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Trademark Appeal Case

シェルシリンダーの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35434号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第2724000号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第2724000号商標(以下、「本件商標」という。)は、「SHELL CYLINDER」の欧文字を横書きしてなり、昭和63年12月29日登録出願、第9類「印刷機用ローラー」を指定商品として、平成10年2月27日に登録されたものである。

2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第38号証を提出した。

(1)本件商標は、商標法第3条第1項第1号若しくは同第3号又は同第6号及び商標法第4条第1項第16号に該当する。

(2)印刷機械(特に新聞用の輪転機)を取り扱う業界おいて「シェルシリンダー」は、「シェル(SHELL)構造をしたオフセット印刷機の版胴(シリンダー、CYLINDER)」を指称する語として通常使用されているものであり、本件商標は、単に、これを英語で表記したものである。

「シェルシリンダー」とは、輪転式オフセット印刷機に使用される3種類のシリンダーのうちの版胴とよばれるシリンダーであって、とくに、その中央が左右軸方向に2分割されて、一方が他方に挿入された二重のシェル構造になった版胴を意味するものとして本件商標の登録以前から使用されている。

(3)被請求人は、「今から20年以前の1979年に、『シェルシリンダー』を装備したオフセット輪転印刷機の1号機を製作し、新聞社に納入した実績を有し、それ以来、シェルシリンダーを装備した各種のオフセット輪転印刷機を反復的継続的に製作納入して現在に至っている」、「『SHELLCYLINDER』、又は、『シェルシリンダー』とネーミングして、それを装備した新聞用オフセット輪転印刷機ジュピターシリーズを業界に発表し、その製品を新聞社に納入する一方、1988年12月29日に本件商標を出願した次第である」、「この商標はここ20年来、業界において被請求人が反復使用し、業界もまたこれを認めるところであり、これをもって、単なる商品の品質表示語とする懸念とはあまりにも開きがあり、解しかねる。」と述べている。

しかしながら、本件商標「SHELL CYLINDER」の「SHELL」の言葉自体「じょうぶな外側のおおい」の意味をもち、かつ、「CYLINDER」は、輪転機のローラー(胴)の普通名称ないし品質表示語であるから、本件商標は、全体として、その指定商品「印刷機用ローラー」に使用されれば、「じょうぶな外側のおおいをもったシリンダー」と容易に認識させるものである。

すなわち、本件商標は、その言葉自体、全体として、指定商品の機能・構造等の品質を表示する商品の品質表示語としての属性をもつことは明らかである。

さらに、被請求人は、請求人が提出した甲第5号証ないし同第8号証、同第19号証、同第22号証ないし同第24号証について、「いずれも生産業者が特定されず、『シェルシリンダー』に関して記載が認められる刊行物であって、とりわけ、甲第5号証は『新聞製作技術用語集』であるから辞書に匹敵するが、これらは、いずれも製品の具体的取引とは、関係のない文献であるから、これらをもって、普通名称化したと認定することはできない。」と述べている。

しかしながら、甲第5号証ないし同第8号証は、本件商標出願日前又は本件商標登録日前に発行された新聞輪転機等の印刷技術についての用語集及びその研究報告書であり、ここで説明されている「シェルシリンダー」は、特定のメーカーのもののみを説明しているものでないことは、その記載内容から明らかであり、各メーカーに共通する新聞輪転機の技術として「シェルシリンダー」を説明していることは明らかである。また、これらの各証拠は、新聞用輪転機の需要者である各新聞社等が集まって組織された日本新聞協会によって、発行されているものであり、「シェルシリンダー」の用語が「新聞輪転機」に係る業界で品質表示語ないし普通名称として使用・認識されていることを示す根拠として十分なものである。

さらに、被請求人は、請求人が提出した、その他の甲各号証について種々述べ、かつ、商標の普通名称化の事実認定についての文献を引用するが、これらの証拠は、すべて、本件商標の識別力有無の判断基準時となる本件商標の登録時前から、「シェル」の用語、「シェルシリンダー」の用語が、被請求人以外の各新聞輪転機メーカー、また、そのユーザーである各新聞社等の同業団体(日本新聞協会)において、被請求人の提供する「シェルシリンダー」の商標としてではなく、メーカー各社に共通する「分割式の輪転機の版胴」を意味する言葉として使用されてきた事実を明白に示すものである。

以上のとおり、本件商標「SHELL CYLINDER」又は「シェルシリンダー」の文字は、被請求人が、自己の輪転機の分割式版胴に最初に使用したとしても、その言葉自体、記述的な用語であり、かつ、出願商標が識別力を有するか否かの判断基準時である登録時において、同業メーカー各社及びその製品の需要者である各新聞社、また、その製品を紹介する業界紙等々においても、各社に共通の「版胴を分割してそれぞれ微調整できる新聞輪転機用のシリンダー」を意味するものと普通に使用され、認識されてきたものである。

(4)本件商標「SHELL CYLINDER」が、その指定商品「印刷機用ローラー」とくに「シェル構造の印刷機用ローラー」に使用される場合には、これに接する取引者・需要者は、その商品の普通名称ないし品質表示語として容易に理解認識し、他方、「シェル構造のローラー以外の印刷機用ローラー」に使用される場合には、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号若しくは同第3号又は同第6号及び同法第4条第1項第16号の規定に該当するにもかかわらず誤って登録されたものであり、本件商標は、被請求人のみに独占排他的効力をもつ商標権を付与すべきものではなく、独占適応性を明らかに欠くものであり、その登録は無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件商標の登録を無効とする理由は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第33号証を提出した。

(1)まず、本件商標が「SHELL CYLINDER」、それを使用する指定商品が「印刷機用ローラー」である関係上、双方の表示に「シリンダー」と「ローラー」の相違が認められるから、製品の品質を誤認する懸念を生ずるか否かについて、以下に解明する。

上記双方共、外来語であるから、それらの本来的な意味をウエブスター英英和辞典(乙第31号証)に求めると、rollerは、「a revolving cylinder」すなわち「回転するシリンダー」であって、その機能として、何かがその上(周面)で動かされ、または、圧縮されたり、形作られたり、滑らかにされたりするために用いられるもの、を指称し、cylinderは、中空(hollow)又は、中の詰まった(solid)長くて丸い物体(円筒体及び円柱体)を指称する、ことが認められ、上記から判るように、ローラーには回転という要素が含まれ、シリンダーにはそれがない。それに対して、輪転印刷業界には、版胴をプレートシリンダー、圧胴をインプレッションシリンダー、ブランケット胴をブランケットシリンダーと呼ぶ慣例がある。しかしながら、それらのシリンダーは、いずれも、実際上は回転を必須要件とするばかりでなく、その回転を利用して、インキを他の胴やウェブ面へ移したり、そのために圧力を加えたりする機能、すなわち、ローラーの機能を必須とする。してみれば、それらのシリンダーは、いずれも機能上及び品質上、ローラーの属性を備えていなければ役に立たないものと解せられる。

よって、本件商標と指定商品の表示に「シリンダー」と「ローラー」の相違が認められるにしても、その品質が誤認されるおそれはない。

(2)本件商標が商品の品質表示に過ぎないとの主張について以下に解明する。

本件商標の表示が外来語であるから、それらの本来的な意味をウエブスター英英和辞典(乙第31号証)に求めると、cylinderについては前項に記載された通りであり、shellは、a stiff hard covering(堅くてじょうぶなおおい)乃至 the tough outer covering(じょうぶな外側のおおい)を指称する、ことが認められ、上記から判るように、本件商標は「外側にじょうぶなおおいを持った円筒体又は円柱体」という字義であるものと解せられる。

ところで、本件審判の被請求人である株式会社東京機械製作所(以下、TKSと略称する)は、今から20年以前の1979(昭54)年に、「シェルシリンダー」を装備したTKSオフセット輪転印刷機の1号機を製作し、新聞社に納入した実績を有し(甲第2号証、乙第3号証)、それ以来、シェルシリンダーを装備した各種のオフセット輪転印刷機を反覆的継続的に製作納入して現在に至っている(乙第3号証ないし同第24号証)。

被請求人は、これら諸々の構成作用効果を総称して、「SHELL CYLINDER」、又は、「シェルシリンダー」とネーミングして、それを装備したTKS新聞用オフセット輪転印刷機ジュピターシリーズ(乙第4号証および同第5号証)を業界に発表し、その製品を新聞社に納入する一方、1988(昭63)年12月29日に本件商標を出願した。

本件商標は、その指定商品に係る複雑な機構を称する造語として表現したものであり、この商標はこの20年来、業界においてTKSが反覆使用し、業界もまたこれを認めるところである。

(3)本件商標は普通名称化しているか否かについては、業者不明の刊行物記載と、件外会社の動向に関して以下に解明する。

まず、一般的に、商標の普通名称化の事実認定基準について、商標法に規定されず、個別的な状況判断に委ねられているが、主たる認定基準として、網野誠著「商標第4版」第202頁(乙第32号証)では、「同業者間の認識のみでは足りない」「辞書やその他の刊行物、当該取引に関係ない学問的・技術的文献、講演等において普通名称であるかのように使用されているのみでは足りない」とし、更に、播磨良承編著「商標の保護」第158頁(乙第33号証)では、上記の主張と同一の趣旨の主張の後、「専門書や辞典上の用語使用の事実だけをもって、普通名称と判断する方法は、商標権者の利益を不当に害するものとして許されないとするのが世界的傾向である。」としている。そこで、上記の認定に基づいて請求人の主張と証拠を以下に検討する。

甲第5号証ないし同第8号証、同第19号証、同第22号証ないし同第24号証は、いずれも生産業者が特定されず、「シェルシリンダー」に関して記載が認められる刊行物であって、とりわけ、甲第5号証は「新聞製作技術用語集」であるから辞書に匹敵するが、これらは、いずれも製品の具体的取引とは関係のない文献であるから、これらをもって、普通名称化したと認定することはできない。

なお、甲第22号証、同第23号証の米国特許公報中に記載される”shell cylinder”は、文脈上、「ブランケットシリンダー4は中空または堅いおおいの円筒体である」という意味であって、本件商標の使用には相当しないものと解する。

これに対して、甲第12号証ないし同第14号証、乙第29号証は、いずれも特許公開または実用新案公開の公報に属し、かつ、出願人が生産業者であると推定され、しかも、それらの内容はTKSの特許の後願として本件商標が使用する製品の改良案であるように考えられるものの、その表示ないし記載が「版胴本体とシェル」「版胴本体と版筒」「第1シェル、第2シェル」であるから、本件商標の使用ではないこと明白である。

次に、件外会社の新聞用オフセット輪転機について検討すれば、1984年発表当初のカタログ(甲第9号証)では、「シェルシリンダ(個別見当装置)」と表示し、それと同時期発行の刊行物(乙第25号証)では、「分割版胴」と記載され、その後、2年経って発行された刊行物(乙第15号証)では「シェルシリンダ」と表示し、その後、1986年から1993年の間に順次発行された刊行物(甲第16号証ないし同第18号証、同第21号証及び乙第26号証)では、「シェル版胴装置」「分割版胴シェルシリンダー」及び「分割版胴(シェルシリンダー)」と各種表示され、1993年10月発表のカタログでは、「分割版胴(個別見当調整装置付)」の表示のみとなって、「シェルシリンダー」が使用されなくなり、この動向は、1997年発行の刊行物(乙第28号証)においても「分割版胴装置」の表示のみとなり、「シェルシリンダー」は使われなくなった。

なお、甲第25号証(1998年7月2、3日札幌市で開催の実務者専門セミナーで当日配布された資料「本音で語るタワープレス」)では、その第3頁にTKSのパネリストが「シェルシリンダー」に関し、図入りで説明する一方、その第7頁に件外会社のパネリストが、図入りで「シェルシリンダ(分割版胴)」を説明し、その説明の一部に混合形式で本件商標が表示されていることが認められる。

しかしながら、上記の資料を検討してみると、上記セミナーの趣旨は講演形式の勉強会であって、商取引でない学術的資料に属するものと解せられるから、これをもって普通名称化したと極論するには無理がある。

むしろ、当初、本件商標を混用していた件外会社が、前述したカタログ(乙第27号証)などで、「シェルシリンダー」の表示を使用せず、これを「分割版胴(個別的見当調整装置付)」と表示するに至った時間的な大きな動向に注目すべきである。

次に、甲第20号証および同第21号証が示す定期刊行物の記載について以下に検討する。

第1に甲第20号証は、ユーザーの記述によるもので、件外会社製のオフセット輪転機の多色刷り部に「『シェルシリンダー』を採用」(第43、44頁)、及び、件外会社製のオフセット輪転機の多色刷り部に「HS、GS分割式で天地及び左右方向見当調整装置(シェルシリンダー)を設け」(第85頁)の記載が認められる。いずれも、今から約11年以前の1987年のことであって、TKSの「シェルシリンダー」のネーミングを知見して、長々とした記載よりも、それを「シェルシリンダー」と表現した方が簡潔と思う反面、不明瞭曖昧となる懸念も合わせ持つデリケートな表示の状況が察せられる。このような自信のない使用方法では、到底、普通名称化したとは言うことができない。

第2に、甲第21号証は、ユーザーの「版シリンダーをシェルシリンダーに交換した」という報告文であることが認められる。しかしながら、「交換する以前には、オーク社製を使用していた」の記載があるものの、交換したシェルシリンダーの業者については記載されておらず、不明である。このような不明瞭な記述では、本件商標が普通名称化したとは解せられない。

最後に、甲第10号証ないし同第11号証について以下に検討する。

まず、甲第10号証は、件外会社のカタログないし業務説明書であって、取引上使用されているいるものと認められ、かつ、「シェルシリンダー」の記述が小文字で一個所存在することが認められる。しかしながら、前後の記述と関連して、これを解釈すると、「シェルシリンダー」の製造納入をするのでなく、シェルシリンダーの使用をサポート、つまり、見当合わせの誤差を微量調整するサービスを24時間体制で対応します、と読み取ることができる。

次に、甲第11号証は、件外会社のカタログであって、この「システムの特色」の項に「シェルタイプ(分割版胴タイプ)シリンダー対応機能も搭載しています」との記載が認められ、かつ、システムオペレーション及びオペレーターコントロールステーションが製品であって、そのシステム製品がシェルタイプ(分割版胴タイプ)のシリンダーにも対応可能であることが認められる。

してみると、甲第10号証ないし同第11号証は、「シェルシリンダ」それ自体でなく、その機構のコントロールサポートないしそれに対応するシステムのPRに過ぎず、これらをもって、本件商標が普通名称化したとは到底考えられない。

5 当審の判断

本件商標がその登録時(平成10年2月27日)前において請求人主張の法条に該当するものであったか否かについて以下検討する。

請求人が提出した甲号各証によれば、次のことを指摘することができる。

(1)「シェルシリンダー」として「オフセット多色機で、見当合わせのため操作側、駆動側がそれぞれ単独で、天地左右の微調整ができる版胴。版胴中央で左右軸方向に2分割し、一方に他方を挿入した片側二重シェル構造になっている。」(日本新聞協会 平成2年6月11日発行 新聞製作技術用語集339−340頁...甲第5号証)との記載が認められ、また、日本新聞協会 昭和61年5月17日発行「最新の新聞製作主要機材1986」327頁(甲第6号証)、日本新聞協会 昭和58年8月20日発行「昭和57年度工務共同研究報告書(印刷発送の自動化を探る)」22頁(甲第7号証)にも、同主旨の記載が認められる。

(2)請求人以外の者の取り扱いに係る、本件商標が登録される以前の印刷機械器具の商品カタログに、「シェルシリンダ(個別見当装置)」の見出し語及びこれに関する説明文が(甲第9号証)、「標準シリンダーおよびシェル・シリンダーでの使用をサポート」の記述が(甲第10号証)、「......シェルタイプ(分割タイプ)シリンダー対応機能も搭載しています。」との記載(甲第11号証)がそれぞれ認められる。

(3)「新聞印刷技術 1985−4 No.114(日本新聞協会刊行)」(甲第15号証)によれば、「第32回新聞製作講座」のパネルディスカッションの記録記事中の「印刷工程FA化の展望」の中で「シェルシリンダー」の語が使用されていることが認められる。このほか同誌の他の号の記事中に「シェルシリンダー」、「シェルシリンダ」の語が使用されていることが認められる(甲第17号証ないし同第21号証)。

新聞「印刷通信 1990年1月5日付」(甲第29号証)によれば、新聞の印刷技術報道記事中に「シェルシリンダーの採用により、見当合わせの精度は向上し、かつ、容易になった。」との記述が認められるものである。このほか、同新聞の他の発行日の記事中に「シェルシリンダー」の語が使用されていることが認められる(甲第30号証ないし同第33号証)。

「新聞技術情報 VOL.25 No3(日本新聞協会発行)」(甲第34号証)の「朝日日刊スポーツ印刷社訪問記」の記事中に「シェルシリンダー」の語が使用されていることが認められる。このほか、同誌及び他の新聞の印刷技術関係の雑誌にも「シェルシリンダー」の語が使用されていることが認められるものである(甲第35号証ないし同第37号証)。

しかして、これらの雑誌、新聞の記事中の「シェルシリンダー」(「シェルシリンダ」の語は「シェルシリンダー」と長音の有無の違いがあるものの、その同義語と認められる。)の語は、新聞の印刷技術に関連する用語として通用していたものであって、本件商標の登録時前において、すでに「オフセット印刷機において、見当合わせのため操作側、駆動側がそれぞれ単独で、天地左右の微調整ができる版胴」を意味するものとして取引上普通に使用されていたものと判断するのが相当である。

被請求人は、この点に関し「(輪転印刷機の)諸々の作用効果を総称して、『SHELL CYLINDER』、又は、『シェルシリンダー』とネーミングして、それを装備した新聞用オフセット輪転印刷機を業界に発表した。.........本件商標は、その指定商品に係る複雑な機構を称する造語として表現したものであり、この商標はこの20年来、業界において請求人が反覆使用し、業界もまたこれを認めるところである。」旨主張している。

しかしながら、「シェルシリンダー」の語に関して乙号各証をみるに、例えば、乙第3号証の学会誌では、「2.シェルシリンダー装置の開発」として論文中のタイトル名に使用したり、また、乙第4号証のカタログにおいては、「この場合、オペレーティングサイドとドライブサイドの見当合わせを、運転中別々に行うこともできます(シェルシリンダー装置)。」として技術用語的な表示をしていることが認められるところである。

したがって、たとえ、被請求人が「昭和54年この装置を組み込んだ新聞用カラーオフセット輪転機......の版胴機構を『シェルシリンダー』と称し」(乙第3号証)たものとしても、被請求人が「シェルシリンダー」の語を自他商品識別標識として認識されるような態様・表示方法で継続的に使用していた事実は客観的に明らかでないから、前記の被請求人の主張は採用の限りではない。そして、このほか述べる被請求人の主張及びその提出に係る乙号各証をもって、前記認定を覆すことはできない。

しかして、本件商標は、「SHELL CYLINDER」の文字を書してなるところ、その構成中「SHELL」(シェル)は、「貝殻」などの意味を有する比較的平易な英語であり、また、「CYLINDER」は、「円筒、円柱」などの意味を有し、指定商品との関係では「版胴」を意味する「シリンダー」に通ずる語であることから、本件商標「SHELL CYLINDER」に接する取引者・需要者は、前記認定の「シェルシリンダー」を容易に想起・認識するというのが相当である。

してみれば、本件商標登録時において、本件商標「SHELL CYLINDER」をその指定商品中、「見当合わせのため操作側、駆動側がそれぞれ単独で天地左右の微調整ができる版胴」に使用するときには、該商品の取引者、需要者は、それが、前記構造を有する版胴であること、すなわち、商品の構造、品質を表示したと理解するに止まり、自他商品の識別標識とは認識しないものであったというべきである。

また、前記以外の版胴に使用するときには商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあったというべきである。

したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に違反して登録されたものというべきであるから、その登録は同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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