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Trademark Appeal Case

WILD結合商標の称呼・外観類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2016−900387(T2016−900387/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5878626号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5878626号商標(以下「本件商標」という。)は、「WILD GRACE」の文字を標準文字で表してなり、平成28年2月26日に登録出願、第33類「ぶどう酒その他の果実酒,スパークリングワイン,アルコール強化ワイン」を指定商品として、同年8月5日に登録査定、同年9月2日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由として引用する国際登録第737715号商標(以下「引用商標」という。)は、「WILD GEESE」の文字を横書きしてなり、1999年12月22日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2000年(平成12年)6月21日に国際商標登録出願、第25類「Clothing, footwear, headgear.」、第32類「Beers; mineral and aerated waters and other non-alcoholic drinks; fruit drinks and fruit juices; syrups and other preparations for making beverages.」及び第33類「Alcoholic beverages(except beers).」を指定商品として、平成13年3月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の3第2項により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号について

(1)本件商標について

本件商標は、「WILD」の欧文字と「GRACE」の欧文字とを、スペースを介して、横書きしてなるものである。本件商標は、同種、同大の文字で一連に表されており、全体が一体不可分に認識される。

そのため、本件商標からは、「ワイルドグレース」の称呼が生じる。

また、本件商標の構成文字のうち、「WILD」の語は「野生の、荒涼とした」といった意味を有し、「GRACE」の語は「優雅さ、上品さ」といった意味を有している。

そのため、本件商標は、全体として「野生の美しさ、荒涼とした上品さ」といった観念を生じる。

(2)引用商標について

引用商標は、「WILD」の欧文字と「GEESE」の欧文字とを、スペースを介して、横書きしてなるものである。引用商標は、同種、同大の文字で一連に表されており、全体が一体不可分に認識される。

そのため、引用商標からは、「ワイルドギース」の称呼が生じる。

また、引用商標の構成文字のうち、「WILD」の語は「野生の、荒涼とした」といった意味を有し、「GEESE」の語は「ガン、ガチョウ」といった意味を有している。

そのため、引用商標は、全体として「野生のガン、荒涼としたガチョウ」といった観念を生じる。

(3)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標のスペルを対比すると、中間部分の2文字(「RA」と「EE」)(決定注:3文字(「RAC」と「EES」)の誤りと思われる。)において異なるのみで、その他の7文字は一致している。

そうすると、全体的に観察した場合に、前半部分と後半部分の共通性に目が行き、中間部分における「RA」と「EE」の相違を見誤る可能性は十分にあると考えられる。

特に、本件商標と引用商標の指定商品である酒類の分野では、商品の瓶のラベルや包装箱に、種々の背景を配したうえで、装飾された文字によって表されるのが通常である。そのような態様で表された場合には、なおさら両者を見誤る可能性は高まると考えられる。そのため、本件商標と引用商標とは、その外観において、相紛らわしく、相互に類似するものである。

また、本件商標からは、「ワイルドグレース」の称呼が生じるのに対して、引用商標からは「ワイルドギース」の称呼が生じる。本件商標と引用商標の称呼を対比すると、中間音の「グレ」と「ギ」において相違する。語頭音や語尾音に比べると、中間音は比較的弱く発音されるものであり、称呼全体を一連に発音する際には、「グレ」の音と「ギ」の音は音感が近くなり、両者を聞き誤ることも十分に考えられる。「特許庁商標課編 商標審査基準〔改訂第7版〕」においては、「商標の称呼類否判断にあたっては、・・・時と所を異にして、両商標が称呼され、聴覚されるときに聴者に与える称呼の全体的印象(音感)から、互いに紛れるおそれがあるか否かによって判断するものとする。」とされている。この基準に照らしても、本件商標と引用商標は、時と所を異にした場合には、称呼の全体的印象(音感)から、互いに紛れるおそれが十分にあると考えられる。

そうすると、本件商標と引用商標は、その称呼が類似するものである。

以上のとおり、本件商標と引用商標とは、少なくとも外観及び称呼が共通するため、相互に類似すると考えられる。

(4)指定商品等の類否

本件商標の指定商品と引用商標の指定商品中、第33類「Alcoholic beverages(except beers).」とは、相互に類似する。

(5)取引の実情

本件商標と引用商標の指定商品である酒類の分野では、恒常的に大量の商品取引が行われていることから、その取引には簡易迅速性の要請が強く働き、商標のわずかな相違は看過される可能性が極めて高い。

また、酒類は一般消費財であり、それを取引する一般消費者は注意力も特別高いとは考えられない。このような取引の実情に基づいてみても、上述のとおり、本件商標と引用商標は、相互に混同される可能性があり、類似するものと考えられる。

この点、過去の裁判例においても、酒類の取引事情に関して、「本件商標の指定商品は、『日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒』であり、引用商標のそれは、『ビール』及び『日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒』であって、取引者及び需要者を共通にし、かつ、需要者は、漢字に対し特別な知識を有していない一般大衆であって、これを購入するに際して払われる注意は高度なものではないということができる。」と説示されている(知財高裁平成18年(行ケ)第10512号、甲3)。

(6)小括

以上によれば、本件商標は、引用商標に類似し、その指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるため、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)引用商標の周知著名性及び独創性の程度について

引用商標は、以下のとおり、高い周知著名性及び独創性を有している。

ア 引用商標の周知著名性

引用商標は、申立人が、その販売代理店等を通じて、日本及び世界において販売を行ってきた酒類について長年にわたって使用されてきた商標である。また、世界の著名な酒類を紹介する書籍である「世界の名酒事典」にもその商品は掲載されており(甲4)、酒類の需要者の間では、一定の周知度を獲得している。

イ 引用商標の独創性

引用商標は、既成語の組み合わせからなるものではあるが、日本人にとっては直ちにその全体の意味合いが理解されるとは考えられず、一種の造語として認識されるものである。

そうすると、この引用商標の独創性は一定程度あると考えられる。

(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について

上記1(3)のとおり、本件商標は、引用商標と、少なくとも外観及び観念が近似するものであり、両者の類似性は相当高いと考えられる。

(3)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との関連の程度について

上記1(4)のとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と類似する。

(4)小括

以上のとおり、本件商標は引用商標とは類似性が高く、引用商標の周知著名性及び独創性の程度も高く、本件商標の指定商品と引用商標に係る指定商品とは関連性が高いため、本件商標に接する需要者、取引者は、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、出所について混同するおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知性について

申立人は、引用商標は申立人がその販売代理店を通じて、我が国及び世界において販売を行ってきた酒類について長年使用してきた商標であり、その商品は世界の著名な酒類を紹介する書籍にも掲載されており、酒類の需要者の間では、一定の周知度を獲得し、周知著名性の程度が高い旨主張している。

しかしながら、申立人が引用商標の周知性を立証する証拠として提出した「世界の名酒事典 2006年版」(甲4)は、ウイスキーからワインまでを網羅的に掲載した酒の総合事典であって、これに掲載されていることをもって、直ちに我が国の酒類の需要者の間で、引用商標が広く認識されているとまではいえない。

また、申立人からは、引用商標について、我が国における商標の使用開始日、商品の販売数量などの取引実績を把握し得る証拠や、本件商標の登録出願日前における新聞、雑誌等による宣伝広告等についての実情を具体的及び量的に把握し得る証拠は何ら提出されていない。

そうすると、申立人が提出する証拠からは、引用商標が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の酒類の需要者の間で広く認識されていたものということはできない。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、上記第1のとおり、「WILD GRACE」の文字を標準文字で表してなるところ、これからは「ワイルドグレース」の称呼を生じるものである。

また、本件商標の構成中、「WILD」の文字は、「野生の」の意味を有する英語として、「GRACE」の文字は、「優雅さ」の意味を有する英語として、いずれも一般に親しまれた平易な語であるから、本件商標は、全体として「野生の優雅さ」の意味合いを理解させ、かかる観念を生じるものである。

(2)引用商標

引用商標は、上記第2のとおり、「WILD GEESE」の文字を横書きしてなるところ、その構成は、同じ書体、同じ大きさで外観上まとまりよく一体的に表され、これからは「ワイルドギース」の称呼を生じるものである。

また、引用商標の構成中、「WILD」の文字は、「野生の」の意味を有する英語として、「GEESE」の文字は、「ガン、ガチョウ」の意味を有する英語として、いずれも一般に親しまれた平易な語であるから、引用商標は、全体として「野生のガン、野生のガチョウ」の意味合いを理解させ、かかる観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用商標との類否

本件商標と引用商標は、それぞれ、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるものであり、両者は構成中前半の「WILD」の文字部分を共通にするものの、後半の「GRACE」と「GEESE」の文字部分は、共に平易な英語であって、5文字中3文字のつづりが異なり、明確に区別し得るものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。

次に、本件商標から生じる「ワイルドグレース」の称呼と引用商標から生じる「ワイルドギース」の称呼とを比較すると、両称呼は、前半の「ワイルド」の音を共通にするものの、後半の「グレース」の音と「ギース」の音が明らかに異なることにより、それぞれを称呼したときは、その語調、語感が相違したものとなるから、本件商標と引用商標とは、称呼上、相紛れるおそれはない。

そして、本件商標からは、「野生の優雅さ」の観念が生じるのに対し、引用商標からは、「野生のガン、野生のガチョウ」の観念が生じるから、本件商標と引用商標とは、観念上、相紛れるおそれはない。

以上からすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

(4)小括

上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものということはできないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。

そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品に使用しても、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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