結論テキスト
審判費用は,請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2014−300867(T2014−300867/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第2643793号商標(以下「本件商標」という。)は,「HI−CAT」の文字を横書きしてなり,1984年11月6日にフランス共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,昭和60年1月14日に登録出願,第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,平成6年4月28日に設定登録,その後,指定商品について,同17年10月19日に,第1類「無機酸類,アルカリ類,無機塩類,単体,酸化物,硫化物,炭化物,水,空気,芳香族,脂肪族,有機ハロゲン化物,アルコール類,フェノール類,エーテル類,アルデヒド類及びケトン類,有機酸及びその塩類,エステル類,窒素化合物,異節環状化合物,炭水化物,アラビヤゴム,クレオソート,しょうのう,しょうのう油,はっかのう,はっか油,ボルネオール,たんぱく質及び酵素,有機りん化合物及び有機ひ素化合物,有機金属化合物,界面活性剤,化学剤」とする指定商品の書換登録がされたものである。
そして,本件審判の予告登録は,平成26年11月17日にされたものである。以下,本件審判の請求の登録日前3年以内を「要証期間内」という。
請求人は,本件商標の登録を取り消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を,審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。なお,枝番号すべてをいうときは,以下,枝番号を省略して記載する。
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は,製品の紙袋を撮影した写真の写しであるが,その撮影日等の記載がなく,撮影した日付を確認できる証拠も提出されていない。
乙第12号証の宣誓供述書及び乙第9号証の1の陳述書に記載された乙第1号証の写真の写しに関する記述については,不知である。
(2)乙第2号証について
ア 被請求人は,乙第2号証を船積み及び通関関係書類として提出した。
しかしながら,乙第2号証の1ないし3,6,7,9,10,12及び14には,輸入貨物物件を示す「PRODUCTDETAILS」「Cargo Descriptions」等の欄に「HI−CAT」の文字が掲載されているものの,これによって,輸入貨物物件の品目がいかなる商品であるのか不明であって,本件商標がその指定商品に使用されていることが明らかでない。
イ 乙第2号証の3の2並びに同号証の8,11,13及び15ないし17によっては,本件商標が使用された事実が明らかでない。
ウ 乙第2号証の4,5及び18ないし21並びに乙第22号証の1及び2は,それぞれ2014年12月16日,19日,17日,24日及び25日付けの書類であるから,これらはいずれも,要証期間内の証明ではない。
エ 被請求人が提出した陳述要領書においてした乙第2号証に関する説明をもってしても,本件商標を付した貨物がいかなる商品であるかは未だ不明である。
なお,乙第10号証が存在する事実は認める。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人の製品型番21370,260及びC253Aに係る製品の製品仕様を示しており,これらが本件商標の指定商品中の「炭水化物」又は「エーテル」に属するかどうかは明らかでなく,また,被請求人もこれを明らかにしていない。
被請求人は,乙第3号証の訳文として乙第11号証の1ないし3を提出し,被請求人の製品型番21370,260及びC253Aに係る製品がカチオン化澱粉である(乙11の4)と説明する。
しかしながら,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉は,特許庁の「類似商品・役務審査基準」に基づく商品の区分(以下,単に「類似商品審査基準に基づく商品区分」という。)に照らせば,本件商標の指定商品中の「炭水化物」若しくは「エーテル」又は「化学剤」,「化学品」(類似群コード01A01)に属するものではなく,むしろ,「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品と解するのが自然である。
(4)乙第4号証について
被請求人は,乙第4号証は,本件商標を付した製品の日本における販売数量を示したものと主張する。しかしながら,乙第4号証の作成時期,作成者等は不明であって,販売数量等を客観的に裏付ける情報や書面もない。
したがって,乙第4号証は,本件商標が実際に日本においてその指定商品に使用されてきた事実を客観的に示していない。
また,被請求人が乙第4号証の販売数量等を裏付ける証拠として提出した乙第9号証の2及び乙第12号証の宣誓供述書に記載の内容については,不知である。
(5)乙第9号証について
乙第9号証の3ないし5の資料が存在する事実及びロケットジャパン株式会社(以下「ロケットジャパン社」という。)が被請求人の100%子会社であることは,認める。
(6)使用に係る商品について
ア 被請求人は,被請求人の製品(型番21370のカチオン化澱粉)が,「エーテル系澱粉であり,本件商標の指定商品中の『炭水化物』又は『エーテル』に属する商品である。」と主張する。
しかしながら,請求人において,特許情報プラットフォームの商品・役務名検索で「澱粉」,「でん粉」又は「デンプン」をキーワードとして調べたところによれば,本件商標の指定商品と同じ類似群コードのみならず,他にも01A02,31A03,33A03及び34A01といった類似群コードに属する商品が多数存在する。かかる実情に鑑みると,被請求人が本件商標の使用を主張する商品が必ずしも本件商標の指定商品中の「炭水化物」又は「エーテル」に属するかどうかは明らかでなく,また,被請求人もこの点について一切説明していない。
なお,特許情報プラットフォームの商品・役務名検索によれば,「エーテル化でん粉」は,類似群コード33A03に属する商品である(甲2)。
したがって,被請求人の製品(エーテル系澱粉)が,本件商標の指定商品に属する商品(類似群コード01A01に属する商品)であると直ちに判断することはできない。
イ 仮に,乙第2号証の8,11及び17が本件商標を付した商品に係る輸入許可通知書であったとしても,これらの書類中,中段「<01欄>統合先欄」の項には,品名として「ESTERIFIED STARCH,STARCH DERIVATIVES」と記載されている。これらが「エステル化でん粉,でん粉誘導体」であったとした場合,このうち,でん粉誘導体が本件商標の指定商品に含まれる商品かどうかは明らかでない。また,エステル化でん粉は,特許情報プラットフォームの商品・役務名リストによれば,類似群コード33A03に属する商品であって本件商標の指定商品に属する商品でないことが明白である(甲3)。
ウ 被請求人は,「乙第3号証は,それぞれ,被請求人の製品型番21370,260及びC253Aに係る製品の製品仕様を示しており,これらが本件商標の指定商品中の『炭水化物』又は『エーテル』に属する商品であることを示している。」と主張する。
しかしながら,以下に述べるとおり,乙第3号証によっては,本件商標がその指定商品中の「炭水化物」又は「エーテル」に属する商品に使用されている事実は何ら証明されていない。
すなわち,乙第3号証のDEFINITIONの欄の記載によると,被請求人の製品は「Cationic thin boiling waxy maize starch(カチオン性シン・ボイリング・モチ性トウモロコシでん粉)」,「Cationic waxy maize starch(カチオン性モチ性トウモロコシでん粉)」及び「Cationic maize starch(カチオン性トウモロコシでん粉)である。つまり,被請求人の製品は,トウモロコシ由来のでん粉,すなわち「コーンスターチ」であるところ,広辞苑第六版によれば,コーンスターチは,「トウモロコシからつくった澱粉。食品・糊などに用いる。」とある(甲4)。また,化学用語辞典第三版では「トウモロコシの殻粒からとったデンプンで,(中略)のり,食品,アルコール原料,デンプン糖製造原料とする。」(甲5)との記載がある。
そうすると,被請求人の製品は,「炭水化物」や「エーテル」(類似群コード01A01)ではなく,むしろ,第1類「でん粉のり」(類似群コード01A02)若しくは「工業用でん粉」(類似群コード33A03)又は第30類「食用でん粉」(類似群コード33A03)に属する商品と考えるべきである。
(7)「カチオン化澱粉が本件商標の指定商品に属する」という被請求人の主張について
ア カチオン化澱粉の性質及び用途について
乙第5号証が存在する事実を認める。
乙第5号証において,製紙業界で用いられる化工澱粉の代表的な例としてカチオン化澱粉が挙げられていることは確認できるとしても,カチオン化澱粉が,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,製紙用の化学剤に分類されるものであるかどうかはかかる証拠からは明らかでない。
イ 「カチオン化澱粉が本件商標の指定商品中の『炭水化物』に属する」という被請求人の主張について
乙第6号証が存在する事実を認めるが,乙第6号証をもってしても,澱粉(仮に「澱粉」などという商品表示が認められるとして)が,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,炭水化物の概念に属するものであるかどうか,また,被請求人が本件商標を付していると主張する商品が,炭水化物に分類され,化学品(類似群コード01A01)に属するものかどうかは,明らかにされていない。
また,乙第27号証は,被請求人が本件商標を付して取引していると主張する商品の赤外線分光法による分析結果であるとしても,これをもって,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,真に「炭水化物」に分類されるものかどうかは,明らかでない。
ウ 「カチオン化澱粉が本件商標の指定商品中の『エーテル類』に属する」という被請求人の主張について
乙第7号証の1ないし3が存在する事実を認めるが,乙第7号証の4及び5については,訳文も説明もないため,これらの証拠によっては,被請求人が本件商標を付していると主張する商品が「エーテル類」に属する商品であるかどうか確認することができない。
被請求人のいう「エーテル系澱粉」が,類似商品審査基準に基づく商品区分における「エーテル化でん粉」(「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品,甲2)と異なるものなのかどうか,被請求人は明らかにしていない。
また,提出された乙第26号証の資料は,被請求人が本件商標を付して取引していると主張する商品の核磁気共鳴分光法による分析結果であるとしても,これをもって,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,「エーテル類」に分類されるものであるかどうかは,未だ不明である。
この点,被請求人の製品に係る実際の取引の状況を陳述した書類(乙9の1)において,被請求人が本件商標を付して取引している商品は「エーテル化でん粉」であると明らかにしているのであるから,むやみに分子構造に着目して商品を分析し,商品を分類することは妥当でないというべきである。
したがって,被請求人の製品は被請求人のいう「エーテル類」に分類されるものではなく,化学品(類似群コード01A01)に属することはあり得ない。
よって,乙第26号証は,被請求人が本件商標をその指定商品に使用してきたことを示す証拠とはなりえない。
エ 「カチオン化澱粉が本件商標の指定商品中の『化学剤』に属する」という被請求人の主張について
乙第8号証の1が存在する事実は認める。
しかしながら,乙第3号証の1及びその訳文(乙11の1)によっては,被請求人が本件商標を付していると主張する商品が「紙の製造に用いる化学添加剤」であるかどうかは明らかにされていない。
被請求人は,カチオン化澱粉を用途的にとらえれば,カチオン化澱粉は「紙の製造に用いる化学添加剤」であると述べ,また,「紙の製造に用いる化学添加剤」は,「化学品」に属する商品であると述べている。しかしながら,乙第9号証の1によれば,被請求人が本件商標の使用を主張する商品は,「カチオン化澱粉」であって,それは,「エーテル化でん粉」であるはずであるから,カチオン化澱粉は,「紙の製造に用いる化学添加剤」であり,「化学品」に属するという主張は,前記内容と矛盾する。
また,被請求人は,商品及び役務区分解説(乙8の1)の説明を引用して,「被請求人の商品のうち『HI−CAT 21370』カチオン化澱粉についていえば,(中略)ワクシーコーンスターチ(炭水化物)と0.30−0.35%のNITROGEN(窒素)とを混合して一定の用途に適するようにしたものであり,まさしく,商品及び役務区分解説の定義に合致する。」旨を主張する。
しかしながら,もし仮に,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,紙の製造に用いるものであるとしても,そのことをもって,これを直ちに乙第8号証の2の「紙製品用サイズ剤」等の化学剤と同種の商品と断ずるのは,強引というべきである。
乙第28号証及びそれらの訳文によれば,被請求人が本件商標を付していると主張する商品は,紙の製造に用いられるものとのことである。
しかしながら,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,製紙業界向けに特定用途に合わせて加工されたものであるとしても,それをもって,直ちにこれを「紙の強度を増加させるための化学助剤」等の化学剤とする主張には,合理的な根拠がない。
すなわち,被請求人の製品に係る実際の取引に即して陳述された証拠書類(乙9の1)によれば,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,「エーテル化でん粉」であって,紙の製造に用いるものであることは明らかである。この点に関し,特許情報プラットフォームの商品・役務名検索によれば,「starch for use in the manufacture of paper」特許庁訳:紙製品製造用でん粉)」は,「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品とされている(甲6)。上記の事実に鑑みれば,本件商標を付したカチオン化澱粉が,「化学剤」(類似群コード01A01)に属するとすべき合理的理由はなく,むしろ,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,紙の製造に用いるでん粉として,「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品と解するのが合理的というべきである。
なお,乙第29号証ないし乙第32号証の論文及び事典等において,カチオン化澱粉が製紙用に用いられるものであることは示されている。しかしながら,これらの資料及び説明をもってしても,製紙用に用いるカチオン化澱粉が,類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして,「化学剤」に属するものであるかどうかは,未だ不明である。
この点に関し,乙第20号証の公表特許公報では,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉を,紙用の乾燥強化剤の「代わりに」使用するとの記載がある。つまり,あくまでも強化剤の代用品にすぎないのであって,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が「紙の強度を増加させるための化学助剤」等の化学剤なのかどうかは明らかでなく,むしろ,「代用品」として用いられているという実情に鑑みれば,化学剤(類似群コード01A01)に属する商品とは別異のもの,すなわち,紙の製造に用いるでん粉として「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品と解するのが合理的である。
したがって,上記乙第20号証及び乙第28号証ないし乙第32号証もまた,被請求人が本件商標をその指定商品に使用してきたことを示す証拠とはなりえないというべきである。
オ 「本件商品が第1類『でん粉のり』若しくは『工業でん粉』又は第3類『食用でん粉』に属しない」という被請求人の主張について
被請求人は,被請求人の製品が「でん粉のり」(類似群コード01A02)に該当しないと主張する。
しかしながら,かかる主張は,被請求人が本件商標に付していると主張する商品が「化学品」(類似群コード01A01)に属することを示すものではない。
また,被請求人は,「第1類の『工業用粉類』(類似群コード33A01)は,『穀物及び豆』を粉にしたものである。すなわち,自然物としての穀物粉である。」と述べている。このことは,被請求人が,被請求人の製品は,穀物粉(自然物)でないから,「工業用粉類」に属する「工業でん粉」には分類されないという見解・主張であるように見受けられる。
しかしながら,その場合にも,被請求人の主張は当たらない。類似商品審査基準に基づく商品区分において,「工業用粉類」は,自然物としての穀物粉のみをいうものであるとはいえないからである。この点,「商品及び役務の区分解説」の「工業用粉類」の項には,「この概念には,原則として穀物及び豆を粉にしたものであって,のり,接着剤等の工業製品の原材料として用いられるものが含まれる。」と記載されている(甲11)。つまり,ここに属する商品が,自然物としての穀物粉に限られるとする記載は一切ないのであるから,自然物に限定されていると解する根拠はなく,むしろ,工業製品の原材料として用いられる粉類は,この概念に含まれると解するのが妥当である。
既述のとおり,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉(化工澱粉)が,製紙関連業界向けの原材料として輸入・販売される「エーテル化でん粉」であることは明らかにされている。
また,「エーテル化でん粉」が「工業用粉類」(類似群コード33A03)であることは,過去の登録例及び類似商品審査基準に基づく商品区分に垂らして明白である。
なお,被請求人は,本件商標が昭和34年法下の旧分類の第1類の商品を指定して登録されたと述べているが,そのような事実と,被請求人が実際に本件商標を付していると主張する商品が「化学品」に属するかどうかという点とは,関係のないことである。
(8)「本件商標が要証期間内に使用されている」という被請求人の主張について
被請求人は,乙第33号証の1中の「25kgバルブバッグ」が乙第1号証の写真の写しに示される紙袋に該当し,同号証中の「バルク」が乙第10号証の取引関係書類に示された製品に該当する,と説明しているようである。しかしながら,以下に述べるように,これらの説明及び証拠によっては,本件商標がその指定商品に使用された事実は何ら証明されていない。
ア 乙第33号証からは,製品の納品形態がわかるとしても,乙第33号証の1に掲載された製品が,乙第1号証の写真の写し及び乙第10号証の取引関係書類に示される被請求人の製品型番21370に係る製品,すなわち,乙第10号証の4の輸入許可通知書中の「品目」の記載によれば「ESTERIFIED STARCH,STARCH DERIVATIVES」と一致するものであるかどうかは,未だ明らかでない。
イ 仮に,乙第33号証の1に掲載された製品が乙第1号証の写真の写し及び乙第10号証の取引関係書類に示される製品と一致するものであるとしても,乙第33号証の1には,「cationic starch for paper strength and retention(紙の強化・歩留用カチオン化澱粉)」と記載されている。このことは,被請求人が本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉が,「starch for use in the manufacture of paper」(特許庁訳:紙製品製造用でん粉)」(甲6)として,類似商品審査基準に基づく商品区分における「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品であることを示したものと解するのが自然である。したがって,乙第33号証の1は,被請求人が本件商標をその指定商品に使用してきたことを示す証拠とはなりえない。
(9)「その他」の被請求人の主張について
被請求人が,本件商標を付していると主張するカチオン化澱粉を「紙強化剤」等と認識して開発・販売を行ってきたとしても,既述のとおり,被請求人の製品に係る実際の取引に即して陳述された証拠書類(乙9の1)に鑑みれば,特許庁の類似商品審査基準に基づく商品区分に照らして「化学品」(類似群コード01A01)に属することはあり得ず,むしろ,「工業用粉類」(類似群コード33A03)に属する商品であることは,客観的に明白である。
また,被請求人の商標がある商品について継続して使用されていることより,その商品に一定の業務上の信用が化体していることがあるとしても,本件審判では,本件商標の指定商品であって審判請求に係る商品について本件商標が使用されているか否かが焦点である。したがって,本件商標に信用が化体しているのが本件商標の指定商品以外の商品についてであれば,本件審判により本件商標が取り消されることに不合理な点はない。
被請求人は,結論同旨の審決を求め,審判事件答弁書,平成27年12月8日付け及び同28年1月19日提出の口頭審理陳述要領書並びに上申書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第33号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標と同一の商標が使用されていたこと
本件商標は,アルファベットの大文字からなる「HI−CAT」を標準文字で表した商標である。本件商標と同一の商標「HI−CAT」が使用されていたことは,乙第1号証,乙第9号証の1ないし3及び乙第10号証より明らかである。
(2)「HI−CAT」が本件商標の指定商品との関係で使用されていたこと
ア 商標「HI−CAT」は被請求人の製品「カチオン化澱粉」との関係において使用されている。
具体的には,被請求人のカチオン化澱粉は包装紙(紙袋)に詰め込まれた形で,被請求人の完全子会社であるロケットジャパン社を介して製紙会社又は製紙用サイジング剤会社に販売されている。そして,当該包装紙には商標「HI−CAT」が表示されている。
紙袋に封入された商品がカチオン化澱粉であることは,乙第1号証に示された紙袋横面に「HI−CAT21370」と表示されていること,乙第9号証の3に示されたロケットジャパン社の会社案内に「カチオン化澱粉:HI−CAT」と表示されていることから明らかである。さらに,乙第9号証の1のロケットジャパン社の陳述書によっても「HI−CAT」がカチオン化澱粉であることが述べられていることからも明らかである。
イ 乙第1号証について
乙第1号証は,被請求人の製品(型番21370のカチオン化澱粉)が収納された紙袋に本件商標が付されていることを示す。当該カチオン化澱粉はエーテル系澱粉であり,本件商標の指定商品中の「炭水化物」又は「エーテル類」に属する商品である。
被請求人が遅くとも2015年1月8日までに入手した乙第1号証の写真に示される紙袋に収納されている商品と同一の中味及び包装の商品が,要証期間内に,被請求人によって日本国内に輸入され,販売された(乙12)。
また,被請求人の100%子会社であるロケットジャパン社は,「ロケットフレール社が本件審判において,乙第1号証として提出している写真の写しに示される紙袋に収納されている商品は,カチオン化澱粉『HI−CAT 21370』に間違いありません。カチオン化澱粉でなければ,むしろ大変なことになります。」と陳述している(乙9の1)。
なお,ロケットジャパン社の陳述書(乙9の1)において述べられているように,被請求人は,同商品の納入先の了解を得ることができれば,納入先に案内し,実際の商品を検証に付することも可能である。
ウ 乙第2号証について
乙第2号証は,乙第1号証の型番21370又はその他型番のカチオン化澱粉製品が日本のROQUETTE JAPAN K.K.に輸入されたことを示す船積み及び通関関係書類写である。それらの書類には本件商標が記されており,また要証期間内の日付が付されている。
乙第2号証の1からは,少なくとも(ア)INVOICE(インボイス)の発行日が「21 Aug 14」(2014年8月21日)であること,(イ)貨物の輸入者が「ROQUETTE JAPAN K.K.KDX KASUGA BUILDING 2ND FLOOR 15−15 NISHIKATA 1 CHOME BUNKYOーKU TOKYO」(東京都文京区西片1丁目15ー15KDX春日ビル2階ロケットジャパン社)であること,(ウ)貨物の仕出し地が「BEINHEIM R.F」(郵便番号67930ロケットフレールのベインハイムエ場)であること,(エ)PRODUCTS DETAILS(品目の詳細)の欄に「HI−CAT 21370」の記載があること,(オ)「HI−CAT 21370」の記載が乙第1号証の写真の写しに示される紙袋に記載の「HI−CAT(マルR)21370」と一致すること,(カ)「HI−CAT」が本件商標と同一であることの事実が容易,かつ,明確に確認できる。
また,乙第2号証の1等が,「HI−CAT 21370」に係る貨物の実際の取引に係る書類の写しであることは,ロケットジャパン社の陳述書からも明らかである(乙9の1)。
「HI−CAT 21370」に係る商品の実際の取引に係る書類の写し(乙10)及び被請求人の宣誓供述書(乙12)により,要証期間内における本件商標の使用の事実が明確になると思料する。
さらに,乙第10号証で示された「HI−CAT」カチオン化澱粉の納品形態がまさに被請求人のホームページ(乙33)で示された納品形態と合致していることからも,乙第1号証に示される紙袋には,本件商標を付したカチオン化澱粉が封入されていることが証明される。
エ 乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人の製品型番21370,260及びC253Aに係る製品の製品仕様を示しており,これらが本件商標の指定商品中の「炭水化物」又は「エーテル類」に属する商品であることを示している。
乙第3号証に対応する訳文(乙11)中に「CAS番号」とあるのは,化学物質を特定するための番号であり,CAS番号56780−58−6はカチオン化澱粉であることを示す(乙11の4)。
乙第3号証及び乙第11号証により,本件商品が,「炭水化物」若しくは「エーテル類」であること,又は用途的視点からこれを把握すれば,ワクシーコーンスターチ(炭水化物)とNITROGEN(窒素)とを混合して一定の用途に適するようにした化学剤であることが明らかになった。
オ 乙第4号証について
乙第4号証は,HI−CAT製品(型番21370,260,C253A,C353A,C453A,CWS42,SP036N)について,日本における販売数量を型番毎にトン単位で示したものである。
乙第4号証に示される具体的な数値を裏付ける証拠として,ロケットジャパン社の作成に係る製品別・客先別・販売数量年度別推移一覧表写しを提出する(乙9の2)。黒塗り部分には客先名が記載されている。被請求人は,必要に応じて原本を提示する用意がある。
乙第4号証に示される2010年ないし2014年の各数値と乙第9号証の2に示される2010年ないし2014年の各数値とは,完全に―致する。
さらに,販売数量(乙4)に言及した,被請求人の陳述書を提出する(乙12)。
(3)カチオン化澱粉が本件商標の指定商品に属することについて
ア カチオン化澱粉の性質及び用途について
独立行政法人農畜産業振興機構の資料(乙5の1)において「現在内添用でん粉によく用いられているカチオン基は4級アンモニウム(R3N+−;Nは窒素,Rは炭化水素)と呼ばれるもので,窒素原子がプラスに大きく帯電しています。このカチオン基が付いているでん粉を一般にカチオンでん粉と呼びます。」との説明がされているように,カチオン化澱粉とは,澱粉(炭水化物)と4級アンモニウム(窒素化合物)とが結合したものである。
平たくいえば,カチオン化澱粉は,化学修飾された化工澱粉又は加工澱粉である(以下,引用文中の記載以外の記載において,化学修飾された澱粉を「化工澱粉」という。)。そして,化工澱粉は,自然物としての澱粉そのものではなく,「デンプンを加工して本来の性質を改変したもの」である(乙5の2)。化工澱粉の中でも,製紙業界向けの内添用,表面サイズ用として用いられる目的・用途の観点からは,カチオン化澱粉は,化学剤の一種であって,「紙製品用サイズ剤」や「紙の強度を増加させるための化学助剤」等と同等に化学剤に属すると解すべきである。化工澱粉としては,特に,カチオン性の澱粉の利用度が高い。このことは,農畜産業振興機構のウェブサイトからのプリントアウト(乙5の1),日澱化学株式会社のウェブサイトからのプリントアウト(乙5の3),ジー・エス・エルジャパン株式会社からのウェブサイトからのプリントアウト(乙5の4)及び小宮英俊著による「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい紙の本」(乙5の5)等の資料からも明らかである。
上記資料のように,カチオン化澱粉は,化学的性質の相違に起因して,自然物としての澱粉としてではなく,工業用(製紙用等)の「化工澱粉」として商取引に付されるのが通常である。
カチオン化澱粉が自然物の澱粉とは明確に区別され,製紙用の化学剤として商取引に付されていることを示す資料は枚挙にいとまがなく,このような区分けは,一般消費者の自然な理解にも合致している(例えば,乙24)。
ここで,ロケットジャパン社の会社案内「Profile of Roquette Japan」(乙9の3)においても,自然物である「澱粉製品」(コーンスターチ,ワクシーコーンスターチ,小麦粉,馬鈴薯澱粉,えんどう澱粉)とは別項目として掲げられた「加工澱粉」の項目において,本件商標に係るカチオン化澱粉「HI−CAT」が表示されている(乙9の3)。
イ カチオン化澱粉が指定商品中の「エーテル類」に属することについて
カチオン化澱粉は,エーテル結合(構造式「−○−」で表される結合状態)を数多く含む構造上の特徴ゆえに,一般に「エーテル系澱粉」という分類に属するとされているから,「エーテル類」であるということができる。
エーテルは,有機化合物の分類の一つであり,構造式がRーOーR’(R,R’は有機基(アルキル基,アリール基など),Oは酸素原子)の形で表される化合物をいうものである。また,エーテルに含まれる「−O−」の部分をエーテル結合という(乙7の1)。
澱粉は,その分子構造(乙7の2)から,「−O−」で表されるエーテル結合を数多く含み,R−O−R’の構造を有するエーテルであることが明らかである。
したがって,カチオン化澱粉のうち,澱粉という構成要素の視点からは,「エーテル類」に属する商品であることが通常の化学の知識を有する者にとっては当然のことである。
そして,カチオン化澱粉は,このような澱粉にカチオンを導入した澱粉誘導体の一種であり,澱粉とカチオン化剤とがエーテル結合する化合物である。澱粉とカチオン化剤とがエーテル結合する反応によって,澱粉が有するエーテル結合が破壊されることはない。エーテル結合の数は,澱粉とカチオン化剤とが結合した数だけ増えるのみである。つまり,澱粉がカチオン化澱粉という澱粉誘導体になっても依然,エーテルであることに変わりはない。
カチオン化澱粉の構造式の例を挙げれば,4級用のカチオン化剤(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)を澱粉に導入したもの,3級用のカチオン化剤(ジエチルアミノエチルクロライド塩酸塩)を澱粉に導入したものがあり(乙7の3),また,カチオン化澱粉は,核磁気共鳴分光法を用いた分析によれば,「エーテル」であることがわかる(乙26)。
以上のことから,カオチン化澱粉は,商品・役務の区分上,「エーテル類」の商品に属すると判断することが合理的である。
したがって,商標「HI−CAT」は,本件商標の指定商品「エーテル類」に使用されているといえる。
ウ カチオン化澱粉が指定商品中の「炭水化物」に属することについて
カチオン化澱粉は,澱粉という構成要素に着目すれば多糖類の一種ということができ,かかる側面からは「炭水化物」(単糖を構成成分とする有機化合物の総称)の分類に属するともいえる。
「炭水化物」とは,単糖を構成成分とする有機化合物の総称であり,糖及びその誘導体の総称でもある(乙6の1)。
したがって,カチオン化澱粉は,澱粉という構成要素の視点からは,「炭水化物」に属する商品であることは通常の化学の知識を有する者にとっては当然のことである。
ところで,特許庁の類似商品・役務審査基準においては,「炭水化物」に属する商品として,「ガラクトーゼ(単糖類),キシローゼ(単糖類),グリコーゲン(多糖類),セルローズ(多糖類),デキストリン(多糖類),マンノーゼ(単糖類),ラムノーゼ(単糖類)」が例示列挙されている(乙6の2)。「澱粉」は,明示されていないが,澱粉も多糖類に属する糖質である以上,「グリコーゲン(多糖類),セルローズ(多糖類),デキストリン(多糖類)」と同様に,商品・役務の区分上,「炭水化物」に属すると判断するのが合理的である。念のために,「デンプン」が,特許庁による前記例示商品「グリコーゲン(多糖類),セルローズ(多糖類),デキストリン(多糖類)」と共に同列に掲げられている資料を提出する(乙6の1)。
また,カチオン化澱粉は,赤外分光法を用いた分析によれば,「炭水化物」であることがわかる(乙27)。
したがって商標「HI−CAT」は,指定商品「炭水化物」との関係にて使用されているといえる。
エ カチオン化澱粉が指定商品中の「化学剤」に属することについて
カチオン化澱粉は,澱粉誘導体を化学修飾させることにより得られた化工(加工)澱粉であり,製紙業界向けの内添用(紙力強化,破裂強さ・圧縮強さの向上,濾水性の向上等を目的とした内添剤)や表面サイズ用(サイジング:洋紙の製造工程で,パルプにコロイド物質を加えて紙繊維の表面やすきまを覆い,液体やインクがにじまないようにする操作)といった特定の目的・用途に合うように加工された化工澱粉である。かかる特定目的・用途に合わせた化工澱粉であるという側面から見れば,カチオン化澱粉は化学剤といえる。
当該主張に関連して提出した証拠としては,乙第5号証の1,4,5,乙第7号証の3,乙第8号証の1,2のようなものがある。
まず,指定商品中の「化学剤」の概念について,「特許庁商標課編 商品及び役務区分解説[改定第3版]」(乙8の1)を引用すると,「化学剤の概念には,主として化学的製品を用途的にとらえたものが含まれる。この概念に属するものとしては,(ア)(1)無機酸類ないし(25)有機金属化合物に掲げた商品と同じものであっても,それ自体が単独で―定の用途に用いられるものとして取引される場合と(イ)(1)無機酸類ないし(25)有機金属化合物等に属する数種の物質を混合して一定の用途に適するようにしたものがある。」とされ,本件商標の使用に係る商品は,このうち,少なくとも後者の(イ)の概念に属するものである。
すなわち,本件商標の使用に係る商品を用途的視点から把握すれば,被請求人の商品のうち,「HI−CAT 21370」カチオン化澱粉についていえば,その仕様書(乙3の1及び乙11の1)に示されるとおり,ワクシーコーンスターチ(炭水化物)と0.30−0.35%のNITROGEN(窒素)とを混合して一定の用途に適するようにしたものであり,まさしく,商品及び役務区分解説の定義に合致する。
そして,本件商標の使用に係る商品と同種の商品である,「紙製品用サイズ剤」,「紙の強度を増加させるための化学助剤」,「紙の製造に用いる化学添加剤」,「紙の製造用化学品」,「紙の表面処理に使用される工業用化学品」,「紙パルプ産業用化学品」,「紙強化剤」,「紙業用化学品」,「紙質強化剤」,「紙用コーティング剤」,「紙類柔軟剤」,「製紙用コーティング剤」,「製紙用サイジング剤」,「製紙用サイズ剤」,「製紙用助剤」等が類似群コード01A01に属する商品として,商品・役務名検索において多数例示列挙されている(乙8の2)。このことからも,少なくとも本件商標の使用に係る商品を「化学剤」(01A01)と認定すべきことに疑いの余地はない。
また,乙第28号証により,本件商標の使用に係る商品が「カチオン化澱粉」であり,紙の歩留まり,形成及び紙強度の向上といった製紙業界内添用に使用されることを特別に意図した商品であることがわかる。
なお,乙第20号証(特表平10−507790号の第21,22頁)において「紙用の乾燥強化剤」の代わりに被請求人の「HI−CAT」カチオン化澱粉が使用される例が挙げられている。このことは,被請求人のカチオン化澱粉が「紙用の乾燥強化剤」や「パルプに添加する強化剤」として一般にも認識されていることを示すものである。このように一般に紙用の強化剤と認識されている事実を勘案すれば,被請求人のカチオン化澱粉は,実質的には「紙の強度を増加させるための化学助剤」,「紙強化剤」,「紙質強化剤」といえるのであって,化学剤に属することは明白である。
その他,乙第29号証ないし乙第31号証によっても,本件商標の使用に係る商品が「カチオン化澱粉」であり,実質的に「紙の強度を増加させるための化学助剤」,「紙強化剤」等であることがわかる。
したがって,本件商標は,指定商品「化学剤」との関係において使用されているといえる。
(4)本件商標が,要証期間内に使用されていたこと
この点は,乙第9号証の1,乙第10号証,乙第10号証の1ないし8,乙第12号証の1及び2により証明されている。
(5)本件商標が被請求人により使用されていたこと
本件商標を付した「カチオン化澱粉」は,被請求人の完全子会社であるロケットジャパン社により日本国内に輸入され,その後,製紙会社又は製紙用サイジング剤会社に納品されている(乙9の1,乙10,乙12)。
被請求人は,「ROQUETTE JAPAN K.K.」との取引関係を示すものとして,同社の会社案内原本(乙9の3),同社の履歴事項全部証明書写し(乙9の4),定款抜粋写し(乙9の5)を提出する。これらの書証から明らかなように,ロケットジャパン社は,被請求人の100%子会社である。
(6)まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件商標と同一の商標を,その指定商品である「エーテル類」,「炭水化物」,「化学剤」について,本件審判の請求前三年の期間内に使用していたことを証明したというべきである。
(1)請求人は,乙第2号証の8等の輸入許可通知書等の品名に「ESTERIFIED STARCH,STARCH DERIVATIVES」と記載されていることを根拠に,本件商標の使用に係る商品が「エステル化でん粉」である可能性を指摘する。
しかしながら,これはエーテル化でん粉であろうが,エステル化でん粉であろうが,関税率表上,税番第3505.10−1に属するものは,その代表題目としてそのような英語表記をすることになっているからである(乙9の1)。
したがって,輸入許可通知書等の品名に「ESTERIFIED STARCH,STARCH DERIVATIVES」の文言が記載されているからといって,本件商品が「エステル化でん粉」であることの根拠とはならない。なお,請求人の指摘は,まさしく,本件商標の使用に係る商品が「自然物のとうもろこしでん粉(コーンスターチ)」ではなく,「化学修飾されたでん粉」であることを指摘するものである。
本件商標の使用に係る商品は,上記1(3)イにおいて述べたとおり,エーテルという視点からいえば,エーテル化でん粉である。
なお,請求人が,「エーテル化でん粉」は類似群コード33A03に属する商品であるとする唯一の根拠として掲げた平09−109190の登録出願に対応する登録が存在しないため,「エーテル化でん粉」が最終的に類似群コード33A03に属する商品として登録に至ったか否かは不明である。仮にそのような登録が存在していたとしても,それは当該商品が自然物のでん粉と同等のものと認定されたためか,又は当該出願人がそのような商品であると認識し,「化学剤」若しくは「でん粉誘導体」としての登録を求めなかったためと推測される。
また,請求人は,乙第2号証の8等の輸入許可通知書等の品名に「ESTERIFIED SARCH,STARCH DERIVATIVES」と記載されていることを根拠に,本件商標の使用に係る商品が「でん粉誘導体」(類似群コード01A01)である可能性を指摘する。
請求人の指摘のとおり,本件商標の使用に係る商品を「でん粉誘導体」という視点から把握すれば,本件商標の使用に係る商品は,まさしく第1類(類似群コ―ド01A01)に属する商品である。このことは,炭水化物(セルロース,グルコース等)の誘導体が類似群コード01A01に係る商品として,商品・役務名検索に複数列挙されていることからも明らかである(乙13)。
(2)請求人は,本件商標の使用に係る商品が第1類「でん粉のり」(類似群コード01A02)に属する商品であると主張するが,以下のとおり,失当である。
まず,国語上の意味としての「のり(糊)」は,一般的には,「米・生麩(しょうふ)などの澱粉質から製した,粘り気のあるもの」であり,「広義には接着剤」をいい,「布地の形を整えこわばらしたり,物を貼りつけたりするのに用いる」ものであって(乙14),簡潔にいえば,「のり(糊)」とは,「のり(糊)としての流通に付される完成品」である。
次に,現行の類似商品審査基準に基づく商品区分によれば,第1類「のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)01A02」及び第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤01A02」に属する商品として「でん粉のり」が例示されている。ここで例示されている「でん粉のり」は,「接着剤」の概念に属する商品として扱われていること,及びアラビアのり等と同列に扱われていることからして,「のりとしての完成品」である(乙6の2)。
一方,本件商標の使用に係る商品が,のり(のりとしての完成品)ではないことは,その仕様書(乙3及び乙11)より明らかである。
(3)請求人は,本件商標の使用に係る商品が「コーンスターチ」であることを前提として,本件商標の使用に係る商品が「工業でん粉」(類似群コード33A03)又は第30類「食用でん粉」(類似群コード33A03)に属する商品であると主張するが,以下のとおり,失当である。
まず,国語上の意味としての「コーンスターチ」は,一般的には,「トウモロコシからつくった澱粉」であって,「食品・糊などに」用いられるものである(甲4)。簡潔にいえば,澱粉(自然物)そのものである。しかし,本件商標の使用に係る商品は,自然物又は自然物と同等として扱われるべきコーンスターチではないから,請求人の前提自体に誤りがあり,そのような誤りを前提とした請求人の主張はそもそも意味をなさない。
次に,現行の類似商品審査基準に基づく商品区分によれば,第1類「工業用粉類33A03」及び第30類「食用粉類33A03」に属する商品として「コーンスターチ」が例示されている。ここで,「コーンスターチ」は,同類似群コードにおいて,「くず粉,小麦粉,米粉,さつまいも粉,じゃがいも粉,そば粉,とうもろこし粉,豆粉,麦粉」等の穀物粉(自然物)と同列に扱われるものとして例示されている以上,自然物又は自然物と同等のものである(乙6の2)。
さらに,「商品及び役務区分解説」(乙8の1)によれば,第1類の「工業用粉類」(33A03)は,「穀物及び豆を粉にしたもの」である。すなわち,自然物としての穀物粉である。「のり,接着剤等の工業製品の原材料として用いられるものが含まれる」が,原材料は,自然物の状態にあるものである。また,「専ら食用に供されるものは,食用粉類として第30類」に属する。要するに,第1類「工業用粉類33A03」に属しようが,第30類「食用粉類33A01」に属しようが,これらの概念に属する商品は,穀物粉(自然物)である。この点について,敷えんすれば,類似群コードの最初の2桁の数字を33とする商品は,そもそも昭和34年法下の旧第33類(穀物,豆,粉類,飼料,種子類その他の植物および動物で他の類に属しない商品)に由来し,33のコードが付されるものは,自然物であることを要件とする(乙15)。これが国際分類への移行に併せて,その一部を現行国際分類の第1類に属することとしたものであり,その商品の属性,性質までが変更されたものではない。ちなみに,本件商標は,昭和34年法下の旧分類の第1類の商品を指定して登録されたものである。
一方,本件商標の使用に係る商品が穀物粉(自然物)ではないことは,その仕様書(乙3及び乙11)より明らかである。
したがって,本件商標の使用に係る商品は前記要件を満たさず,第1類「工業用粉類33A03」又は第30類「食用粉類33A01」の例示商品「コーンスターチ」に該当することはあり得ない。
ここで,関税中央分析所報第23号1983に掲載された「でん粉誘導体の分析」に係る論文(乙16)より,「未処理でん粉(生でん紛)(税番第11・08号)」と,「でん粉誘導体(税番第39・06号)及び他の加工処理を行ったでん粉(税番第35・05号)」とが関税率表上,全く別異の商品として取り扱われていることはわかる。そして,それらの商品は,通関を経て別異の商品として流通経路に乗るのが一般的というべきである。そのような商品が,商品・役務の区分上,同一の商品として扱うことがあれば,極めて不合理,かつ,不都合な結果をもたらすことといわざるを得ない。
したがって,「未処理でん粉(生でん紛)」と「でん粉誘導体」とは商品・役務の区分上も,やはり全く別異,かつ,非類似の商品として扱われていると判断するのが合理的というべきである。
なお,商品の記載に関する国際的協調の観点からは,「紙製品製造用でん粉(starch for use in the manufacture of paper)」等の記載例が類似群コード33A03に係る商品記載として許容され得るかもしれない。仮にそうであるとしても,そのような商品記載が認められるのは,当該商品が自然物のコーンスターチであって,そのような商品の状態をもって取引に付される場合に限定されるというべきである。
(4)請求人が「カチオン化澱粉」を「エーテル化でん粉」ととらえ,「エーテル化でん粉」は「工業用粉類」(類似群コード:33A03)に属するから「カチオン化澱粉」も同じく「工業用粉類」に属すると主張している点については,被請求人は次のように考えている。
被請求人製品はあくまでもカチオン化澱粉である。エーテル系澱粉やエーテル化でん粉といった呼び名は,カチオン化澱粉やその他のエーテル結合された澱粉を総称した分類名(カテゴリー名)にすぎない。カチオン化澱粉が分類の総称でありカテゴリー名であるエーテル系澱粉やエーテル化でん粉と同じ類似群コードにのみ属さなければならないという理由はない。
カチオン化澱粉がエーテル系澱粉やエーテル化でん粉に属するというカテゴリー分けは,化学的説明を行なうに当たって便宜上行われるものであって,他にも例えばカチオン化澱粉が多糖類に属することを説明する場合は,カチオン化澱粉は炭水化物のカテゴリーに属するとの説明がされ,また,カチオン化澱粉の化学構造がエーテル結合であるという特徴を説明する場合には,カチオン化澱粉はエーテル類に属するとの説明がされる。カチオン化澱粉が誘導体であるという特性を強調し説明する場合は,カチオン化澱粉はでん粉誘導体のカテゴリーに属すると説明されるであろう(乙5の3)。
このようにカチオン化澱粉が化学的説明の場面に応じて種々のカテゴリーに属すると説明され得るのに,エーテル化でん粉というカテゴリーのみを優先的かつ排他的に適用して,その結果,カチオン化澱粉をエーテル化でん粉と同一視し,もってカチオン化澱粉とエーテル化でん粉を同一の類似群コードに収めようとする請求人の主張には,納得しかねる。
例えばエーテル系澱粉やエーテル化でん粉に属するものとしてカチオン化澱粉以外にも「でん粉グリコール(グレコール)酸ナトリウム」や「ヒドロキシプロピルでん粉」等があるが(乙17),これらはいずれも「化学品」(類似群コード:01A01)に属する商品とされている(乙18,乙19)。乙第19号証は,特許庁商標課 商標国際分類室に電話確認した際のメモ書きである。この点については特許庁の庁内記録であり,このことが記載された公的書類は存在しないため,審判官による職権調査を希望する。請求人主張のカテゴリー分けが正しいのであれば,これらは「工業用粉類」(類似群コード:33A03)に(のみ)属することになってしまう。
以上より,カチオン化澱粉はエーテル化でん粉と同一視されるべきではなく,したがって「工業用粉類」に属するものではない。
(5)請求人はまた,「カチオン化澱粉」を「紙の製造に用いるでん粉」ととらえ,「starch for use in the manufacture of paper(特許庁訳:紙製品製造用でん粉)」と同様に「工業用粉類」(類似群コード:33A03)に属すべきと主張している。
しかし,被請求人の商品は「カチオン化澱粉」であって澱粉そのものではなく,澱粉を化学修飾した化工澱粉である。単に粉状化等を行なったにすぎない,いわば自然物の性質を留めた簡単な一次加工を経たにすぎないでん粉と化工澱粉が同じ類似群コードにのみ属さなければならない理由はない。
カチオン化澱粉は,化学的処理によって澱粉を変性させてなる化工澱粉であり,その製法は様々であるが,一般的に,4級アンモニウム(R3N+−;Nは窒素,Rは炭化水素)と呼ばれるカチオン基を含むカチオン性ポリマー,酸化剤などの存在下において,澱粉をアルカリ溶媒中で煮沸するといった化学的処理を経て,プラス帯電(カチオン化)させて得るものである(乙20)。かかる化工工程により,カチオン化澱粉は既に澱粉という天然高分子が本来的に備えるべき構造上の特性を失い(たとえば,澱粉の二次構造の破壊など),澱粉の定義からは逸脱したものに変質している。このような化工澱粉が自然物の性質をとどめた澱粉と同視されることは,その化学構造からしても合理的ではないといえる。
付言すると,被請求人が所有する他の登録商標(国際登録第0978803号)において第1類の商品として指定されている「modified starch(特許庁訳:加工でんぷん)」に対しては類似群コード:01A01と33A03の両方が振られている(乙19)。かかる事実は,化学修飾され澱粉としての特性を失うほどに変質した化工澱粉は化学品に属するのが妥当であると特許庁が考えていることの証左である。
したがって,カチオン化澱粉は澱粉と同一視されるべきではなく,「化学剤」として把握されるべきである。
(6)請求人はまた,「カチオン化澱粉」を「澱粉誘導体」ととらえ,「starch derivatives for the paper industry(製紙工業用澱粉誘導体)と同様に「工業用粉類」に属すべきと主張している。かかる主張は国際登録第863132号において同商品に類似群コード:33A03が振られていることを根拠とした主張のようである。
しかし,被請求人の調査では,第三者の所有にかかる商標「EMFLOW LITE」(国際登録第1199819号)の指定商品「Starch and starch derivatives for the food industry for industrial processing;starch and starch derivatives for producing foodstuffs including cheese,meats and sausage products for the food industry.(特許庁訳:食品工業における製造工程用でん粉及びでん粉誘導体,食品(食品工業用のチーズ・食肉及びソーセージ製品を含む)製造用のでん粉及びでん粉誘導体)」に対しては,類似群コード:01A01が振られていることが確認されている(乙21)。同様に,第三者の所有にかかる商標(国際登録第0882583号)の指定商品「Starch derivatives for use in paper industry.(特許庁訳:製紙工業用でん粉誘導体)」に対しても類似群コード:01A01が振られている(乙22)。このことは,澱粉誘導体が「化学品」に属することを示すものである。
したがって,カチオン化澱粉を澱粉誘導体ととらえた場合も,カチオン化澱粉が化学品に属することは否定されない。
(7)「工業用粉類」や「食用粉類」(いずれも類似群コード:33A03)は,昭和34年法下の旧第33類「穀物,豆,粉類」中の「粉類」に由来し,後の国際分類への移行に合わせて「粉類」を「工業用粉類」(第1類)と「食用粉類」(第30類)に分けたという経緯がある。旧第33類では「穀物,豆,粉類」の他に「飼料」,「種子類」,「その他の植物および動物で他の類に属しないもの」が挙げられており,「その他の植物および動物で他の類に属しないもの」の例としては「植物」,「獣鳥魚虫」,「種まゆ 蚕種」,「種卵」が挙げられている(乙15)。
このように,旧第33類に属する商品はいずれも自然物そのものであるか,粉状に加工されたものであっても依然として自然物としての特性を失っていない一次的加工を施されたものにとどまる。
アルカリ溶媒中で煮沸処理を行ないカチオン基を導入した結果,澱粉が本来備えるべき構造上の特性を失うほどに変性された「カチオン化澱粉」(化工澱粉)が旧第33類に由来する商品である「工業用粉類」と同視されるのは,商品分類の歴史的変遷から見ても不自然であるといわざるを得ない。
(8)「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(乙8の1)の「工業用粉類」(第1類)では「この概念には,原則として穀物及び豆を粉にしたものであって,のり,接着剤等の工業製品の原材料として用いられるものが含まれる。」と説明されており,被請求人の主張を裏付けるものである。すなわち,「工業用粉類」は「自然物そのものであるか,粉状に加工されたものであっても依然として自然物としての特性を失っていない一次的加工を施されたもの」と解すべきである。
同区分解説において,「工業製品の原材料として用いられるものが含まれる。」と記載されているが,このことはカチオン化澱粉が工業用粉類に属することの根拠とはならない。世に存在する化学剤は工業原料として用いられることが多く(乙23),これらが全て工業用粉類に属するとはいえない。例えば「紙製品用サイズ剤」や「紙の強度を増加させるための化学助剤」等,類似群コード:01A01に属するとされている化学剤は,紙の製造業に用いられるが,これらが「工業用粉類」に属するとするのは不合理である。
「工業製品の原材料として用いられるものが含まれる。」との記載をカチオン化澱粉についていえば,工業製品(であり化学剤である)カチオン化澱粉の原材料として用いられる澱粉(自然物の特性を備える)は工業用粉類に含まれると読むべきである。反対に,澱粉が本来備えるべき特性を失うほどに変質されたカチオン化澱粉(化工澱粉)はもはやここには含まれないというべきである。
このように,工業用粉類から派生した化工品が「工業用粉類」に属するのか,「化学剤」に属するかの問題は,これら化工品が依然として自然物としての特性を維持しているかどうかにより決せられるべきである。
この点,カチオン化澱粉は澱粉が本来備えるべき特性を失うほどに化学修飾されているのであり,これを自然物としての特性を有する澱粉と同一視することは不自然である。このような区分けは,一般消費者の自然な理解にも合致すると考える(例えば乙24)。
(9)請求人はカチオン化澱粉が工業用粉類に属する旨を一貫して主張しているが,カチオン化澱粉が製紙業界向け内添用・表面サイズ用として用いられるという目的・用途の観点からは,カチオン化澱粉は化学剤の一種であって「紙製品用サイズ剤」や「紙の強度を増加させるための化学助剤」等と同様に化学剤に属すると解すべきである。
仮に,カチオン化澱粉に工業用粉類の類似群コード:33A03が付されることがあったとしても,カチオン化澱粉の目的・用途からすれば,化学剤にかかる類似群コード:01A01が合わせて付されるべきことに変わりない。
この点に関して,被請求人は昭和57年(行ケ)67号 東京高等裁判所 判決文を証拠として提出する(乙25)。本判決では「不使用取消審判の請求の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が,当該登録商標の指定商品に該当するか否かは,単に,その名称,表示等の形式のみによって判断すべきではなく,当該商品の取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断すべき」,「右分類のいずれか一つに属するとは決し難い商品が出現した場合,不使用取消審判の場で,商品は常にいずれか一つの分類に属すべきものであって,二つの分類に属することはありえないとするのは相当でなく,登録商標の使用されている当該商品の実質に則して,それが真に二つの分類に属する二面性を有する商品であれば,当該二つの分類に属する商品について登録商標が使用されているものと扱って差支えないというべき」と述べられている。そして,問題となった商品について,「その実質に則して判断すると,『石鹸』であるが同時に『化粧品』でもある商品,ないしは石鹸(原料としての石鹸)成分を含有する『化粧品』というべき」と判断した。
カチオン化澱粉についても,語尾に「澱粉」という言葉を含むからといってこれを澱粉と同一視し,工業用粉類に属すると判断されるべきではなく,製紙業界向けの内添用剤や表面サイズ用剤として製紙関連会社に納品されているという実情に即して,化学剤に属する商品と判断されるべきである。さらに,仮に,カチオン化澱粉に工業用粉類の類似群コード:33A03が付されることがあったとしても,その目的・用途からして化学剤にかかる類似群コード:01A01が合わせて付されるべきといえる。
(10)以上のとおり,本件審判に係る請求人の主張には理由がない。
(1)乙第1号証は,紙袋の一部を写した写真であるところ,「HI−CAT(R)21370」(「(R)」は丸付きRである。以下,同じ。)及び「25kg net」の表示がある。
(2)乙第3号証(その訳文は,乙11)は,「HI−CAT」の製品仕様であるところ,「DEFINITION」として,「HI−CAT(R) 21370」については,「Cationic thin boiling waxy maize starch」(カチオン化された薄煮沸ワクシーコーンスターチ),「HI−CAT(R) 260」については,「Cationic waxy maize starch」(カチオン化されたワクシーコーンスターチ),「HI−CAT(R) C253A」については,「Cationic maize starch」(カチオン化されたワクシーコーンスターチ)の記載がある。
(3)ロケットジャパン社の陳述書(乙9の1)には,「カチオン化澱粉は,『HI−CAT』のブランドで販売しています。」の記載がある。
(4)ロケットジャパン社(ROQUETTE JAPAN K.K)の会社案内(乙9の3)には,「主要製品:製品ブランド名」の見出しで,「澱粉製品」の項に「コーンスターチ」の記載,「加工澱粉」の項に「カチオン化澱粉:HI−CAT」の記載があり,また,「会社概要」の見出しで「株主構成:ROQUETTE FRERES SA 100%」及び「事業内容:ロケットグループ会社が製造する製品の輸入販売,加工,及び研究開発」の記載がある。
(5)東京都在の株式会社(以下「A社」という。)からロケットジャパン社に宛てた2014年8月6日付けのEメールによる注文書(乙10の1)には,「Subject:RE:次回HICATの注文」として,「納期:Nov.2014」,「購入量:19,500kg」,「内訳:500kg × 30 FIBC=15,000kg 25kg× 180 PB on 6 Paliets=4,500kg」の記載がある。
(6)2014年8月21日付けのインボイス(乙2の1及び2(乙10の2))には,輸入者「ROQUETTE JAPAN K.K」,発注日「06 Aug 14」,コンテナ番号「UACU8028383」として,「PRODUCT DETAIL」及び「QUANTITY」の欄に,「HI−CAT 21370 30 FLEXIBLE INYTERMEDIATE BULK CONTAINER」及び「500KG 」又は「HI−CAT 21370 180 PAPER BAG」及び「25KG」の記載がある。
(7)2014年10月24日付けの到着通知書(乙2の3の1(乙10の3))には,輸入者「ROQUETTE JAPAN K.K」,荷受人「Roquette Freres」の記載があり,コンテナ番号,製品名,数量,包装形態等の記載内容はインボイス(乙2の1及び2)と同じである。
(8)申請年月日が2014年10月27日付けの輸入許可通知書(乙2の17(乙10の4))には,輸入者「ROQUETTE JAPAN K.K.」,仕出人「Roquette Freres」の記載があり,「品名 ESTERIFIED STARCH,STARCH DERIVATIVES」,数量「19,500KG」の記載がある。
(9)ロケットジャパン社とA社との間の2014年10月15日ないし21日の交信メール(乙10の5)には,商品「HI−CAT 21370」について,ロケットジャパン社からA社へは到着予定日の案内と搬入日指示の問い合わせに関する記載が,また,A社からロケットジャパン社へは納品場所を千葉港運倉庫株式会社として10月30日の搬入を手配してほしい旨の記載がある。
(10)受領書(乙10の6の3葉目)には,2014年10月30日付けで,納入先「千葉港運倉庫(株)」積込日「10月29日」,入港日「10月24日」,荷送人「ロケットジャパン(株)」の記載と「千葉港運倉庫(株)」の受領印がある。
(11)2014年10月30日付けのロケットジャパン社からA社への請求書(乙10の7)及び2014年11月7日付けのA社からロケットジャパン社への支払明細書(乙10の8)には,いずれにも「HI―CAT 21370」の記載がある。
(12)ロケットジャパン社の会社案内(乙9の3),同社の履歴事項全部証明書(乙9の4),定款抜粋(乙9の5)からすると,「ROQUETTE JAPAN K.K.」(ロケットジャパン社)は,本件商標権者の100%子会社である。
(1)本件商標の使用について
ア ロケットジャパン社は,「HI−CAT」のブランドでカチオン化澱粉を販売しており(上記1(2),(3)),上記1(5)ないし(11)からすると,2014年8月6日にA社から「HI−CAT」の注文を受け,本件商標権者から「HI−CAT 21370」すなわち,「カチオン化澱粉」を輸入し,それを同年10月30日にA社に譲渡又は引き渡したと認められる(以下,当該「カチオン化澱粉」を「使用商品」という場合がある。)。
また,使用商品は,インボイス等の商品欄の記載などから「HI−CAT 21370 30 FLEXIBLE INYTERMEDIATE BULK CONTAINER」及び「500KG 」又は「HI−CAT 21370 180 PAPER BAG」及び「25KG」の2タイプであり,後者は,紙袋入りの25kgのものである。
そして,乙第1号証の写真の紙袋には,「HI−CAT(R)21370」及び「25KG」の表示があることからすれば,その内容物は,使用商品と推認できる。
イ 紙袋(包装)の「HI−CAT(R)21370」表示中,「21370」は,商品の型番等と理解されるものにすぎないから,「HI−CAT」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たす部分といえ,これは,本件商標と同一の文字構成からなるから,本件商標と社会通念上同一のものである。
ウ ロケットジャパン社は,本件商標権者の完全子会社である(上記1(12))から,本件商標の通常使用権者と認められる。
(2)使用商品について
被請求人は,使用商品「カチオン化澱粉」が本件商標の指定商品中の「エーテル類」,「炭水化物」及び「化学剤」に該当する旨主張しているので,以下,検討する。
ア 商標法施行規則別表(以下「省令別表」という。)によれば,第1類の「エーテル類」,「炭水化物」及び「化学剤」は,いずれも,「化学品」の範ちゅうの商品であるところ,「商品及び役務区分解説(改訂第3版)」(乙8の1)によれば,「化学品」は,「この概念には,一般に“無機工業薬品”“有機工業薬品”“界面活性剤”と呼ばれる商品及び化学的製品を用途的にとらえた“化学剤”の大部分が含まれる。」とされ,「エーテル類」及び「炭水化物」は,いずれも「工業原料又は実験用として使用される有機の化学的基礎製品である。同物質であっても,他の用途に限定された取引の段階にあるものは含まれない。(いかなる用途として取引されるかは,商標権者の業種,商品の包装等から判断される。)が,未だ用途が限定されていない取引段階にある場合は,それが後に大部分がどの用途に使用されようと,現段階では,これらの概念に属する。」とされている。
また,「化学剤」は,「この概念には,主として化学的製品を用途的にとらえたものが含まれる。この概念に属するものとしては,次の(i)及び(ii)がある。(i)省令別表『(1)無機酸類』ないし『(25)有機金属化合物』に掲げた商品と同じものであっても,それ自体が単独で一定の用途に用いられるものとして取引される場合と,(ii)『(1)無機酸類』ないし『(25)有機金属化合物』に属する数種の物質を混合して一定の用途に適するようにしたものとがある。前者は,工業薬品として取引される場合及び未だ用途が限定されていないものとして取引される場合は,『(1)無機酸類』ないし『(25)有機金属化合物』に属する。」とされている。
以上によれば,「エーテル類」,「炭水化物」及び「化学剤」は,いずれも「化学的製品」であって,同一の物質であっても,単体又は複数の物質を混合して一定の用途に用いられるものは「化学剤」に属し,用途が限定されないものは「エーテル類」,「炭水化物」に属するといえる。
イ カチオン化澱粉について
カチオン化澱粉は,「独立行政法人農畜産業振興機構」のウェブページ(乙5の1)において,「現在内添用でん粉によく用いられているカチオン基は4級アンモニウム(R3N+−;Nは窒素,Rは炭化水素)と呼ばれるもので,窒素原子がプラスに大きく帯電しています。このカチオン基が付いているでん粉を一般にカチオンでん粉と呼びます。」との説明がされ,「紙と加工の薬品事典」(乙7の3)において,「でんぷんにカチオンを導入したでんぷん誘導体の一種」の記載があることからすれば,澱粉に例えば,4級アンモニウムが付いたものであり,澱粉誘導体の一種である。
そして,澱粉は,炭水化物(多糖類)であり(乙7の2),炭水化物は,糖及びその誘導体や縮合体の総称でもある(乙6の1)から,澱粉誘導体の一種である「カチオン化澱粉」は,「炭水化物」に含まれるものといえる。
また,カチオン化澱粉は,製紙用の内添用,製紙用中性サイズ剤の定着に使用されるものである(乙5の1,4,5)。
ウ 使用商品への当てはめ
使用商品についてみると,ロケットジャパン社の会社案内(乙9の3)において,「カチオン化澱粉:『HI−CAT』」が,「澱粉製品」(コーンスターチ,ワキシーコーンスターチ,小麦粉,馬鈴薯澱粉,えんどう澱粉)とは別項目として掲げられた「加工澱粉」の項目に表示されていることや,「HI−CAT」の製品仕様(乙3)において,「HI−CAT(R) 21370」については,「Cationic thin boiling waxy maize starch」(カチオン化された薄煮沸ワクシーコーンスターチ)であることからすると,使用商品は,上記「澱粉製品」としての「コーンスターチ」等とは相違すること明らかであるから,化学的製品の「炭水化物」であるといえる。
そして,ロケットジャパン社は,「ロケットジャパン株式会社の『加工澱粉』のうち,カチオン化澱粉は『HI−CAT』のブランドで販売している。製紙会社又は製紙用サイジング剤会社以外に販売したことはない。ロケットフレール社のカチオン化澱粉『HI−CAT』に係る商品を少なくとも10年間以上製紙関連向けに当社が輸入し,日本国内において販売してきた。」旨陳述していること,本件商標権者のホームページ(乙33の1)には,「HI−CAT」の見出しで,「HI−CAT(R)cationic starch for paper and retention」(紙強度及び歩留用HI−CAT(R)カチオン化澱粉)の記載があることを併せ考慮すると,使用商品の「炭水化物」は,製紙用の「化学剤」として取引されたということも否定できない。
そうすると,使用商品は,少なくとも,第1類「化学品」中の「炭水化物」又は「化学剤」の範ちゅうの商品ということができる。
(3)小括
上記(1)及び(2)からすれば,本件商標の通常使用権者は,要証期間内である2014年(平成26年)10月に,本件商標の指定商品中の「炭水化物」又は「化学剤」の範ちゅうの商品である「カチオン化澱粉」の包装に本件商標と同一の商標を付して譲渡又は引き渡したと認められる。
本件商標の通常使用権者による上記行為は,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「カチオン化澱粉」についての商標法第2条第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡す行為」に該当するものと認められる。
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者が,その請求に係る指定商品について,本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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