sokuhyo

Trademark Appeal Case

「ありがとう」表現の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2017−9049(T2017−9049/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は,「ありがとうでおくるお葬式」の文字を横書きしてなり,第45類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として,平成28年5月6日に登録出願されたものである。

その後,原審における平成29年1月16日付けの手続補正書により,その指定役務は第45類に属する別掲1のとおりの役務に補正された。

2 原査定の拒絶の理由

本願商標は,「ありがとうでおくるお葬式」の文字を書してなるところ,その構成文字全体から「感謝の意をもって葬送する葬儀」程の意味合いを理解させるものであり,また,指定役務に係る葬儀や法要等を取り扱う業界において,その広告宣伝として,感謝を伝える葬儀を執り行う方針であることを表すために,感謝の意を表す挨拶語「ありがとう」の文字を用いて,「ありがとうで送るお葬式を推進しています。」,「『さよなら』より『ありがとう』で送るご葬儀を。」,又は「たくさんの『ありがとう』で送る 一般葬」等のように紹介している実情がある。

そうすると,本願商標は,これをその指定役務に使用しても,これに接する需要者は,「故人から生前にお世話になったことについて感謝の意をもって葬送する葬儀」等の意味合いを表したものと認識し,役務の提供の方針を表した宣伝広告の一種として理解するにとどまるから,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識できない商標である。

したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 当審における証拠調べ通知

当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権により証拠調べをした結果,別掲2から4に掲げる事実が認められるとして,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,その結果を請求人に通知(平成29年8月25日付け証拠調べ通知書)し,意見を求めた。

4 職権証拠調べ通知に対する請求人の意見

請求人は,上記3の通知に対して,要旨以下のとおり意見を述べた。

(1)別掲2の「感謝の気持ちを表現する又は伝える葬儀の事例」については,事例中に,請求人が提供するサービスについて触れられたものがあり(事例(2),(3)),これらが本願商標の自他役務識別力の有無の判断において,マイナスに働くものであるとは考えられない。また,その他の事例についても,それぞれどのような形式・作法等をもって提供される葬儀であるのかはいずれもはっきりとせず,役務の説明にはなっておらず,役務の特性・優位性を表すものでもないし,さらには,役務の質・特徴を簡潔に表すものであるともいえない。

「ありがとうでおくるお葬式」の文字列を使用する他人の事例は,わずか1件(事例(5))のみである。

(2)別掲3の「葬儀等に関連して『感謝』又は『ありがとう』の語を使用する宣伝文句の事例」については,そもそも,本願商標が「ありがとうでおくるお葬式」であるにも関わらず,「ありがとう」のみならず「感謝」の語までも,使用例として挙げている点に大きな違和感があるが,その使用例を見れば,それぞれ異なった意味合い,異なった態様で使用されているものであるから,本願商標の自他役務識別力を否定するとは考えられない。

(3)別掲4の「『○○で送る△△』の表現方法を採択する事例」については,これらの多くは,「花で送るお葬式」(花を使って葬儀を執り行う)や「音楽で送るお葬式」(音楽がかかっている中で葬儀を執り行う)等,その葬儀の質や特徴を明確に想起し得るものである。

一方,「ありがとうでおくるお葬式」の文字からなる本願商標は,その需要者,取引者に対し,ぼんやりと「ありがとうという気持ちをもっておくるお葬式」程度の観念を想起させることはあっても,明確な意味合いを想起させるものではない。本願商標は,「ありがとう」という商品を使用して行うものではないし,「ありがとう」という語を発しながら葬儀を行うわけでもない。「ありがとう」は,単に葬儀の参列者の心の中の気持ちを表すものであって,「ありがとうでおくるお葬式」から,いかなる形式や作法をもってなされる葬儀であるか明確に想起できるものではないので,本願商標は,全体としては明確な意味合いを想起させることのない造語商標である。

(4)「ありがとうでおくるお葬式」の文字については,請求人以外には,わずか1件程度しか同様の語の使用例がなく,また,葬儀に際し,請求人以外の第三者が当該文字を必ず採用しなければならない特段の事情が存在しない点も合わせて考慮すれば,先願主義をとる我が国の商標制度の下においては,最先の出願である,請求人の出願について,その登録が認められるべきである。

5 当審の判断

(1)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性

ア 本願商標は,「ありがとうでおくるお葬式」の文字を横書きしてなるところ,その構成中,前半の「ありがとう」の文字は「感謝の意を表す挨拶語」の意味を有する語であり,また,後半の「お葬式」の文字は「死者をほうむる儀式。葬儀。」の意味を有する「葬式」を丁寧にいう語であるから,中間にある「でおくる」の文字は,格助詞の「で」と,「葬送する」の意味を有する「送る」を平仮名で「おくる」と表記したものであるとごく自然に理解されるというべきである(「広辞苑 第6版」参照)。そうすると,本願商標は,その構成文字全体から「感謝をもって葬送する葬儀」程度の意味合いを容易に認識させる。

イ 本願商標の指定役務と関連する葬祭業界においては,故人に対する感謝の気持ちを表現する又は伝えるような葬儀を執り行うことを示す宣伝文句として,例えば「感謝で送る(おくる)お葬式(お葬儀)」,「感謝の心で送る葬儀」,「ありがとうで送るお葬式」,「感謝を伝えるお葬式」,「感謝を伝える葬儀式」,「感謝の気持ちを伝える葬儀」,「感謝をつたえる『ありがとう』のお葬式」,「“ありがとう”を伝えるお葬式」などの表示が,取引上普通に用いられている(別掲2)。

また,葬祭業界においては,「感謝」又は「ありがとう」の語を使用して,葬儀会社の企業理念,経営方針又はサービス方針を表すことが,上記の例に加えて,例えば「感謝のお葬式」,「感謝の『気持ち』を形にできるお葬式」,「ありがとうの想いが届く・・・お葬式」,「ありがとう,をとどけるお葬式」,「ありがとうが溢れる,あたたかいお葬式」,「“ありがとう”を追求したお葬式」,「いろんな“ありがとう”があるお葬式」などの表示が,取引上普通に用いられている(別掲3)。

加えて,葬祭業界においては,例えば,花にこだわった(又はたくさんの生花装飾をした)葬儀を「花で送るお葬式(葬儀)」,お金ではなく心を込めて葬送する葬儀を「心で送る御葬儀」,音楽を随所に取り入れた葬儀を「音楽で送るご葬儀」などのように,「○○でおくる(送る)△△」(○○には葬儀の主なテーマを表す語が,△△には葬儀又はそれに類する語が入る。)のような表現方法が,広告宣伝において一般的に採択されている(別掲4)。

ウ 以上を踏まえると,本願商標に接する指定役務の需要者は,その構成文字の意味合い,葬祭業界の宣伝広告における「感謝」又はその意を表す「ありがとう」の語の使用に関する取引の実情,そしてその表現方法からすれば,本願商標を「故人に対する感謝の気持ちをもって葬送する葬儀」程度の意味合いを表したものと容易に認識,理解し,単に役務の宣伝広告又は企業理念若しくは経営方針の表示をしたものとしてのみ認識,理解するというべきである。

したがって,本願商標は,自他役務の識別機能を持たない,需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきであり,商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張に対する判断

ア 請求人は,本願商標から漠然とした意味合いを想起しても,これをもって具体的な役務の質(内容,特性)又は提供の方法などを具体的に表すものではなく,本願商標は全体として特定の観念を明確に想起させない造語である旨主張するが,上記(1)のとおり,本願商標は,全体の意味内容の理解は容易であり,その構成文字や表現方法も特異なものではなく,葬祭業界における宣伝広告又は企業理念若しくは経営方針の表示として類型的に採択されているものであるから,本願商標は,全体として上記意味合いを容易に認識,理解させるというべきものであって,明確な意味合いを想起させることのない造語と看取されるものとはいえない。

イ 請求人は,別掲2の事例(2)及び(3)に掲げる「感謝でおくるお葬式」及び「感謝でおくるお葬儀」の文字の使用例は,請求人が提供するサービスに関するもので,本願商標の識別性の判断に影響しない旨主張するが,仮に当該事例が請求人本人による使用であるとしても,当該事例はこれらの文字を葬儀のコンセプト又はキャッチフレーズと明示して紹介,掲載しているのであるから,これに接する需要者が請求人の出所識別標識としてではなく,単なる葬儀のサービス内容又は宣伝文句の説明をした表示であると理解するのは極めて自然なことであり,その識別性を否定するための証拠として評価することに特段の支障はない。

ウ 請求人は,本願商標と同一の文字の他人による使用例は少なく,他人による使用例は異なった意味合い又は態様で使用されているものであるから,本願商標の識別性を否定することはできない旨を主張するが,葬祭業界においては,本願商標とつづりがすべて同一の文字の使用は限られているとしても,上記(1)のとおり,「感謝」又は「ありがとう」の語を含んだ宣伝文句などの使用の実情を鑑みれば,本願商標に接する需要者は,単に役務の宣伝広告又は企業理念若しくは経営方針の表示をしたものとしてのみ認識,理解するというべきであり,その主張は採用できない。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当し,登録することができない。

よって,結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。