Trademark Appeal Case
商標の単複による類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2017−900182(T2017−900182/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5927741号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成28年6月20日に登録出願、第7類「漁業用機械器具並びにその部品及び附属品,食料加工用又は飲料加工用の機械器具並びにその部品及び附属品,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具並びにその部品及び附属品,農業用機械器具並びにその部品及び附属品,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。)及び動力機械器具の部品,ガソリンステーション用装置並びにその部品及び附属品,乗物用洗浄機並びにその部品及び附属品」、第12類「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品」及び第17類「ガスケット,管継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング」を指定商品として、平成29年1月26日に登録査定、同年3月3日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、登録第1961152号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第4296957号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第5703207号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第5780577号商標(以下「引用商標4」という。)、登録第5144076号商標(以下「引用商標5」という。)、登録第5262676号商標(以下「引用商標6」という。)、登録第4443551号商標(以下「引用商標7」という。)、登録第4385857号商標(以下「引用商標8」という。)、登録第4385858号商標(以下「引用商標9」という。)、登録第4385859号商標(以下「引用商標10」という。)、登録第4399323号商標(以下「引用商標11」という。)及び登録第2071307号商標(以下「引用商標12」という。)であり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
なお、引用商標1ないし12について、その構成及び概要は、別掲(B)及び(C)のとおりである。
3 登録異議の申立ての理由(要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1ないし7とは、その外観において、語尾の「ス」又は「S」の差異のみであり、特に精密機械の部品等に使用される場合には、小さく表示されるから、互いに紛らわしいものである。また、「S」は、複数形を表すものとして看取されるから、本件商標と引用商標1ないし11とは、観念においてほぼ同一であって、外観上直ちに、本件商標中の「ALP」が「ALPS」の単数形として認識される。さらに、本件商標より生ずる「アルプ」の称呼は、引用商標1ないし11から生ずる「アルプス」の称呼とは、語尾における弱音「ス」の有無の差異のみであるから、両者は、称呼上類似する。そして、本件商標は、「高い山」を意味し、引用商標1ないし11は、「高い山々」を意味するものであるから、単数と複数の関係にあるにすぎず、観念上ほぼ同一である。
してみると、本件商標と引用商標1ないし11とは、指定商品又は指定役務において抵触するものであるから、類似する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、1948年設立の総合電子部品メーカーであり、日本を中心に、欧州、アメリカ、アジア地域等に事業展開を行っているグローバル企業であり、1964年12月に、現在の社名に変更した。
申立人は、自動車、産業機械、家電製品、携帯電話・スマートフォン・電子計算機等の情報通信機器、アミューズメント機器等の幅広い分野に搭載される電子部品を事業の核としており、世界各国の約2,000社に及ぶ顧客と取引をし、約40,000種類の電子部品を開発・製造販売し、商標「ALPS」(以下、便宜上「引用商標12」という。)を、その業務に係る商品「各種電子部品」について、長年にわたり使用してきた。その結果、引用商標12は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者・取引者の間で広く認識されているとともに、申立人の周知著名な略称となっており、日本有名商標集にも掲載されている。また、引用商標12は、防護標章の基礎となっている。
よって、引用商標12は、本件商標の登録出願時には、我が国において、周知著名なものであったといえる。
してみると、本件商標が、その指定商品について使用されると、あたかも申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の誤認・混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中、第7類「全指定商品」及び第12類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は、前記1のとおり、「アルプ」の文字と「ALP」の文字を二段に横書きしてなるものであるところ、該文字は、ほぼ同じ大きさの文字を上段と下段にそれぞれ3文字ずつ横書きし、外観上、構成全体がまとまりよく一体的に表されており、上段の片仮名部分が欧文字部分の読みを特定したものと理解されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「アルプ」の称呼を生ずるものである。また、「ALP」の語は、英語の辞書によれば、「(特に、スイスの)高山」(新英和中辞典第5版(研究社))の意味を有するものであることが認められるが、我が国においては、さほど馴染みのある語ではなく、本件商標の指定商品を取り扱う分野の取引者・需要者が、その意味を直ちに理解するものとは認め難いところであって、特定の語義を有しない造語を表したと理解するとみるのが相当であるから、特段の観念を有しないものと認めることができる。
イ 引用商標1ないし11
(ア)引用商標1ないし5は、別掲(B−1)及び(B−2)のとおり、セリフ体で表した「ALPS」の文字を横書きにしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「アルプス」の称呼及び「アルプス山脈」の観念を生ずるものと認める。
(イ)引用商標6は、別掲(B−3)のとおり、図形と「ALPS」の文字を組み合わせた構成からなるものであるところ、その構成中の図形部分は、特定の称呼・観念を生ずるものではないから、これに接する取引者・需要者は、「ALPS」の文字部分を捉えて商品の取引に当たるとみるのが相当である。
したがって、引用商標6は、「ALPS」の文字部分に相応して、「アルプス」の称呼及び「アルプス山脈」の観念を生ずるものと認める。
(ウ)引用商標7は、別掲(B−4)のとおり、やや図案化して表した「アルプス」の片仮名を横書きしてなるものであるから、これより、「アルプス」の称呼及び「アルプス山脈」の観念を生ずるものと認める。
(エ)引用商標8ないし11は、別掲(B−5)のとおり、やや図案化して表した「アルプス」の片仮名と普通の活字体で表した「電気株式会社」の文字を横一連に書してなるものであるところ、その構成中の「アルプス」の片仮名部分は、他の文字に比べ、やや太字で大きく表されているばかりか、後記(2)のとおり、申立人の業務に係る商品「電子部品」を表示するものとして著名といえる「ALPS」(引用商標12)の片仮名表記と認められるから、該文字は、看者の注意を強く引くものといえる。
そうすると、引用商標8ないし11は、その構成文字全体に相応して、「アルプスデンキカブシキガイシャ」の称呼、若しくは、会社の種類を表す「株式会社」の文字部分を省略した場合の「アルプスデンキ」の称呼を生ずるほか、「アルプス」の片仮名部分に相応して、単に「アルプス」の称呼及び「アルプス山脈」の観念をも生ずるものと認める。
ウ 本件商標と引用商標1ないし11との対比
(ア)外観
本件商標は、前記アのとおり、構成全体をもって一つの商標を表したと把握・認識されるものであるから、引用商標1ないし11とは、外観上明らかに相違するものである。
(イ)称呼
本件商標より生ずる「アルプ」の称呼と引用商標1ないし11から生ずる「アルプス」の称呼は、末尾において「ス」の音の有無の差異を有するものであるところ、「ス」は、舌の先端を前硬口蓋に寄せて発する無声摩擦音「s」と母音「u」を結合した音で、響きの弱い音であるとしても、両称呼は、3音と4音の短い音構成よりなるものであるから、「ス」の音の有無の差異が、両称呼全体に及ぼす影響が極めて小さいということはできないこと、また、「アルプス」の称呼から「(固有名詞としての)アルプス山脈」の観念が直ちに想起されるから、特定の観念を想起させない「アルプ」の称呼とは、観念上の明確な差異も相まって、これらの称呼を聴く者にとって、相紛れることなく聴別し得るといえること、さらに、本件商標の指定商品と引用商標1ないし4及び6ないし11の指定商品は、主として、産業用機械器具や陸上等の乗物並びにその部品及び附属品等であり、また、引用商標5の指定役務も自動車の小売等役務であって、これらの商品・役務は、選択性のかなり強い部類に属するものといえるから、その需要者等は、両商標の称呼上の相違にも十分に注意を向けるといえること、などを勘案すると、両称呼は、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調、語感の相違等により、互いに紛れるおそれはないものと認める。
また、本件商標より生ずる「アルプ」の称呼と引用商標8ないし11から生ずる「アルプスデンキカブシキガイシャ」又は「アルプスデンキ」の称呼は、「アルプ」の音を共通にするとしても、「スデンキカブシキガイシャ」又は「スデンキ」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、明瞭に聴別し得るものである。
したがって、本件商標と引用商標1ないし11とは、称呼上類似するものとはいえない。
(ウ)観念
本件商標は、前記認定のとおり、造語を表したと把握・認識されるものであるから、引用商標1ないし11とは、観念上比較することはできず、したがって、観念において類似するものともいえない。
(エ)してみると、本件商標と引用商標1ないし11とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認める。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「ALPS」商標(引用商標12)の著名性について
(ア)申立人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
a.申立人は、1948年(昭和23年)に設立され、短波ラジオのバンド切り替え用の「S型ロータリースイッチ」の製造を開始し、これに「アルプス」の文字よりなる商標を使用した。その後、1964年(昭和39年)に現在の社名に変更し、1977年(昭和52年)に、日本で初めて、超小型マイクロプリンタを開発し、1983年(昭和58年)には、PC用マウスを開発して量産化するなどし、現在では、自動車、産業機械、家電製品、携帯電話・スマートフォン・電子計算機等の情報通信機器、アミューズメント機器等に搭載される約4万種類の電子部品の製造販売を主たる業務としており、これらの商品に、「ALPS」の文字よりなる商標(引用商標12)を使用している。申立人は、世界各国に約2000社の顧客を有し、申立人の2016年(平成28年)3月期の電子部品事業の売上高は、約4340億円であり、申立人グループの売上高の約56%を占める。(以上、甲14〜甲16,甲21,甲22)
b.申立人は、1961年(昭和36年)には、その発行に係るカタログに、引用商標12を表示していた(甲27)。また、1959年(昭和34年)に中央社より発行された「日本商標大事典」に、他社の商標とともに「ALPS/アルプス」の文字よりなる商標が掲載されたほか、1960年(昭和34年)から1962年(昭和37年)にかけて発行された商業雑誌にも「Alps」などの商標が掲載された(甲28の1)。さらに、引用商標12は、日本有名商標集(1998年発行:甲25)に掲載され、また、日本国周知・著名商標検索において、検索キーワードを「ALPS」と入力すると、引用商標12が選択される(甲26)。
c.申立人は、2006年(平成18年)から現在に至るまで、電気・電子関連の専門紙・雑誌やテレビ等を介して、自社の電子部品の宣伝広告活動を行った(甲28の2〜甲31)。また、申立人は、日本国内や海外で開催された展示会に、自社製品を出展し、賞を獲得するなどした(甲32〜甲36)。
(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、引用商標12は、申立人の業務に係る商品「電子部品」を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成28年6月20日)には既に、各種機械器具を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして、その著名性は、本件商標の登録査定日(平成29年1月26日)においても継続していたものと認めることができる。
イ 出所の混同について
前記アのとおり、引用商標12は、申立人の業務に係る商品「電子部品」を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の各種機械器具を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されていたことを認めることができる。
しかしながら、前記(1)認定のとおり、本件商標は、引用商標1ないし5とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、引用商標12とも非類似の商標というべきである。
してみると、本件商標に接する取引者・需要者は、引用商標12を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標をその指定商品中、本件登録異議の申立てに係る指定商品について使用しても、該商品が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものと認める。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しないものと認める。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、本件登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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