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Trademark Appeal Case

略語と記号の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2016−12891(T2016−12891/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第5類「麻しん・おたふくかぜ・風しん予防用のワクチン,その他の薬剤」を指定商品として,平成26年9月25日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)

本願商標は,「エムエムアール−II」(「II」は,別掲1に係るローマ数字の2を表す。以下同じ。)の文字を表してなるところ,その構成中「エムエムアール」の文字は,本願指定商品との関係においては「はしか・おたふく風邪・風疹の混合ワクチン」の意味の略語「MMR」(別掲2〜4)の表音を片仮名により表したものと容易に認識させるものであり,また,「II」の文字は,商品の品番・企画・略称・シリーズ名等を表示するための記号又は符号として一般に使用されているローマ数字(別掲5〜7等)を認識させるにとどまるから,これらの語をハイフンにより結合したにすぎない本願商標は,これをその指定商品に使用しても,これに接する需要者,取引者に「はしか・おたふく風邪・風疹の混合ワクチンであること」と「その商品に付された品番・企画・略称・シリーズ名等がIIであること」とを一連に表示するものと認識させるにすぎず,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものと認められる。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当し,「はしか・おたふく風邪・風疹の混合ワクチン」以外の「薬剤」に使用するときは,商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあり,同法第4条第1項第16号に該当する。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

ア 本願商標は,別掲1のとおり,「エムエムアール−II」の文字を表してなるところ,これは,「エムエムアール」の片仮名と「II」のローマ数字とを「−」(ハイフン)で連結してなるものである。ハイフンは,それによって,その前後の文字を明確に区別していることは,視覚的に明らかである。本願商標は,「エムエムアール」と「II」とが「−」(ハイフン)によって明確に分離されているものである以上,これに接した取引者,需要者に,「エムエムアール」と「II」のそれぞれに着目した観察と認識が生ずるのは,何か特別な事情がない限り,むしろ当然というべきであり,このような観察と認識が生じないとするためには,それを根拠付ける特別の事情が認められなければならないというべきである。しかし,請求人が提出した全証拠によっても,本願商標においてそのような特別の事情を認めることはできない。

イ 本願商標の構成中「エムエムアール」の文字は,欧文字「MMR」の表音を片仮名表記したものと容易に理解できるところ,「MMR」の語は,別掲2から4に掲げる辞典に記載があるとおり,医薬品との関係においては,「はしか(麻疹),おたふくかぜ(流行性耳下腺炎),風疹の混合ワクチン」(以下「MMRワクチン」という。)を示す略語を表記したものということができ,これらの辞典が一般的なものであることを鑑みれば,医療関係者にとどまらず,一般需要者を含めてその意味の把握が比較的容易にできる語であることがうかがえる。

そうすると,本願商標の構成中「エムエムアール」の文字は,MMRワクチンに照応する商品との関係では,単にMMRワクチンの略語である「MMR」の表音を片仮名表記したもの,すなわち商品の品質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認められ,自他商品の識別標識としての機能を有するものということはできない。

ウ また,本願商標の構成中「II」のローマ数字は,算用数字の「2」を表すものであるところ,一般に商品を扱う各種業界においては,自己の生産又は販売に係る商品の種別,品番等を表示するための記号,符号として数字が類型的に取引上採択採用されていることから,それのみでは極めて簡単で,かつ,ありふれた標章ということができる。それに加えて,例えば別掲5から8に掲げるとおり,医療や医薬品分野においても,「トランシーノII」,「ヘパリーゼプラスII」,「シンクロメッドII ポンプ」,「太田漢方胃腸薬II」のように,「II」のローマ数字を付すことで,その商品の種別,品番や従来商品の改良品としての型式等を表す表示として使用されている実情も併せて認められることよりすれば,「II」のローマ数字は,他の語と結合した場合であっても,商品の種別,品番又は型式等を表示する性質を失うものではない。

エ 以上を踏まえると,本願商標「エムエムアール−II」は,その指定商品との関係において「MMRワクチンの略称の表音を片仮名表記したもの」である「エムエムアール」の文字と,その商品の種別,品番や従来商品の改良品としての型式等を表すローマ数字「II」をハイフンで結合したにすぎない商標であり,その構成中において自他商品の識別標識として機能する要素を見いだすことができず,その構成全体としても需要者に「MMRワクチンの改良品としてのII型」程度の意味合いを想起させるにすぎない。そのため,本願商標は,その指定商品中「麻しん・おたふくかぜ・風しん予防用のワクチン」に使用するときは,自他商品の識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであるから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり,商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第16号該当性について

本願商標は,上記(1)のとおり,その構成中に「エムエムアール」の片仮名を有し,これよりMMRワクチンの意味合いを想起させるのであり,商標全体としても「MMRワクチンの改良品としてのII型」程度の意味合いを想起させるにすぎないから,これをその指定商品中「麻しん・おたふくかぜ・風しん予防用のワクチン」以外の薬剤に使用するときは,あたかもMMRワクチンであるかのように需要者に誤認させ,その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがあると認められるから,商標法第4条第1項第16号に該当する。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は,本願商標「エムエムアール−II」は,全体として特定の意味合いを有しない一種の造語として認識される旨や,本願商標の構成文字全体として,品質を表示する語であると使用,認識されている事実はない旨を主張する。

しかしながら,上記(1)のとおり,本願商標の構成中の「エムエムアール」の片仮名文字は,MMRワクチンに照応する商品との関係においては,当該ワクチンとの関係を通常は連想させるものであり,本願商標全体をもってあくまで造語であると理解する方がむしろ不自然である。また,現時点では本願商標全体として品質表示として使用されている事実がないとしても,商標法第3条第1項第6号は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標につき,それ故に登録を受けることができないとしたものであって,当該商標が取引上現実に使用されている事実は,同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきであるし(知財高裁平成25年(行ケ)第10142号,同25年11月14日判決),MMRワクチンは,我が国においては,1989年から一般に接種され始めたが,接種開始後から各地で無菌性髄膜炎の発生が報告され,このワクチンの副作用として問題となり1993年に中止されたことから(別掲3),現在広く接種が行われているとはいえないとしても,その諸問題を解決した改良品などが将来的に製造,販売されることも十分考えられることから,本願商標の登録が,将来的な一般的な略称の使用を制約するおそれがあるというべきである。

イ 請求人は,国内の商標登録例や海外の商標登録例を提示して,本願商標も登録されるべき旨の主張をするが,その商標の構成態様の相違や法制度の違いなどを鑑みても,本件において上記(1)の認定を妨げる理由にはならない。

ウ 請求人の上記主張は,いずれも採用できない。

(4)まとめ

以上のとおり,本願商標は,その指定商品中「麻しん・おたふくかぜ・風しん予防用のワクチン」に使用するときは,商標法第3条第1項第6号に該当し,前記商品以外の指定商品に使用するときは,同法第4条第1項第16号に該当する。

よって,結論のとおり審決する。

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