sokuhyo

Trademark Appeal Case

真正品販売と商標使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2014−300541(T2014−300541/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5252293号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は,被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5252293号商標(以下「本件商標」という。)は,「Kluson」の欧文字を書してなり,平成20年1月16日に登録出願,第15類「ギター,エレクトリックギター」を指定商品として,同21年7月31日に設定登録されたものである。

なお,本件審判の請求の登録は,平成26年8月11日にされたものである。

また,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成23年8月11日から同26年8月10日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書,弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は,その指定商品について,継続して本件審判の請求の登録前3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれにも使用されていないことが明らかであり,また,使用していないことについて正当な理由も存在しないため,商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

ア 本件商標の使用状況について

(ア)被請求人は,商品「モズライト専用ペグ」のパッケージに登録商標が付されていることを証明し(乙2),被請求人が当該商品を顧客に譲渡したことを証明している。これにより,被請求人が登録商標を指定商品に使用していると主張している(乙3)。

しかしながら,乙第2号証は,被請求人ではない第三者(モズライト株式会社:以下「モズライト社」という。)による商品紹介のページであり,しかも,示されたパッケージによれば,当該商品は,米クルーソンブランドによる真正商品である。そして,米クルーソンブランドは,請求人の所有するブランドであり,米国で商標登録もされている。

したがって,乙第3号証で示されるのは,被請求人はモズライト社製品の販売店であり,モズライト社の製品に使用できるペグである請求人の真正商品を,第三者に単に小売販売していることである。そして,この小売販売を示す納品書には,当該商品について請求人のブランドが単に商品名として記述的に示されているにすぎない。

このような,他人が商標を付した真正商品の単なる小売販売のみでは,他人が付した当該商標を自己の登録商標として自己の指定商品について使用するということができないことは明らかである。

(イ)請求に係る指定商品について

被請求人は,請求に係る指定商品「ギター」及び「エレクトリックギター」についての登録商標の使用を証明していない。

被請求人が提出した資料は「ギター用ペグ」に関するものである。被請求人は,「ギター,エレクトリックギターの構成部品として本件商標が使用されている」と主張し,乙第2号証を提出しているが,被請求人は,本件取消請求に係る指定商品「ギター」及び「エレクトリックギター」(以下「取消請求商品」という場合がある。)に係る本件商標の使用に関し,何ら主張していない。つまり,当該商標が使用されている商品が,取消請求商品に該当するものであるかについては一切立証していない。

言い換えると,被請求人は,商標法第50条第2項が要求している「請求に係る指定商品又は指定役務について」の登録商標の使用を一切証明していない。

イ 本件商標が取消になるべき理由

(ア)請求人は,クルーソンブランドを引き継いだ会社である。クルーソンは,1925年に創設されたアメリカの金属部品メーカーで,ギターのパーツを提供してきた。しかし,1980年代に廃業したため,請求人がクルーソンブランドを引き継ぎ,現在に至るまでパーツを提供し続けている(甲2,甲3)。甲第2号証は,クルーソン及びクルーソンブランドについての説明であるが,90年代にクルーソンブランドが請求人によって,再び提供されるようになったことが説明されている。甲第3号証は,請求人が提供している2015年版の「Kluson Brand」の商品カタログであるが,クルーソンブランドが請求人に引き継がれることになった経緯及び現在も新しいクルーソンブランドの商品を製造し続けていることが説明されている。

(イ)請求人は,米国における「KLUSON」及び「K」の商標登録権者である。請求人は,米国登録1802680の商標権者である(甲4)。請求人は,「ギター及びその付属品」を指定商品とする,文字商標「KLUSON」を1993年11月2日に米国において登録し,現在まで使用を継続している。請求人の米国商標が全て大文字で表記されているのに対し,本件商標は最初の「K」を除く文字は小文字で表記している。そして,外観において多少の相違はあるものの,称呼・観念において同一である。したがって,両商標は類似する。

このように類似する商標を請求人の許可なく,日本において登録されていないことを奇貨として先取り的に登録した本件商標は,取り消されるべきである。

請求人は米国登録3626582の商標権者でもある(甲5)。請求人は,「楽器及びその付属品」を指定商品として,デザイン化された「K」を2009年5月26日に米国で登録し,現在まで使用を継続している。この文字は,クルーソンの商標として,甲第2号証及び甲第3号証,さらに,被請求人が提示する乙第2号証にも表記されている。

このようにクルーソンブランドを正式に引き継いだ請求人はこれら商標を登録し,クルーソンの商品に使用し続けている。

(ウ)以上述べたとおり,請求人はクルーソンブランドを引き継いだ会社であり,被請求人は,請求人とは何ら関係を有しない。本件商標においては,請求人が米国において20年以上使用し続けている請求人の登録商標に類似する商標を,日本において登録されていないことを奇貨として先取り的に登録したものであるから,当然取り消されるべきものである。

3 口頭審理陳述要領書(平成28年6月10日付け)

(1)商標の使用に該当しないこと

ア 使用権者の使用に該当しないこと

被請求人は,「乙第2号証は,被請求人のインターネット情報ではなく,モズライト社のインターネット販売に関するインターネット上の画像を印刷したものである。」及び「被請求人は,使用権を与えモズライト社に商品を販売させている。」と述べ,本件商標をその指定商品に使用していると主張している。

しかしながら,被請求人の主張を裏付けるいかなる証拠も提出されていない。モズライト社がどのようなビジネスを展開するいかなる会社であるのか,被請求人は,いついかなる方法でモズライト社に使用権を与えたのか等の証拠なくして,モズライト社が本件商標の使用権者であることは立証されるはずもない。

イ 商標権者の使用に該当しないこと

被請求人は,「上記のとおり本件商標の使用権を有するモズライト社の保有する商標を付して販売しているものであり」と述べているが,そもそもこの主張の意味するところは不明である。もし,モズライト社が保有する商標を付した商品について述べているのであれば,その商標が何であるのか,本件とどのように関係するのか等を説明するとともに,その商標についての証拠が提出されるべきである。仮に,被請求人が保有する商標を付した商品を販売しているのは,モズライト社である旨を述べているのであれば,商標権者である被請求人自らは商品を販売しているのではないと自認していることとなる。

ウ 小括

以上のように,モズライト社が使用権者であることは立証されておらず,また,被請求人は自らの使用はないことを認めている。

よって,被請求人は,自己の登録商標を自己の指定商品に使用していない。

(2)取消請求商品の使用に該当しないこと

被請求人は,「取消請求商品についても,上記商品を装備して,使用権を有するモズライト社が第三者に販売している。」と主張しているが,この主張の意味するところは不明である。「上記商品」とは乙第2号証で示されるギター用ペグのことを意味すると推測されるが,そうであるならば,ギター用のペグを装備したギター及びエレクトリックギターをモズライト社が販売していると解される。しかし,そのようなギターを販売などしているいかなる証拠も被請求人からは提出されていない。また,ペグはギターの単なる部品にすぎない。

甲第6号証は,モズライト社が販売するギターを示すインターネット上の画像を印刷したものであるが,ギターの正面からはペグに付された文字を視認することはできない。ペグに付された文字を見ようとするならば,ギターの裏側からギターのヘッド部分の裏面に表れたペグの小さな文字を注視する必要がある。一方で,ギター全体を正面から見たときに明らかに視認できる文字は,ヘッド部分に大きく表記された文字及びボディ部分に表記された文字のみである。このように,一般需要者がまず認識する文字は,ギターヘッドに付された文字,あるいはボディに付された文字であって,ギターの裏面に表れたペグに小さく付された文字ではない。

したがって,ペグに小さく付された標章は,取消請求商品の出所を表示する態様で使用されているとはいえないため,商標的使用には該当しない。

以上のとおり,本件商標を取消請求商品に使用していることは,依然として立証されていない。

(3)取消審判についての被請求人の疑義について

被請求人と請求人は,2007年頃から取引関係にあり,これまで一度も被請求人の商標について主張をしてこなかった請求人が,何故突如取消請求を行ったのか不明であると被請求人は述べている。請求人もまた,被請求人と取引関係にあったことは認識しているが,請求人は,取引関係にある各国の会社の行動を常に監視しているわけではなく,これまで日本における被請求人の商標登録には気づいていなかったのは当然である。

しかしながら,被請求人が,本件商標が日本において登録されていないことを奇貨として先取り的に登録していた事実を発見したからこそ,請求人は取消請求を行ったものである。実際に,被請求人は請求人の商品を2007年から購入している一方で,本件商標を2008年1月16日に出願している。この事実は,請求人から購入した商品に付された商標が,請求人の所有であることを被請求人は認識していたにも拘らず,被請求人自らの商標として出願し登録したことを証明している以外の何ものでもない。

(4)被請求人が使用を主張する商標は,被請求人が並行輸入した請求人の商品に付された請求人の商標であること

請求人は,被請求人に販売した商品に対する請求書を被請求人宛てに発行している(甲7)。この請求書によると,商品は台湾の「Swing Science」へ販売され,輸出先も台湾の「Swing Science」となっている。支払いに関しては,「ダブリュディー ミュージック プロダクツ,インク.」の商品を2008年2月4日付けで注文し,同日付けで料金の一部を支払い,残金を2008年3月18日に支払い,その合計金額は,9,600ドルであったことがわかる。さらに,注文の商品の内訳を見ると,型番「SD9005MN S」及び「SD9005MN S DR」の商品を各々200個及び500個と,かなり大量に買い付けたことが見て取れる。「SD9005MN S DR」の商品に関しては,甲第3号証として請求人が提出した請求人の販売の「Kluson」ブランド商品のカタログに「SD9005MN S」の型番で「NICKEL/METAL BTN/STD POST/SINGLE LINE」という説明が掲載されており(甲3),したがって,被請求人が購入した「SD9005MN S」の商品は,請求人が販売する商品と同一であることがわかる。なお,この商品カタログの「Vintage Tuning Machines」(甲3)の写真からもわかるように,商品はペグである。

さらに,請求人が販売しているペグの型番「SD9005MN I」のパッケージの写真には「KLUSON」の文字がはっきりと表記されている(甲8ないし甲11)。

甲第8号証は,パッケージの平面の写真であるが,ここには「KLUSON」の文字が大きく表記され,登録商標であることを示す「○の中に『R』の文字(以下「○R」という。)」の文字が「N」の右上に付されている。また,パッケージの上方には,「Serving The Music Industry Since 1925」の文字が掲載されている。さらに,パッケージの下方には「KLUSONは,米国ダブリュディーミュージックプロダクツ,インク.の登録商標です。」の意味である「KLUSON is a registered trade mark of WD Music Productes,Inc.USA」という文字も表記されている。

甲第9号証は,同パッケージの側面の写真である。ここに型番である「SD9005MN I」が表記されている。同様に甲第10号証はパッケージの底面の写真であり,また,甲第11号証はパッケージのもう片側の側面の写真である。ここにも,「KLUSON」の文字,「Serving The Music Industry Since 1925」の文字,及び「KLUSON is a registered trade mark of WD Music Productes,Inc.USA」の文字が表記されている。このように,「KLUSON」ブランドのペグは,請求人が販売する商品であり,そこには,「KLUSON」の文字が明確に表記され,さらに,「KLUSON」の商標は請求人の登録商標であることも表記されている。

一方,被請求人が使用すると主張する商標を見てみると,被請求人が提出した乙第2号証のパッケージに表記された商標は,甲第8号証ないし甲第11号証の商標そのものである。「Kluson」の文字のみならず,「Serving The Music Industry Since 1925」の文字も同一である。

以上のことから,被請求人が使用の証拠として提出した商品は,まさに請求人から輸入した真正商品であることがわかる。このように,請求人の商標が付された真正商品を単に小売販売しているのみでは,自己の登録商標として自己の指定商品について使用していることにはならない。

4 上申書(平成28年8月1日付け)

(1)被請求人の口頭審理陳述要領書に述べられたモズライト社の保有する商標は本件事件とは全く関係ないものであること

口頭審理陳述要領書の要点は,「被請求人は,上記のとおり本件商標の使用権を有するモズライト社の保有する商標を付して販売している」という点である。すなわち,被請求人は,モズライト社の保有する商標を付した商品を販売しているから,本件商標を使用していると主張しているのである。

しかしながら,モズライト社は,本件商標の商標権者ではないから,モズライト社の保有する商標の使用が本件事件とどう関係があるのかについて不明である。また,「モズライト社が保有する商標」については,上申書と共に提出された乙第5号証の5の写真について,被請求人は,モズライト純正ペグの証としてペグの背面に付された「M」マークについて述べ,さらに,このマークによってモズライト社が販売するペグは請求人のペグではないと主張していることから,「モズライト社が保有する商標」とは,この「M」マークではないかと推察される。

しかし,本件商標は「Kluson」であり,「M」マークではない。また,この「M」マークについては,被請求人の注文により請求人が付したマークであり,このペグは請求人が製造し,被請求人に輸出した商品である。さらに,この「M」マークはペグの裏面に刻印されているため,ペグがギターに装着されるとギターを購入する一般消費者は,この「M」マークを視認することはできない。

(2)取消請求商品の使用に該当しないこと

被請求人は,「ペグもヘッドやボディ同様ギターの重要な構成要素であり,ペグに表記された場合もボディやヘッドに表記された場合と別異に取り扱う必要性はない。」と述べ,部品であるペグに付された標章は,ギターの商標であると主張している。そして,出所識別機能を有する標章が指定商品に使用されて初めて,その商標的使用が認められる。被請求人が提出した乙第6号証の5ないし乙第6号証の7には,ギターのボディ正面に「Cherokee」の大きな文字,及びアメリカインディアンの羽のかぶりものを思わせるデザインが付されており,このマークこそがギターの出所識別機能を有する商標であることは明らかである。被請求人が提出した乙第6号証を含むいかなる証拠においても,「KLUSON」の文字がギターの出所識別機能を果たす態様で使用されていることを証明する証拠は存在しない。

したがって,ギターの部品であるペグに付された小さな標章「KLUSON」は,ギターの出所を表示する態様で使用されてはいないため,本件商標が,指定商品「ギター」及び「エレクトリックギター」に使用されていることは,立証されていない。

(3)まとめ

上記に述べたとおり,被請求人が提出した証拠では,本件商標が,被請求人により取消請求商品について使用されていたことの証明が存在しないため,本件商標は,商標法第50条により,取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める,と答弁し,その理由を,答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出した。

1 答弁の理由

(1)本件商標権を有する会社の概要

被請求人は,平成14年11月7日に中華民国会社法に拠って設立され,中華民国台湾省に本店を設置し,平成17年8月10日に日本国に支店(営業所)を置き登記されている会社である。事業の目的は,主に楽器及びその部品の製造,販売,輸出入を主たる業とする(乙1の1〜3)。

なお,被請求人の中華民国本店所在地及び商号変更は,乙第1号証1の履歴事項全部証明書のとおりである。

(2)本件商標の使用状況について

本件商標は,商標登録後から現在に至るまで間断なく継続して使用されている。本件商標は,インターネットを検索すればギター,エレクトリックギターの構成部品として使用されていることが確認できる(乙2)。また,本件商標が継続して使用されていことは,証拠である2012(平成24)年1月9日から2013(平成25)年7月4日の一部納品書控えからみても明白である(乙3の1〜9)。

(3)結語

前述したように,本件商標が,平成21年7月31日の設定登録日より現在まで日本国内において継続して使用されている。

2 口頭審理陳述要領書(平成28年5月28日付け)

(1)株式会社SWING SCIENCEと被請求人の同一性

乙第1号証の2及び3は,中華民国の経済部国際貿易局のホームページの一部を印刷したものである。この証拠から被請求人の英名と乙第1号証の1の記載の「株式会社SWING SCIENCE」が同一であること,被請求人住所と乙第1号証の1の記載の法人の本店所在地が同一であること,被請求人代表者と乙第1号証の1の記載の代表者が同じであることから,被請求人と「株式会社SWING SCIENCE」が同一であることは明らかであり,乙第1号証の1は,被請求人が日本国で営業するための支店を置いた際に登記した登記簿である。

(2)乙第2号証について

乙第2号証は,被請求人のインターネット情報ではなく,「モズライト社」のインターネット販売に関するインターネット上の画像を印刷したものである。モズライト社は,その本店を「神戸市中央区東川崎町一丁目5番7号」におき,平成25年10月1日に設立された日本法人である。そして,その代表取締役は,被請求人と同一人であり,被請求人は,使用権を与えモズライト社に商品を販売させている。

以上により,被請求人が本件商標をその指定商品に使用していることは明らかである。

(3)本件商標の使用の根拠条文

本件商標の使用に関する根拠条文は,商標法第2条第3項第2号「商品又は商品の包装に商標を付したものを譲渡し,引渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」である。

(4)弁駁書に対する反論

ア 弁駁書に対する反論について

被請求人は,上記のとおり本件商標の使用権を有するモズライト社の保有する商標を付して販売しているものであり,さらに,乙第2号証の写真のとおり商品の包装に商標を付したものを販売している。

よって,単に請求人の真正商品を小売販売しているにすぎないという請求人の主張は誤りである。

イ 取消請求商品について

取消請求商品についても,上記商品を装備して,使用権を有するモズライト社が第三者に販売している。

ウ その他本件商標が取消になるべき理由について

請求人が,米国におけるクルーソンブランドを正式に引き継いだ会社であること,米国における商標権者であることは知らない。

(5)被請求人の主張

被請求人と請求人は,2007年頃から取引関係にあり,その後,モズライト社も請求人と取引関係が始まっている。このような経緯の中で,これまで一度も被請求人の商標について主張をしてこなかった請求人が,何故突如取消請求を行ったのか不明である。

3 上申書(平成28年7月11日付け)

(1)被請求人がモズライト社に対し商標使用権を与えている事実

モズライト社は,その目的を「楽器の製造,仕入れ,修理,販売及び輸出入」,「音楽用品の販売及び輸出入」,「音楽イベントの企画,運営」及び「ライブハウス及び飲食店の経営」等とする株式会社である(乙4)。そして,その代表者は,被請求人の代表者と同一人である(乙4,乙1の2訳文)。

かかる事実からすると,被請求人がモズライト社に対し,本件商標の使用権を与えたことは明らかである。

(2)商標の使用に該当する事実

請求人は,ボディやヘッド部分に本件商標が表記されていれば,ギター及びエレクトリックギターを指定商品とした本件商標の使用に当たるが,ペグに記載されているのみでは,商標の使用にあたらない旨主張しているが,ペグもヘッドやボディ同様ギターの重要な構成要素であり,ペグに表記された場合もボディやヘッドに表記された場合と別異に取り扱う必要性はない(乙5)。

4 上申書(平成28年12月21日付け)

被請求人は,当合議体から送付した第4に示す審尋に対する回答として以下のとおり述べた。

(1)2007年11月1日に中華民国において,被請求人が「M」マークの商標権を保持していた事実

乙第7号証は,中華民国における商標登録証である。被請求人は,乙第5号証の5の「M」マークについて,2007年に中華民国において商標権を登録しており,被請求人は,「M」マークを付した本件商標を付したギターペグを販売することにより,本件商標を使用している。

(2)上記ギターペグの販売について

上記ギターペグは,乙第8号証のとおり,少なくとも平成21年5月から平成25年4月に至るまで,被請求人が日本国において販売しており,本件商標は,同期間被請求人によって使用されていたといえる。

第4 審尋

合議体は,平成28年11月17日付けの審尋において,要旨以下のとおりの内容について,被請求人に審尋を送付し,その回答を求めた。

1 乙第2号証のモズライト社のウェブサイト情報にある商品型番と乙第3号証の1ないし9の被請求人が発行した納品書(控)の型番が同一であるとしても,被請求人とモズライト社の間に本件商標の黙示の使用許諾があった期間は平成25年10月1日以降であり,現在,被請求人が提出されている全証拠では,要証期間内に継続して被請求人とモズライト社が関連会社として,本件商標をその指定商品に付した事実を見いだすことができない。

したがって,被請求人とモズライト社が関連会社として,要証期間内に本件商標をその指定商品に使用した事実を立証する証拠を提出されたい。

2 被請求人の提出した乙第3号証の1ないし9は,被請求人が発行した納品書(控)であるところ,その商品名欄に記載されている表示「クルーソン」は,注文された商品を特定するために記載されたにすぎないものであり,該納品書によって,「クルーソン」なる商品が譲渡されたことはうかがい知るものの,被請求人が,「ギター及びエレクトリックギター」等に本件商標を付した事実を証するものということはできない。

したがって,被請求人が,要証期間内に本件商標を上記商品に使用した事実を立証する証拠を提出されたい。

3 被請求人は,モズライト社に使用権を与え,該法人が本件商標の指定商品である「ギター及びエレクトリックギター」に含まれる「ギター用ペグ」に本件商標を付して販売している旨を主張しているが,提出された乙第2号証は,モズライト社のウェブサイト情報であり,この印刷日は,要証期間外である。

また,本件商標の使用は,商標法第2条第3項第2号に該当する旨を主張しているが,提出された証拠によっては,要証期間内にモズライト社が,商品の包装に商標を付したものを譲渡,引き渡し,譲渡引き渡しのために展示,輸出,輸入した事実を明らかにする証拠は提出されていない。

したがって,モズライト社が,要証期間内に本件商標を上記商品に使用した事実を立証する証拠を提出されたい。

第5 当審の判断

1 本件商標の使用について,被請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。

(1)本件商標権者について

ア 乙第1号証について

(ア)乙第1号証の1は,被請求人の履歴事項全部証明書である。

これには,「商号:株式会社Swing Science」,「本店:中華民国台湾省高雄市前鎮區民權二路380號20樓之2/平成19年(2007年)4月10日登記」,「目的:5 楽器の製造,販売,輸出入」,「役員に関する事項:京都府亀岡市余部町清水16番地5 日本における代表者 岩堀典明」及び「支店:1/京都府亀岡市余部町清水16番地5」の記載がある。

(イ)乙第1号証の2は,中華民国の経済部国際貿易局のホームページとされるものである。

乙第1号証の2と,被請求人の提出した上申書(平成28年7月11日付け)に添付した訳文を参考にすれば,被請求人については,「企業名:雙世國際股▲分▼有限公司」,「企業の英語表記:SWING SCIENCE CO.,LTD.」及び「代表人:岩堀典明」の記載がある。

イ 以上のことから,被請求人の英語名は「SWING SCIENCE CO.,LTD.」,日本の被請求人の商号は,「株式会社Swing Science」,日本の支店は,「京都府亀岡市余部町清水16番地5」であり,日本における代表者は,「岩堀典明」であり,「楽器の製造,販売,輸出入」等を目的とする企業であることが認められる。

(2)被請求人とモズライト社との関係について

ア 乙第4号証は,モズライト社の履歴事項全部証明書である。

これには,「商号:モズライト株式会社」,「本店:神戸市中央区東川崎町一丁目5番7号」,「目的:1 楽器の製造,仕入,修理,販売及び輸出入」及び「役員に関する事項:京都府亀岡市余部町清水16番地5/代表取締役 岩堀典明」の記載がある。

イ そして,被請求人の日本における代表者は,乙第1号証の1のとおり,「岩堀典明」であり,被請求人とモズライト社の代表者が同一人であることからすれば,モズライト社は,被請求人(商標権者)から本件商標を使用することについて,黙示の使用許諾を得ていたとしても不自然ではない。

したがって,モズライト社は,本件商標の通常使用権者であると推認できる。

(3)要証期間内の証拠について

ア 乙第3号証について

乙第3号証の1ないし9のそれぞれの1葉目は,被請求人が作成した,2012年1月9日,同年4月23日,同年9月16日,2013年1月8日,同年2月2日,同年4月6日,同月7日,同年6月8日及び同年7月4日付けの伝票No.191,207,245,267,275,310,311,326及び334の「納品書(控)」である。

これらには,その左上部に,納品先の住所と連絡先の記載があり,その右側には,被請求人の英語名である「Swing Science Co.,Ltd.」と「〒621−0806/京都府亀岡市余部町清水16番5号」の記載がある。

そして,その下部に表があり,項目が,「商品名」,「型番」,「数量」及び「単価」とあり,それぞれの項目に対応するように,「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」,「G014201」,「1」及び「12,000円」の記載,又は「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」,「G014200」,「1」及び「12,000円」の記載,あるいは両者が共に記載されている。

また,乙第3号証のそれぞれの2葉目は,「受注一覧」であり,これらには,その左上部に,「受注ID:191,207,245,267,275,310,311,326及び334」,「受注日:2012/01/06,2012/04/22,2012/09/11,2013/01/07,2013/02/01,2013/04/03,2013/04/06,2013/06/07及び2013/07/03」の記載があり,その下に,「1 ご購入者」及び「お届け先」の氏名,住所及び連絡先の記載がある。

さらに,その下に表があり,項目が,「商品名」,「型番」,「数量」及び「単価」とあり,それぞれの項目に対応するように,「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」,「G014201」,「1」及び「12,000円」の記載,又は「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」,「G014200」,「1」及び「12,000円」の記載,あるいは両者が共に記載されている。

加えて,乙第3号証の5は,上記商品名の「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」と共に,商品名「Mosrite純正 クロコダイル調ギターハードケース」の記載があり,乙第3号証の7は,上記商品名の「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」と共に,商品名「Mosrite専用ギター弦」の記載がある。

イ 乙第8号証について

乙第8号証の13ないし24は,被請求人が作成した,2011年9月2日,同年9月18日,同年10月27日,同年12月20日,2012年1月9日,同年4月24日,同年7月30日,同年8月16日,同年9月16日,2013年2月3日,同年4月6日及び同月8日付けの「伝票No.162,170,178,187,191,207,234,239,245,275,310及び311」の「納品書(控)」である。

これらには,その左上部に納品先の住所と連絡先の記載があり,その右側には,被請求人の企業名及び商号である「雙世国際股▲分▼有限公司 日本支社」及び「株式会社Swing Science」と「〒621−0806/京都府亀岡市余部町清水16番地5」の記載がある。

そして,その下部に表があり,項目が,「商品名」,「型番」,「数量」及び「単価」とあり,それぞれの項目に対応するように,「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」,「G014201」,「1」及び「12,000円」の記載,又は「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」,「G014200」,「1」及び「12,000円」の記載,あるいは両者が共に記載されているものである。

また,乙第8号証の22は,上記商品名の「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」と共に,商品名「Mosrite純正 クロコダイル調ギターハードケース」の記載がある。

ウ 小括

乙第3号証の1ないし9は,被請求人が,2012年(平成24年)1月9日から2013年7月4日(平成25年)に発行した「納品書(控)」及び,これらに添付された「受注一覧」である。

また,乙第8号証の13ないし24は,被請求人が,2011年(平成23年)9月2日から2013年(平成25年)4月8日に発行した「納品書(控)」である。

そして,上記「納品書(控)」(乙3,乙8の13ないし24)の発行の時期は,いずれも要証期間内(平成23年8月11日から同26年8月10日)のものと認められる。

また,請求人の主張及び被請求人の主張並びに「納品書(控)」(乙3の5及び7,乙8の22)に,「モズライト専用ペグ」と同時に納品された商品名として「Mosrite純正 クロコダイル調ギターハードケース」又は「Mosrite専用ギター弦」の表示があるところ,これらの商品はギター用の商品であるから,「モズライト専用ペグ」も,ギター用品(ギター用ペグ)とみるのが自然である。

以上のことからすれば,被請求人は,要証期間内に「ギター用ペグ」を譲渡(販売)したものと推認することができる。そして,該商品は,ギターの部品であるから,被請求人が,取消請求商品に含まれる商品を要証期間内に譲渡(販売)したことを推認することができる。

なお,被請求人の提出した全証拠からは,被請求人が,要証期間内に本件商標を取消請求商品に付した事実を証明するものは確認できない。

(4)要証期間外の証拠について

ア 乙第2号証について

乙第2号証は,モズライト社のウェブサイトである。

この1葉目には,「ホーム|商品カテゴリ一覧:ギター付属品|モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」の見出しの下,「商品詳細」の項に「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ[G014201]」及び「販売価格:12,000円(税込)」の記載がある。

また,5葉目には,「ホーム|商品カテゴリ一覧:ギター付属品|モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」の見出しの下,「商品詳細」の項に「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ[G014200]」及び「販売価格:12,000円(税込)」の記載がある。

さらに,2葉目,4葉目,6葉目及び8葉目の写真に「KLUSON」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている包装箱が掲載されている。

そして,右下に印刷日である「2015/1/16」の日付が表示されている。

イ 乙第5号証について

(ア)乙第5号証の1ないし3は,モズライト社において販売されている商品(ギター用ペグ)の包装箱の写真とされるもので,その箱には使用商標が表示されている。

(イ)乙第5号証の3ないし5は,モズライト社により販売されている「ギター用ペグ」の写真とされるものである。

ウ 乙第8号証について

乙第8号証の1ないし12は,被請求人が,2009年5月9日,同年7月16日,同年9月4日,同年9月28日,2010年1月17日,同年2月22日,同年5月29日,同月31日,同年6月24日,2011年2月15日,同年5月18日,同年7月27日付けの「伝票No.5,11,22,24,38,42,50,52,56,103,134及び155」の「納品書(控)」である。

これらには,その左上部に納品先の住所と連絡先の記載があり,その右側には,被請求人の企業名及び商号である「雙世國際股▲分▼有限公司 日本支社」及び「株式会社Swing Science」と「〒621−0806/京都府亀岡市余部町清水16番地5」の記載がある。

そして,その下部に表があり,項目が,「商品名」,「型番」,「数量」及び「単価」とあり,それぞれの項目に対応するように,「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』65年ダブルロゴ」,「G014201」,「1」及び「12,000円」の記載,又は「モズライト専用ペグ『モズライト×クルーソン』63年シングルロゴ」,「G014200」,「1」及び「12,000円」の記載,あるいは両者が共に記載されているものである。

エ 小括

通常使用権者であるモズライト社のウェブサイト(乙2)の印刷日は,2015年(平成27年)1月16日であるから,これは,要証期間外の日付である。

また,該モズライト社が販売しているとされる乙第5号証の1ないし3の包装箱には使用商標が表示されているが,その撮影日等が不明である。

さらに,乙第8号証の1ないし12の「納品書(控)」は,被請求人が発行したもので要証期間外の日付である。

(5)まとめ

ア 被請求人(商標権者)は,要証期間内において,「ギター用ペグ」を譲渡(販売)したものと推認することができるものの,「納品書(控)」の商品名欄に記載されている「モズライト×クルーソン」の文字は,注文された商品を特定するために記載されたにすぎないものであるから,該表示中の「クルーソン」の文字をもって取引書類に標章を付したとはいえないものであり,被請求人が,取消請求商品に本件商標を付した事実を証明するものではない。

したがって,被請求人(商標権者)が,要証期間内に本件商標を取消請求商品に使用していたことを証明したと認めることはできない。

さらに,被請求人(商標権者)が提出した全証拠からは,被請求人が,要証期間内において,取消請求商品に本件商標を付して使用していたと認め得る事実は見いだせない。

イ 通常使用権者であるモズライト社のウェブサイト(乙2)の商品の型番と乙第3号証の「納品書(控)」及び乙第8号証の「納品書(控)」の商品の型番が一致し,該ウェブサイト(乙2)に表示された包装箱に「KLUSON」の文字が付されているとしても,該ウェブサイトの日付は,要証期間外であり,要証期間内に本件商標を使用した事実を証明するものではない。

また,通常使用権者であるモズライト社が,要証期間内に,取消請求商品を譲渡(販売)した取引書類等の証拠の提出もない。

ウ したがって,被請求人又は通常使用権者が,要証期間内に取消請求商品に本件商標を使用していたことを証明したものと認めることができない。

2 被請求人の主張について

被請求人は,「乙第7号証は,中華民国における商標登録証である。被請求人は,乙第5号証の5の『M』マークについて,2007年に中華民国において商標権を登録しており,被請求人は,『M』マークを付した本件商標を付したギターペグを販売することにより,本件商標を使用している。」旨を主張している。

しかしながら,本件商標は,「Kluson」の欧文字であり,要証期間内に取消請求商品に本件商標を使用していることを被請求人が証明しなければならないものであるから,たとえ,被請求人が所有する「M」のマークを付して「ギター用ペグ」を販売していることを証明したとしても,商標法第50条第2項で規定する登録商標の使用の事実を証明したものということはできない。

したがって,被請求人の主張は,採用することができない。

3 むすび

以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,取消請求商品ついて,本件商標を使用していたことを証明したものということができない。

また,被請求人は,取消請求商品について,本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。

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