Trademark Appeal Case
複合商標の要部抽出と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2017−900056(T2017−900056/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5897024号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成28年5月10日に登録出願,同年10月7日に登録査定され,第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」を指定商品として,同年11月18日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の3件の登録商標(以下,これらの商標をまとめて「引用商標」という。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4379900号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成11年4月26日
設定登録日:平成12年4月28日
指定商品 :第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」
(2)登録第4657199号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「ハイスピード」(標準文字)
登録出願日:平成14年1月18日
設定登録日:平成15年3月28日
指定商品 :第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」
(3)登録第5825428号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「HIGH SPEED」
登録出願日:平成27年7月31日
設定登録日:平成28年2月12日
指定商品 :第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,文房具類」
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標について,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第11号,同項第15号又は同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,(ア)内部を黄色で塗り潰した横長の矩形枠内の左半分に,ややデザイン化された「セメダイン」の文字を黒字で横書きし,(イ)その矩形枠内の右半分に,「セメダイン」の文字より大きく,四周を白枠で囲った「ハイスピード」の文字を緑色で左横書きするとともに,(ウ)当該「ハイスピード」の文字の上部中央部に,緑色で表した「3000」の文字の上部を,前記矩形枠の外側に一部突出させて表記したものである。
本件商標の外観は,内部を黄色で塗りつぶした矩形枠が存在するものの,「セメダイン」の文字は黒色で,「ハイスピード」の文字は,前記文字より大きな外周を白色で囲った緑色で表記され,「3000」の文字は,外周を白色で囲った緑色で表記してなるものである。そのため,本件商標は,「セメダイン」,「ハイスピード」及び「3000」の各文字が,それぞれ視覚的に分離され,看取されるものである。本件商標の文字の大部分は前記矩形枠内に存在するものの,各文字の統一感はなく,「セメダイン」,「ハイスピード」及び「3000」の各文字は,それぞれ文字の大きさが相違するため,全体として統一性を欠き,構成全体を一体不可分のものとして称呼すべき必然性はない。
そして,本件商標からは,「セメダインハイスピードサンゼン」又は「セメダインサンゼンハイスピード」の称呼が生ずるものの,全体として15音と非常に冗長な称呼である。
また,本件商標の構成中「セメダイン」の文字は,商品「接着剤」との関係においては著名な商標(甲5)であって,取引者,需要者に対し,本件商標権者の総合的な出所標識として強く支配的な印象を与えるものであるため,本件商標を構成する文字中,「ハイスピード」及び「3000」については,個別的商品の出所標識としての印象を与えるものである。そのため,本件商標の構成中,「セメダイン」の文字と「ハイスピード」及び「3000」の文字では,明らかに軽重の差が認められ,本件商標に接する取引者,需要者は,「セメダイン」と「ハイスピード」及び「3000」の2つの部分に分離して観察される。
さらに,本件商標の構成中,「ハイスピード」の上部中央に配された「3000」の文字は,本件商標権者が瞬間接着剤のシリーズを表すものとして使用しているもの(甲6)であって,本件商標の指定商品である「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」との関係においては,単に商品の品番,種別,形式として使用されているため,自他商品識別標識としての機能を有しないものである。
したがって,本件商標は,指定商品との関係においては,本件商標権者の著名商標「セメダイン」及び形式を示す部分である「3000」を省略して,単に「ハイスピード」の部分のみをもって取引に当たると判断するのが相当であり,単に「ハイスピード」の称呼も生ずること明らかである。
以上のとおり,本件商標からは,単に「ハイスピード」の称呼も生じ,「高速度」といった観念が生ずるものである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1
引用商標1は,別掲2のとおり,内部を黒く塗りつぶした,傾斜面が下向きに描かれた直角三角形の内部に,「ハイスピード」の文字を白抜きで表し,その下部に大きく表示した「EX」の白抜き文字を,その下部の一部を前記直角三角形から突出させるとともに,突出した文字部分の外周を黒の線で囲ったものである。
引用商標1の構成中,「ハイスピード」と「EX」の文字は,書体及び大きさが相違するため一体性がなく,また,「EX」の文字は単に欧文字2字であって,商品の型式,品番にすぎず,識別標識としての機能を有していない。
したがって,引用商標1からは,「ハイスピード・イイエックス」の称呼以外に,「ハイスピード」の称呼をも生じ,「高速度」という観念が生じる。
(イ)引用商標2
引用商標2は,「ハイスピード」の文字を標準文字にて左横書きするものであるため,その構成文字に相応して「ハイスピード」の称呼が生じ,「高速度」の観念が生ずる。
(ウ)引用商標3
引用商標3は,「HIGH SPEED」の文字を左横書きするものであるところ,「HIGH」及び「SPEED」のいずれの語とも我が国において親しまれた英語の単語であるため,その構成文字に相応して「ハイスピード」の称呼とともに,「高速度」の観念が生ずる。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)本件商標と引用商標1との比較
本件商標と引用商標1の外観を比較すると,上記のとおり,「ハイスピード」の文字を構成中に包含する点において共通する。両商標の称呼については,本件商標からは「セメダインハイスピードサンゼン」又は「セメダインサンゼンハイスピード」の称呼以外に,単に「ハイスピード」の称呼も生じるのに対し,引用商標1からも「ハイスピード」の称呼が生じるため,称呼において同一である。そして,観念については,本件商標の「ハイスピード」の文字部分及び引用商標1から,いずれも「高速度」の意味合いが生じる。
そうすると,本件商標と引用商標1は,「ハイスピード」の構成文字を共通にし,「ハイスピード」の称呼を同一にするとともに,「高速度」の観念をも等しくする。
(イ)本件商標と引用商標2の比較
本件商標と引用商標2の外観を比較するに,本件商標は,上述のとおり,「ハイスピード」の文字のみ分離して観察されるものであるのに対し,引用商標2は「ハイスピード」の文字を標準文字にて表すものであるため,両商標は,「ハイスピード」の文字を共通にする。称呼については,両商標はいずれも「ハイスピード」の称呼を生じ,観念については,両商標からはいずれも「高速度」の観念を生じる。
そうすると,本件商標と引用商標2は,「ハイスピード」の構成文字を共通にし,「ハイスピード」の称呼を同一にするとともに,「高速度」の観念をも等しくする。
(ウ)本件商標と引用商標3の比較
本件商標と引用商標3を比較すると,両商標は,「ハイスピード」の称呼を共通にするため,称呼上類似するものといわざるを得ない。観念については,いずれも「高速度」という観念においても共通する。
そうすると,本件商標と引用商標3は,外観について比較するまでもなく,称呼及び観念を共通にする類似する商標である。
(エ)審決例
商標の構成において,「商号の略称」と「それ以外の商標」が包含されている場合,「商号の略称」については,総合的な商品(又は役務)の出所表示標識の印象を与え,「それ以外の商標」については,商標権者の個別的商品の出所表示標識としての印象を与えると判断される審決例がある(甲7の1〜6)。
(オ)小括
本件商標と引用商標は,互いに類似する商標であり,指定商品「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」は同一であるため,商標法第4条第1項第11号に該当する。
エ 「ハイスピード」について
本件商標の構成中,「ハイスピード」の文字は,「高速度」を意味する英語の外来語として我が国において広く知られているが,本件商標の指定商品である「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」との関係においては,直ちに特定の商品の品質等を表示するために用いられているものではない。本件商標の指定商品中,「瞬間接着剤」との関係においても,「瞬間」と「ハイスピード」(高速度)とは意味が異なり,また,瞬間接着剤の英語表記は「instant adhesive」又は「instant glue」であって,「high speed」とは無関係である。
申立人は,1983年に,特に硬化時間の速い瞬間接着剤を開発し,製品化したもので,その際に「ハイ・スピード」の商標を使用したものであるが(甲8),そのような硬化時間の短い接着剤は,「超速硬化型瞬間接着剤」と指称されており(甲9の1),商標権者も同様に上記の語を使用している(甲9の2)。この「超速」の英語表記は「super quick」であって,「ハイスピード」とは異なる語が用いられている。
かかる現状に鑑みれば,「ハイスピード」の文字が,本件商標の指定商品である「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」との関係において,十分に自他商品の識別標識としての機能を有することは明白である。
なお,「ハイスピード」に関し,他社が接着剤について商標として使用している例が存在していることは申立人も認識しているが,その使用態様はバラバラであって,その使用例からは,商品「瞬間接着剤」との関係において特定の商品の品質等を表現するために用いられているものとは到底いい得ず,識別標識としての機能を有しないと判断するに足りる事実は存在しない。
(2)商標法第4条第1項第10号について
ア 「ハイスピードEX」の周知性について
申立人は,商標「ハイスピード」について,上述のとおり,1983年から商品「瞬間接着剤」の商標として使用を開始し,以後,数回のリニューアルを経て,1999年からは「ハイスピードEX」として使用を継続している(甲10)。
「ハイスピード」の開発経緯として,木材,陶磁器などの接着に際し,接着剤が内部にしみ込む前に接着させる必要から,特に硬化時間の短い瞬間接着剤を開発し製品化したものであるが,結果として,厚紙や金属,硬質プラスチック,合成ゴムなど幅広い材質に対しての接着性が向上した(甲9の1)。かかる結果を考慮し,当該商品については,硬化時間が短いといった特徴よりも,むしろ幅広い材質に対して使用できる瞬間接着剤としての需要が高まり,需要者,取引者に支持され,現在まで販売を継続するに至っている。
そのため,「ハイスピード」は,商品「瞬間接着剤」との関係において,何ら商品の品質を表示するものではなく,需要者,取引者においても,商標として認識されているものである。
「ハイスピードEX」(以下「申立人商標」という。)は,申立人による広告宣伝活動や営業活動によって,全国のコンビニエンスストア,スーパーマーケット,ホームセンター,ドラッグストアなどにおいて販売され,直近の2016年における申立人の販売する商品「瞬間接着剤」における「アロンアルファ」のシェアが81.6%と高いのはもちろんのこと,「ハイスピードEX」についても96.9%と非常に高いシェアを誇っているものである(甲11)。
これらの事実を総合勘案すれば,「ハイスピードEX」は,申立人の業務に係る商品「瞬間接着剤」を表示するものとして,少なくとも本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内における需要者の間に広く認識されていたものといえる。
イ 本件商標と申立人商標の比較
本件商標は,その構成から「ハイスピード」の部分のみ抜き出して観察され,単に「ハイスピード」の称呼が生じ,「高速度」といった観念が生ずる。
他方,申立人商標も「ハイスピード」の部分のみ抜き出して観察され,単に「ハイスピード」の称呼が生じ,「高速度」といった観念が生ずる。
このように,両商標は,称呼及び観念を共通にし,商品を同一にするものである。
してみれば,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記のとおり,申立人商標である「ハイスピードEX」は,商品「瞬間接着剤」に使用される商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間で全国的に広く知られたものとなっていた。
そのため,本件商標の指定商品「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」と申立人商標を使用する「瞬間接着剤」とは,その用途,需要者,販売店などを共通にし,商品間の関連性が非常に高いことを総合勘案してみると,本件商標をその指定商品に使用したときは,これに接する取引者,需要者は,その構成中の「ハイスピード」の文字部分に強く注意をひかれ,かかる部分より,申立人商標及び申立人を連想,想起し,該商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標権者は,申立人と同様に接着剤を製造販売し,特に瞬間接着剤のなかでも超速硬化型瞬間接着剤を取り扱っているため,申立人使用商標が著名商標であることを当然に認識しているもので,結果的にその著名性に着目して,本件商標の構成中に「ハイスピード」の文字を採択して包含させ,需要者の注意をひく行為は,長年の営業活動によって築き上げた申立人の商品に関する営業上の信用や名声にフリーライドすることになる。
実際に,本件商標権者による本件商標の使用態様について検討するに,商品「瞬間接着剤」との関係において,本件商標と同一態様の商標を使用するものではなく,「ハイスピード」の文字を商標として使用している事実があり(甲12の1及び12の2),当該事実から,申立人の所有商標や使用商標にフリーライドする意図を推認せざるを得ない。
また,本件商標権者が,「ハイスピード」の文字を使用した瞬間接着剤を市場に流通させるとすれば,申立人との出所混同のおそれが高いものとなるから,申立人の所有商標や使用商標に係る営業上の信用や名声が毀損されるおそれがある。
したがって,本件商標は,他人の業務に係る商品を表示するためのものとして,日本国内における取引者,需要者の間に極めて広く認識されている申立人使用商標と類似の商標を,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,申立人が,1983年から,実際に商品「瞬間接着剤」について商標として使用し,申立人の30余年にわたる企業努力及び宣伝活動によって引用商標における業務上の信用にフリーライドする意図が明らかで,申立人の商品出所表示機能が希釈化され,かかるダイリューションによって申立人が多大な損害を被るものである。
特に,本件商標権者と申立人とは,事務用又は家庭用の瞬間接着剤を製造する同業者であり,しかも,本件商標権者は,申立人商標が周知であることを認識しているため,本件商標は,引用商標2「ハイスピード」と同一の文字を,他の構成文字である「セメダイン」や「3000」の語とは文字の色や書体,大きさを異にして表すため,明瞭に分離して観察される態様で包含され,表現されている商標であるから,申立人の貴重な知的財産権を毀損する行為は不法行為を構成し,公の秩序を害する行為に該当する。
そうすると,本件商標の登録及び使用は,社会一般の道徳観念,公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神に反するものであるから,本件商標は,公の秩序を害するおそれがあるため,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標及び申立人商標の周知著名性について
ア 申立人による主張及び提出する証拠によれば,申立人は,硬化時間の速い瞬間接着剤を開発,製品化しており,1983年から当該製品に「ハイ・スピード」の商標(甲8)を使用し,1999年から「ハイスピードEX」の商標(申立人商標,甲10)の使用を開始しているが,その容器及び包装には「アロンアルフア」の文字も表示されている。
イ 申立人の主張によれば,申立人に係る商品「瞬間接着剤」は,全国のコンビニエンスストア,スーパーマーケット,ホームセンター,ドラッグストアなどにおいて販売され,申立人に係る商品である「アロンアルフア」の「瞬間接着剤」におけるシェアは81.6%(2016年),申立人商標に係る商品の「瞬間接着剤(一般用)『ハイスピード』を含む商品」におけるシェアは96.9%(2016年)である(甲11)。
ウ しかし,上記のいずれの主張及び証拠も,引用商標及び申立人商標の周知,著名性を示すには十分ではない。
上記アによれば「ハイ・スピード」の商標及び申立人商標がそれぞれ1983年及び1999年から使用されているとしても,申立人の製品の容器や包装には「アロンアルフア」の表記が顕著にあるため(甲8,甲10),その表記に依存しない,引用商標や申立人商標独自の周知,著名性は把握できない。
上記イの,甲第11号証を根拠に主張される市場シェアについても,「インテージSRI 瞬間接着剤市場」を出典とするが,そもそもその統計調査の具体的手法や算出方法も明らかではない。加えて,「アロンアルフア」の市場シェアについても,その中のどの程度の製品に引用商標又は申立人商標が付されているのか明らかではなく,「『ハイスピード』を含む瞬間接着剤」の市場シェアについては,調査対象市場の範囲や母数となる商品の範囲も不明であり,そこから引用商標及び申立人商標の周知,著名性を把握することは困難である。
エ その他,申立人は,その販売規模,広告実績など,引用商標及び申立人商標の我が国又は外国における周知,著名性を客観的に示す具体的な証拠を提示していない。
オ 上記のとおり,引用商標及び申立人商標の周知,著名性を具体的に示す証拠がないことから,引用商標及び申立人商標は,申立人の業務又はその商品を示すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内又は外国における需要者,取引者の間で,広く認識されていたものとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,黄色の横長の長方形の内側に,左側に「セメダイン」の文字を黒色の角張った太字で表し,右側に上段に「3000」の文字,下段に「ハイスピード」の文字を緑色で,いずれも縁取りして表してなるところ,申立人も認めるとおり,その構成中「セメダイン」の文字部分は,申立人も認めるとおり我が国において商品「接着剤」に係る著名な商標であり(甲5),その構成上も他の文字部分とは間隔を空けて配置され,書体や色彩も異なるため,本件商標の構成中で一見して目をひく文字部分である。そうすると,「セメダイン」の文字部分は,本件商標の構成の中において,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえ,本件商標の要部といえる。
他方,本件商標の構成中「3000」の文字部分は,商品の品番,型番などを表示するものとして一般的に使用され得る数字よりなり,また,特殊な態様で表示されているものでもないから,商品の出所識別標識としての機能がないか,極めて弱いものといえる。
また,本件商標の構成中「ハイスピード」の文字部分は,「速度が速いこと。高速度。」(広辞苑第6版,大辞泉第2版,大辞林第3版)の意味を有するところ,商品「瞬間接着剤」は,「接着速度がきわめて速い接着剤」(前掲広辞苑)のことであり,その商品の特徴として「接着スピードがさらにアップ!!」(甲8),「木材・陶磁器などにもしみ込む前に超速接着」(甲10),「シリーズ最高の接着スピード。」(甲12の1)と紹介されるなど,接着速度の速さはその商品の特徴を示す要素といえる。そうすると,格別,特殊な態様で表示されているわけでもない本件商標の「ハイスピード」の文字部分は,その指定商品との関係においては,接着速度が速いことを認識,理解させるにすぎないというべきであるから,商品の出所識別標識としての機能が弱いものといわざるを得ない。
これに対し,申立人は,「ハイスピード」の文字は,「高速度」を意味する英語の外来語として我が国において広く知られているが,本件商標の指定商品である「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」との関係においては,直ちに特定の商品の品質等を表示するために用いられてはいないし,また,「ハイスピード」(高速度)は,「瞬間」とではその意味及び英語表記も異なり,さらに,硬化時間の短い接着剤を指称する超速硬化型瞬間接着剤における「超速」の英語表記とも異なるから,十分に自他商品の識別標識としての機能を有する旨主張する。
しかしながら,本件商標の指定商品である「事務用又は家庭用ののり及び接着剤」には広く一般の需要者が含まれるところ,そのような一般の需要者の認識を基準としてみるならば,特段の事情がない限り,「速度が速いこと。高速度。」の意味を有する「ハイスピード」の語からは,接着速度が速いことを容易に認識,理解させるというべきであって,このことは「ハイスピード」と「瞬間」,「超速」との具体的な意味の違いや英語表記の違いによって左右されるものではない。
そうすると,本件商標の構成中,「3000」及び「ハイスピード」の文字部分は,「セメダイン」の文字部分との対比において,構成上は並列して配置されているものの,著名な商標である「セメダイン」の文字部分に比較して明らかに自他商品の識別標識としての機能が弱いため,いずれの文字部分も,それ自体で独立した,商品の出所識別標識としての称呼,観念は生じないといい得るものである。
したがって,本件商標は,その構成文字全体に相応して「セメダインサンゼンハイスピード」の称呼を生じ,そこからは特定の観念は生じず,要部である「セメダイン」の文字部分からは「セメダイン」の称呼を生じ,「(著名な接着剤としての)セメダイン」の観念を生じる。
イ 引用商標について
引用商標1は,黒塗りの直角三角形の内部に白抜きで「ハイスピード」の文字を,その下段に直角三角形に一部が重なるように比較的大きな「EX」の文字を枠取りし,白抜きで表してなるところ,「ハイスピード」及び「EX」の文字部分は,文字の大きさを異にするものの,いずれも白抜きで,図形部分を背景に上下二段に表され,全体としてまとまりのよい印象を与えるものである。そして,上記アのとおり,「ハイスピード」の文字部分は,その指定商品との関係においては,商品の出所識別標識としての機能が比較的弱い部分であり,「EX」の文字部分も,商品の品番,型番などを類型的に使用される欧文字2字よりなることから,両文字部分の出所識別標識としての機能に軽重の差はなく,両文字を連結して全体として一連の造語を表してなるものと理解するのが相当である。そうすると,引用商標1は,その構成文字に相応して,「ハイスピードイーエックス」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
引用商標2は,「ハイスピード」の文字を,引用商標3は,「HIGH SPEED」の欧文字を表してなるところ,構成文字に相応してそれぞれ「ハイスピード」の称呼,「高速度」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標の比較
上記を踏まえて本件商標と引用商標を比較すると,本件商標の称呼「セメダインサンゼンハイスピード」及び「セメダイン」の称呼は,引用商標の称呼「ハイスピードイーエックス」及び「ハイスピード」の称呼とは,音構成及び音数の差異からいずれも明らかに相違し,聞き誤るおそれのないものである。そして,その外観も構成全体及び構成文字の差異により明らかに相違するもので,観念においては明らかに相違する又は比較することができない。
そうすると,本件商標と引用商標は,称呼,外観及び観念において類似するものではなく,それらを全体的に考察しても,非類似の商標というべきである。
エ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は,上記(2)アのとおり,「セメダインサンゼンハイスピード」及び「セメダイン」の称呼が生じ,「(著名な接着剤としての)セメダイン」の観念が生じる。
申立人商標は,「ハイスピードEX」の文字を表してなるところ,これらの文字は横書きで間隔なく一体的に表され,上記(2)アのとおり,「ハイスピード」の文字部分は,その指定商品との関係においては,商品の出所識別標識としての機能が比較的弱い部分であり,「EX」の文字部分も,商品の品番,型番などを類型的に使用される欧文字2字よりなることから,両文字部分の出所識別標識としての機能に軽重の差はなく,両文字を連結して全体として一連の造語を表してなるものと理解するのが相当であるから,その構成文字に相応して「ハイスピードイーエックス」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。そして,申立人商標は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていた商標ではない。
本件商標と申立人商標を比較すると,両商標の称呼は,音構成及び音数の差異から明らかに相違し,聞き誤るおそれのないものであり,その外観も全体構成及び構成文字の差異により明らかに相違するもので,観念においては比較することができない。そうすると,称呼,外観及び観念を総合的に考察しても,非類似の商標というべきである。
また,本件商標と引用商標は,上記(2)ウのとおり,非類似の商標である。
以上のとおり,本件商標は,引用商標及び申立人商標とは非類似の商標で,それら商標も,上記(1)のとおり,我が国の需要者の間に広く認識されていた商標ではないから,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標及び申立人商標は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間で広く認識されていた商標ということはできないため,その周知著名性の程度は低く,本件商標と引用商標及び申立人商標とは,上記(3)のとおり,いずれも非類似の商標であるため,商標の類似性の程度も低い。
そうすると,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び申立人商標の使用商品である「瞬間接着剤」との間に需要者,取引者の共通性があるとしても,引用商標及び申立人商標は申立人の業務又はその商品を連想,想起させるような周知著名性の程度は低く,本件商標と引用商標及び申立人商標とは,いずれも非類似の商標であるため,商標の類似性の程度も低いのであるから,本件商標は,これを本件商標権者がその指定商品に使用しても,需要者,取引者に,申立人の業務又はその業務に係る商品と誤信させるおそれも,親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれもないというべきである。
以上のとおり,本件商標は,申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはなく,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり,引用商標及び申立人商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内及び外国において,広く認識されている商標ではなく,上記(2)ウ及び(3)のとおり,本件商標は,引用商標及び申立人商標とは非類似である。
加えて,本件商標の使用による不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的などをうかがわせるような具体的証拠はない。
以上のとおり,本件商標は,引用商標及び申立人商標とは非類似で,それら商標も日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されてはおらず,不正の目的をもって使用をされるものとも認められないから,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,上記(2)アで述べたとおりの構成よりなるところ,その構成がきょう激,卑わいなものではなく,その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反することを示す具体的な証拠はない。
そのため,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえず,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第11号,同項第15号又は同項第19号のいずれの規定にも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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