Trademark Appeal Case
商標の類否と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2017−900092(T2017−900092/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5908863号商標(以下「本件商標」という。)は、「AppRoll」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年7月20日に登録出願、第35類「コンピュータネットワークを介して行う広告,コンピュータネットワーク上に於ける広告スペースの提供,コンピュータネットワーク上における広告スペースの提供に関する代理・媒介又は取次ぎ,その他の広告,販売促進のための企画及び実行の代理,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,顧客情報の管理及びこれに関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,商品の売買契約の代理・取次ぎ・媒介,広告用具の貸与,コンピュータネットワークによりデータベースを利用させる事業の管理」及び第42類「コンピュータネットワークにおけるコンピュータプログラムの提供,コンピュータプログラムの貸与,電子計算機の貸与,電子応用機械器具(ワードプロセッサ・電子応用静電複写機を除く。)の貸与,コンピュータネットワークにおけるサーバー記憶領域の貸与,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,ウェブサイトのホスティング,電子計算機などを用いた情報処理,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」を指定役務として、同年12月7日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、以下のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第1089891号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ADROLL」の欧文字を書してなり、2011年2月15日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2011年(平成23年)8月8日に国際商標登録出願、第35類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成24年4月27日に設定登録されたのである。
2 国際登録第1195226号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ADROLL」の欧文字を書してなり、2013年8月12日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、2013年(平成25年)8月15日に国際商標登録出願、第35類、第38類及び第42類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成27年2月27日に設定登録されたものである。
なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知・著名性について
(1)引用商標の使用開始時期、使用期間及び使用対象役務
引用商標を構成する「ADROLL」の語は、申立人の名称の略称である。
申立人は、2007年、アメリカ合衆国カリフォルニア州にて設立、その後、アイルランドのダブリン、オーストラリアのシドニー及びイギリス国のロンドン、そして、2015年3月に東京へ海外拠点を開設している。
申立人は、会社設立後、アドネットワーク(インターネット広告のうち、広告媒体のWEBサイトを多数集めて「広告配信ネットワーク」を形成し、その多数のWEBサイト上で広告を配信するタイプの広告配信手法、または、そこで形成されたネットワーク)を運営していたが、2009年にリターゲティング広告(ネット広告の手法の一つで、自社のサイトを訪れたことのある人に限定して、再訪を促すような広告を配信するもの)の提供を開始、その後リターゲティングに特化したDSP(「デマンドサイドプラットフォーム」の略。オンライン広告において、広告主(購入者)側の広告効果の最大化を支援するツールをいう)として急速に成長を遂げた企業である。申立人は、世界最大規模のリターゲティング・プラットフォーム会社であり、2015年2月時点において、広告主は世界で20,000社以上にのぼる。現在は、150力国を網羅する35,000以上のブランドに利用されている(甲4)。
申立人は、広告業の他、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供を行っている(甲5)。
これらのサービスは全て、申立人の名称の略称である引用商標を表示して提供するものである。
よって、申立人は、遅くとも米国において2007年、日本において2015年3月には、広告業、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供について引用商標の使用を開始している。
(2)引用商標の海外における商標登録と商標の使用及びその周知・著名性について
申立人は、引用商標と構成文字を同じくする商標登録を、国際分類第35類、第38類、又は第42類の役務について、日本を除く11力国に所有しており、これらは現在も有効に存続しており、これらの登録商標は本件商標の出願日より前に出願されたものである(甲6)。
上述のとおり、申立人は、我が国を除く世界4力国に拠点を有し、世界中で35,000社以上の広告主を有するものであり、広告業の分野において周知又は著名であることは明らかな事実である。そして、引用商標を構成する語は、申立人の名称の略称であることから、広告業の分野において、申立人が、世界的に周知又は著名であることは、即ち、広告業の分野において、引用商標が、世界的に周知又は著名であることを意味するものである。
また、申立人は、広告業の他、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供を行っているところ、これらのサービスは、申立人が行う広告業と密接に関連するサービスであり、申立人の顧客が合わせて提供を受けるサービスである。よって、広告業の分野のみならず、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供の分野においても、申立人及び引用商標が、周知又は著名であることも、また、明らかな事実である。
また、申立人は、申立人の名称の略称である引用商標を使用したこれらのサービスを提供するため、英語版のホームページに加え、日本語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、フランス語、イタリア語、アイルランド語のホームページを立ち上げている。
(3)引用商標の日本における使用及びその周知・著名性について
引用商標のうち、最も登録の早い引用商標1は、2012年2月15日を先願権発生日とするものであり、申立人が、2015年2月に東京に拠点を開設した後からは、特にその露出を増やし、広告業、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供のサービスに継続して使用されている。
申立人は、2015年の日本での事業開始にあたり、11のデジタル広告代理店と2つのメディアレップ(インターネット広告の取引において、広告媒体サイトと広告主の仲介を行っている事業者)とセミ・ローンチヘの参加契約を締結した。このことは、日本での事業開始時点において、申立人が、既に海外事業を成功させており、海外及び日本において、広告業及びこれと密接に関連するサービスである、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供の分野で周知又は著名であったことを示すものである(甲4の1)。
また、申立人によるプレスリリースとほぼ同じタイミングで、複数の広告代理店が、申立人の日本での取り扱い開始に関するプレスリリースを出していることも、広告代理店各社の申立人に対する期待の大きさ、つまりは、日本での事業開始時点において、申立人が、海外及び日本において広告業及びこれと密接に関連するサービスである、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供の分野で周知又は著名であったことを示すものである(甲7)。
そして、これらの分野における申立人の周知又は著名性は、同時に、申立人の名称の略称である引用商標が、同分野において我が国で周知又は著名であることを意味するものである。
また、申立人は、申立人の名称の略称である引用商標を使用したこれらのサービスを提供するため、日本語版のホームページを立ち上げている。
(4)申立人の受賞歴
申立人は、様々な分野で賞を受賞している(甲8)。引用商標を構成する語は、申立人の名称の略称であることから、申立人が賞を受賞することは、すなわち、引用商標を構成する語の名声を高めるものに他ならない。
申立人が、会社設立後、わずか10年ほどの短期間に多くの賞を受賞している事実は(甲8)、申立人が事業を行う分野における、申立人の注目度、成長度及び成功度を示すものである。とりわけ、2015年に「フォーチュン」(FORTUNE)で「広告・マーケティング業界で働きがいのある会社トップ10」のトップ2を受賞したこと(甲9)は、同誌が、発行部数100万部、世界120力国でおよそ500万人が購読する世界最大の英文ビジネス誌(甲10)であることに鑑みるに、広告業及びマーケティングの分野において、申立人が世界的に周知又は著名であることを証明するものである。
(5)以上より、引用商標は、日本も含めた世界各国において使用されている商標であることは明らかであり、申立人がサービスを提供する、広告業、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供を示すものとして、需要者・取引者の間に広く認識されている商標である。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)称呼について
本件商標は、上記第1のとおりの構成態様からなるところ、「アップロール」なる自然称呼が生ずる商標である。
一方、引用商標は、上記第2のとおり構成態様からなるところ、「アドロール」又は「アッドロール」なる自然称呼が生ずる商標である。
(2)称呼の類似
本件商標の「アップロール」の称呼と引用商標の「アドロール」の称呼は、語頭「ア」及び後半音「ロール」の音を共通にし、相違するところは、中間音「ップ」と「ド」にすぎない。両称呼は、語頭音「ア」及び長音を伴う「ロー」の音が強く発音され、これらの音と比較して、差異音である中間音は埋没しがちである。よって、両者をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体としての語調、語感が近似し、互いに聞き誤るおそれがある。
また、本件商標の「アップロール」の称呼と引用商標の自然称呼「アッドロール」の称呼は、語頭「アッ」及び後半音「ロール」の音を共通にし、両者の相違するところは、中間音「プ」と「ド」にすぎない。両者をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体としての語調、語感が近似し、互いに聞き誤るおそれがある。
よって、本件商標の称呼と引用商標の称呼とは、互いに紛らわしく聞き間違えるおそれがあるものであり、両商標は、その称呼において類似するというべきである。
(3)指定役務の類似
本件商標の指定役務中、第35類の「コンピュータネットワークを介して行う広告,コンピュータネットワーク上に於ける広告スペースの提供,コンピュータネットワーク上における広告スペースの提供に関する代理・媒介又は取次ぎ,その他の広告,販売促進のための企画及び実行の代理,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,文書又は磁気テープのファイリング,顧客情報の管理及びこれに関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,商品の売買契約の代理・取次ぎ・媒介」は引用商標の第35類の指定役務と、本件商標の指定役務中、第42類の「コンピュータネットワークにおけるコンピュータプログラムの提供,コンピュータプログラムの貸与,電子計算機の貸与,電子応用機械器具(ワードプロセッサ・電子応用静電複写機を除く。)の貸与,コンピュータネットワークにおけるサーバー記憶領域の貸与,デザインの考案,ウェブサイトのホスティング」は引用商標2の第42類の指定役務と同一又は類似する役務である。
(4)以上より、本件商標と引用商標とは標章が類似する商標であるとともに、本件商標の指定役務のうち、上記(3)の役務は引用商標の指定役務と同一又は類似である。よって、本件商標は引用商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号について
上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る広告業及びこれと密接に関連するサービスである、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供を表示するものとして日本も含めた世界各国の需要者の間に広く認識されている商標である。そして、本件商標は、本件商標の出願日の時点並びに登録査定の時点において、引用商標に類似する商標であって、その役務又はこれに類似する役務について使用するものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、本件商標の出願日並びに登録査定の時点において、異議申立人の商標として広く一般に知られている引用商標と類似する。
そして、本件商標の指定役務のうち、上記3で述べた役務は、引用商標が使用する役務と同一又は類似であるが、それ以外の役務についても、申立人が提供するサービスと密接に関連する役務であるといえる。例えば、本件商標の指定役務のうち、第35類の「コンピュータネットワークによりデータベースを利用させる事業の管理,広告用具の貸与」及び第42類の「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,ウェブサイトの作成又は保守,電子計算機などを用いた情報処理」は、申立人が提供するサービスである「電子計算機プログラムの提供」及び「広告業」と極めて密接な関係性を有している。
よって、本件商標をその指定役務に使用したときには、当該役務が申立人の役務に係るものであると誤信されるおそれがあるのみならず、当該役務が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係等にある者の業務に係る役務であると誤信されるおそれがあるものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の周知性
引用商標が、本件商標の出願時には既に日本国内及び外国において、申立人の業務に係る役務である広告業、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供を表示する商標として広く認識されていたことは上記1のとおりである。
(2)商標の類似
本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、称呼が類似するため互いに類似する商標である。
(3)不正の目的
申立人が提供する役務と同一又は類似若しくは密接な関連性を有する指定役務を提供する商標権者(甲11)が、本件商標の登録出願時に、申立人の業務に係る広告業、市場調査又は分析及び電子計算機プログラムの提供の名称として世界的に広く知られている引用商標について不知であったとは到底考えられない。むしろ、引用商標に依拠し、引用商標に類似する称呼が生ずる商標として本件商標を採択したものと推認せざるを得ない。
よって、本件商標は、引用商標に化体した信用にただ乗りして採択されたものと考えられ、本件商標の使用により引用商標の出所表示機能を希釈化しその名声を毀損させるおそれがある、すなわち、不正の目的があると推認し得るものである。
(4)以上より、本件商標は、本件商標の出願日の時点並びに登録査定の時点において、申立人が提供するサービスを表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号又は同項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
申立人の提出する証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)申立人は2007年に米国カリフォルニア州サンフランシスコにおいて設立された、広告に関するリターゲティング・プラットフォームを提供する法人である。申立人は、サンフランシスコ、ニューヨーク、ダブリン、シドニー、ロンドンに次いで、2015年(平成27年)3月に東京オフィスを新設し、日本での営業活動を開始した。日本での営業開始にあたっては、11のデジタル広告代理店と2つの広告主との仲介業者(以下「パートナー企業」という。)と参加契約を行った(甲4)。
(2)申立人は米国、オーストラリア、中国、欧州連合、アイルランド、日本、韓国、ロシア等の複数の国々において、引用商標と同じ構成文字からなる商標権を有している(甲6)。そして、申立人は、自己の業務に係る役務の提供の際に申立人の社名の略称でもあるこれらの登録商標を一貫して使用していると主張している。
(3)申立人が日本において営業を開始した当時、申立人のパートナー企業によるプレス発表において「『AdRoll』は世界で最も幅広い顧客層に利用されているリターゲティング・プラットフォームを提供し、全世界で2万を超える広告主に採用されています。」のように、申立人及びその業務が紹介されている(甲7)。
(4)申立人は2013年から2015年にかけて、発行部数100万部、世界12カ国でおよそ500万人が購読する「FORTUNE」誌をはじめ、「Business Times」誌、「Forbes」誌等による、「広告・マーケティング業界で働きがいのある会社トップ10」、「最も働きやすい職場」、「技術革新ベストCEO賞」、「アメリカの最も有望な企業」等を受賞している(甲8〜甲10)。
(5)まとめ
上記(1)ないし(4)より、申立人は、本件商標の出願時には米国、アイルランド、オーストラリア、イギリス国、日本に拠点を有し、我が国において事業を開始した2015年(平成27年)3月頃には、パートナー企業により、申立人の業務が「世界で最も幅広い顧客層に利用されているリターゲティング・プラットフォームを提供し、全世界で2万を超える広告主に採用されています。」等と紹介されていること、2013年から2015年にかけて「FORTUNE」誌等により複数の賞を受賞していることを考慮すれば、引用商標は、本件商標の出願時には少なくとも本国である米国において、申立人の業務を表すものとして、ある程度の周知性を有していたと認められる。
しかしながら、申立人が我が国において事業を開始した時期から、本件商標が登録出願された日まではわずか1年4月ほどであること、その間に我が国において行われた事業の規模、業界における申立人業務の市場占有率、顧客の数、宣伝広告の範囲と回数等の資料の提出もないことから、引用商標が、本件商標の出願時に我が国において申立人の業務を表すものとして、需要者に周知となっていたとまでは認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「AppRoll」の欧文字を標準文字により表してなるところ、その構成文字に相応して「アップロール」の称呼が生じるものといえる。
また、本件商標の構成文字は、辞書等に掲載が認められないことから、本件商標からは特定の観念を生じないというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「ADROLL」の欧文字を書してなり、その構成文字に相応して、「アドロール」の称呼を生じ、該文字は、辞書等に掲載が認められないことから、引用商標からは特定の観念を生じないというべきである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標の構成は、それぞれ、上記第1及び第2のとおりであるところ、本件商標と引用商標とは、その構成文字数が7文字構成と6文字構成、大文字と小文字の混在の有無、両商標の綴りが異なる部分である本件商標の2文字目及び3文字目が「pp」であるのに対し引用商標の3文字目は「D」である点において差異を有する。
これらの外観における相違点から、本件商標と引用商標とは外観において明確に区別し得るものである。
次に、称呼については、本件商標から生じる「アップロール」と、引用商標から生じる「アドロール」の称呼とは、第1音において本件商標が「アッ」と促音を伴うのに対し、引用商標は「ア」の音であり、続く第2音において「プ」と「ド」の差異を有することから、本件商標と引用商標とは称呼において明らかに聴別し得るものである。
さらに、観念については、本件商標と引用商標とは、共に特定の観念が生じないものであるから、両者は、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれがない非類似の商標というべきである。
(4)まとめ
したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、たとえ、その指定役務が同一又は類似のものであったとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記2(3)のとおり、相紛れるおそれがない非類似の商標である。
そして、引用商標は、上記1のとおり、我が国においては本件商標の登録出願時に申立人の業務に係る役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されているものとは認めることができない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記1のとおり、外国においては本件商標の登録出願時に申立人の業務に係る役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標と引用商標とは、上記2(3)のとおり、非類似の商標である。
そうすると、本件商標をその指定役務に使用するとしても、引用商標を連想、想起するものでないから、引用商標の出所表示機能の希釈化又はその名声及び信用力にフリーライドするものとはいえないし、また、不正の目的をもって使用するものということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとはいえない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。