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Trademark Appeal Case

立体商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2016−10806(T2016−10806/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第10類及び第28類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年5月18日に登録出願されたものである。その後、指定商品については、原審における平成27年10月9日付け手続補正書により、第10類「身体用マッサージ機器」、第21類「ローラー型手動式美容用マッサージローラー」及び第28類「ローラー型手動式エクササイズ用具」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、円筒形の表面にオレンジの色彩と幅の異なる複数の筋とを施した立体的形状からなるところ、該立体的形状は、本願の指定商品により採用し得る一形状を表したものと認識されるものであることから、本願商標は、単に商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当する旨主張しているが、提出された証拠によっては、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号について

(1)立体商標における商品等の形状について

商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。

しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品又は商品の包装(以下「商品等」という。)の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。

ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品等の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。

そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。

イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。

ウ さらに、商品等に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。

以上、知財高裁平成18年(行ケ)第10555号同19年6月27日判決、平成19年(行ケ)第10215号同20年5月29日判決及び平成22年(行ケ)第10253号同23年6月29日判決参照のこと。

(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について

本願商標は、別掲1のとおり、オレンジ色の横長円筒形の表面の左部分に2本の線状の溝(以下「左部2本溝」)、中央部分に5本の線状の溝(以下「中央部5本溝」)、右部分に2本の線状の溝(以下「右部2本溝」)及び横長手方向に複数の線状の溝を配した立体的形状からなるものである。

また、本願商標に係る指定商品は、前記第1のとおり、第10類「身体用マッサージ機器」、第21類「ローラー型手動式美容用マッサージローラー」及び第28類「ローラー型手動式エクササイズ用具」(以下、まとめて「マッサージローラー等」という。)であり、請求人の提出した証拠によれば、本願の指定商品は硬くなった筋膜、筋肉をローリングし、刺激を与え解きほぐすこと(筋膜リリース)やセルフマッサージをするための機能を有するものであるところ、別掲2に挙げた商品の写真のとおり、「マッサージローラー等」に一般に用いられる形状は、横長円筒形の表面に、線状の溝や凹凸の突起物を配している形状であり、このような商品が広く販売されている事実が認められる。

そうすると、「マッサージローラー等」を取り扱う業界においては、商品の機能性及び美感等の向上の観点から円筒形の表面に線状の溝や凹凸の突起物が様々な形状として施されることは一般的に行われているといえる。

以上の状況を踏まえて、本願商標に係る立体的形状を考察すると、オレンジ色の横長円筒状の表面の左部2本溝、中央部5本溝、右部2本溝及び横長手方向に複数の線状の溝を配する形状は、その指定商品である「マッサージローラー等」の機能を、よりすぐれたものにする目的で一般的に採用されているものであり、かつ、商品の美感を発揮させる目的で、指定商品を取り扱う業界において一般的に採用される形状であると認められる。

そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、その指定商品の形状として、取引者、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、それを超えて、上記形状の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとまではいえない。

したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標であることから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

2 商標法第3条第2項について

請求人は、本願商標が使用による識別力、いわゆる商標法第3条第2項の要件を具備していることを主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(ただし、甲第19号証及び甲第20号証は、欠番。)を提出している。

(1)使用による自他商品識別力の獲得について

商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、使用に係る商標及び商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、当該商品の販売数量等並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものであり、商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願に係る商標と同一であることを要するものというべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10388号同22年6月29日判決参照)。

そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて、請求人の提出した証拠及び主張を検討する。

(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について

請求人提出に係る証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 本願商標の使用実績

(ア)使用開始時期、使用期間及び使用地域

本願商標に係る立体的形状の商品(以下「本願商品」という。)について、製造元であるTrigger Point Technologies, LLC.(当時名称)と一般社団法人日本エン・スポータブル協会が日本市場での販売ライセンス契約を2011年6月1日に行っている(甲第11号証)。

また、請求人は、有名人による使用実績として、福島千里選手(ロンドン、北京オリンピック日本代表100m、200m日本記録保持者、2010年−2015年に使用)をはじめ、12名の国内外のアスリート(有名チーム含む)が本願商品を使用している写真(甲第7号証)を提出しているが、本願商品には、別掲3のとおりの構成からなる「T」の欧文字を図案化した図形(以下「T図形」という。)が付されている。

そして、使用地域として、北海道から沖縄の301件の販売店舗情報(甲第8号証)及びその販売状況を写真で提出している(甲第10号証)が、販売状況の写真中に見いだされる本願商品には「T図形」が付されている。

(イ)該当商品の生産又は販売数

請求人は、2015年6月から2016年5月までの1年間における全体の売上げ個数が、合計45,578個である旨提出しているが(甲第9号証)、本願商品の販売個数を、具体的に示す資料及びその市場占有率等を証明する客観的な証拠の提出はされていない。

(ウ)広告宣伝の方法、期間、地域及び規模

請求人は、宣伝広告として、テレビに取り上げられた機会を、2014年2月5日放送「はなまるマーケット」(TBS系列)において放送(甲第1号証及び甲第2号証)、2015年8月10日「あさチャン!」(TBS系列)において「筋膜はがし」と題して午前7時43分から午前7時52分の間、本願商品を放送(甲第3号証)、2016年6月21日「今日感テレビ」(RBK毎日放送)において「2016年上半期大HIT!&隠れHIT!商品」と題して午後2時39分から午後2時43分の間、本願商品を放送(甲第4号証)、2015年11月18日放送「バイキング」(フジテレビ系列)において「エリカ・アンギャル健康法」と題して午後12時31分から午後12時34分の間、本願商品を放送(甲第5号証)、2013年10月9日放送「TOKIOカケル」(フジテレビ系列)において「松潤がハマる健康法実演で城島悲劇」と題して午後11時30分から午後11時59分の間に本願商品について一部放送(甲第6号証)と挙げているが、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に映っている本願商品は、「T図形」が付されている。

また、製品カタログ「TRIGGERPOINT 2015−2016 Catalog」(甲第16号証)に本願商品が掲載されているが、その発行部数は不明である。

そして、その他の宣伝広告の方法、回数、期間地域及び規模についても不明である。

イ 判断

前記アの事実によれば、本願商標に係る立体的形状の商品を、製造元であるTrigger Point Technologies, LLC.(当時名称)が、一般社団法人日本エン・スポータブル協会を介し、我が国において、2011年から販売していることが認められるものの、出願人(請求人)による本願商標の使用開始時期に関する証拠は何ら提出されていない。また、その具体的な販売個数及び市場占有率等に関する客観的証拠は提出されていない。そして、国内外の有名人による使用についても証拠を提出しているもののその使用期間について、その事実を証明する客観的証拠は提出されていない。

広告宣伝については、本願商品が、テレビ番組に取り上げられているものの5件とそれほど多いものとはいえず、また、その放送範囲及び視聴率に関する客観的証拠は提出されていない。そして、製品カタログ「TRIGGERPOINT 2015−2016 Catalog」については、その発行部数については不明である。

さらに、使用されている本願商品には、「T図形」が付されており、立体形状のみにより、需要者が何人業務に係る商品であることを認識することができるといえる証拠の提出はない。

以上の実情を総合的に考慮すると、請求人の提出に係る証拠からは、本願商標の立体的形状のみをもって、請求人の業務に係る商品であることが、日本国内で広く知られているとまでは認めることはできない。

したがって、本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえず、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、本願商標の構成について「円筒面の周面に輪状に縦に左右に各2本、中央部に5本の線状の溝が設けられ、円筒面の長手方向に直線を4本均等に配した部分を円筒面に180度対称に溝が設けられた構成は、単純な構成でありながら、一定の機能を図案化したシンプルな構成になっており、単純な突起の集合とは異なる識別力のある構成になっている、また、溝の部分は凹部であるが、大部分が平面上の凸部になっていることから、指定商品により採用し得る一形状を表した立体形状であるとはいえない。」旨主張する。

しかしながら、マッサージローラー等を取り扱う分野において使用されている立体的形状が、本願商標と同じ配色及び同じ円筒形の表面に幅の異なる複数の溝を有する構成でないとしても、商品に色を配し、円筒形の表面に溝や凹凸を有する立体的形状が使用されている以上、本願商標に係る立体的形状が、本願商標の指定商品の形状を表すものとして、その取引者・需要者に認識されるというべきである。そして、上記1(1)イで述べたとおり、本願商標の指定商品の形状を表示したものである本願商標は、当該形状が多少特徴を有するものであっても、商標法第3条第1項第3項に該当するというべきであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でない。

(2)当審において行った平成29年2月17日付けの証拠調べ通知に対し、請求人は平成29年3月31日付け意見書を提出し、証拠調べ通知書で示された証拠は、本願商標を模倣して市場に出されたものであり、商標法第3条第1項第3号の該当、非該当を認定するのは、不当である旨主張する。

しかしながら、横円筒形状のデザインよりなるマッサージローラーの市場が既に多数の取引者により形成されている中では、本願商標の立体的形状と第三者の製品形状との微細な相違は単にマッサージによる機能を資することも目的としたデザインの相違にすぎない。また、請求人が他人の使用を排除するために何らかの措置を講じてきたものと認めるに足りる具体的な証拠の提出はないことから、請求人の主張は採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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