」の記載がある(甲12)。

オ 「医学略語辞典 改訂4版」(2011年2月20日改訂第4版第1刷発行,株式会社金芳堂,一部)によれば,その34頁には,「AKA=arthrokinematic approach(関節運動学的療法)」の記載がある(甲15)。

(3)まとめ

上記(1)及び(2)によれば,被請求人は,1984年(昭和59年)3月頃に,日本リハビリテーション医学会の抄録において,「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)」の略として「AKA」の文字を使用し(乙2),1993年10月(甲4),1999年9月(乙4)及び2001年9月(乙5)には,その関節包内運動の治療法について記載した刊行物を発行した。また,「AKA PT OT会」のウェブサイトに,関節運動学的アプローチ(AKA)の名称について,関節包内運動の治療技術として紹介されてきたこと,日本語では,関節運動学アプローチ−博田法という名称を用いることとしたことが記載され,入会及び研修会の案内が掲載された(乙11)。

他方,「AKA」の文字は,1984年の文献「運動療法における関節運動学的アプローチ.第9回運動療法研究会講演論文集」に「関節運動学に基づいた新しい評価,治療法」を表すものとして記載され(甲3),「整形外科の一分野として,AKA(Arthro Kinematic Approach)という療法が生まれた」こと(甲5)等,2005年以降,被請求人と同様の意味合いを表すものとして,各種の刊行物等に記載された(甲6)。また,2006年4月以降に発行された複数の辞書,ハンドブック等に,関節運動学に基づく治療法,治療技術であることが掲載された(甲13ないし甲15)。

そうとすれば,本件商標の登録査定時において,「AKA」の文字は,「関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)」の略であって,関節の機能の治療を行う場合がある整形外科等の役務との関係においては,「関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術」を表すものとして理解,認識されていたということができる。

3 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は,「AKA」の文字を標準文字で表してなるところ,該文字は,前記2のとおり,本件商標の登録査定時において,「関節運動学的アプローチ」を表す「arthrokinematic approach」の略であって,その指定役務中,第41類「医業に関する知識の教授,医業に関するセミナーの企画・運営又は開催」との関係においては,「関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術」を表す文字として認識されていたにすぎないものであるから,上記指定役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。

したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,上記以外を内容とする「医業に関する知識の教授,医業に関するセミナーの企画・運営又は開催」について使用をするときは,役務の質(内容)について誤認を生じさせるおそれがあるから,同法第4条第1項第16号に該当する。

しかしながら,請求人が提出した証拠等からは,「AKA」の文字は,その指定役務中,第41類「知識の教授(医業に関するものを除く。),セミナーの企画・運営又は開催(医業に関するものを除く。),技芸・スポーツの教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,録画済み磁気テープの貸与」との関係において,その役務の質(内容)等を表すものと認識されるとすべき事情は見当たらず,該文字をこれらの指定役務について使用をしても役務の質(内容)等を表すものということができないから,本件商標は,上記指定役務について,商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号に該当しない。

4 被請求人の主張について

(1)被請求人は,「『Arthrokinematic Approach』という英熟語は,被請求人が発見し,『関節運動学的アプローチ』と訳したものである」,「『関節運動学的アプローチ』は,被請求人によって開発された治療法である。・・・『AKA』は,医学業界において,『関節運動学的アプローチによる治療法』を意味するものとして広く一般に使用されているものではない。」旨主張する。

しかしながら,「関節運動学的アプローチによる治療法」の提唱者が被請求人であると理解されることはあっても,前記2(2)の本件商標の登録査定前の複数の辞典類等には,「AKA」の文字は,「関節の運動学的研究成果に基づく技術」である「Arthrokinematic Approach」を表すものとして掲載され,その後も「関節運動学的アプローチ」,「関節運動学的療法」を表すものとして各種の辞書に掲載されているものであるから,これらに接する取引者・需要者に,関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術を表すものと認識させるというべきである。

そうすると,本件商標の登録査定時において,「AKA」の文字は,関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術を内容とする「医業に関する知識の教授,医業に関するセミナーの企画・運営又は開催」との関係において,出所識別標識としての機能を果たし得ないものであるから,これを特定人に独占させることは適切ではないものというべきである。

(2)被請求人は,「請求人が提出した甲第3号証ないし甲第8号証は,いずれも被請求人の門下生又は日本AKA医学会の会員による文献であり,これらをもって,医学会において一般に使用されているということはできない。」旨主張する。

しかしながら,これら甲各号証の文献が被請求人の門下生又は日本AKA医学会によるものであるとしても,いずれの甲各号証においても,「AKA」の欧文字は,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)の略であって,関節運動学(arthrokinematic)にもとづく治療法を表す旨が記載されているものであり,乙第4号証及び乙第5号証においても,同様の旨が記載され,その治療の技術が掲載されているものである。

他方,前記2(2)のとおり,「AKA」の文字は,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach)の略であって,関節運動学的アプローチ療法をAKA療法,関節包内運動を改善目的で行う徒手的治療技術,治療法であること等を記載したハンドブック,辞典,事典等が発行されている。

そうすると,「AKA」の文字は,関節の機能の治療を行う場合がある整形外科等に係る医業に関連する業界においては,これに携わる者に,「関節運動学的アプローチ」,「関節運動学的療法」を表す「arthrokinematic approach」の略であって,「関節運動学を基礎にして開発された治療法,治療技術」を表す文字として認識されていたものというべきであって,治療法,治療技術の一つを表すにすぎないものというべきである。

よって,請求人の主張は採用することができない。

5 結語

以上のとおり,本件商標は,その指定役務中の第41類「医業に関する知識の教授,医業に関するセミナーの企画・運営又は開催」については,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきものである。

しかしながら,本件商標の指定役務中の上記以外の指定役務については,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同項第6号並びに同法第4条第1項第16号のいずれにも違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきではない。

よって,結論のとおり審決する。

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