Trademark Appeal Case
産地表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−6168(T2017−6168/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「那智石」の文字を標準文字で表してなり、第19類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成28年1月28日に登録出願されたものである。
そして、その指定商品については、原審における平成28年8月23日付け手続補正書により、第19類「玉石、黒玉石、石材、鉱さい石、人造石材、石製彫刻」と補正されたものである。
2 原査定における拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『那智石』を標準文字で現してなるものであるところ、該語は、『和歌山県那智地方や三重県熊野市神川町で産する黒色緻密なケイ質粘板岩の石(材)』を意味するものであり、本願の指定商品を取り扱う業界においても、該意味を表す語として普通に使用されている事実がある。してみれば、本願商標は、これを本願の指定商品中、本願商標の文字に照応する商品について使用しても、本願商標に接する取引者・需要者に前記商品であることを認識させるにとどまるものであり、自他商品を区別するための識別標識としての機能を有さないものであって、単に商品の品質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章からなるにすぎないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「那智石」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、「那智石」の文字は、「世界第百科事典第2版」において、「なちいし【那智石】」の見出し語の下、「和歌山と三重の県境部の和歌山県那智地方や三重県熊野市神川町に産する黒色緻密なケイ質粘板岩の石材名。那智黒ともいう。三重県南牟婁群尾浜町七里御浜で採集される薄い楕円系の砂利は、河川によって運搬され海岸の波浪によって磨かれたもので、純黒色で光沢があり、敷砂利の最良質のものとして全国に有名である。内陸産の塊状のものは庭石にも用いられ、熊野市で黒碁石や硯にも加工される。かつては試金石として使用された。」(https://kotobank.jp/word/%E9%82%A3%E6%99%BA%E7%9F%B3-1191771)との記載があり、また「なちぐろ【那智黒】」の見出し語の下、「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店発行)において、「(和歌山県那智地方に産出したからいう)黒色の特に硬質な粘板岩。試金石・碁石・硯石に用い、浜の小石は庭の敷砂利とした。那智石。書言字考節用集『試金石、ツケイシ・ナチグロ』」との記載があり、「大辞林第三版」(株式会社三省堂発行)においては、「なちぐろ【那智黒】」の見出し語の下、「(1)三重県熊野市神川町から産出する黒色で緻密、堅硬なケイ質粘板岩。庭石・碁石・硯石などに用いる。(2)三重県御浜町の海岸で採取される薄い円礫。最良質の敷砂利として有名。那智石。」との記載がある。以上のとおり、辞書、事典において、「那智石」の語は、「那智黒」ともいわれているものであり、概ね「和歌山県那智地方や三重県熊野市神川町に産する黒色緻密なケイ質粘板岩、又は、三重県南牟婁群尾浜町七里御浜で採取される石材。」を意味するものとして載録されている。
そして、「那智石」といわれる石材は、辞書等に記載されている黒碁石、硯に使用されているほか、別掲に示すとおり彫刻材、石焼き芋用石、敷石等に一般に使用されている実情も認められる。
してみれば、本願の指定商品における取引者、需要者は、本願商標から「三重県熊野市神川町から産出する黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒石、又は三重県御浜町の海岸で採取される黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒石」の意味合いを容易に認識できるものである。
そうすると、「那智石」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品に使用した場合は、これに接する取引者、需要者に「三重県熊野市神川町から産出する黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石、又は三重県御浜町の海岸で採取される黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石」であることを表すものと理解、認識させるにとどまり、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、その指定商品中、「三重県熊野市神川町から産出する黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石、又は三重県御浜町の海岸で採取される黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
(2)請求人の主張について
請求人は、審判請求書及び当審において行った平成29年8月24日付け証拠調べ通知に対する同年9月21日付け意見書において、現在、「那智石」と銘打って販売されているもののほとんどが、中国産やフィリピン産の石であって、三重県南牟婁群尾浜町七里御浜海岸等で採石される本来の那智石を商品名「那智石」として販売されている事例はほとんどなく、本願の指定商品を取り扱う業界において、いまや「那智石」とは、その名の由来、古来からの用途等から、需用者にとって、「高級な石」を指すものの代名詞として使用されているのがその実態であり、「那智石」の文字が石の商品名であることを直接指し示す記載ではなく、「那智石」は、石の商品名という地位と切り離されて、「高級な石」を連想する、ある種のブランドとしての地位を確立しているべきものであることから「那智石」には自他商品識別力が備わっている旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、本願商標「那智石」が、その指定商品及びそれを取り扱う業界における取引の実情を踏まえれば、取引者、需要者に石材の一種類としての「三重県熊野市神川町から産出する黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石、又は三重県御浜町の海岸で採取される黒色緻密なケイ質粘板岩よりなる黒玉石」を表すものとして理解、認識されているのが相当であり、また、仮に請求人のいうように、本来の那智石を商品名「那智石」として販売されている事例がほとんどないとしても、あるいは、「那智石」が「高級な石」を連想する場合があるとしても、出願人(請求人)と他者との関係において、本願商標が自他商品の識別標識としての機能を生じていると認めることができる特段の事情は見いだせないから、請求人の上記主張は採用できない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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