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Trademark Appeal Case

引用商標との類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2016−12302(T2016−12302/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,「QUANTUM」の文字を標準文字で表してなり,第14類「原子時計(特に電子回路基板組立品の一部として使用される集積回路スケール原子時計)」を指定商品として,2014年(平成26年)9月17日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,平成27年3月16日に登録出願されたものである。

その後,その指定商品は,原審における平成27年9月14日提出の手続補正書により,第14類「集積回路用小型原子時計」と補正され,さらに,当審における同29年2月3日提出の手続補正書により,最終的に,第9類「集積回路用の小型原子周波数発振器」と補正された。

2 当審による拒絶理由通知

当審が平成28年10月24日付けで通知した拒絶理由は,要旨以下のとおりである。

(1)商標法第6条第1項及び第2項の要件不備について

原審は,平成27年6月10日付けの拒絶理由通知書をもって,本願商標の登録出願時の指定商品である第14類「原子時計(特に電子回路基板組立品の一部として使用される集積回路スケール原子時計)」については,その内容及び範囲を明確に指定したものとは認められず,政令で定める商品及び役務の区分に従って第14類の商品を指定したものとは認められないため,商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しない,との拒絶理由を発している。これに対して,出願人(請求人)は,上記1のとおり,平成27年9月14日提出の手続補正書により,その指定商品を第14類「集積回路用小型原子時計」と補正した。

しかしながら,本願商標の上記補正後の指定商品である第14類「集積回路用小型原子時計」は,いまだ商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備しない。

請求人の主張及び請求人提出の証拠によれば,当該指定商品は,電子回路基板組立品の一部として使用される集積回路用の小型原子周波数発振器と認められるため,その機能又は用途に照らせば,集積回路の部品として使用される商品,すなわち,政令で定める商品及び役務の区分第9類に属する商品と認めるのが相当である。ただし,当該指定商品を,例えば,第9類「集積回路用の小型原子周波数発振器」に補正した場合は,この拒絶の理由は解消する。

(2)商標法第4条第1項第11号の該当性について

本願商標の指定商品は,本質的には上記(1)に示唆した第9類の商品と認められるものとした上で,本願商標は,以下の引用商標1及び2と同一又は類似であって,その登録商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用をするものと認められるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

ア 引用商標1

商標 別掲1のとおり

登録番号 商標登録第4094709号

登録出願日 平成3年2月22日

優先権主張日 1990年(平成2年)10月9日 ドイツ連邦共和国

設定登録日 平成9年12月19日

指定商品

第9類「コンピュータ用のディスク駆動装置,データ複製装置,データ記憶装置,その他のコンピュータ,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極但し,電気アイロン,電気ブザーを除く」

イ 引用商標2

商標 別掲2のとおり

登録番号 商標登録第5567562号

登録出願日 平成24年11月14日

優先権主張日 2012年(平成24年)5月14日 アメリカ合衆国

設定登録日 平成25年3月22日

指定商品

第9類「ローカル又はバーチャルで又は通信ネットワークを介して行う電子データの記憶・デデュプリケーション・複製・バックアップ・障害回復のためのコンピュータ用記憶装置及びソフトウエア,ローカルで又は通信ネットワークを介して行う電子データのデデュプリケーション・複製・記憶・バックアップ・障害回復のためのコンピュータ用高速ディスク及びソフトウエアの記憶サブシステム,ディスクベースのコンピュータ用記憶装置,ローカルで又は通信ネットワークを介して行う電子データのデデュプリケーション・複製・記憶・バックアップ・障害回復のための未記録のコンピュータハードディスク及び未記録の記録媒体,ハードディスクドライブ,コンピュータ用記憶装置,コンピュータソフトウエア,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」

3 当審の拒絶理由に対する請求人の意見

(1)商標法第6条第1項及び第2項の要件不備について

平成29年2月3日提出の手続補正書により,本願商標の指定商品を第9類「集積回路用の小型原子周波数発振器」と補正したから,商標法第6条第1項及び第2項の拒絶理由は解消した。

(2)商標法第4条第1項第11号の該当性について

ア 本願商標について

本願商標は,「QUANTUM」を横書一連で表記した構成からなるから,「クアンタム」又は「カンタム」の称呼が生じるが,日本人の一般需要者にとっては馴染みのある英単語ではないため,特定の観念は生じない。

本願商標の指定商品は,非常に精度が高いマイクロ波の周波数を発振するもので,このような高精度の周波数を必要とする商品は,現在は海底センサー,GPS受信機,ポータブル無線機,センサーネットワーク,無人機などの特殊な分野に限定されており,その需要者,取引者は,無線又は有線の通信,海底油田開発,地震計測,及び防衛などに限定されている。

イ 本願商標と引用商標1との類否について

本願商標と引用商標1とは,そのつづり及び称呼が同一であるため,両商標が類似する可能性は否定できないとしても,その指定商品については,明らかに類似しない。

請求人は,既にチップスケールの小型化,軽量化を実現するほどの高いテクノロジーを有する,原子周波数標準発振器のリーディングカンパニーであるのに対し,引用商標1の商標権者は,データストレージ関連のトップ企業である。本願商標と引用商標1との指定商品は,その製造者及び販売者,取引者,需要者,用途,流通経路及び取引の形態のいずれもが相違するから,互いに非類似の商品であって,商品の出所の誤認混同が生じるおそれはない。

ウ 本願商標と引用商標2との類否について

引用商標2は,別掲2のとおり,図形及び文字から構成される結合商標であって,その図形部分は欧文字の大文字「Q」をデザイン化した図形であることは明白である。しかも,引用商標2は,図形部分がより支配的で,見る者に強い印象を与える商標であるため,引用商標2からは,「キュークアンタム」,「キューカンタム」,「クアンタムキュー」又は「カンタムキュー」の称呼を生じるが,特定の観念は生じない。

本願商標と引用商標2とは,外観の相違が顕著であり,称呼においても非類似であって,観念においても両商標からは特別な観念は生じないから,非類似の商標である。

引用商標1及び引用商標2の商標権者は同一であるから,本願商標と引用商標2との指定商品も,その商品の生産者,販売者,取引者,需要者,商品の用途などを鑑みれば,全てにおいて顕著に相違しており,取引の実情において,両商品は明らかに非類似である。

4 当審の判断

(1)商標法第6条第1項及び第2項の要件不備について

請求人は,本願商標の指定商品について,平成29年2月3日提出の手続補正書により,第9類「集積回路用の小型原子周波数発振器」と補正した。

その結果,本願商標の指定商品は,その内容及び範囲が明確なものとなり,かつ,その指定は政令で定める商品及び役務の区分に従ってされているものと認められる。

したがって,本願は,商標法第6条第1項及び第2項の要件を具備するものとなった。

(2)商標法第4条第1項第11号の該当性について

ア 本願商標と引用商標の比較

(ア)本願商標は,「QUANTUM」の文字を標準文字で表してなるところ,「quantum」の語は「量子」の意味を有する英語(参照「広辞苑第6版」,岩波書店)であるが,我が国において親しまれた語とはいえないため,本願商標より特定の観念を生じるものではなく,「カンタム」又は「クアンタム」の称呼が生じる。

(イ)引用商標1は,別掲1のとおり,「QUANTUM」の文字を書してなるところ,上記(ア)と同様の理由から,これより特定の観念は生じず,「カンタム」又は「クアンタム」の称呼が生じる。

引用商標2は,別掲2のとおり,上下の中央部の線の一部が欠けた正方形であって,右下部の外側に延びるような短い横線を有する図形の内側中央に,「Quantum」の文字を表してなるところ,その図形部分と文字部分は,構成上も不可分的に描かれたものでもなく,相互に特段の観念上のつながりもないことから,構成上及び観念上も分離して認識されるものである。そして,引用商標2の構成の中において,中央部に唯一の文字部分として表された「Quantum」の文字部分は,出所識別標識としての称呼及び観念が生じない図形部分との対比もあいまって,需要者,取引者に対し,商標の出所識別標識として強い印象を与えるものであるため,当該文字部分を要部として商標の類否を判断すべきである。そうすると,引用商標2の要部である「Quantum」の文字部分からは,上記(ア)と同様の理由から,特定の観念は生じず,「カンタム」又は「クアンタム」の称呼が生じる。

(ウ)以上を踏まえて本願商標と引用商標1を比較すると,両商標は「カンタム」又は「クアンタム」の称呼を共通にし,いずれも特定の観念は生じないため,観念において比較できない。外観については,本願商標は,引用商標1とはつづりを共通にするため,外観において近似した印象を与える。

そうすると,本願商標と引用商標1とは,称呼を共通にし,外観において近似するため,観念において比較できないとしても,これらを総合的に考察すれば,同一又は類似の商品に使用された場合には,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標であると認められる。

次に,本願商標と引用商標2の要部「Quantum」の文字部分とを比較すると,大文字小文字の相違が一部あるとしても,同一の文字を表してなると容易に理解できることから,いずれも外観において近似した印象を与えるものである。そして,両商標は「カンタム」又は「クアンタム」の称呼を共通にし,いずれも特定の観念は生じないため,観念において比較できない。

そうすると,本願商標と引用商標2の要部とは,称呼を共通にし,外観において近似するため,観念において比較できないとしても,これらを総合的に考察すれば,同一又は類似の商品に使用された場合には,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれのある類似する商標であると認められる。したがって,本願商標は,引用商標2と類似する商標である。

(エ)請求人は,本願商標は,引用商標1と類似することは認めるも,引用商標2については,その図形部分は「Q」の欧文字をデザイン化したものであり,図形部分が支配的で強い印象を与えるため,本願商標とは外観の相違は顕著で,観念においては比較できず,「キュークアンタム」,「キューカンタム」,「クアンタムキュー」,又は「カンタムキュー」と称呼されるため,本願商標とは類似しない旨主張する。

しかし,引用商標2は,上記(イ)のとおり,文字部分と図形部分は分離して認識されるものであり,中央部の「Quantum」の文字部分も,引用商標2の中で強い印象を与えるものであるから,当該文字部分を要部として,本願商標との類似を判断することに特段の問題は見当たらない。

また,引用商標2の図形部分は,図案化及び抽象化が高度になされているため,「Q」の欧文字をモチーフにした可能性はあるとしても,当該欧文字を表してなるものと直ちに認識することは難しいばかりでなく,仮に,当該図形部分が「Q」の欧文字を図案化したものと認識される局面においても,その内側に書された「Quantum」の文字部分の頭文字を表したものと理解でき,そのような場合に図形部分と文字部分から生じ得る称呼を連続して一連に称呼することが一般的ということもできないため,その主張は採択できない。

イ 本願商標と引用商標との指定商品の比較

(ア)商標法4条1項11号にいう指定商品が類似のものであるか否かは,商品自体同士を対比して,それらが商品自体として取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,商品自体同士の間では取引上互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときに同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれがある場合には,これらの商品は,同条項にいう類似の商品に当たると解するのが相当である(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照。)。

(イ)本願商標は,その指定商品を第9類「集積回路用の小型原子周波数発振器」とするところ,「発振器」とは「振動・電気振動などを発する装置」(参照「広辞苑第6版」,岩波書店)のことで,デジタル電子機器の内部回路を駆動し,回路間の同期を取るためのクロック源として利用されるものである。一般的には水晶発振器が用いられるが,高い精度が必要なときは原子発振器も利用される(別掲3)。そして,「原子周波数発振器」とは,請求人の主張によれば,「Chip Scale Atomic Clock」(請求人提出の添付資料8)のことであり,「原子や分子の特定エネルギー間の遷移を発振器として用いた装置」である「原子時計」とその原理,機能において共通するものと理解できる(参照「広辞苑第6版」,岩波書店)。また,請求人の主張を踏まえると,本願商標の指定商品「集積回路用の小型原子周波数発振器」は,一般的なデジタル電子機器に用いられる水晶の振動を利用した発振器に比べて,高い精度を実現した商品といえる。

(ウ)引用商標1及び引用商標2の指定商品中,第9類に属する「電子応用機械器具及びその部品」は,電子の作用を応用したもので,電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものである。具体的には,集積回路やその部品,さらには,「集積回路用の発振器」も含むものである。

(エ)上記(イ)及び(ウ)によれば,本願商標の指定商品と,引用商標の指定商品に含まれる商品「集積回路用の発振器」との比較において,いずれもその用途や機能が,集積回路のクロック源たる発振器として共通する。そして,原子周波数発振器は,一般的な発振器である水晶発振器と比べて,その精度において大きな差異があるとしても,機能において共通する代替品としての関係にあることも示唆されている(別掲4)。

(オ)以上よりすると,本願商標の指定商品「集積回路用の小型原子周波数発振器」と引用商標の指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「集積回路用の発振器」は,代替品として密接な関係にあるということができるから,上記各指定商品に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるというべきである。

(カ)請求人は,本願商標の指定商品は,非常に精度が高いマイクロ波の周波数を発振するもので,このような高精度の周波数を必要とする商品は,現在は海底センサー,GPS受信機,ポータブル無線機,センサーネットワーク,無人機などの特殊な分野に限定されており,その需要者,取引者は,無線又は有線の通信,海底油田開発,地震計測,及び防衛などに限定されている旨主張する。

しかし,本願商標の指定商品を部品とした集積回路や,それを組み込んだ最終製品が特殊な分野に用いられるとしても,本願商標の指定商品の用途はあくまで「集積回路用」のものであって,上記(オ)のとおり,「集積回路用の発振器」とは代替品として密接な関係にあるということができるから,本願商標の指定商品に引用商標と同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるというべきである。

また,請求人は,引用商標の指定商品について,その商標権者が,データストレージ関連のトップ企業であることなどを根拠に,引用商標の指定商品の範囲を限定的に解し,本件指定商品とは類似しない旨を主張するが,商品の類否の判断においては,その指定商品全般の一般的・恒常的な取引の実情を考慮すべきであって,請求人の主張するような個別の事情によって,その指定商品の範囲を限定的に解釈することはできず,商品の類否の判断にあたっても特段考慮すべきものとはいえない。

したがって,上記請求人の主張はいずれも採用できない。

ウ 小括

以上のとおり,本願商標は,引用商標とは類似する商標であり,その指定商品も同一又は類似するから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)結語

本願商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するため,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

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