結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2016−900363(T2016−900363/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5873267号商標(以下「本件商標」という。)は,「spacescooter」の欧文字を標準文字で表してなり,平成28年2月2日に登録出願,第28類「キックボード,キックスケーター,スケートボード,足踏みギア付きキックスクーター」を指定商品として,同年7月25日に登録査定され,同年8月12日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第1213151号商標(以下「引用商標」という。)は,「Space Scooter」の欧文字を別掲1のとおりの態様で表してなり,2014年4月15日に国際商標登録出願,第12類「Scooters [vehicles].」及び第28類「Scooters [toys].」を指定商品として,平成28年3月11日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号又は同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証から甲第27号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標について
本件商標は,「spacescooter」の欧文字を横書きしてなり,英語読みにて「スペーススクーター」の称呼を生じる。
また,本件商標は,我が国の需要者になじみの深い英単語である「space」と「scooter」の文字を結合した構成からなり,「space」は,「宇宙」,「空間」,「空所」,「間」等,複数の意味を持つ英単語であるから,全体としては直ちに特定の観念を生じない造語であるといえる。
そして,本件商標の指定商品は,第28類の「キックボード,キックスケーター,スケートボード,足踏みギア付きキックスクーター」である。
イ 引用商標について
引用商標は,別掲1のとおり,「Space Scooter」の欧文字を筆記体風の白抜き文字で横書きしてなり,その構成文字に相応して「スペーススクーター」の称呼を生じる。
また,引用商標の構成において,「Space」は,「宇宙」,「空間」,「空所」,「間」等,複数の意味を持つ英単語であるから,引用商標は,全体としては,直ちに特定の観念を生じない造語であるといえる。
そして,引用商標の指定商品は,第12類「Scooters [vehicles]」及び第28類「Scooters [toys]」であり,それらの日本語訳は第12類「スクーター(乗物)」及び第28類「子供用片足スクーター(おもちゃ)」である。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)商標について
以上を踏まえて本件商標と引用商標とを対比すると,両商標は特定の観念を生じない造語であり,観念上対比することはできない。外観においては,両商標は,大文字,小文字の差やスペースの有無の差はあるものの,全く同一の欧文字から構成されているため,外観を共通にする。さらに,両商標は「スペーススクーター」なる同一の称呼を生じる。
したがって,両商標は,外観及び称呼を共通にする類似する商標である。
(イ)商品について
本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,実際の取引の場においては,ほぼ同種の商品を示しており,前者は運動用具で後者はおもちゃという区別も一切なされていない。
キックスケーターの発展と普及を目的として設立されたNPO法人「日本キックスケーター協会」(甲3)のウェブサイトには,「日本では公式文書等で『キックスケーター』と言う総称を正式採用しています。消費者等の混乱を避けるため正しい名称を使用して下さい。『キックボード』はK2,スティックボードは『ウェッツアー』,『レーザー』『ローラーボード』『キックスクーター』はJDの商品名です。」(甲4)との記述があり,「一人乗り専用で人力によって推進させるもので,ステッキ状の操作及び制動装置が付いたもの」が,キックスケーター,キックボード,ローラーボード,キックスクーターなど,複数の異なる名称で取引されている事実がうかがえる。
実際の取引の実情をみると,国内最大級のインターネット販売サービスを提供している楽天市場やamazon,Yahooショッピング,その他の通販サイトにおいて,同種の商品が「キックスケーター」,「キックボード」,「キックスクーター」,「スクーター」等,様々な名称で販売されている事実や,一つの商品にこれらの名称が複数使用されている事実がある(甲5〜8)。また,本件商標に係る指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」は「運動用具」,引用商標に係る指定商品中「Scooters [toys]」は「おもちゃ」というようなカテゴリーに分けられて販売されているという実情もない。
このように,商取引の場において,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」は,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」と同じ商品を示すものであることから,これらの商品は,生産部門,販売部門,原材料及び品質,用途,需要者の範囲等のいずれにおいても一致する。
また,本件商標の指定商品中「スケートボード」についても,実際に取引の場では「キックスケーター」,「キックボード」,「キックスクーター」,「スクーター」と同種の商品としてリストされ,取引がなされている(甲5)。さらには,「スケートボード」が「キックボード」,「キックスケーター」の名称で取引されている事実もある(甲7)。このような取引実態から,本件商標の指定商品中「スケートボード」も,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」と,生産部門,販売部門,原材料及び品質,用途,需要者の範囲等を共通にするといえる。
以上より,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」とは,生産部門,販売部門,原材料及び品質,用途,需要者の範囲において一致する実質的に同一又は類似の商品である。
エ まとめ
以上のとおり,本件商標は,引用商標に類似し,それらの指定商品も類似するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
申立人は,オランダを拠点とするスクーターの製造販売会社である。申立人のスクーターは,デッキを前後に体重移動することで前進可能な特殊な機構を持つスクーターであり(甲10),「Space Scooter」(以下「申立人標章」という。)の名称で世界各国で販売され,子供や若者に人気を博している(甲11〜16)。日本国内での販売については,株式会社福田フィッシュが申立人の許諾を得て,2014年,すなわち本件商標の登録出願以前から「amazon」等で「Space Scooter」を販売しており(甲16〜18),通販大手「Amazon」の売れ筋ランキングにおいて,数ある同価格帯のスクーターの中から50位以内に4商品がランクインする人気ブランドである(甲27)。
加えて,2014年4月3日からは,世界的に有名なサッカー選手であるリオネル・メッシ氏(以下「メッシ氏」という。)のスポンサーとなっており(甲19〜21),申立人標章は,テレビ放送や,インターネット広告,Facebook等の多種多様なソーシャルメディアを通じて急激に知名度が上がった。メッシ氏のFacebookには申立人標章に関する記述が多数あるところ,日本のフォロワーも多く,日本の需要者の高い関心を集めている(甲22)。
また,2014年から,メッシ氏がデザイン及びプロモーションを行う「Space Scooter メッシモデル」が発売され,その人気はより高まり,これらに伴って,申立人標章は,取引者,需要者において広く浸透するに至っている(甲13,16及び20)。
最近では,「Messi Space Scooter Game」というメッシ氏が「Space Scooter」に乗って冒険するというゲームが日本を含む世界中で発売され(甲23〜26),申立人標章の知名度は現在もなお高まる一方である。
以上のとおり,申立人標章は,申立人の商品を表示するものとして広く一般に知られているところ,本件商標と申立人標章は,その外観及び称呼において共通し,類似する。そして,上記(1)で述べたとおり,本件商標の指定商品は,申立人標章に係る商品「スクーター」と実質的に同一又は類似するから,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
加えて,申立人標章の周知,著名性のため,本件商標がその指定商品について使用された場合には,それがあたかも申立人に係る商品,もしくは,申立人と経済的,組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると,取引者,需要者において,誤認混同を生じる蓋然性が非常に高いものである。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人標章の周知,著名性,商標の類否について
上記(2)のとおり,申立人標章が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人に係る商品「スクーター」を示すものとして日本国内又は外国における需要者に広く認識されており,また,本件商標は,申立人標章とは,その外観及び称呼において共通し,類似する。
イ 不正の目的で使用するものであることについて
上記(2)のとおり,申立人は申立人標章を継続的に使用し続け,特に2014年からはメッシ氏のスポンサーとしてその知名度が急激に高まった結果,本件商標の登録出願時点で既に申立人に係る商品「スクーター」を示すものとして広く知られていた。
これに対し,本件商標権者が,本件商標の使用を開始した時期は不明である。
しかしながら,上記(1)及び(2)で述べたとおり,本件商標に係る指定商品と,申立人標章に係る商品「スクーター」とは,実質的に同一又は類似の商品であり,これらを扱う本件商標権者と申立人とは同業者といえる。
そして,本件商標は,周知,著名で,かつ造語からなる申立人標章を構成する欧文字をそのまま一連に表したにすぎない。同業者でありながら,そのような商標を,申立人標章とは全く関係なく偶然の一致で採択するなどということはあり得ず,本件商標権者は周知,著名である申立人標章を熟知した上で,申立人標章の周知,著名性へフリーライド(ただ乗り)するという不正の目的をもって,本件商標の登録出願を行ったことは明らかである。
ウ まとめ
以上のとおり,本件商標は,日本国内又は外国における周知,著名な申立人標章に類似する商標であって,不正の目的をもって使用するものであることから,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
当審において,平成29年4月20日付けで,本件商標は,その指定商品中,第28類「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」については,商標法第4条第1項第11号に該当するとして,別掲1から5を示した上で,商標権者に対し取消理由を通知したところ,その要旨は以下のとおりである。
(1)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標は,「スペーススクーター」の称呼を共通にし,両商標の構成文字「space」及び「scooter」並びにその語順を共通にするため,全体として外観上の印象は近似したものとなり,それぞれの構成文字から生じる語意において印象を共通にするものである。そのため,両商標の称呼,外観及び観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は相紛れるおそれのある類似する商標といえる。
(2)本件商標と引用商標の指定商品の類否
本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,通常同一営業主により製造,販売されており,商品の品質(構造及び使用方法)並びに用途も共通するもので,いずれもこれらの乗り物に興味を有する一般消費者を需要者とするものであるから,これらを総合的に考察すれば,これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるものと認められるから,両商品は類似すると判断するのが相当である。
(3)まとめ
本件商標と引用商標は類似する商標であって,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」は,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」と類似するものであるから,本件商標は,その指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」については,商標法第4条第1項第11号に該当する。
本件商標権者は,上記4の取消理由に対して,指定した期間内に意見を述べていない。
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性
ア 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標について
本件商標は,上記1のとおり,「spacescooter」の欧文字を標準文字で表してなるところ,その構成中「space」の文字は「空間,宇宙空間」を意味する英語として,「scooter」の文字は「小型オートバイの一種。子供が片足を乗せもう一方の足で地面をけり,滑走して遊ぶ小型のハンドル付きの車。」の意味を有する英語として,いずれも我が国で親しまれているが(参照「広辞苑 第6版」岩波書店),両語を結合しても成語を構成するものではない。そのため,本件商標は,その構成文字に相応して「スペーススクーター」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(イ)引用商標について
引用商標は,別掲1のとおり,「Space Scooter」の欧文字を筆記体の籠字で表してなるところ,その構成中「space」及び「scooter」の文字は,それぞれ上記(ア)に記載のとおりの意味を有する英語として,いずれも我が国で親しまれているが,引用商標の構成全体として直ちに特定の意味合いを有する語を表示したものとは認識できない。しかし,これら構成文字は,同じ書体,大きさで,1字分の字間を空けながらも,連続して表されていることから,構成上まとまりのよい印象を与えるため,引用商標はその構成全体をもって一連一体の商標であるものと認識,理解されるというのが相当である。そのため,引用商標は,その構成文字に相応して「スペーススクーター」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(ウ)本件商標と引用商標の比較
上記(ア)及び(イ)を踏まえると,本件商標と引用商標は,「スペーススクーター」の称呼を共通にし,両商標の構成文字「space」及び「scooter」並びにその語順も共通にするため,全体として外観上の印象は近似したものとなり,それぞれの構成文字から生じる語意においては印象を共通するものである。そのため,両商標の称呼,外観及び観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は相紛れるおそれのある類似する商標といえる。
イ 本件商標と引用商標の指定商品の類否
(ア)本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」について
a 「キックボード」とは,「スティック状のハンドルと小さな車輪のついた細長い板。立って乗り,片足で地面を蹴って進む。」(前掲広辞苑)のことである。「キックボード」は「キック・スケーター,キックスクーターなどさまざまな名称でよばれる」こともあるため(別掲2),「キックボード」と「キックスケーター」は同種の商品であると理解できる。
b 「キックスケーター」とは,「スティック状のハンドルが付いた小型のスケート・ボードのような乗り物。片足をボードの上に乗せ,もう一方の足で地面を蹴って進む。」のことであり(別掲2),上記aのとおり,「キックボード」と「キックスケーター」は同種の商品であると理解できる。また,キックスケーターの安全基準の制定などの活動を行う「特定非営利活動法人(NPO法人)日本キックスケーター協会」のウェブサイトでは,「日本では公式文書等で『キックスケーター』と言う総称を正式採用しています。」(甲4)との記載もある。
c 「キックスクーター」の語は,「特定非営利活動法人(NPO法人)日本キックスケーター協会」のウェブサイトにおいて,「『キックスクーター』はJDの商品名です。」(甲4)の記載があること,商品「キックボード」又は「キックスケーター」の実際の取引においては,「キックスクーター キックボード」又は「送料無料 キックボード キックスケーター キックスクーター」(甲7,3頁)などの表示とともに,「キックボード」又は「キックスケーター」に相当する商品の写真が掲載されていることからすれば,「キックスクーター」の語は,「キックボード」又は「キックスケーター」と同種の商品を指称するものとして取引上用いられているものということができる。
そうすると,本件商標の指定商品中「足踏みギア付きキックスクーター」は,「キックボード」や「キックスケーター」とは同種の商品であって,「足踏みギア付き」のものということができる。
(イ)引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」について
「scooter」の語は,「(ハンドル付き子供用)スクーター《片足を乗せ他の足でけって走る》」(「ジーニアス英和辞典 第5版」(大修館書店,2014年12月25日発行))の意味を有する英語であり,具体的には「子供が片足を乗せもう一方の足で地面をけり,滑走して遊ぶ小型のハンドル付きの車」(前掲広辞苑)のことである。そして,「toys」の語は,「おもちゃ」の意味を有する英語として我が国でも親しまれている(前掲ジーニアス英和辞典)。
そうすると,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,「子供が片足を乗せもう一方の足で地面をけり,滑走して遊ぶ小型のハンドル付きの車(おもちゃ)」を指称するものということができる。
(ウ)本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」の類否について
a 商品の品質及び用途
本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」及び引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,上記(ア)及び(イ)を踏まえると,それぞれ製造者や販売者により名称の相違があるとしても,それぞれの商品は,(a)スティック状のハンドルがついた,(b)小さな車輪の付いた乗り物で,(c)片足で蹴って進むもの,というその主たる特徴を共通にするものであり,商品の品質(構造及び使用方法)並びに乗り方が似通った乗物という点において用途を共通にする。両者の相違点としては,前者には「足踏みギア付き」などの多少の構造上の付加があったり,前者は特に利用者の年齢を問わないものであるのに対し,後者は主に子供用であるという点に差異があるが,上記の共通点に大きな影響を与えるほどの差異ではない。
そうすると,両商標の上記指定商品は,その品質(構造及び使用方法)並びに用途を共通にするものである。
b 生産部門,販売部門
「楽天市場」,「Amazon.co.jp」,「Yahoo!ショッピング」及び「ヨドバシ.com」のインターネット上の通信販売サイトにおいて,上記a(a)から(c)の特徴を有する乗物は,「キックボード」,「キックスケーター」,「キックスクーター」又は「スクーター」などの名称で販売されている(甲5〜8)。
また,当審における職権調査によれば,「JDRAZOR」,「マイクロスクーター・ジャパン」,「ラングス ジャパン」のウェブサイトの記載からは,上記特徴を有する乗物は,子供用から大人用に至るまでタイプ別又はサイズ別に商品ラインナップが取りそろえられ,同一の営業主により製造又は販売されていることがうかがえる(別掲3〜5)。
そうすると,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,子供用又は大人用とで製造者又は販売者が大きく変わることはなく,生産又は販売部門を共通にする場合も少なくない。
c 需要者の範囲
本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,後者は主に子供用のものであるのに対し,前者は大人用の製品も含む点で相違するものの,子供用のものとしては需要者層を共通にし,いずれもこれらの乗り物に関心を有する一般消費者である点で,その需要者を共通にする。
d 両商品の類否
上述のとおり,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,通常同一営業主により製造,販売されており,商品の品質(構造及び使用方法)並びに用途も共通するもので,いずれもこれらの乗り物に興味を有する一般消費者を需要者とするものであるから,これらを総合的に考察すれば,これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるものと認められるから,両商品は類似するものと判断するのが相当である。
(エ)本件商標の指定商品中「スケートボード」と引用商標の指定商品の類否について
a 「スケートボード」とは,「スポーツ用具の一種。平地や斜面を滑走するため,足を乗せる板に車輪をつけたもの。滑走しながら,回転などの技を競う。」(前掲広辞苑)のことであり,「細長い厚板に4個の車輪を付けたもの。」(「大辞泉 第2版」小学館,2012年発行)である。
b 引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,上記(イ)のとおり,「子供が片足を乗せもう一方の足で地面をけり,滑走して遊ぶ小型のハンドル付きの車(おもちゃ)」を指称するものということができる。
c 本件商標の指定商品中「スケートボード」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」を比較すると,いずれも車輪のついた車である点では共通するものの,ハンドルの有無という構造上の差異があり,「スケートボード」は平地や斜面を滑走するためのスポーツ用具であるのに対し,「Scooters [toys]」は片足で地面を蹴って滑走して遊ぶおもちゃである点で,使用方法及び用途においても差異がある。そうすると,両商標は,その品質(構造及び使用方法)並びに用途において相違するというべきである。
また,上記のようにスポーツ用品とおもちゃの間では,一般的には生産部門や販売部門,そして需要者の範囲は異なるものと理解でき,その他,それらの共通性を示す具体的な証拠は見いだせない。
d 申立人は,インターネット通信販売サイトである「楽天市場」や「YAHOO!ショッピング」(甲5)において,「スケートボード」も「スクーター」と同種の商品として取引されている旨を主張するが,甲第5号証においては,「【楽天市場】キックボード/デイリー売れ筋ランキング(1位から71位)」と題するウェブページに多数掲載された商品の中の1つに,「スケートボード」と称する商品が,スポーツ用品としてのスケートボードとは認識し得ない板状の乗物おもちゃの写真とともに掲載されているにすぎない。その他,申立人からはスポーツ用具である「スケートボード」とおもちゃである「Scooters [toys]」の一般的な製造及び流通が,同一の営業主によりなされていることなどを示す具体的な証拠の提出もないのであるから,この主張は採用できない。
e 上記を踏まえると,本件商標の指定商品中「スケートボード」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は,その品質(構造及び使用方法)並びに用途に差異があり,その他,生産部門や販売部門,需要者の範囲などの共通性は把握できないことから,これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときでも,同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれは認められず,両商品は類似するものではない。
ウ 小括
上記ア(ウ)のとおり,本件商標と引用商標は類似する商標であって,上記イ(ウ)のとおり,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」は,引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」と類似するものであるから,本件商標は,その指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」については,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
したがって,本件商標の指定商品中「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」についての登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
ただし,上記イ(エ)のとおり,本件商標の指定商品中「スケートボード」と引用商標の指定商品中「Scooters [toys]」は同一又は類似するものではないから,本件商標の指定商品中「スケートボード」についての登録は,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)引用商標の周知著名性について
ア 申立人は,申立人標章「Space Scooter」を名称とする「足踏みギア付きスクーター」(以下「申立人商品」という。)を製造,販売するオランダの会社であり,同製品は日本において2014年には代理店を通じて輸入,販売されている(甲10,15〜18)。
イ 2014年からはサッカー選手であるリオネル・メッシ氏と,スペーススクーターについて3年間のプロモーション契約をし(甲20,21,23,24,26),スペーススクーターのメッシモデルも発売され(甲13,16,20),メッシ・スペーススクーター・ゲームも発売されている(甲23,24,26)。
ウ 上記認定事実によれば,申立人商品は,日本において本件商標の登録出願前のわずか3年前からの販売や,サッカー選手を通じたプロモーション活動が確認できる程度であり,外国及び日本における販売額や販売規模,同種商品に占める市場シェア,広告宣伝の具体的手法や規模も明らかではなく,申立人標章がどの程度,需要者,取引者に知られていたのかを客観的に把握することができない。
申立人は,同製品は通販大手「Amazon」の売れ筋ランキングの50位以内に4商品がランクインする旨主張するが(甲27),そこでも39位,41位,44位,45位と上位とはいい難く,そこから直ちに申立人商品に係る周知著名性を把握することはできない。
エ 以上のとおり,申立人提出の証拠によっては,申立人標章は,申立人商品との関係において,日本及び外国の需要者,取引者の間で,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,広く知られていたものと認めることはできない。
(3)商標法第4条第1項第10号の該当性
ア 申立人標章の周知性について
上記(2)のとおり,申立人標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ということはできない。
イ 本件商標と申立人標章の類似について
本件商標と引用商標とが類似する商標であることは,上記(1)ア(ウ)のとおりであるところ,申立人標章は引用商標とは共通する綴りで「Space Scooter」の欧文字を表したにすぎないから,本件商標と申立人標章とについても同様の理由で類似する商標といえる。
ウ 本件商標の指定商品中「スケートボード」と申立人商品の類否について
本件商標の指定商品中「スケートボード」は,「スポーツ用具の一種。平地や斜面を滑走するため,足を乗せる板に車輪をつけたもの。滑走しながら,回転などの技を競う。」(前掲広辞苑)ものであり,「細長い厚板に4個の車輪を付けたもの。」(前掲大辞泉)である。
申立人商品の「足踏みギア付きスクーター」は,スティック状のハンドル及びブレーキのある,小さな2つの車輪が前後に付いた乗物で,足踏みギアの動力によって前進可能なものである(甲10)。
両商品を比較すると,いずれも車輪の付いた乗物である点で共通するものの,ハンドルの有無,車輪の数など基本的な構造に差異があり,「スケートボード」は平地や斜面を滑走するためのスポーツ用具であるのに対し,申立人商品は動力とブレーキも備えた主に移動用の乗物である点で,使用方法や用途においても差異がある。そうすると,両商品は,その品質(構造及び使用方法)並びに用途において相違するというべきである。
また,上記のようにスポーツ用品と移動用の乗物の間では,一般的には生産部門や販売部門,そして需要者の範囲は異なるものと理解でき,その他,それらの共通性を示す具体的な証拠はない。
したがって,本件商標の指定商品中「スケートボード」と申立人商品「足踏みギア付きスクーター」とは,商品の品質(構造及び使用方法)並びに用途において相違するもので,生産部門,販売部門又は需要者の範囲などの共通性も認められないから,これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときでも,同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれはないというのが相当であり,両商品は類似するものではない。
エ 小括
上記のとおり,本件商標は,申立人標章と類似するとしても,申立人標章は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ではなく,本件商標の指定商品中「スケートボード」と申立人商品は類似するものではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号の該当性
ア 上記(2)のとおり,申立人標章「Space Scooter」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品との関係において,需要者,取引者の間に広く認識されている商標ということはできない。
イ 上記(3)イのとおり,申立人標章は,我が国で親しまれた英語を組み合わせてなるため,構成全体として成語を表したものではないものの,その独創性の程度は必ずしも高くはない。
ウ 上記(3)イのとおり,本件商標「spacescooter」と申立人標章は,相互に類似する。
エ 上記(3)ウのとおり,本件商標の指定商品中「スケートボード」と申立人商品「足踏みギア付きスクーター」は,それぞれの商品の品質(構造及び使用方法)並びに用途において相違し,取引者及び需要者の範囲も一般的に共通するものではないから,非類似の商品である。
オ 上記アからエを踏まえると,申立人標章は,その独創性は高いものではなく,我が国において周知著名でもない上,本件商標の指定商品中「スケートボード」と申立人商品は,商品の品質,用途又は目的における関連性の程度並びに需要者及び取引者の共通性の程度は,いずれも高いとはいえないのであるから,本件商標と申立人標章とが類似するとしても,本件商標から,その指定商品に係る需要者,取引者をして,申立人標章を連想させるものとは言い難く,申立人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所につき混同を生じさせるおそれもない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号の該当性
ア 上記(2)のとおり,申立人標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた商標とはいえない。
イ 上記(3)イのとおり,本件商標は,申立人標章とは類似する。
ウ 本件商標の使用について,その登録出願時において,不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的などの不正の目的があったことを示す具体的な証拠は見いだせない。
エ 上記のアからウを踏まえると,本件商標と申立人標章が類似する商標であるとしても,申立人標章は日本国内又は外国における取引者,需要者の間に広く認識されておらず,本件商標は,不正の目的をもって使用をするものとも認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,その指定商品中,第28類「キックボード,キックスケーター,足踏みギア付きキックスクーター」については,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,取り消すべきものである。
また,本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については,取り消すべき理由がないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持するものとする。
よって,結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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