Trademark Appeal Case
称呼・外観の類否と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2017−685007(T2017−685007/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件国際登録第1265797号商標(以下「本件商標」という。)は,「Monecor」の欧文字を横書きしてなり,2015年(平成27年)1月23日に国際商標登録出願,第36類,第38類及び第41類に属する別掲の役務を指定役務として,平成28年10月28日に登録査定,同年12月16日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する国際登録第867507号商標(以下「引用商標」という。)は,「Moneycorp」の欧文字を横書きしてなり,2005年(平成17年)9月12日に国際商標登録出願,第36類「Issuing of travellers’ cheques;agency for commodity futures trading;banking services;foreign currency exchange.」を指定役務として,平成19年9月14日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議申立ての理由
申立人は,本件商標の登録はその指定役務中,第36類「全指定役務」について商標法第43条の2の規定により取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証から甲第8号証を提出した。
1 商標第4条第1項第11号の該当性について
(1)他人の先願先登録商標
引用商標は,本件商標との関係において,「他人の先願先登録商標」に該当する。
(2)役務の類否
本件商標の指定役務中,第36類「Financial analysis;financial consultancy provided over multiple user network systems allowing access to financial markets and wagering services over the Internet,other global networks or via telephony(including mobile telephones);provision of financial information;information services relating to finance,provided on−line from a computer database or the Internet;financial economic analysis;financial management;financial exchange services;financial trading services;financial spread trading services;financial advice and consultancy services relating to buying and trading of financial commodities;agencies for trading of commodity futures;securities and commodities trading services;organisation of trading markets for derivative instruments;derivatives trading services;provision of financial information through a computer database relating to foreign exchange;provision of financial information relating to the stock exchange;currency trading and exchange services;on−line real−time currency trading.」は,引用商標に係る指定役務と同一又は類似するというべきである。
(3)商標の類否
本件商標と引用商標は,特定の意味を有しない造語であるから,観念上比較することができない。
次に,両商標の外観を比較すると,両者は,「Mone」と「cor」の7文字のつづりが共通しており,語頭の「M」のみが大文字で,それ以降が小文字である点や,書体が略ゴシック体である点も共通しているから,本件商標と引用商標の外観は,全体的印象が互いに紛らわしいといえる。一方,両商標は,「y」と「p」の有無が相違するものの,いずれも語中又は語尾における相違であるため,商標の識別において印象に残りにくい。むしろ,商標の識別において強く印象に残る語頭を含む前半部分「Mone」が共通している。一般に,商標の外観を明確に記憶して取り引きされる場面は多くないことから,文字の大半が共通し,特に強く印象に残る部分が共通する両商標は,時と場所を異にすると,外観が互いに紛らわしい商標であるというべきである。
称呼については,本件商標からは,「モネコー」,「モネコール」,「モネコア」等の称呼が生じ得るのに対し,引用商標からは,「モネーコープ」,「マネーコープ」等の称呼が生じ得る。これらの称呼のうち,「モネコー」と「モネーコープ」を比較すると,中間における長音及び語尾における「プ」の有無が相違するのみであり,当該長音は「ネ」にほぼ吸収されてほとんど認識されず,「プ」は語尾にあるため弱く発音される。したがって,両商標は,称呼が紛らわしく類似する場合がある。
(4)取引の実情を考慮した総合判断
ア 引用商標の指定役務は誰もが参入できる分野ではなく,また,実際の事業者の数は,一般的な商品や役務の提供業者に比べて非常に少ないものである(甲3,甲4)。ここで,飲食店や小売店のように,サービス提供者数が多い分野においては,偶然近い名前(商標)が採択されることも容易に想定でき,需要者もこれを無意識に把握しているといえる一方,引用商標に係る指定役務においては,参入が容易でない上に業者数が少ない事実は需要者も認識しており,偶然近い名前が乱立することも想定していないというべきである。このような取引の実情の下,近い名前はないであろうと無意識に思っている需要者が,外観上,9文字中7文字も共通する本件商標と引用商標を時と場所を異にして観察すると,取り違えるおそれは充分にある。
イ 今日のインターネット社会においては,視覚による情報がより重要になってきており,取引時には称呼よりも外観が重視されるといえる。先物取引においては,高齢者を狙ったトラブルが多数発生しているところ(甲5),当該役務の需要者は多くの高齢者を含むことが伺える。一般的に高齢者は,アルファベットへの馴染みが薄いことから,その称呼や観念を正確に捉えて記憶することが困難であり,外観を頼りに商標を捉えるといえる。このような取引の実情に基づくと,称呼よりも外観が重視されるというべきである。特に,本件においては,本件商標からどの称呼が生ずるかが不明瞭であるから,より一層,称呼よりも外観が重視されるといえる。また,本件商標と引用商標は,観念上比較することができない。したがって,称呼が非類似の場合があるとしても,外観が類似する以上,両商標は類似ということができる。
ウ 両商標の権利者は英国ロンドンの会社であり,平成29年4月1日現在の免許された銀行の一覧によると,英国の銀行はわずか2社しかない。このような状況で,本件商標と引用商標が「銀行業務」に使用されると,「英国の銀行『Monecor』と『Moneycorp』」のように捉えられ,紛らわしい。
エ 過去の裁判例及び審決例(甲6〜甲8)において,6文字中5文字が共通し,初めの4文字を共通する商標を別個に使用すると,需要者等は混同するおそれがある旨を述べる裁判例や,称呼において2音以上異なる商標の類否において,外観の近似性や共通性が考慮されて類似と判断した審決例があることからも,本件商標は引用商標と類似と判断されるべきである。
2 結び
以上のとおり,本件商標は,他人の先願先登録である引用商標と類似する商標であり,本件商標の指定役務は,引用商標の指定役務と同一又は類似する役務であるから,その登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,前記第1のとおり,「Monecor」の欧文字を横書きしてなるところ,当該文字は,我が国において一般的に使用されている英語の辞書等に記載されていない欧文字からなるものであるから,特定の意味合いを想起させない一種の造語として看取されるとみるのが相当である。また,一般的には,特定の意味合い又は特定の読みを想起しない欧文字からなる場合,これに接する取引者,需要者は,我が国において広く親しまれている英語風の読み又はローマ字読みに倣って称呼するとみるのが自然であるから,本件商標からは,「モネコー」,「モネコル」又は「モネコア」の称呼が生じるといえる。
そうすると,本件商標からは,「モネコー」,「モネコル」又は「モネコア」の称呼が生じ,特定の観念は生じないというのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は,前記第2のとおり,「Moneycorp」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成中の「Money」の文字部分は「金」を,「corp」の文字部分は「corporationの略」を意味する英単語(ジーニアス英和辞典第5版参照)として広く一般に親しまれていることから,引用商標は,「Money」及び「corp」の文字の結合商標であると容易に看取されるものである。
そうすると,引用商標からは,その構成文字に相応して,「マネーコープ」の称呼のみが生じ,全体として特定の観念は生じないというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否について
まず,外観については,本件商標は「Monecor」の7文字からなる一方,引用商標は「Moneycorp」の9文字からなり,文字のつづり及び文字数において差異があるから,外観において明確に区別できるものである。
次に,称呼については,本件商標から生じる「モネコー」,「モネコル」又は「モネコア」の称呼と,引用商標から生じる「マネーコープ」の称呼とを比較すると,両称呼は,その音数及び音構成において明らかな差異を有するものであるから,両商標は,称呼上聞き誤るおそれはない。
さらに,観念については,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念において相紛れるおそれはない。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのないものであり,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合的に考察すると,本件商標と引用商標は,商品の出所について誤認混同を生じるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 申立人の主張について
(1)申立人は,引用商標の指定役務への参入業者は少なく,需要者は偶然近い名前(商標)が乱立することも想定していないという取引の実情があること,インターネットにおける取引時には称呼よりも外観が重視され,また,先物取引の需要者には,アルファベットの称呼や観念より外観を頼りに商標を捉える高齢者が多く含まれるという取引の実情があることからすれば,本件商標と引用商標は,観念上比較することができず,称呼が非類似の場合があるとしても,外観が類似する以上,類似といえる旨主張する。
しかしながら,上記1(3)のとおり,本件商標と引用商標とは,外観において類似する商標とはいえないものであるから,申立人の主張は,前提において妥当とはいえない。
(2)申立人は,英国の銀行がわずか2社しか免許されていない状況において,本件商標と引用商標が「銀行業務」に使用されると,「英国の銀行『Monecor』と『Moneycorp』」のように捉えられ,紛らわしい旨主張する。
しかしながら,申立人の主張を裏付ける証拠の提出はなく,独自の見解といわざるを得ない。
(3)申立人は,過去の裁判例及び審決例を挙げ,本件についても同様に判断すべき旨主張する。
しかしながら,商標の類否判断は,当該商標の査定時において,本件の事案に即して両商標を対比することにより,個別具体的に判断されるべきものであって,過去の審決例等の判断に拘束されるものではない。
(4)したがって,申立人の上記主張は,いずれも採用できない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録は維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
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