sokuhyo

Trademark Appeal Case

著名商標との称呼類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2015−890035(T2015−890035/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5517482号商標(以下「本件商標」という。)は,次のとおりである。

商標の構成

登録出願日 平成24年3月27日

登録査定日 平成24年7月31日

設定登録日 平成24年8月24日

指定商品 第14類「時計,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,身飾品」

第2 引用商標

請求人の引用する登録商標3件(以下,これらを総称して「引用商標」ということがある。)は,次のとおりである。

1 登録第4978655号商標(以下「引用商標1」という。)

商標の構成 フランク ミュラー (標準文字)

登録出願日 平成17年3月25日

設定登録日 平成18年8月11日

指定商品 第14類「貴金属(「貴金属の合金」を含む。),宝飾品,身飾品(「カフスボタン」を含む。),宝玉及びその模造品,宝玉の原石,宝石,時計(「計時用具」を含む。)」

2 登録第2701710号商標(以下「引用商標2」という。)

商標の構成

登録出願日 平成4年3月5日

設定登録日 平成6年12月22日

指定商品の書換登録日 平成17年2月2日

指定商品 第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」

第14類「時計,時計の部品及び附属品」

3 国際登録第777029号商標(以下「引用商標3」という。)

商標の構成

国際登録出願日(事後指定) 2012年(平成24年)3月13日

設定登録日 平成25年5月2日

指定商品 第14類「Precious metals, unwrought or semi-wrought; personal ornaments of precious metal; key rings[trinket or fobs]; services [tableware] of precious metal; kitchen utensils of precious metal; jewellerry, precious stones, timepieces and cronometric instruments.」

第3 請求人の主張

請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第214号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標

本件商標は,上記第1のとおり,「フランク」の片仮名及び「三浦」(「浦」の漢字の右上の点を消去してなるものである。以下においても同様である。)の漢字を手書き風の文字で横書きしてなる。本件商標は,「浦」との文字は右上の点がなくとも通常一般人には「ウラ」との称呼が生じ,「三浦」が日本の地名や人名として一般的であることから「フランクミウラ」という称呼を生じる。そして,観念については,人名を構成要件とし,特に,フランクとの名前を有する人名をイメージする上,本件商標中の「三浦」が一般的な日本人の名字であってもその語感と日本では一般的ではない「フランク」という外国の名前から続くことによって著名な時計あるいはその制作技術者であるフランク・ミュラーを連想させる。

イ 引用商標

引用商標1は「フランク ミュラー」の片仮名を標準文字で表したものであり,引用商標2は「FRANCK MULLER」の欧文字を横書きしたものであり,引用商標3は「FRANCK MULLER REVOLUTION」の欧文字を横書きしたものである。

引用商標1及び引用商標2は,それらの構成文字に相応して,「フランクミュラー」との称呼が生じ,観念については,いずれの商標も人名を構成要件とし,特に,フランクとの名前を有する人名をイメージする。

引用商標3は,その後半の「REVOLUTION」が商品のヴァージョンを示す場合もあり,全体としては長い称呼を有し,また,結合商標の前半の「FRANCK MULLER」の文字は特に顕著であり,引用商標3の特徴的な部分いえるから,その前半が切り離され,「フランクミュラー」との称呼が生じる。そして,引用商標3の前半部分から,フランクとの名前を有する人名をイメージする。

ウ 本件商標と引用商標との類否

(ア)称呼について

本件商標から生じる「フランクミウラ」と引用商標から生じる「フランクミュラー」の称呼を対比すると,両称呼は,第5音目からの「mi・u」と「myu」のそれぞれ中間の母音,及び語尾における長音と短音の差異しかなく,需要者の通常有する注意力を基準として本件商標と引用商標の称呼は極めて類似し相紛らわしい。

(イ)外観について

本件商標と引用商標1とは,両商標の前半の「フランク」の片仮名はほぼ同一であり,「三浦」と「ミュラー」との相違しか存在しないので,両商標は,外観上,「著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いもの」とまではいえない。

本件商標と引用商標2及び3とは,引用商標2が「FRANCK MULLER」との欧文字からなるものであり,引用商標3の構成中の特徴的な部分が上記イのとおり「FRANCK MULLER」の欧文字部分であるから,本件商標のやや手書き風の「フランク三浦」とは相違があるとしても,「著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いもの」とまではいえない。

(ウ)観念について

観念については,いずれの商標も人名を構成要件とし,フランクとの名前を有する人名をイメージする。そして,本件商標中の「三浦」が一般的な日本人の名字であってもその語感と日本では一般的ではないフランクという外国の名前から続くことによって著名な時計あるいはその制作技術者であるフランク・ミュラーを連想させる。

エ 指定商品の類否

引用商標1との関係では,本件商標の指定商品中「時計,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品」が明らかに類似する。「キーホルダー」についても身飾品と同様に身に付けるものでアクセサリー売り場など身飾品一般の取引と同一の場所と機会において取引されるから類似の商品といえる。

次に,引用商標2との関係をみると,本件商標の指定商品中「時計」が明らかに同一又は類似する。

さらに,本件商標の指定商品中「時計」,「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」,「キーホルダー」及び「身飾品」は,引用商標3との関係において明らかに同一又は類似する。

オ 小括

本件商標と引用商標とは,その外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察した上で酷似するといえる。特に,請求人の商品はオフィシャルストアのみで販売されるため,被請求人の製品と並列して販売されることは無い。そのため,消費者は本件商標と引用商標1の両方を比較することはほぼなく,それら商標の間に生じる細微な相違点を比較しないため,各商標の称呼及び観念が酷似する点から出所の混同が生じ得る。

しかも,本件商標と引用商標との指定商品は,同一又は類似するものである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第10号該当性について

ア 請求人の使用する商標の周知性について

請求人の代表的商標である「フランク ミュラー」(「フランク・ミュラー」と前半の文字と後半の文字を「・」(中点)を介してなるものを含む。以下においても同様である。)の文字からなる商標(以下「請求人使用商標1」という。)と,これの語源となった「FRANCK MULLER」の文字からなる商標(以下「請求人使用商標2」といい,請求人使用商標1と併せて「請求人使用商標」ということがある。)とは,請求人の業務に係る時計宝飾品(以下,請求人の業務に係る商品である時計を総称して「請求人商品」という。)の製造・販売を表示するものとして,需要者の間で広く認識されている。そして,請求人使用商標1は,請求人の業務に係る時計宝飾品の日本における宣伝広告,商品の紹介においてはほとんどに表記されている。

技術者フランク・ミュラーは,スイス国ジュネーヴにおいて時計作りをはじめ,1991年に「FRANCK MULLER」ブランドを立ち上げ,大小伸縮した特徴ある数字が並べられている文字版を用いたトノウ型(略楕円形)の複雑な機能付き腕時計等の製造販売をすることにより,立ち上げ当初より高性能・高品質の高級時計メーカーとして名を馳せ,世界6か所の製作所で年間4万5千本の時計を制作し100か国以上の国で48の専門店と600以上の販売拠点を有するなど世界での不動の地位を築いた。

日本進出は1992年からであるが,1990年に「家庭画報別冊宝飾品と高級時計」において大々的に取り上げられたことを皮切りに,当時は直営店を展開,1998年に日本においてワールド通商株式会社(WORLD COMMERCE CORPORATION)と腕時計について輸入代理店契約を締結し,2002年には「フランク ミュラー」の宝飾品を販売している。

日本において,請求人は,請求人使用商標1を宣伝広告,及び商品紹介において使用してきた。フランクミュラーの日本における広告宣伝費用は,1998年から2000年までは1年で平均約8,000万円,2001年以降は1億8,000万円,2003年以降は4億円程度となっている。2012年には6億円以上の費用を日本での販促活動に費やしている。また,フランクミュラーの時計の日本での売上げは1998年以降着実に伸びており,1998年には10億円だった売上げが,2000年には15億円,2001年には約28億円,2002年には約49億円と増加し,2003年以降は毎年平均して60億円を超える売上げを記録している。さらに,請求人は,国内店舗数約45件,雑誌への広告等の掲載回数は年間約145回を数え,当時の雑誌においても著名人がNo.1ウォッチとして商品を紹介したり,一般紙で他の有名ブランド(ルイ・ヴィトン,ショーメ,ダッチ,エルメス,コーチ,オメガ,シャネル,ティファニー等)と並べて紹介されたり,時計専門誌においては時計10大ブランドの一つに数えられている。各種雑誌で請求人商品の特集が組まれ,一般紙男性向けの媒体においては,その機能性やステイタスを,女性向けの宣伝媒体においては,宝飾デザイン性の高い商品群を中心に掲載され,さらに,海外での自らが主宰する世界高級腕時計展(WPHH)が一般ファッション誌で紹介されるなどされ,トップブランドとして名を知らしめている。特に,2011年はブランド創設20年の節目であり,日本においても広告宣伝に力を入れており,国内でもVIP顧客やプレス向けパーティー等のイベントが年間約4回開催され,請求人の業務に係る時計宝飾品の製造・販売を表示するものとして,本件商標の登録出願日(平成24年3月27日)には,既に需要者の間で広く認識されていたことは明らかである。

さらに,請求人は,当時,代表的な腕時計のデザインを模した宝石の指輪,ネックレス等の身飾品を販売していたほか,請求人商品のデザインを模した携帯の待ち受けを提供したり,iPhoneカバーを製作したりするなど,その進出分野は時計宝飾品に限られない。

イ 本件商標と請求人使用商標との類否

請求人使用商標1は「フランク ミュラー」の文字からなり,請求人使用商標2は「FRANCK MULLER」の文字からなるから,上記(1)と同様の理由により,本件商標と請求人使用商標とは,類似する商標であるといえる。

ウ 商品の類否

請求人の業務に係る商品は,時計がその中心を担っているが,その時計は,特徴あるデザイン性を追求し,あるいは宝石をちりばめた商品群があるなど,その使用実態は宝飾品といって過言ではない。

これに対して,本件商標の指定商品は,「時計,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,身飾品」であり,「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品」と宝飾品は類似の商品であり,「キーホルダー」についても身飾品と同様に身に付けるものでアクセサリー売り場など身飾品一般の取引と同一の場所と機会において取引されるから類似の商品といえる。

よって,本件商標の指定商品は,すべてにおいて請求人使用商標の使用されている商品と同一又は類似の関係にある。

エ 小括

以上のとおり,本件商標は,請求人の業務に係る時計宝飾品等の製造・販売を表示するものとして,需要者の間で広く認識されている請求人使用商標に類似する商標であって,その商品と同一又は類似する商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

本件商標と請求人使用商標との類似性については,上記(2)イのとおりであるから,両商標は類似する商標といわざるを得ない。

請求人使用商標の「フランク ミュラー」あるいは「FRANCK MULLER」の名称は,そもそも,時計技師の個人名に由来しており,フランクという部分から外国人の名前と認識されるとしても,人物の名称として日本においてあまりなじみがなく,識別力は高い。

加えて,上記(2)アのとおり,請求人使用商標の日本における知名度は請求人の業務に係る時計宝飾品の製造・販売を表示するものとして,本件商標の登録出願当時,既に需要者の間で広く認識され著名の域に達していることは明らかであり,請求人使用商標の出所表示力は極めて強いものである。

さらに,上記(2)ウのように,請求人の業務に係る商品は時計がその中心を担っているが,その使用実態は宝飾品といって過言ではない。現に,請求人商品はデパートの時計宝飾サロン,時計・宝飾売場,ジュエリー&ウォッチコーナー等で店舗や専用の販売スペースを構えて販売されており,これらは時計に限られたものではなく宝飾品一般の取引と同一の場所と機会において取引されている。雑誌掲載においても,時計宝飾品として宝飾品と同一需要者を対象としている。

これに対して,本件商標の指定商品は,「時計,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,身飾品」であり,請求人商品である宝飾品とは関連性の高い商品である。

以上のとおり,請求人使用商標は,本件商標の登録出願当時,既に全国的に周知著名であり,本件商標を付した商品は,請求人の業務に係る商品であると誤認され,その商品の需要者が商品の出所について混同を生じるおそれがあるものであるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)商標法第4条第1項第19号該当性について

ア 本件商標と請求人使用商標との類似性について

本件商標と請求人使用商標との類似性については,上記(2)イのとおりであるから,両商標は類似する商標である。

イ 不正の目的について

被請求人は,インターネット上及び店舗で,主として本件商標を付した,請求人商品と酷似した時計を複数,販売している(以下,被請求人が本件商標を付して販売する時計を総称して「被請求人商品」という)。具体的には,インターネットを通じて交流するためのソーシャルサイトであるFacebookにおけるフランク三浦販売事業部のページを2013年(平成25年)10月に立ち上げている(甲204)。また,インターネットにおけるブログ交流サイトamebloの「フランク三浦」販売事業部のページには,遅くとも2012年(平成24年)10月29日付けで先週1000本卸した旨の記載がある(甲205)。

したがって,被請求人が本件商標の登録された2012年(平成24年)8月24日のすぐ後に販売活動を開始していることからすると,本件商標が出願された2012年(平成24年)3月27日より,かかる模倣品を販売する意図は明確だったものといえる。

しかも,被請求人商品は,自らが「パロディウォッチ」(甲200)と述べているように,「フランク ミュラー」製品の特徴を意図的に模したものであり,販売されている商品のラインナップは,請求人の代表作ともいえるトノウ型(略楕円形)や略長方形の本体に変形算用数字を用いた文字版を使用した製品が中心となっており,商標を付している部分も請求人商品において表示されている部分とほぼ同一である。また,被請求人商品の文字盤のデザイン及び色彩は,請求人商品の特徴とほぼ同一のものを用いている。それにもかかわらず,品質は劣悪で,手書き風の商標は品質をさらに粗悪なものと連想させるほか,商品への記載も「完全非防水」などとふざけたとしかいいようがないものがある。時計製作者の説明についても,フランク・ミュラー自身,「ジュネーブの若き天才時計師」と評されていることを嘲笑うかのように,「天才時計師フランク三浦が放つパロディウォッチシリーズ」と銘打ち,販売している。したがって,被請求人商品は,請求人商品の形態を模倣するものであることは明らかである。

被請求人は,そのウェブサイト(甲213)において,自らがプロジェクト実行者となって「フランク三浦とは,謎の天才時計技師・フランク三浦が立ち上げた,超一流腕時計ブランド」と宣伝し,さらに,「某有名時計ブランドと全く無関係ながらも『常識にとらわれない大胆な発想』と『目を疑うほど攻撃的なデザイン』が話題」と記載している。これは,正に請求人のウェブサイト内「story」におけるブランド「FRANCK MULLER」創設ストーリー(甲37)を模倣した紹介文である。以上から,被請求人商品のセールスポイントは,そのすべてにおいて請求人の引用商標等の著名性からなる顧客吸引力を利用しており,これにただ乗りする意が表れている。次に,被請求人商品が一般消費者の間において如何に受け止められているかを見ると,ウェブサイト上には,「『何これ?フランク・ミュラーのバッタもん?』と思ったそこのあなたにお伝えします。」や「価格は4000円程度のものが主流ながら,フランク・ミュラーそっくりの文字盤の中央に,堂々と「フランク三浦」と記したその姿!」(甲214)といったように,請求人商品の特徴や引用商標等の著名性を話題づくりに利用している。

これらの行為はすべて,請求人が築き上げた時計業界を代表するようなトップブランドとしての名声にただ乗りし,その価値をおとしめるものにほかならない。

現に,YAHOO!JAPANニュースでは「各界の著名人も愛用するパロディ腕時計“フランク三浦”ってなんだ?」とのタイトルのもと「時計好きならずとも,どこかで見たことのあるだろう特徴的デザイン。」と評し,「フランク・ミュラーのバッタもん?」と一般的な受け止め方を記載していたり(甲206),ウェブページ上では,「じわじわと人気が出ている時計ブランドフランク三浦【フランク・ミュラーのばったもん】」と記載され,「パッと見だと本当にかっこいい」と請求人商品と酷似した商品について評価されていたりする(甲207)。

したがって,明らかに,被請求人は請求人の商標及びその特徴たるデザインに酷似させており,被請求人が本件商標を使用した場合,請求人使用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等にただ乗りし,これを毀損させるおそれがあることは明らかであり,請求人の周知な商標と類似する商標を不正な目的をもって使用するものといえる。

ウ 小括

以上のとおり,請求人使用商標は,日本国内及び世界中に広く認識されており,本件商標は,請求人使用商標と極めて類似する。また,被請求人は,請求人商品と外観の類似する劣悪な廉価商品を販売するなど,著名となっている請求人使用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力にただ乗りし,これを毀損させる不正の目的を有することは明白である。

よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

2 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張

被請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁の理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。

1 答弁の理由

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 外観について

本件商標は,上記第1のとおり,手書き風の文字で「フランク」という片仮名4字及び「三浦」という漢字2字で構成され,その構成中の「浦」の漢字は右上の点がなく,本件商標は,当該漢字が,外観上の特徴である手書き風の文字とあいまって,看者に「不正確な日本語記載」であるとの印象を与えるものであるのに対し,引用商標1は「フランク ミュラー」という片仮名8字で構成されている。一見して明らかなとおり,両商標の後半部分は全く別の文字で構成されており,両商標の外観は大きく異なる。

引用商標2は,「FRANCK MULLER」という欧文字12字で構成されている。一見して明らかなとおり,本件商標と引用商標2とは,全く別の文字で構成されており,両商標の外観は大きく異なる。

引用商標3は,「FRANCK MULLER REVOLUTION」という欧文字22字で構成されている。一見して明らかなとおり,本件商標と引用商標3とは,全く別の文字で構成されており,両商標の外観は大きく異なる。

イ 称呼について

本件商標の称呼は「フランクミウラ」であり,引用商標1及び引用商標2の称呼は「フランクミュラー」である。

本件商標は前半部分が「フランク」という片仮名で後半部分が「三浦」という漢字であることに伴い,その称呼は,「フランク」という前半部分と「ミウラ」という後半部分で明確に区切られる。一方で,引用商標1及び引用商標2の称呼は,両商標の構成文字がそれぞれ全て片仮名又はローマ字からなるため「フランクミュラー」と一気に称呼される。この点で称呼は大きく異なる。

これと関連し,本件商標においては,「フランク」中の「ラ」の部分と「三浦」中の「ミ」の部分に2回アクセントが来るのに対し,引用商標1及び引用商標2では「フランク」は平坦に発音され「ミュ」の部分にアクセントが来る。この点でも称呼は大きく異なる。

さらに,「ミウラ」は三音節であるのに対し,「ミュラー」は二音節であり,後半部分の音節数が明確に異なる。また,請求人も認めるとおり語尾が長音か短音かも異なる。

したがって,両商標の称呼を需要者が聞き比べた場合,その違いは明確であり,両商標の称呼が同一又は類似しているとはいえない。

また,引用商標3が「FRANCK MULLER」と「REVOLUTION」という部分に可分であることは積極的に争わないが,引用商標3の「FRANCK MULLER」部分の称呼は引用商標2と同様であるから,上記の称呼の比較と同様の議論が当てはまる。

ウ 観念について

引用商標は,外国人の人名と認識され,一般には「Franck Muller(フランクミュラー)」という名前の人物が想起され,かかる観念を生じる。また,舶来の高級腕時計に精通した需要者であれば,スイスの著名な時計制作者であるFranck Muller氏又は同氏が関係する時計ブランドを想起することもあるかもしれない。

一方,本件商標は,その構成中の「浦」の漢字は右上の点がないが,全体としては「フランク三浦」と理解することができる。

「フランク三浦」は,請求人も述べるとおり,人名を表すものと理解されるが,想起される人物は引用商標と大きく異なり,本件商標からは,「三浦」という姓の日本人で「フランク三浦」という芸名・リングネーム等の別名を名乗っている人物又は日本人と外国人のハーフやクォーター若しくは「三浦」姓になった外国人といった人物が観念される。

両商標の観念を比較すると,本件商標は上記のとおり「三浦」という姓の日本人で「フランク三浦」という芸名・リングネーム等の別名を名乗っている人物又は日本人と外国人のハーフやクォーター若しくは「三浦」姓になった外国人といった人物を観念させるのに対し,引用商標は「Franck Muller(フランク ミュラー)」という名前の一般的な外国人(日本人とのハーフやクォーターという印象は生じない)又はFranck Muller氏若しくは同氏が関係する時計ブランドを観念させるのであり,その観念は明確に異なる。

仮に,本件商標からスイスの著名な時計制作者であるFranck Muller氏又は同氏が関係する時計ブランドを連想する需要者がいたとしても,Franck Muller氏を知っている当該需要者であれば,同氏やその時計ブランドの持つ世界的評価,高級感,精密性を少なくとも認識していると考えられる。そのような認識を持つ需要者が,同氏やその時計ブランドが「フランク三浦」という日本人と外国人とのハーフ又はクォーターのような氏名又は名称,あるいは日本人による外国かぶれ風の名称又はリングネーム若しくは芸名のような名称を付け,本件商標のようなつたない筆跡や誤字のある標章を用いるとはおよそ考えない。本件商標からFranck Muller氏や同氏が関係する時計ブランドを連想する需要者が仮に万一いたとしても,そのような需要者は本件商標について「Franck Mullerに由来する完全に別の物」と当然に看取できるのであって,本件商標からFranck Muller氏や同氏が関係する時計ブランドそのものを観念させることはおよそ考え難い。本件商標は,Franck Muller氏や同氏が関係する時計ブランドを連想する需要者に対しては,同時に,Franck Muller氏や同氏が関係する時計ブランドとは全く異なる別物であることを明瞭に観念させるものであることは明白である。

したがって,本件商標と引用商標との観念は全く異なる。

エ 小括

以上のとおり,本件商標と引用商標は,外観,観念及び称呼のいずれも相違しており(とりわけ,外観及び観念は全く異なっている),需要者に対して,商品の出所について誤認混同を生じるおそれはない。

(2)商標法第4条第1項第10号該当性について

ア 請求人使用商標の周知性について

請求人使用商標が,FRANCK MULLERというブランドの時計を表示するものとして需要者の間に広く認識されている事実は争わない。

イ 本件商標と請求人使用商標との類否

請求人使用商標1は引用商標1と同一の標章であり,請求人使用商標2は引用商標2とほぼ同一の標章である(字体のみ違いがある)。したがって,本件商標と請求人使用商標とは,上記(1)と同様の理由により,類似しない。

ウ 商品の類否

被請求人は,FRANCK MULLERというブランドの時計が宝飾品と同様の舶来高級品である事実を争わない。

請求人は,「『キーホルダー』についても,身飾品と同様に身に付けるものでアクセサリー売り場などに身飾品一般の取引と同一の場所と機会において取引されるから類似の商品といえる。」と主張する。

しかしながら,請求人提出の各証拠を見ても,時計宝飾品以外の商品について請求人使用商標が需要者の間に広く認識されている事実は認められない。

そして,デパートの時計宝飾サロン等で販売される時計宝飾品とキーホルダーが「同一の場所と機会において取引される」との事実は認められず,請求人の主張は根拠がない。

したがって,本件商標の指定商品のうち「キーホルダー」は,時計宝飾品と類似しない。

エ 小括

以上のとおり,そもそも本件商標と請求人使用商標とは類似しないので,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。

また,本件商標の指定商品と請求人使用商標の使用されている商品は完全には類似しないから,この点でも本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 本件商標と請求人使用商標の出所の混同について

本件商標と請求人使用商標とは,上記(2)イのとおり,外観,観念,称呼が大きく異なるので,両商標が類似することを根拠として出所の混同が生じているとする請求人の主張は成り立たない。

そもそも,商標法第4条第1項第15号は,具体的な出所の混同が生じていることを要件としているのであって,引用商標と類似していることが直ちに出所の混同の根拠となるわけですらなく,請求人の主張は,同号の主要事実である「具体的混同」に窮したうえでの単なる憶測にすぎないというべきものである。

上記のとおり,本件商標と請求人使用商標とは類似しないが,それでもなお,出所の混同が生じていると請求人が主張するのであれば,これについては,以下のような理由により出所の混同が生じるおそれはない。

被請求人商品は,甲第200号証ないし甲第204号証に掲載されているとおり,文字盤中央に「フランク三浦」という本件商標が記載されており,請求人商品の模造品や海賊版(需要者に請求人商品そのものであると誤認させて購入させる商品)ではなく,全く異なるパロディウォッチであることが明確となっている。

被請求人商品は,文字盤の本件商標のみならず,そのケース部分の裏面には漢字で「大型初号機(改)」「一流店限定」「完全非防水」等の記載がなされ(乙1,甲206),パロディウォッチに徹しており,需要者が請求人商品と出所を混同して購入することなど一切ないように使用されている。

さらに,請求人商品の100分の1〜1000分の1の廉価で販売しているがゆえに(例えば,甲65,甲200),その製造原価も桁違いに少なく,それゆえ,時計本体の質感は,FRANCK MULLERの時計とは比べものにならないものとなっている。

一方,請求人商品は,上記第3の1(2)アで請求人自身が自認するとおり,その性能,品質,価格,販売場所,販売方法等において被請求人商品とは大きくかけ離れた存在であり,取引の実情が大きく異なる。

また,上記のような請求人商品とは性能,品質,価格,販売場所,販売方法等において被請求人商品とはかけ離れているという取引の実情及び引用商標と類似しない独自の本件商標などとあいまって,被請求人商品は請求人商品とは明らかに別のものとして需要者に広く認識されている。換言すれば,ユーモアないしギャグの観点から,独自の価値あるブランドを,被請求人は独自に創作したものである。

その証左として,1本数100万円という高価な請求人商品の需要者足り得る著名人(芸能人,スポーツ選手,経済人)が次々と,請求人商品とは別物と分かりながら,被請求人商品を購入し,愛好している(乙2)。被請求人が提出した嘆願書(乙3)において,署名した著名人らは,「私(達)は,フランク三浦の時計をフランク ミュラー社の時計と間違えて購入,使用しているのはなく,両者の違いを明確に区別した上でそのユーモアを楽しんでいます。フランク三浦の時計は,フランク ミュラー社の高級時計に対する羨望の眼差しを注ぎつつ,全く異なる次元での時計の楽しみ方を与えてくれるものです。」と述べている。

したがって,被請求人商品の取引の実情を考慮しても,本件商標に対する現実の需要者の認識を考慮しても,本件商標が請求人使用商標と出所について混同を生じていないし,そのおそれもあり得ない。

なお,乙第6号証には,FRANCK MULLERの代理店であるワールド通商株式会社(甲42)の広報担当者に取材した内容が記載されているが,同担当者も,被請求人商品について「否定的にはとらえていません。フランク・ミュラー自体,業界の概念を覆す奇想天外な発想で世に出てきた時計ですから。方向性は全く違いますが...」と述べており,混同が生じるおそれがないことは明白である。

イ 本件商標が周知性を獲得していることについて

上記アのとおり,本件商標は,請求人使用商標と全く異なるものとして需要者に認識されているが,本件商標の持つ高いユーモア性が評価され,本件商標自体が需要者に広く認識されることに成功している。

被請求人商品は,著名人を含む多数の人が愛好しているのみならず,多くの雑誌やインターネット媒体で紹介され,被請求人を示すものとして周知の商標となっている。

被請求人商品は,請求人商品とは全く別の独自の価値が化体するに至っており,本件商標は,被請求人の業務と混同を生じさせるものではなく,被請求人商品の需要者もそのことを十分に認識し,請求人商品ではない点にこそ価値が見出されているのである。

ウ 小括

以上のとおり,本件商標と請求人使用商標とは非類似の商標であり,被請求人商品と請求人商品とは,取引の実情及び需要者の認識の相違,さらには,本件商標自体が独自の周知性を獲得していることからすると,本件商標が,請求人の業務と混同を生じるおそれはおよそ認められない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第19号該当性について

ア 本件商標と請求人使用商標との類似性について

本件商標と請求人使用商標とは,上記(2)イのとおり,外観,観念,称呼が大きく異なるので,両商標は,類似しない。

イ 「不正の目的」について

上記アとおり,本件商標と請求人使用商標とは,非類似の商標であり,被請求人商品と請求人商品とは,取引の実情及び需要者の認識の相違,さらには,本件商標自体が独自の周知性を獲得していることからすると,本件商標を付した商品が,請求人の業務と混同を生じるおそれはおよそ認められない。

したがって,本件商標は,請求人使用商標に化体した信用や名声,顧客吸引力が毀損されるおそれがないことは明白である。

需要者が,本件商標を理由として,引用商標に化体した信用や名声を低く考えたり(信用や名声の毀損),請求人商品を購入しなくなったり(顧客吸引力の毀損)といった事態が生じることは考え難い。すなわち,被請求人商品の品質が請求人商品より低かったとしても,それは被請求人商品であるからと需要者は理解するのであり,請求人商品の品質や名声が低くなるとは誰も考えない。

また,本件商品が付された製品はあくまでパロディウォッチであり,ジョークとして使用されるのが一般的であって,請求人商品とは着用する用途,場面が重ならない。したがって,被請求人商品があるために請求人商品の販売数が低下することもあり得ない。

さらに,請求人は,被請求人商品が請求人商品の「模倣品」であると主張する。

しかしながら,本件商標を付した商品は模倣品ではない。模倣品であれば形状,態様,質感等をどれだけ請求人商品に似せるかということが意図されるが,被請求人商品は,請求人商品とは別物となるような性能,品質,価格,販売場所,ユーモアに徹した付属説明等の販売方法があえて意図され,採用され,デザインされている。被請求人商品は,独自の価値を有する一つの商品なのであり,著名人をはじめとする多くの人に被請求人商品の価値が認められている。その独自の価値を無視して,被請求人商品に対し「模倣品」との蔑称を与える請求人の主張こそ,被請求人の名誉を不当に害するといわざるを得ない。

請求人は,本件商標が「引用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等にただ乗り」する目的があると主張する。しかし,上記(3)イとおり,本件商標は,請求人商品とは別の独自の価値を創出するものであり,引用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力をただ流用するものではない。

商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」における「ただ乗り」とは,引用商標に化体した信用,名声,顧客吸引力を,あたかも自身が引用商標の業務主体である,または,何らかの関連があるように装って流用することを指すと解される。

パロディのように,パロディの原形となった商標を連想させる程度のものは含まない(そのようなものを「不正の目的」に含むとすると,パロディとは,一般に著名な標章を原形として行われるものであるから,我が国において一切のパロディ商品が成り立たなくなる)。原形となった商標と類似しない商標を用い,原形となった商標と出所の混同が生じるおそれもないように配慮されたパロディ商品すら許されないとするのは,商標法の解釈として行き過ぎである。請求人の主張を前提とすると「パロディの目的」=「不正の目的」となってしまう。このような過剰な規制(又は過剰な周知商標の保護)は妥当ではない。

ウ 小括

以上のとおり,本件商標と請求人使用商標は,外観,観念及び称呼のいずれも相違しており,そもそも商標法第4条第1項第19号を適用する前提を欠く。また,本件商標の使用には「不正の目的」は一切認められない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。

2 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当しない。

第5 当審の判断

1 本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について

商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきである。もっとも,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうちその1において類似するものでも,他の2点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認め難いものについては,これを類似商標と解すべきではない(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。

そこで,上記の観点を踏まえて,本件商標が引用商標1ないし3と類似する商標かどうかについて以下判断する。

(1)本件商標について

本件商標は,上記第1のとおり,「フランク」の片仮名及び「三浦」の漢字を手書き風の同書,同大,等間隔に横書きしてなるもので,外観視覚上,まとまりよく一体に表されているものであって,これから生じる「フランクミウラ」との称呼は冗長なものではなく,無理なく一連のものとして称呼し得るものである。

また,「三浦(漢字)」は,日本人の一般的な姓であるほか,日本の地名を表す文字である。「フランク」は,外国人の一般的な名であるが,「率直な」程度の意味を有する英語(frank)の片仮名表記でもあるから,同様の観念も生じ得る。もっとも,両親が外国人と日本人である者が日本の姓及び外国人の名を用いる例や,日本人が外国人の名ないしは英単語と日本人の姓を組み合わせ,かつ,姓に相当する漢字を全体の構成の後半部分に用いた芸名等を用いる例が一般に知られていることからすると,本件商標からは,「フランク三浦」との名又は名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じる。

(2)引用商標について

ア(ア)証拠(甲35〜甲198)及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。

a フランク・ミュラー氏は,1991年(平成3年)にスイスのジュネーブにおいて会社を設立して,「FRANCK MULLER」の商標を用いて腕時計等の製造販売を行い,現在では,世界6か所の製作所で年間4万5千本の時計を制作し100か国以上の国で48の専門店と600以上の販売拠点を有している。

請求人は,全世界における「FRANCK MULLER」ブランドの知的財産を所有・管理することを目的とする会社であり,引用商標の商標権者である。

b 「FRANCK MULLER」ブランドは,1992年(平成4年)に日本に進出し,以後請求人使用商標を用いた時計等の販売が継続されている。平成22年から平成24年にかけてのみでも,請求人使用商標を商品「時計」に使用した広告等が数多くの雑誌に掲載されている。

請求人商品は,雑誌において「ラグジュアリー」の分野に位置付けされ(甲196),多くの商品の価格は100万円を超えている。

c 平成23年には,「FRANCK MULLER」のブランドの創設20年として,日本国内でもプレス向けパーティー等のイベントが年間約4回開催された。

(イ)以上によれば,世界的に請求人使用商標2を用いて時計が販売されるのみならず,日本国内においても,平成4年から請求人使用商標を用いて時計の販売が開始され,その後も使用が継続された結果,請求人使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,外国の高級ブランドとしての請求人商品を表示するものとして,我が国においても,需要者の間に広く認識され,周知となっていたものと認められる(被請求人も請求人使用商標の周知性を争っていない。)。

イ 引用商標1は,上記第2の1のとおり,「フランク ミュラー」の片仮名を標準文字で表してなるものであり,その構成全体から「フランクミュラー」との称呼が自然に生じる。そして,引用商標1は,周知の請求人使用商標1と同一の構成の商標であるから,これからは,請求人商品の観念が生じる。

引用商標2は,上記第2の2のとおり,「FRANCK MULLER」の欧文字を黒色で書してなるものであり,その構成全体から「フランクミュラー」との称呼が自然に生じる。そして,引用商標2は,周知の請求人使用商標2と同一の構成の商標であるから,これからは,請求人商品の観念が生じる。

引用商標3は,上記第2の3のとおり,「FRANCK MULLER REVOLUTION」の欧文字を黒色のゴシック調の書体で書してなるものであり,その構成全体から「フランクミュラーレボリューション」との称呼が自然に生じる。もっとも,引用商標3の「FRANCK MULLER」の部分は,周知の請求人使用商標2と同一の構成であるから,引用商標3からは「フランクミュラー」との称呼も生じ,請求人商品の観念も生じる。

(3)本件商標と引用商標の類否について

ア 本件商標と引用商標1の類否について

(ア)本件商標と引用商標1を対比すると,本件商標より生じる「フランクミウラ」の称呼と引用商標1から生じる「フランクミュラー」の称呼は,第4音までの「フ」「ラ」「ン」「ク」においては共通するが,第5音目以降につき,本件商標が「ミウラ」であり,引用商標1が「ミュラー」であって,本件商標の称呼が第5音目と第6音目において「ミ」「ウ」であり,語尾の長音がないのに対して,引用商標1においては,第5音目において「ミュ」であり,語尾に長音がある点で異なっている。しかし,第5音目以降において,「ミ」及び「ラ」の音は共通すること,両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にする近似音である上に,いずれも構成全体の中間の位置にあるから,本件商標と引用商標1をそれぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音「ウ」,「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう可能性が高いこと,引用商標1の称呼中の語尾の長音は,語尾に位置するものである上に,その前音である「ラ」の音に吸収されやすいものであるから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難であることに照らすと,両商標を一連に称呼するときは,全体の語感,語調が近似した紛らわしいものというべきであり,本件商標と引用商標1は,称呼において類似する。

他方,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成からなるのに対し,引用商標1は片仮名のみの構成からなるものであるから,本件商標と引用商標1は,その外観において明確に区別し得る。

さらに,本件商標からは,「フランク三浦」との名ないしは名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し,引用商標1からは,外国の高級ブランドである請求人商品の観念が生じるから,両者は観念において大きく相違する。

そして,本件商標及び引用商標1の指定商品において,専ら商標の称呼のみによって商標を識別し,商品の出所が判別される実情があることを認めるに足りる証拠はない。

以上によれば,本件商標と引用商標1は,称呼においては類似するものの,外観において明確に区別し得るものであり,観念においても大きく異なるものである上に,本件商標及び引用商標1の指定商品において,商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず,称呼による識別性が,外観及び観念による識別性を上回るともいえないから,本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。

そうすると,本件商標は,引用商標1に類似するものということはできない。

(イ)これに対し,請求人は,本件商標と引用商標1とは,いずれの商標も人名を構成要件とし,フランクとの名前を有する人名をイメージする上,本件商標中の「三浦」が一般的な日本人の名字であってもその語感と日本では一般的ではないフランクという外国の名前から続くことによって著名な時計あるいはその制作技術者であるフランク・ミュラーを連想させることから,両者は観念及び称呼が酷似する旨主張する。

確かに,上記(2)アのとおり,請求人使用商標ないしは引用商標1が,請求人商品を表示するものとして,本件商標の登録査定時に,我が国において,需要者の間に広く認識され,周知となっていたのであるから,上記(ア)のとおり,本件商標と引用商標1の称呼が類似することとあいまって,本件商標に接した需要者が,本件商標の称呼から,称呼の類似する周知な請求人使用商標ないしは引用商標1を連想することはあり得るものと考えられる。

しかしながら,本件商標は,その中に「三浦」という明らかに日本との関連を示す文字が用いられており,かつ,その外観は,漢字を含んだ手書き風の文字からなるなど,外国の高級ブランドである請求人商品を示す引用商標1とは出所として観念される主体が大きく異なるものである上に,請求人がその業務において日本人の姓又は日本の地名に関連する語を含む商標を用いていることや,そのような語を含む商標ないしは標章を広告宣伝等に使用していたことを裏付ける証拠もないことに照らすと,本件商標に接した需要者は,飽くまで本件商標と称呼が類似するものの,本件商標とは別個の周知な商標として請求人使用商標ないしは引用商標1を連想するにすぎないのであって,本件商標が請求人商品を表示すると認識するものとは認められないし,本件商標から引用商標1と類似の観念が生じるものともいえない。

したがって,請求人の上記主張は,採用することができない。

イ 本件商標と引用商標2の類否について

上記ア同様に,本件商標と引用商標2の称呼は類似するものの,観念においては大きく相違する。そして,外観についても,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成からなるのに対し,引用商標2は黒色の欧文字からなるものであるから,本件商標と引用商標2は,その外観において明確に識別し得る。

そうすると,上記アと同様の理由により,本件商標及び引用商標2が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえず,本件商標は,引用商標2に類似するものということはできない。

ウ 本件商標と引用商標3の類否について

本件商標と引用商標3の「FRANCK MULLER」の部分を対比したとしても,上記イ同様に,本件商標と引用商標3の称呼は類似するものの,観念においては大きく相違する。そして,外観についても,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成からなるのに対し,引用商標3は黒色のゴシック調の欧文字の構成からなるものであるから,本件商標と引用商標3は,その外観において明確に識別し得る。

そうすると,上記イと同様の理由により,本件商標及び引用商標3が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえず,本件商標は,引用商標3に類似するものということはできない。

(4)小括

以上によれば,本件商標は,引用商標1ないし3のいずれとも類似するとはいえない商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について

上記1(2)アのとおり,請求人使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,請求人商品を表示するものとして,我が国においても,需要者の間に広く認識され,周知となっていたものと認められる。

しかしながら,請求人使用商標1は引用商標1と同一又は類似の,請求人使用商標2は引用商標2と同一の構成からなるものであるところ,本件商標は,引用商標1及び2のいずれとも類似するとはいえない商標であることは上記1のとおりであるから,本件商標は,請求人使用商標のいずれとも類似するとはいえない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。

3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

(1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして,上記の「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。

そこで,上記の観点を踏まえて,本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」(商標法第4条第1項第15号)に該当するかどうかについて以下判断する。

(2)ア 本件商標と請求人使用商標の類似性の程度

本件商標と請求人使用商標1及び2とは,それぞれ,その称呼においては類似するものの,外観及び観念において相違することは上記1及び2のとおりである。

イ 請求人使用商標の周知著名性等

請求人使用商標は,いずれもフランク・ミュラー氏の氏名をそのまま商標としたものであるから,独創性の程度は低いものの,上記1(2)アのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,外国の高級ブランドである請求人商品を表示するものとして,我が国において,需要者の間に広く認識され,周知となっていたものである。

ウ 本件商標の指定商品と請求人商品等の関係等

本件商標はその指定商品に「時計」を含むものであるから,これは請求人使用商標が周知性を獲得した商品と同一である。また,本件商標の指定商品のうち「時計」以外の商品「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,身飾品」については,いずれも,デザインやブランド,装飾性が重視されるとともに,身に付けたり又は所持したりして用いられるものであるほか,請求人においても,指輪やネックレスが時計と共に販売されるなど(甲66,甲67),時計と共に販売される機会も多いものと認められるから,本件商標の指定商品は,請求人商品とその性質,用途,目的において関連し,また,取引者及び需要者においても共通するものと認められる。

そして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人使用商標2を付した時計が,百貨店や時計店において展示する方法により販売され,また,商品の外観を撮影した写真を付して雑誌において広告宣伝されていた(甲35〜甲196)。他方,本件商標の登録出願時及び登録査定時よりも後の事情ではあるが,被請求人商品は,インターネットで販売され,その際には,商品の外観を示す写真が掲載されている(甲200〜甲202)。

なお,請求人がその業務において日本人の姓又は日本の地名を用いた商標を使用している事実はないことは上記1(3)ア(イ)のとおりである。

エ 検討

上記アないしウによれば,請求人使用商標は,外国ブランドである請求人商品を示すものとして周知であり,本件商標の指定商品は,請求人商品と,その性質,用途,目的において関連し,本件商標の指定商品と請求人商品とでは,商品の取引者及び需要者は共通するものである。

しかしながら,他方で,本件商標と請求人使用商標とは,生じる称呼は類似するものの,外観及び観念が相違し,かつ,上記1(3)アのとおり,本件商標の指定商品において,称呼のみによって商標を識別し,商品の出所を判別するものとはいえないものである。かえって,上記ウのとおり,請求人使用商標2を付した時計が,時計そのものを展示する方法により販売がされたり,請求人商品の外観を示す写真を掲載して宣伝広告がなされていること,本件商標の登録査定時以後の事情ではあるものの,本件商標を付した被請求人商品も,インターネットで販売される際に,商品の写真を掲載した上で販売されていることに照らすと,本件商標の指定商品のうちの「時計」については,商品の出所を識別するに当たり,商標の外観及び観念も重視されるものと認められ,その余の指定商品についても,時計と性質,用途,目的において関連するのであるから,これと異なるものではない。加えて,請求人がその業務において日本人の姓又は日本の地名を用いた商標を使用している事実はないことに照らすと,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としても,本件商標を上記指定商品に使用したときに,当該商品が請求人又は請求人と一定の緊密な営業上の関係若しくは請求人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。

そうすると,本件商標が「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するものとは認められない。

(3)小括

以上によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について

上記2のとおり,請求人使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,請求人商品を表示するものとして,我が国においても,需要者の間に広く認識され,周知となっていたものと認められるものの,本件商標は,請求人使用商標のいずれとも類似するとはいえないから,本件商標が不正の目的をもって使用するものに該当するかどうかについて判断するまでもなく,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。

5 むすび

以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反して登録されたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきでない。

よって,結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。