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Trademark Appeal Case

要部「キリン」の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2017−900223(T2017−900223/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5937879号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5937879商標(以下「本件商標」という。)は、「キリンプロジェクト」の文字を横書きしてなり、平成28年9月16日に登録出願、第9類「録画一体型防犯カメラ,太陽電池,電池,蓄電池,電気通信機械器具,無線通信機械器具」、第11類「照明用器具」及び第12類「荷車,手押し車,リヤカー」を指定商品として、同29年3月3日に登録査定、同年4月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下の登録商標を引用する。

(ア)登録第4376782号商標(以下「引用商標1」という。)は、「麒麟」の文字を横書きしてなり、平成10年10月7日に登録出願、第9類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年4月14日に設定登録され、その後、同22年4月20日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

(イ)登録第4417485号商標(以下「引用商標2」という。)は、「KIRIN」の文字を標準文字で書してなり、平成11年6月14日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同12年9月14日に設定登録され、その後、同22年4月20日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

(ウ)登録第4472900号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成12年4月20日に登録出願、第7類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年5月11日に設定登録され、その後、同23年5月17日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

(エ)登録第4472901号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成12年4月20日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年5月11日に設定登録され、その後、同23年5月17日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

(オ)登録第4514650号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成12年8月1日に登録出願、第5類、第9類、第10類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同13年10月19日に設定登録され、その後、同23年5月17日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

(カ)登録第5240431号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成19年6月25日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年6月19日に設定登録されたものである。

(キ)登録第5240434号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成19年6月25日に登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年6月19日に設定登録されたものである。

(引用商標1ないし7をまとめていうときは、以下「引用商標」という。)

イ 商標の類似

本件商標は、「キリン」と「プロジェクト」の2語からなるものであるところ、「キリン」の文字は、キリンホールディングス株式会社(以下「キリンホールディングス」という。)を親会社とし、その連結子会社188社、持分法適用関連会社18社によって構成されるキリングループの商品及び役務を表示するものとして、取引者・需要者の間で周知著名な商標であるから、該文字部分は、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。これに対し、「プロジェクト」は、「企画、計画」等を意味し、商品の出所識別標識としての印象は弱いものである。

してみると、本件商標は、その構成中の「キリン」の文字部分から「キリン」の称呼及び「麒麟」の観念を生ずるから、「キリン」の称呼及び「麒麟」の観念を生ずる引用商標とは、称呼及び観念において類似するものである。

ウ 商品の類似

本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と類似する。

エ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

引用商標は、キリングループの業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであり、キリングループの業務には「電気機械器具類の開発・販売」が含まれていることからすると、引用商標と類似する本件商標をキリングループの業務と関連性の高いその指定商品について使用するときは、キリングループの業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第8号該当性について

本件商標は、その構成中に、「キリン株式会社」、「キリンビール株式会社」その他のキリングループの著名な略称である「キリン」の文字を含むものであり、かつ、当該他人の承諾を得たものではない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15及び同項第8号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。

3 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 本件商標

(ア)本件商標は、前記1のとおり、「キリンプロジェクト」の文字を横書きに表してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって横一連に、外観上まとまりよく一体的に表され、その構成中の「キリン」の文字部分のみに強く印象付けられる態様のものではない。また、本件商標より生ずると認められる「キリンプロジェクト」の称呼もよどみなく称呼し得るものといえる。してみると、本件商標を外観及び称呼の面から捉えれば、構成全体として、一体不可分性の強い商標とみるのが相当である。また、本件商標中の「キリン」の文字部分は、「(a)中国で聖人の出る前に現れると称する想像上の動物。(b)最も傑出した人物のたとえ。(c)ウシ目キリン科の哺乳類。」を意味する「麒麟」の語(広辞苑第六版)を表したと理解されるところ、我が国の一般的な国民の認識の程度に照らすと、「アフリカに棲息する哺乳動物である麒麟」を表したと理解する場合が多いとみるのが相当であり、さらに、「プロジェクト」の文字部分は、「企画、研究計画」等を意味する語として、我が国の一般国民の間にもよく知られているものといえるから、本件商標は、「キリン」の語と「プロジェクト」の語を結合したと理解されるとしても、これら2語を結合することにより、親しまれた観念が生ずるものではなく、せいぜい何らかの目的をもったプロジェクトの名称を表したと理解される程度のものといえる。そうとすれば、本件商標は、構成全体をもって、一体不可分の造語の一種を表したと認識されるというべきである。

したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「キリンプロジェクト」の一連の称呼のみを生ずるものであって、特段の観念を有しないものと認める。

(イ)上記に関し、申立人は、本件商標中の「キリン」の文字部分は、キリングループの商品及び役務を表示するものとして、取引者・需要者に周知著名な商標であるから、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、これより「キリン」の称呼及び「麒麟」の観念をも生じ、引用商標と称呼及び観念において類似する旨主張する。

しかし、キリングループの使用する「KIRIN」、「キリン」、「麒麟」の各文字よりなる商標及び「麒麟」の図形商標が、主として「ビール、清涼飲料」等の飲料製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成28年9月16日)前には既に、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたことは、後記(2)のとおり、優に認め得るとしても、これらの商標が、ビールや清涼飲料等の飲料製品と何らの関連性を有しないと認められる本件商標の指定商品を取り扱う分野において、本件商標の登録査定日(平成29年3月3日)において、その取引者・需要者の間に広く認識されていた事実を認めるに足りる証拠はない。そして、前記(ア)認定のとおり、本件商標は、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識され得るものであって、他に、本件商標中の「キリン」の文字部分のみを分離・抽出して考察すべき特段の理由は見いだせない。

したがって、上記に関する申立人の主張は、理由がなく採用することはできない。

イ 引用商標

引用商標は、前記2(1)アのとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字に相応して、いずれも「キリン」の称呼及び「麒麟」の観念を生ずるものである。

ウ 本件商標と引用商標との対比

(ア)外観

本件商標と引用商標は、それぞれ前記のとおりの構成よりなるものであるから、外観上明らかに相違するものである。

(イ)称呼

本件商標より生ずる「キリンプロジェクト」の称呼と引用商標より生ずる「キリン」の称呼は、「プロジェクト」の音の有無の差異により、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、その語調・語感が著しく相違したものとなり、明瞭に聴別し得るものである。

(ウ)観念

本件商標は、特段の観念を有しないものであるから、引用商標とは、観念上比較することができない。仮に本件商標より、何らかの目的をもったプロジェクトの名称との観念を生ずる場合があるとしても、該観念は、引用商標より生ずる「麒麟」の観念とは、明確に相違するものである。

(エ)したがって、本件商標は、引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

エ 以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものと認める。

(2)商標法第4条第1項第15号について

ア 引用商標の著名性

(ア)申立人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる(なお、甲号証中の枝番を有する証拠において、枝番を特に明記しない場合は、枝番の全てを含むものである。)。

a.キリンホールディングスの前身である麒麟麦酒株式会社は、明治40年2月に設立された企業であり、その後事業の拡大をし続け、キリンホールディングス及びその連結子会社188社と持分法適用関連会社18社によって構成されるキリングループを形成し、キリンホールディングスを持株会社として、国内綜合飲料事業、オセアニア綜合飲料事業、海外その他綜合飲料事業、医薬・バイオケミカル事業、その他の事業を行っている。そのうちの国内綜合飲料事業においては、キリン株式会社(申立人)が国内綜合飲料事業の事業管理を、キリンビール株式会社がビール・発泡酒・新ジャンル・その他酒類等の製造・販売を、キリンビールマーケティング株式会社が業務用市場・量販市場での価値創造、販売マーケティング活動、ブランド価値を伝えるプロモーション開発等を、メルシャン株式会社が酒類の輸入・製造・販売を、キリンビバレッジ株式会社が清涼飲料の製造・販売を、それぞれ行っている。なお、その他の事業については、小岩井乳業株式会社が牛乳・乳製品の製造・販売を行っている。そして、キリンホールディングスの178期(平成28年1月1日〜同年12月31日)の連結売上高は、約2兆750億円であった。(以上、甲3・甲4)

b.「麒麟」の図形商標、活字体で表された「KIRIN」及び「キリン」の文字よりなる商標、引用商標1とほぼ同一の書体で表された「麒麟」の文字よりなる商標は、「日本商標名鑑」(昭和51年9月27日発行)、「日本商標名鑑’97」(平成9年10月1日発行)にそれぞれ掲載され、これらの商標の説明として、「同社(審決注:麒麟麦酒株式会社)の代表的商標として各類にわたり登録され、同社の製品であるビール(ラガービール・黒ビール・スタウト)・清涼飲料(オレンジエード・レモン・タンサン)のラベル及びびん・箱などの容器に使用されている。」と記載され、また、麒麟麦酒株式会社に関して、「販売量世界第三位のビール会社として業界をリードしている。」などと記載されている(甲5)。さらに、引用商標3〜7と同一の構成よりなる商標は、「日本有名商標集」にも掲載され、「Goods/Services」の項目には、「Beer,Whisky,Wine,Soft drink,Fruit juice,Coffee,Tea」などが記載されている(甲6)。

c.引用商標3ないし7と同一の構成からなる「KIRIN」の文字よりなる登録第4433606号の1商標及び登録第5325099号商標、ゴシック活字で表された「キリン」の文字よりなる登録第4498171号の1商標、ゴシック活字で表された「麒麟」の文字よりなる登録第4486902号の1商標、「麒麟」の図形よりなる登録第2030863号商標及び登録第4433607号商標は、第32類のビール、清涼飲料を含む商品を指定商品として出願されたものであるか又は設定登録後に指定商品を分割して、第32類のビール、清涼飲料を含む商品を指定商品としたものであり、これら商標には、防護標章登録がされており(甲8)、その中には、本件商標の指定商品と同一の商品についての防護標章登録がある(甲8の2・6)。

(イ)前記(ア)で認定した事実によれば、引用商標1と同一の構成よりなる「麒麟」の文字よりなる商標、引用商標3ないし7と同一の構成よりなる「KIRIN」の文字よりなる商標、ゴシック活字で表された「キリン」の文字よりなる商標及び「麒麟」の図形よりなる商標(これらを併せ、以下「申立人ら商標」という。)は、キリングループの業務に係る「ビール、清涼飲料」等の飲料製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日には既に、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その著名性は、本件商標の登録査定日においても継続していたものと認められる。

イ 本件商標と申立人ら商標との類似性

前記(1)で認定した本件商標と引用商標との類否判断と同様の理由により、本件商標と申立人ら商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

ウ 本件商標の指定商品と申立人ら商標が使用される商品との関連性

本件商標の指定商品は、第9類「録画一体型防犯カメラ,太陽電池,電池,蓄電池,電気通信機械器具,無線通信機械器具」、第11類「照明用器具」及び第12類「荷車,手押し車,リヤカー」である。これに対し、申立人ら商標が使用され、著名となっている商品は、「ビール、清涼飲料」等の飲料製品である。

してみると、本件商標の指定商品と申立人ら商標が使用される商品とは、商品の用途、品質、原材料等において明確に異なるばかりでなく、その生産者、流通経路、取引系統、販売場所等においても大きく異なるものであるから、関連性を有しないか、関連性が著しく乏しいというべきである。

エ 出所の混同のおそれ

前記ア認定のとおり、申立人ら商標は、キリングループの業務に係る「ビール、清涼飲料」等の飲料製品を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができるものの、前記イ及びウで認定した事実を併せ考慮すれば、申立人ら商標の著名性は、「ビール、清涼飲料」等の飲料製品と著しく異なる業種である本件商標の指定商品を取り扱う分野には及ばないというのが相当である。

してみると、本件商標に接する取引者・需要者が、申立人ら商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、該商品がキリングループ又はこれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。

オ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標と認めることはできない。

(3)商標法第4条第1項第8号について

本件商標は、前記(1)ア認定のとおり、構成全体をもって、一体不可分の商標を表したと認識されるというべきものであって、その構成中の「キリン」の文字部分のみが取引者・需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできない。すなわち、「キリン」の文字(語)は、商品「ビール、清涼飲料」等の飲料製品からひとたび切り離されたときは、その取引者・需要者は、もはやキリングループを想起することはなく、「ウシ目キリン科の哺乳類」(アフリカに棲息する哺乳動物)を意味する普通名称として把握・認識するといえるのである。

したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標には当たらないというべきであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する商標と認めることはできない。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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