結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2016−890064(T2016−890064/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5608031号商標(以下「本件商標」という。)は,「オカリンピック」の片仮名と「Ocalympic」の欧文字を二段に横書きしてなり,平成25年3月22日に登録出願,第41類「オカリナ音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,オンラインによる音楽の提供・映画の提供及びこれに関する情報の提供,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,楽器の貸与,レコード又は録音済み磁気テープ・録画済み磁気テープ・CD又はDVD等の録音済み又は録画済みデジタル記録媒体の貸与,レコード又は録音済み磁気テープ・録画済み磁気テープ・CD又はDVD等の録音済み又は録画済みデジタル記録媒体の貸与に関する情報の提供」を指定役務として,同年8月16日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は,以下の4件であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)。
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第183号証を提出した。
本件商標の登録は,商標法第4条第1項第6号,同第7号,同第10号,同第11号,同第15号及び同第19号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により,無効とすべきである。
(1)引用商標は,非営利の団体である請求人が行うオリンピック競技大会を表象する商標であり,公益性が極めて高い商標であること
引用商標を保有する請求人である「コミテ アンテルナショナル オリンピック(国際オリンピック委員会,以下「IOC」という。)」は,明治27年(1894年)6月23日,近代オリンピックの創始者であるフランス人,ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で設立された,オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体である(甲8)。
請求人は,オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し,次の世代へと受け継いでいく様々な活動であるオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関であり,スポーツを通して心身を向上させ,さらには文化・国籍など様々な差異を超え,友情,連帯感,フェアプレーの精神をもって理解し合うことで,平和でよりよい世界の実現に貢献するというオリンピックの理念であるオリンピック憲章に従い,オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲8)。
オリンピック・ムーブメントの目的は,「オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ,若者を教育することにより,平和でよりよい世界の建設に貢献すること」であり,その普遍かつ恒久的な活動は,請求人(IOC),国際競技連盟(以下「IF」という。),及び国内(地域)オリンピック委員会(以下「NOC」という。)を中心として,五大陸にまたがり行われている。そして,オリンピック・ムーブメントの頂点に立つのが,世界中の競技者を一堂に集めて開催される偉大なスポーツの祭典,オリンピック競技大会である(甲8)。
引用商標は,そのようなオリンピズムとその諸価値に従いスポーツを実践することを通じて若者を教育し,平和でよりよい世界の建設に貢献するという目的のために行われる普遍的・恒久的な活動であるオリンピック・ムーブメントの頂点に立つスポーツの祭典であるオリンピック競技大会を直接表象する商標である。したがって,引用商標は極めて公益性が高い商標である。
また,引用商標は,第一回オリンピックアテネ大会(明治29年(1896年)開催)から,先日行われた第三十一回夏季オリンピックリオデジャネイロ大会(平成28年(2016年)開催)に至るまで,実に120年もの間(甲9),オリンピック競技大会を表章する商標として継続して全世界的規模で使用されてきたものであり,世界一の公益事業を表す商標であるということができる。
(2)引用商標は著名であり,世界中において知られていること
ア 100年以上に渡るオリンピック競技大会の開催
近代オリンピック競技大会の誕生は,今から120年前の明治29年(1896年)であり,同年に第一回オリンピックアテネ大会が開催され,以後,オリンピック競技大会は1世紀以上に亘り,直近の第三十一回夏季オリンピックリオデジャネイロ大会に至るまで,美と技を競う世界規模の平和とスポーツの祭典として原則として2年又は4年に一度(甲9),継続して開催され,世界中の多数の人々によって観戦されてきたものである。オリンピック競技大会に関連する出版物は数え切れないほど出版されている(甲10〜甲71)。
近年実施されたオリンピック競技大会を例にとれば,2008年の第二十九回夏季オリンピック北京大会には204の国と地域から約1万900人の選手が参加し,また,2012年の第三十回夏季オリンピックロンドン大会には204の国と地域から約1万500人の選手が参加し(甲9),2016年の第三十一回夏季オリンピックリオデジャネイロ大会には過去最大の205の国と地域から約1万1300人の選手が参加した(甲72)。これら世界の大多数の国や地域における視聴者によって観戦され,引用商標の使用地域は「全世界」ともいうべきであり,引用商標は名実ともに世界一著名な標章である。
イ 請求人によるマーケティング活動
請求人は,これまで,オリンピック競技大会に関するマーケティングを世界中において多数行ってきたものであり,その結果,引用商標は,世界中において著名となっている。
オリンピック競技大会をはじめとするオリンピック・ムーブメントの諸活動を継続的に実施するには莫大な費用が必要であり,オリンピック・ムーブメントの推進には,民間企業等の資金的・技術的な協力が不可欠であることから,請求人は,各国のNOC等と共に,オリンピック・ムーブメントの推進と,オリンピック競技大会運営のための資金調達を目的としたマーケティング活動であるオリンピック・マーケティングを実施している。オリンピック・マーケティングの主なものとしては,スポンサーシップ,放映権,ライセンシングがあり,スポンサーシップ契約したスポンサーは,契約したスポンサーの種類に応じ,オリンピックの名称,オリンピック・シンボル(五輪マーク),NOCのエンブレム,夏季・冬季大会のエンブレムと大会マスコット等のオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行うことができ,多大な資産をつぎ込んで行われているマーケティング活動によっても,引用商標が著名なものとなっていることは明らかである(甲73〜甲100)。
ウ 2020年に夏季オリンピック東京大会が開催されること
平成32年(2020年)には東京で第三十二回夏季オリンピック東京大会が開催されることから(甲182),日本において,ほぼ毎日のように,オリンピック関連の新聞や雑誌の記事が掲載され,テレビ放送などがされ,また,東京大会の関連グッズなども販売されている(甲183)。したがって,引用商標の著名性は,日本においてこれまで類を見ない程度に高まっている。
エ 請求人及びその関連団体による教育・文化活動について
オリンピック憲章では,請求人の使命として,「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する」ことが規定されており(甲8),請求人は,かかる規定に基づき,オリンピック・ムーブメントの一環として,様々な教育・文化活動を世界的規模で行っており,引用商標は,これらの各種教育・文化活動についても広く用いられ,親しまれている。
日本においても,オリンピック憲章におけるNOCの役割に関する規定に基づき,JOC等がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業の一環として,各種の教育・文化活動を国内で精力的に実施している(甲71,甲105〜甲157)。
(ア)オリンピックデーイベント等
明治27年(1894年)6月23日に,クーベルタンの提唱により,近代オリンピックの復興と,その主催者である請求人の創設が決議されたことを記念し,毎年6月23日には,請求人の呼びかけにより,オリンピック・ムーブメント推進のための様々な式典やイベントが,世界各国のNOCを通じて行われている。
日本では,JOCにより,オリンピック出場選手(オリンピアン)と一緒にジョギング等を楽しむイベント「オリンピックデーラン」(甲28,甲105〜甲127)や,オリンピック協議会に関わる映像と音楽を融合させた文化プログラム「オリンピックコンサート」が毎年実施されている(甲128〜甲132)。
さらに,東日本大震災からの復興を支援するイベントとして,2011年から,オリンピック出場選手(オリンピアン)と一緒にスポーツプログラムを楽しむというイベント「オリンピックデー・フェスタ」がJOCによって被災各地で開かれ(甲133〜甲135),また,同じく2011年から,オリンピアンなどのスポーツアスリートが被災地の小学校で授業を行い,子供たちにメッセージを伝えるイベント「スポーツ笑顔の教室」などの活動(スポーツこころのプロジェクト)がJOCなどによって行われてきた(甲136,甲137)。
(イ)環境活動
請求人は,オリンピック・ムーブメントに,これまでの「スポーツ」及び「文化」に加え,1990年代,「環境」という三本目の柱を加え,以来,請求人のスポーツと環境委員会をリーダーとして,各国のNOCは,世界各地で環境保全・啓発活動を推進している。
これに関し,JOCでは,2001年から,「スポーツ環境専門委員会」を設置し,JOC加盟競技団体とともに環境活動の啓発・実践活動を推進している。JOCは,環境啓発のために,毎年ポスターとパンフレットを作成し,一年間の活動をまとめた報告書を各競技団体に配布しているほか,2004年には,加盟団体の担当者を対象として,「第1回スポーツと環境・担当者会議」を,2005年には,各地域のスポーツ指導者を対象として,「第1回スポーツと環境・地域セミナー」を開催し,以後,毎年,スポーツ現場での環境保全・普及活動の取り組みについての講演等を全国的規模で行っている(甲138〜甲141)。その後も現在に至るまで,一年間の活動をまとめた報告書が毎年作成され,また,「スポーツと環境・地域セミナー」や「スポーツと環境・担当者会議」が継続的に開催されている(甲142)。
(ウ)日本オリンピック・アカデミー(JOA)による活動
日本においては,NPO法人オリンピック・アカデミー(以下「JOA」という。)により,オリンピック競技大会及びスポーツに関する講習会,研修会,シンポジウム,その他のイベントが開催されている(甲71,甲143〜甲157)。
JOAは,ギリシャに本部を持つ国際オリンピックアカデミー(IOA)を頂点とする世界の137(2008年5月現在)の国や地域にある国内アカデミーの一つであり,1978年に設立された団体である(甲71,甲143)。JOAは,請求人のオリンピック・ファミリーとして,オリンピック競技大会の開催やオリンピック・ムーブメントの諸活動の推進のための様々な協力を行っている(甲71)。
(エ)このように,IOC及びその関連団体は,オリンピック・ムーブメントの一環として,イベント,セミナー,講演会,シンポジウム等をはじめとする様々な活動を世界的規模で行っており,これらの活動において使用される引用商標が著名となっていることは明らかである。
なお,請求人や関連団体により行われるこれらの活動,特にコンサートなどの音楽活動と,本件商標の指定役務である「オカリナ音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授」との性質・用途又は目的における関連性は極めて強いものである。
この点,オリンピック競技大会と音楽とはもともと極めて密接な関係にあるということができる。例えば,オリンピック競技大会のメーンイベントの一つとして開会式や閉会式が挙げられるが,この開会式や閉会式において,音楽の演奏を伴った印象的な演出が行われることは周知の事実であり,また,特に近年,オリンピックごとにテーマソングが作成され,繰り返しメディア等で流されることによって,オリンピックと音楽との結びつきはこれまでにない程度に強くなっている。
以上のとおり,オリンピックと音楽との結びつき,関連性は極めて強いことから,引用商標は音楽という分野においても極めて著名であるということができる。そして,このような著名な引用商標と類似する商標が音楽の演奏等に利用された場合において容易にオリンピックが想起される。
(3)本件商標は引用商標と類似すること
ア 本件商標は,上段に片仮名7文字からなる「オカリンピック」と,下段に欧文字9文字からなる「Ocalympic」とを配した二段書きの構成からなる商標である。
本件商標の片仮名部分と引用商標1とを比較すると,引用商標1は「オリンピック」の片仮名6文字からなるところ,本件商標の片仮名部分は,「オリンピック」の「オ」と「リ」の間に片仮名の「カ」の1文字を挟んだ「オカリンピック」からなり,両者は,その片仮名部分において,全体の文字数が1文字相違するのみであり,その他の文字は全く同一であるから,全体の外観において極めて相紛らわしい。
また,本件商標の下段の「Ocalympic」部分と,引用商標2ないし4の全部又は一部を構成する「OLYMPIC」とを比較すると,「Ocalympic」は,引用商標2ないし4を構成する欧文字7文字の「OLYMPIC」の「O」と「L」の間に欧文字の「ca」を挟み込んだ9文字からなり,両者は,全体の文字数が2文字相違するにすぎず,その他の文字は全く同一であるから,全体の外観において相紛らわしい。
イ 次に,本件商標と引用商標の称呼を比較すると,本件商標からはその構成に従い「オカリンピック」の7音からなる称呼が生ずる。他方の引用商標からは「オリンピック」の6音からなる称呼が生ずるところ,両者は,その音数においてわずか1音相違するのみであるうえに,本件商標に存する第二音目の「カ」の有無で異なるにすぎない。加えて,その差異は,商標類否判断上,非常に聴別しづらい中間音に存することから,本件商標と引用商標とは,称呼において極めて相紛らわしい類似商標である。
ウ さらに,本件商標からは,「オリンピック競技大会」の観念が生じるから,本件商標は観念において引用商標と類似する。
すなわち,本件商標に含まれる欧文字の「Ocalympic」の後半6文字の「lympic」の綴りは,「Olympic」の後半6文字の綴りと同一である。我が国の一般的な英和辞典によれば,「lympic」を語末に有する語は「Olympic」か,又は請求人と協力関係にある「International Paralympic Committee e.V.」(インテルナチオナール パラリンピック コミッテ アインゲトラゲネル フェライン(国際パラリンピック協会)。以下,「IPC」という。)」が開催する「パラリンピック競技大会」を示す「Paralympic」の語のみである(甲158)。これに鑑みると,「lympic」を語末に有する本件商標に触れた看者は,「Olympic」の語を想起するといわざるを得ない。
また,本件商標がオカリナに関するイベント(「OCALYMPIC(オカリンピック)2014」)に使用されていることに鑑みれば(甲160,甲161),「オカ」,「oca」部分は,本件商標が使用される役務の提供の用に供する物(内容)を表示するにすぎず,強い識別力を有さないから,本件商標に接した者は,これを「オカリナ」,「ocarina」と「オリンピック」,「Olympic」の二語からなるものであると認識した上で,これらの語を軽重の差をもって看取し,著名な「オリンピック」,「Olympic」の部分に特に強く印象づけられて本件商標を記憶するというべきである。
したがって,本件商標は,著名な「オリンピック」及び「Olympic」の語を明らかに構成要素とするものであるから,本件商標からは,「オリンピック競技大会」の観念が生じる。
一方,引用商標からは「オリンピック競技大会」の観念が生じるから,本件商標と引用商標とは,観念を共通にする類似の商標である。
エ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からも,類似することは明らかである。
(4)本件商標が不正の目的をもって使用されていること
本件商標は,著名な引用商標に化体された信用,名声や顧客吸引力にただ乗りすることを目的に,本件商標と類似させて使用されたものである。
被請求人は,2014年の「オカリンピックトウキ大会」との名称のオカリナに関するイベントにおいて「オカリンピックロゴマーク」なるロゴマークを使用し,その中で「OCALYMPIC」及び「オカリンピック」の文字を使用したが,このロゴマーク中,「OCALYMPIC」の文字のうち「O」及び「LYMPIC」の文字のみを黒で示し,「CA」の文字にのみ赤と青の色を付すことによって,「O」及び「LYMPIC」の文字を際立たせた構成で使用している(甲160,甲161)。
すなわち,被請求人は,「OLYMPIC」を強調させる態様で前記ロゴマークを作成し,これを使用していたのであり,このような使用態様に鑑みれば,被請求人が著名な引用商標「OLYMPIC」の持つ信用,名声や顧客吸引力にあやかり,これらにただ乗りする意思のもとで,本件商標を使用していたことは明らかである。
さらに,この「オカリンピックトウキ大会」というイベントの謳い文句及び開催の様子に鑑みると,被請求人がオリンピック競技大会を彷彿とさせる方法で本件商標を使用していることが見て取れる。
加えて,「オカリンピック”トウキ”大会」の開催に当たっては,「聖火」をリレーしたとのことであり,オカリンピックの「聖火」は全国7か所に灯ったとのことである(甲160)。聖火リレーとは,古代オリンピック発祥の地であるオリュンピアのヘラの神殿跡において太陽光線から採火された火(オリンピック聖火)を,リレーによってオリンピック競技大会開催地のメインスタジアムまで運ぶ儀式であり,1936年のベルリン大会から行われるオリンピック競技大会開会の象徴であるというべき儀式である(甲165)。
したがって,「オカリンピック”トウキ”大会」は,標題のみならず,その開催の形式もオリンピック競技大会を模倣し,大会参加者に対しては,あたかも,名声を獲得した「オリンピック」競技大会に参加したかのような感覚を与える方法で使用されているということができる。
以上のとおり,本件商標は,著名な引用商標に化体された信用,名声や顧客吸引力にただ乗りすることを目的に,引用商標と見間違えるがごとき態様で使用されたものであることは明らかである。
このような商標の登録を許すことは,引用商標の「オリンピック」,「OLYMPIC」が保有する信用や名声,顧客吸引力に不正にただ乗りすることを認めることとなり,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反することになる。
(5)商標法第4条第1項第6号に該当すべきものであること
請求人が主催・運営するオリンピック競技大会が商標法第4条第1項第6号における「公益に関する事業であって営利を目的としないもの」に該当することは明らかである。
商標審査基準においても,「国際オリンピック委員会」が提供する「国際オリンピック委員会や日本オリンピック委員会が行う競技大会であるオリンピック」を表す商標が本号に該当すると例示されている(甲167)。
また,本件商標は,引用商標に類似する商標である。
商標法第4条第1項第6号の趣旨は,公益団体の権威を保護するとともに,これらの団体により行われる事業を含めて公益事業の著名商標を出所表示として保護しようとするものであって,二重の目的を有するものと解されるところ,請求人は,オリンピック憲章(甲8)に従い,「オリンピズム」をを推進し,「オリンピック・ムーブメント」を主導する使命を負っていることから,その権威を保護する必要が極めて高いことは紛れもない事実である。
そして,その「オリンピック・ムーブメント」の頂点に立つのが,世界中の競技者を一堂に集めて開催される偉大なスポーツの祭典,「オリンピック競技大会」であり,それを表象するのが引用商標である。引用商標は,120年もの間,オリンピック競技大会を指標する標章として世界的規模で使用され,世界的に広く知られる著名商標である。
そして,このような著名商標である引用商標が有する信用,名声や顧客吸引力にあやかり,フリーライドする意図をもって,本件商標が使用されていることは上述したとおりであって,かかる意図の下採択された商標を登録によって保護し続けることは,請求人の権威を害するうえ,請求人と何らかかわりのない被請求人による本件商標の使用により,オリンピック競技大会という世界一の規模の公益事業を指標する著名商標である引用商標の出所表示機能が害されることの容認を意味する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第7号に該当すべきものであること
請求人は,「オリンピック・ムーブメント」というオリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し,次の世代へと受け継いでいく様々な活動を行っており,該「オリンピック・ムーブメント」の頂点に立つのが,世界中の競技者を一堂に集めて開催される偉大なスポーツの祭典,オリンピック競技大会である(甲8)。
しかるところ,請求人と何らかかわりのない本件商標が商標登録を受けた場合には,オリンピック商標へ便乗し,その名声にあやかろうとする商標の登録及び使用を排除することができず,請求人が,明治29年(1896年)にアテネで開催された第一回夏季オリンピックアテネ大会から,120年もの永きに亘り推進してきた「オリンピック・ムーブメント」が阻害されることを意味する。すなわち,本件商標の登録を認めることは,スポーツを通じ,平和でよりよい世界の実現に貢献するという,まさに公共の利益を追求する「オリンピズム」の実現を阻害し,オリンピック競技大会の尊厳が害されることの容認を意味する。
また,本件商標は,著名な引用商標に化体した莫大な信用にあやかり,不正な利益を得ようとするものであり,その使用及び登録は公正な取引秩序を乱し,また,国際信義及び公序良俗にも反するものである。
本件商標「Ocalympic」及び「オカリンピック」はいずれも辞書等に記載のない造語よりなるものであり,また,その構成中の後半の「lympic」の部分は,オリンピック憲章に基づき開催される「Olympic」を表す語から,語頭にある「Oca」の文字を除いた部分の綴りと同じくするものであり,さらに,被請求人のウェブサイトを確認すると,例えば「人をつなぐオカリナの輪」といった記載から,「Ocalympic」の文字が,「オカリナ」を意味する「Ocarina」の語と「Olympic」の語を組み合わせた語であると認識させる(甲160)。すなわち,本件商標は,「Olympic」を意識した標章といわざるを得ないことから,このような標章を請求人である国際オリンピック委員会(IOC)や,その下部組織である,例えば公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)と何ら関係のない出願人が自己の商標として独占して使用することは,オリンピック憲章に基づき開催される「Olympic」の権威を損なうおそれがあるとともに,社会公共の利益に反し,公の秩序を乱すものと判断されるのが相当である。
したがって,本件商標は商標法第第4条第1項第7号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第19号に該当すべきものであること
本件商標は,日本国内及び外国において著名な商標である引用商標と類似し,引用商標と類似させることによって,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗りすることを意図し,不正の目的をもって使用されているものである。
本件商標が,引用商標に化体する信用や顧客吸引力を利用し,これに便乗する目的で出願され,使用されていることは明らかであるから,そのような便乗使用が著名な「OLYMPIC」商標の名声を毀損することはいうまでもない。また,オリンピック競技大会を開催する都市は,「オリンピック」商標など請求人保有のオリンピック関連の知的財産権を保護すべき義務を負っていることから,引用商標に化体する信用や顧客吸引力を不正に利用することは,開催都市に対する不法行為にもなり得る。
このように明らかに「OLYMPIC」商標に便乗した商標の登録を認め,オリンピック競技大会をまねたイベントについての本件商標の使用を野放しにすることは,著名な「OLYMPIC」商標の名声が毀損される事態を容認し,違法行為を助長することを意味する。
そればかりか,かかる商標の登録を認めることは,被請求人の便乗使用が咎められないことを知った第三者のさらなる便乗使用を誘発することに繋がるから,「OLYMPIC」商標の出所表示機能を稀釈化させる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
(8)商標法第4条第1項第11号に該当すべきものであること
本件商標と引用商標とが類似することは,上述したとおりであり,本件商標は,請求人が所有する引用商標と類似するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(9)商標法第4条第1項第10号に該当すべきものであること
引用商標は,請求人の主催するオリンピック競技大会及び同大会に関連する商品及び役務を表示するものとして著名である。そして,本件商標は引用商標と類似するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(10)商標法第4条第1項第15号に該当すべきものであること
ア 本件商標と引用商標との類似性
本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からも類似することは明らかである。
イ 引用商標の周知著名性及び独創性
引用商標が著名であることについては,上述したとおりであり,引用商標は1世紀以上に渡り,世界中でオリンピック競技大会を表象する商標として使用され続けたものであり,独創性が高い商標である。
ウ 本件商標の指定商品及び役務と請求人が引用商標を使用して業務を行っている商品及び役務の性質,用途,目的,その需要者が共通であること
請求人は,請求人が設立された明治27年(1894年)6月23日から現在に至るまで1世紀以上に渡り,引用商標をスポーツの祭典であるオリンピック競技大会を表象する商標として使用し続けており,オリンピック競技大会の興行,企画,運営などのサービスを行ってきたものである。そして,オリンピック競技大会は単にスポーツというにとどまらず,開会式や閉会式における音楽演奏など音楽と密接な関係にあることから,引用商標は音楽の分野においても使用されてきたものである。一方,本件商標の指定役務は,オカリナ音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授などを含むものであるから,請求人が引用商標を使用して業務を行っているオリンピック競技大会及び同大会に関連する商品・サービスとはスポーツという点,又は興行の企画・運営という点,さらに音楽という点で性質,用途及び目的が共通であり,またその需要者も共通であることは明らかである。
エ その他取引の実情
本件商標は,著名な引用商標に化体された信用,名声や顧客吸引力にただ乗りすることを目的に,本件商標と類似させて作成され,また,使用されているという事情が存在する。
オ 上記アないしエの事情に照らせば,本件商標をその指定役務であるオカリナ音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,技芸・スポーツ又は知識の教授などのサービスに使用するときには,需要者において,少なくとも当該サービスが,請求人の支援や援助を得たうえで行われているなど,請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務であるかのように誤信するおそれがあることは明らかである。
また,既に述べたとおり,請求人あるいは日本オリンピック委員会は,各企業とのスポンサーシップ契約を締結し,それらのスポンサーがオリンピック資産を利用したさまざまなマーケティング活動を行っているという実態からすれば,引用商標に酷似する本件商標を使用する被請求人が,請求人あるいは日本オリンピック委員会の正式なスポンサーであり,その提供に係る役務は,請求人と何らかの特殊な関係にあると誤認されるといわざるを得ない。
特に,本件商標が,著名な引用商標に化体された信用,名声や顧客吸引力へのただ乗りを目的として採択,使用されていることに鑑みると,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とする第4条第1項第15号の適用を受けてしかるべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
被請求人は,請求人の上記主張に対し,何ら答弁していない。
(1)商標法第4条第1項第6号について
商標法第4条第1項第6号には,商標登録を受けることができない商標として,「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関,公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」が規定されている。
そして,同号の規定は,同号に掲げる団体の公共性にかんがみ,その権威を尊重するとともに,出所の混同を防いで需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものであり,同号の規定に該当する商標,すなわち,これらの団体を表示する著名な標章と同一又は類似の商標については,これらの団体の権威を損ない,また,出所の混同を生ずるものとみなして,無関係の私人による商標登録を排斥するものであると解するのが相当である(知財高裁 平成20年(行ケ)第10351号判決)。
(2)請求人及び同人が行う事業の公益性について
請求人の提出した証拠及びその主張によれば,以下のとおりである。
ア 請求人は,近代オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンの提唱により1894年6月23日に設立された,オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の非営利団体である「コミテ アンテルナショナル オリンピック(Comite international olympique:「Comite」の「e」には,アクサンテギュが付されている。)」であって,「IOC」と略称されるものである。
そして,同団体は,オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し,次世代へと受け継いでいく様々な活動であるオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関であって,オリンピック憲章に従い,スポーツを通して心身を向上させ,さらには文化・国籍など様々な差異を超え,友情,連帯感,フェアプレーの精神をもって理解し合うことで,平和でよりよい世界の実現に貢献するというオリンピックの理念であるオリンピズムを普及させる役割を担っている(甲8)。
イ オリンピック・ムーブメントの目的は,「オリンピズムとオリンピズムの価値に則って実践されるスポーツを通じ,若者を教育することにより,平和でよりよい世界の建設に貢献すること」であり,その活動は,請求人(IOC),国際競技連盟(IF),国内(地域)オリンピック委員会(NOC)を中心として五大陸にまたがり行われ,そのオリンピック・ムーブメントの頂点に立つのが,オリンピック競技大会である(甲8)。
ウ してみれば,請求人は,「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」といえ,請求人が行うオリンピック競技大会は,「公益に関する事業であって営利を目的としないもの」である。
(3)引用商標が,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」であることについて
引用商標1は「オリンピック」の片仮名,引用商標2及び4は「OLYMPIC」の欧文字,及び引用商標3は,別掲のとおり,「OLYMPIC」の欧文字の左右に5色の同じ大きさの五つの輪の図形(「オリンピック・シンボル」と称されている(甲8)。以下「五輪の図形」という。)を配した構成からなるものである。
そして,請求人の提出した証拠によれば,引用商標を構成する「オリンピック」及び「OLYMPIC」の文字並びに五輪の図形は,いずれも請求人が行うオリンピック競技大会を表彰するものとして使用されているものである。
そうとすれば,請求人が行うオリンピック競技大会は,「公益に関する事業であって営利を目的としないもの」であるから,当該競技会を表彰するものとして使用される引用商標は,「公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」といえるものである。
(4)引用商標が,著名であることについて
ア 「OLYMPIC」,「オリンピック」の文字及び五輪の図形(オリンピック・シンボル)は,オリンピック競技大会を表象する標章として全世界的規模で使用されてきたものであり,オリンピック憲章に基づき,その使用が厳格に管理されているものである(甲8)。
イ 近年実施されたオリンピック競技大会において,2008年の第二十九回夏季オリンピック北京大会には204の国と地域から約1万900人の選手が参加し,また,2012年の第三十回夏季オリンピックロンドン大会には204の国と地域から約1万500人の選手が参加し(甲9),2016年の第三十一回夏季オリンピックリオデジャネイロ大会には過去最大の205の国と地域から約1万1300人の選手が参加した。
加えて,平成32年(2020年)には,東京において第三十二回夏季オリンピック東京大会の開催が決定している。
ウ 引用商標は,多数出版されているオリンピック競技大会に関連する各種雑誌,写真集,単行本等随所に常に表示されている(甲10〜甲71)。 エ 請求人は,これまで,各国のNOC等と共に,オリンピック・ムーブメントの推進と,オリンピック競技大会運営のための資金調達を目的としたマーケティング活動(オリンピック・マーケティング)を実施しており,オリンピック・マーケティングの主なものとしては,スポンサーシップ,放映権,ライセンシングがある(甲73,甲74)。
また,請求人は,オリンピック憲章(甲8)の規定に基づき,オリンピック・ムーブメントの一環として,様々な教育・文化活動を世界的規模で行っており,引用商標はオリンピック競技大会に関連して行われる各種教育・文化活動において広く用いられている。
オ 我が国においても,オリンピック憲章におけるNOCの役割に関する規定に基づき,JOC(日本オリンピック委員会)等が,オリンピック・ムーブメントの普及・啓蒙事業の一環として,オリンピック競技大会に関する各種教育・文化活動を日本国内で精力的に行っている(甲71,甲105〜甲157)。例えば,オリンピックイベントとして,オリンピック出場選手と一緒にジョギング等を楽しむ「オリンピックデーラン」,オリンピック競技大会に関わる映像と音楽を融合させた「オリンピックコンサート」,東日本大震災からの復興を支援するイベントとして,オリンピック出場選手と一緒にスポーツを楽しむ「オリンピックデー・フェスタ」がJOCにより開催されている(甲28,甲105〜甲135)。
カ 小括
以上を総合すると,引用商標は,請求人に係る公益に関する事業であって営利を目的としない事業であるオリンピック競技大会を表象するものとして,本件商標の登録出願時には,我が国はもとより世界的に著名になっていたものと認められるものであり,かつ,その状態は本号該当性の判断時期であるその登録査定時においても継続していたと認められるものである。
(5)本件商標と引用商標との類似性について
ア 本件商標について
本件商標は,「オカリンピック」の片仮名と「Ocalympic」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるところ,その構成文字に相応して,「オカリンピック」の称呼を生じるものである。
そして,該「オカリンピック」及び「Ocalympic」の文字は,辞書等に掲載されていないものであって,一種の造語と認められることからすると,特定の観念を生じないものといえる。
イ 引用商標について
引用商標1は「オリンピック」の片仮名,引用商標2及び4は「OLYMPIC」の欧文字,引用商標3は,別掲のとおり,「OLYMPIC」の欧文字の左右に五輪の図形を配した構成からなるものであるから,「オリンピック」又は「OLYMPIC」の文字に相応して「オリンピック」の称呼が生じるものである。
そして,該「OLYMPIC」及び「オリンピック」の文字は,「国際オリンピック委員会(IOC)が4年ごとに開催する国際的スポーツ競技大会。国際オリンピック大会」(広辞苑第六版「株式会社岩波書店」)の意味を有する語であることから,引用商標は,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」の観念を生じるものである。
また,引用商標は,上記(4)に記載のとおり,請求人に係る公益に関する事業であって営利を目的としない事業であるオリンピック競技大会,すなわち,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」を表象するものとして,我が国はもとより世界的に著名になっているものと認められるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1の類否について検討するに,外観においては,本件商標の構成中,上段の「オカリンピック」の片仮名部分は,「オリンピック」の片仮名からなる引用商標1と,語頭の「オ」及び後半部の「リンピック」を同じくし,2文字目における「カ」の文字の有無において相違するものである。
しかして,該「カ」の文字は,看者の注意を強く惹くとはいい難い中間に位置するものであり,上記構成からなる両商標を子細にみれば,文字の配列構成に上記のような異なる点があるとしても,かかる差異は看者の印象・記憶に影響を及ぼすほどのものではなく,全体としては極めて近似した綴りの文字からなると印象されるものであって,引用商標1が請求人の業務に係る「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」を表象する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていることからすれば,その独創的ともいえる「オリンピック」の商標と,語頭の「オ」及び後半部の「リンピック」の綴りを同一とする本件商標の片仮名部分は,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」と関連付けて看取される構成態様といえるものであるから,両商標は,外観において近似した印象を与えるものである。
また,称呼においては,本件商標から生じる「オカリンピック」の称呼と引用商標1から生じる「オリンピック」の称呼は,それぞれ促音を含め7音と6音からなるところ,その構成音中,語頭の「オ」及び後半部の「リンピック」の音を共通にするものであり,2音目の「カ」の音の有無の差異を有するものであるが,該差異音は,中間に位置するものであって,それほど,その差異が称呼全体に及ぼす影響が大きいものともいえず,両商標を一連のものとして称呼した場合には,語調,語感が近似したものとして聴取され得るというのが相当であるから,両商標は,称呼上類似するものというべきである。
さらに,観念においては,本件商標は,一種の造語ではあるものの,その構成文字において,上記した外観及び称呼によれば,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」を想起させ得るといえるものである。
そうすると,引用商標1からは,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」の観念を生じるものであるから,両商標は,観念において近似したイメージを抱かせるものである。
したがって,本件商標と引用商標1とは,外観において近似した印象を与え,称呼において類似し,観念において近似したイメージを抱かせるものといえるから,これらを総合的に判断すれば,両商標は,類似する商標というのが相当である。
(イ)本件商標と引用商標2ないし4との類否について
本件商標と引用商標2ないし4の類否について検討するに,外観においては,本件商標の構成中,下段の「Ocalympic」の欧文字は,引用商標2ないし引用商標4の「OLYMPIC」の欧文字とは,看者の注意を強く惹く語頭の「O」及び後半部の「LYMPIC(lympic)」の綴りを同じくし,中間において「ca」の文字の有無において相違するものである。
しかして,該「ca」の文字は,看者の注意を強く惹くとはいい難い中間に位置するものであり,上記構成からなる両商標を子細にみれば,文字の配列構成に上記のような異なる点があるとしても,かかる差異は看者の印象・記憶に影響を及ぼすほどのものではなく,全体としては極めて近似した綴りの文字からなると印象されるものであって,引用商標2ないし引用商標4が請求人の業務に係る「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」を表象する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されていることからすれば,その独創的ともいえる「OLYMPIC」の商標と,語頭の「O」及び後半部の「LYMPIC(lympic)」の綴りを同一とする本件商標の欧文字部分は,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」と関連付けて看取される構成態様といえるものであるから,両商標は,外観において近似した印象を与えるものである。
また,称呼においては,本件商標から生じる「オカリンピック」の称呼と引用商標2ないし引用商標4から生じる「オリンピック」の称呼は,それぞれ促音を含め7音と6音からなるところ,その構成音中,語頭の「オ」及び後半部の「リンピック」の音を共通にするものであり,2音目の「カ」の音の有無の差異を有するものであるが,該差異音は,中間に位置するものであってそれほど,その差異が称呼全体に及ぼす影響が大きいものともいえず,両商標を一連のものとして称呼した場合には,語調,語感が近似したものとして聴取され得るというのが相当であるから,両商標は,称呼上類似するものというべきである。
さらに,観念においては,本件商標は,一種の造語ではあるものの,その構成文字において,上記した外観及び称呼によれば,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」を想起させ得るといえるものである。
そうすると,引用商標2ないし引用商標4からは,「国際オリンピック大会(OLYMPIC/オリンピック)」の観念を生じるものであるから,両商標は,観念において近似したイメージを抱かせるものである。
したがって,本件商標と引用商標2ないし引用商標4とは,外観において近似した印象を与え,称呼において類似し,観念においては近似したイメージを抱かせるものといえるから,これらを総合的に判断すれば,両商標は,類似する商標というのが相当である。
(6)小括
上記のとおり,本件商標は,公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名な引用商標と類似する商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当する。
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第6号に該当するもので
あるから,請求人の主張に係る他の理由について検討するまでもなく,その登録を無効にすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
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