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Trademark Appeal Case

著名氏名商標の承諾要否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2014−24042(T2014−24042/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は,「山岸一雄大勝軒」の文字を標準文字で表してなり,第9類,第16類,第21類,第24類,第25類,第30類,第33及び第43類に属する願書記載のとおりの商品又は役務を指定商品又は指定役務とし,平成25年11月19日に登録出願され,その後,指定商品及び指定役務については,原審における同26年5月19日付けの手続補正書,さらに,審判請求と同時に提出した同年11月26日付けの手続補正書をもって,最終的に,第30類「つけ麺用の中華麺,調理済みのつけ麺,ラーメンの麺,つけ麺用のスープ,ラーメンスープ,ぎょうざ,しゅうまい」及び第43類「つけ麺を主とする飲食物の提供」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由

原査定は,「本願商標は,その構成中に『山岸一雄』の文字を有してなるものであって,これと同一の他人の氏名が,本願商標出願以前より所在することは,ハローページ等から明らかであり,かつ,本願の出願人はその他人の承諾を得ていないものである。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知

平成27年5月25日付け証拠調べ通知書により,本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものであるとして,本願商標構成中の「山岸一雄」の文字と同一文字の氏名からなる他人が,平成26年4月3日付けで通知した拒絶理由に記載した氏名に加えて,本願商標出願以前より所在する事実として,NTT東日本発行のハローページに記載の20名の氏名(山岸一雄)及び住所を通知した(個人情報の保護の観点から,詳細な住所の本審決への掲載を省略する)。そして,期間を指定して,これに対する意見を求めた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人は,上記第3の証拠調べ通知に対して,平成27年7月10日付けの意見書において,以下のように述べるとともに,同日付け提出の手続補足書により参考資料1ないし119を提出した。

1 大勝軒の山岸一雄氏の著名性

本願出願時とは状況が異なり,大勝軒の山岸一雄氏は,平成27年4月1日に,80歳にて逝去した。

本願は,同氏の名声に不当に便乗されるおそれのある同氏の氏名及び店名を,不当に使用されることなく,出願人の提供する本願の指定商品及び指定役務について,「山岸一雄大勝軒」の商標の信用を保護し,商品の品質及び役務の質を管理するためのものとして,同氏の承諾を得て,進められていた。

大勝軒の山岸一雄氏の氏名は大勝軒の店名と共に著名であるが,上記のとおり同氏が平成27年4月1日に逝去したことが大々的に報道され,つけ麺店大勝軒の山岸一雄氏の知名度はより一層高まった。

したがって,本願の指定商品及び指定役務との関係において,本願商標における「山岸一雄」の文字部分は,大勝軒の山岸一雄氏の氏名を含む商標として看取されこそすれ,大勝軒の山岸一雄氏以外の氏名として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものではない。

2 本願商標について

本願商標は,外観上,「山岸一雄大勝軒」の漢字7文字を,同書同大で切れ目なく一連に纏まり良く表してなる商標である。

また,本願商標は,つけ麺に関連する商品または役務を指定商品及び指定役務とするものである。

本願商標「山岸一雄大勝軒」よりは,大勝軒の山岸一雄氏の氏名を知る人をして誰しも,同氏を連想させ,例え同氏の氏名を知らなかった場合でも,「大勝軒」の店主であるなど「大勝軒」と深い関連のある「山岸一雄」の氏名を有する人物であると誰もが把握することにより同氏以外の同姓同名を有する人物とは明確に区別される。

既に述べたとおりラーメン店,より詳しくはつけ麺店の創業者としての大勝軒の山岸一雄氏の知名度は高く,日本全国において,つけ麺業界だけでなく,広く世間一般の人々に知られている。

そうすると,本願商標は,同氏の名前が,同氏のつけ麺店の名前として広く知られるようになった店名「大勝軒」と強く結びついた構成であり,本願商標に接する需要者は,つけ麺の店主として著名な山岸一雄氏を想起し,それ以外の同姓同名の山岸一雄氏のことは全く想起しないというべきである。

3 商標法第4条第1項第8号における承諾を得るべき他人

平成26年4月3日付で通知された拒絶理由通知及び上記第3の証拠調べにおいて,「山岸一雄」の氏名を持つ個人が存在していることが指摘されている。

しかし,人格権の保護という同号の趣旨を鑑みると,同姓同名の山岸一雄氏が存在することは,本願の商標登録を拒絶する理由にはならないものと思料する。

承諾を得るべき他人については,「山岸一雄」の氏名を有する者には,本願商標の指定商品・指定役務との関係で,承諾を得ないことにより人格権の毀損が客観的に認められるに足る程度の著名性・希少性等は見受けられない。

特に,本願商標の指定商品及び指定役務との関係で著名性を有する同姓同名の他人はインターネット検索では発見されず,また,「山岸一雄」の氏名を有する同姓同名の他人が20名も存在することにより,希少性は十分に小さいものである。

本願商標について検討すると,審査及び上記証拠調べで引用された「山岸一雄」の氏名を有する者に対して,本願の指定商品・指定役務との関係では,人格権の毀損が客観的に認められるとはいえない。

以上のとおり,本願商標「山岸一雄大勝軒」は,既に相当数の世間一般の人々に受け入れられ得る状態にあるものであり,例え商標登録がなされたとしても,その状態に変化はあり得ない。

むしろ,本願商標が商標登録により一定の管理下に置かれないことにより,不当に大勝軒の山岸一雄氏の氏名が使用されることにより一般需要者ひいては世間一般の人々への不利益は大きい。

したがって,人格権の毀損を理由に本願商標が登録できないとする理由はなく,その趣旨を鑑みれば,商標法第4条第1項第8号に本願商標が該当する理由もない。

4 まとめ

以上のとおり,商標法第4条第1項第8号の趣旨からも,大勝軒の山岸一雄氏以外の同姓同名の氏名のみが抽出して看取されることはないという理由からも,同号に該当しないとすべきである。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第8号について

商標法第4条第1項第8号の趣旨及びその適用については,以下のとおり判示されている。

(1)(商標法第4条第1項第)8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。(最高裁平成16年(行ヒ)343号,平成17年7月22日判決)

(2)他人の名称を含む商標については,他人の承諾を得ているものを除いては,商標登録を受けることができないというべきであって,出願人と他人との間で事業内容が競合するかとか,いずれが著名あるいは周知であるといったことは,考慮する必要がないというべきである。(知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)10309号,平成21年2月26日判決)

(3)同号(商標法第4条第1項第8号)は,出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無,いずれかが周知著名であるということなどは考慮せず,「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標をもって商標登録を受けることは,そのこと自体によって,その氏名,名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし,その他人の承諾を得ている場合を除き,商標登録を受けることができないとする趣旨に解されるべきものなのである。(知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)10005号,平成21年5月26日判決)

2 商標法第4条第1項第8号の該当性について

上記1の観点を踏まえて,本願商標について検討すると,本願商標は,上記第1のとおり,「山岸一雄大勝軒」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の「山岸一雄」の文字部分は,原審による拒絶理由通知及び当審における証拠調べ通知に開示したとおり,他人の氏名である「山岸一雄」と同一であるから,本願商標は他人の氏名を含むものであることは,その構成上明かである。

そして,他人の氏名を含む商標については,請求人と他人との間で,いずれが著名あるいは周知であるといったことは,考慮する必要はなく,本願商標中の「山岸一雄」と同一の氏名である個人が,上記第3の証拠調べ通知のとおり,少なくとも20名存在し,かつ,請求人は,本願商標を登録することについて,上記の個人から承諾を得たことを証明する書面を提出していない。

したがって,本願商標は,他人の氏名を含む商標であり,かつ,本願商標を登録することについて,当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから,商標法第4条第1項第8号に該当する。

3 請求人の主張について

請求人は,本願商標は,同氏の名前が,同氏のつけ麺店の名前として広く知られるようになった店名「大勝軒」と強く結びついた構成であり,本願商標に接する需要者は,つけ麺の店主として著名な山岸一雄氏を想起し,それ以外の同姓同名の山岸一雄氏のことは全く想起しないというべきであり,審査及び上記証拠調べで引用された「山岸一雄」の氏名を有する者に対して,本願の指定商品・指定役務との関係では,人格権の毀損が客観的に認められるとはいえない旨主張する。

しかしながら,商標法第4条第1項第8号の趣旨は,上記1の判示のとおり,他人の氏名を含む商標について商標登録を受けることは,そのこと自体が,その氏名を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなすものと解され,請求人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無や,いずれかが周知著名であるかどうかといったことは,考慮する必要がないものである。

本願商標は,他人の氏名を含む商標であって,その他人の承諾を得ているものとは認められないものである以上,同号に該当するものであることは,上記2のとおりであり,また,請求人の挙げる登録例が存することをもって,その判断が左右されるものではない。

したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第8号に該当し,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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