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Trademark Appeal Case

周知商標の同一性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2017−900065(T2017−900065/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5900026号商標の指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての商標登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5900026号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヤクハン」の片仮名を標準文字により表してなり、平成28年6月17日に登録出願、第3類「化粧品」及び第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」を指定商品として、同年11月15日に登録査定、同月25日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標のうち第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」については、商標法第4条第1項第10号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。

1 引用商標について

申立人は、昭和22年12月に設立した主に医療用医薬品を製造販売している製薬会社であり、多種多様な外皮用殺菌消毒剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤、眼科用剤、皮ふ軟化剤など(以下「外皮用殺菌消毒剤等」という。)に商標「ヤクハン」(以下「引用商標」という。)の表示を付して長年使用を継続してきており(甲2)、業界内をはじめ医療機関では既に周知商標になっている。

なお、本件商標と引用商標は標章が同一であり、指定商品「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」中には引用商標の使用製品「外皮用殺菌消毒剤等」が含まれているので、指定商品も同一である。

2 引用商標の周知性について

甲第3号証は、申立人の製品のうち引用商標を付した製品を示す一覧であり、昭和59年(1984年)1月から現在まで長期にわたり引用商標を付した製品が市場に存在し、識別標識として引用商標が使用され続けられてきた事実がわかる。

甲第4号証は、厚生労働省告示であって、「品名と薬価」に関する通知の内容を平成22年度、同24年度、同26年度及び同28年度の掲載分のうち引用商標が載っている部分を抜粋して提示する。ここで、「薬価」があるということは、当該製品が市場に供給可能であることを示す何よりの証拠である。なお、厚生労働省の告示は厚生労働省のホームページや官報などに掲載されている。

甲第5号証は、販売可能な薬剤を掲載した刊行物、保険薬事典の抜粋であり、昭和53年4月版から平成28年8月版のものである。この保険薬事典は病院や薬局などの医療機関が薬剤を購入する際によく利用されている刊行物である。抜粋した外皮用殺菌消毒剤の欄には、申立人の引用商標を付した各種製品を数多く散見することができる。

甲第6号証は、引用商標を付した申立人の各種外皮用殺菌消毒剤等の実際に販売した製品を示す製品写真と医薬品インタビューフォーム及び製品安全データシートであり、甲第7号証は、同じく製品写真とインタビューフォームであり、甲第8号証は、同じく製品写真と製品安全データシートであり、甲第9号証は、同じく製品写真と製品情報である。なお、薬剤である外皮用殺菌消毒剤等を医療機関に販売するにあたって医薬品インタビューフォームや製品安全データシートは必要な情報として示される。

甲第10号証は、平成24年(2012年)4月から同29年(2017年)2月までの引用商標を付した各種外皮用殺菌消毒剤等を年度ごとに、かつ、個々の製品ごとに示した販売実績の一覧である。この間、年間25万本から36万本の販売実績を示している。

甲第11号証は、引用商標を付した製品ごとにどの病院や薬局などの医療機関等に販売したのかを示す詳細データである。このデータから全国津々浦々の医療機関等に引用商標を付した外皮用殺菌消毒剤等が販売され、行き渡っていることがわかる。

甲第12号証は、70%イソプロ液「ヤクハン」について、病院などの医療機関において2012年から2016年にわたって使用していたことを証明する使用実績確認書である。

甲第13号証は、平成6年(1994年)10月に北海道製薬協会が編集発行した「二十周年のあゆみ」の抜粋であり、この中で「ヤクハン製薬株式会社」の概要及び主要製品名が紹介されている。

甲第14号証の「ヤクハンQ&A」、甲第15号証の「DIAs」及び甲第16号証の「消毒剤の使用上の留意点」の各書類は、MR(医療情報担当者)が営業活動の際、病院や薬局など医療機関等に配布する参考資料であり、その中にも引用商標を付した製品が紹介されている。

3 むすび

以上提示した証拠より、引用商標は、長年にわたり継続して全国津々浦々の病院や薬局などの医療機関等に販売実績があることを勘案すれば周知商標であることは明らかであるので、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

第3 取消理由の通知

審判長は、本件商標権者に対し、本件商標は、その指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」について、商標法第4条第1項第10号に該当する旨の取消理由を平成29年7月25日付けで通知した。

第4 本件商標権者の意見

本件商標権者は、上記第3の取消理由に対し、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断

1 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について

(1)引用商標の周知性について

申立人提出の甲各号証及び申立人の主張によれば、以下の事実が認められる。

ア 申立人は、営業品目として医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、化学工業薬品を扱う製薬会社である(甲2)。

イ 申立人の製品のうち、製品ラベルに引用商標の表示がある品目で、最も古くから販売されたものは、「アクリノール液0.2%『ヤクハン』500mLガラス瓶」であり、1958年(昭和33年)8月に販売が開始された(甲3)。

ウ 保険薬事典(昭和53年(1978年)4月版総合版ないし平成28年(2016年)8月版、薬業研究会編集)には、「261 外皮用殺菌消毒剤」の項目があり、そこには、「70% イソプロ液『ヤクハン』」(甲5の11〜39)、「ハイポアルコール液2%『ヤクハン』」(甲5の25、27、29〜39)、「消毒用イソプロパノール液50%『ヤクハン』」(甲5の7〜39)及び「オキシドール『ヤクハン』」(甲5の20〜39)の記載がある。

エ 甲第6号証の1の「外皮用殺菌消毒剤」の容器の商品ラベルには、「70% イソプロ液『ヤクハン』」、「販売開始 1988年6月」及び「製造販売元 ヤクハン製薬株式会社」の記載があり、該商品の「医薬品インタビューフォーム」には、「発売年月日 1988年6月1日」の記載がある。

オ 甲第6号証の2の「外皮用殺菌消毒剤」の容器の商品ラベルには、「ハイポアルコール液2%『ヤクハン』」及び「製造販売元 ヤクハン製薬株式会社」の記載があり、該商品の「医薬品インタビューフォーム」には、「発売年月日 1997年7月11日」の記載がある。

カ 甲第8号証の2の「外皮用殺菌消毒剤」の容器の商品ラベルには、「消毒用イソプロパノール液50%『ヤクハン』」、「販売開始 1984年1月」及び「製造販売元 ヤクハン製薬株式会社」の記載がある。

キ 甲第9号証の1の「外皮用殺菌消毒剤」の容器の商品ラベルには、「オキシドール『ヤクハン』」及び「製造販売元 ヤクハン製薬株式会社」の記載があり、該商品の「製品詳細」には、「承認年月 1985年12月」及び「販売開始 1985年12月」の記載がある。

ク 申立人は、申立人の製造した「70%イソプロ液『ヤクハン』」について、500MLを2012年度は、52,780本、2013年度は、98,075本、2014年度は、110,152本、2015年度は、113,474本、18Lを2012年度は、533本、2013年度は、1,209本、2014年度は、1,360本、2015年度は、1,436本、減容容器500MLを2012年度は、45,770本、2013年度は、133,116本、2014年度は、141,280本、2015年度は、147,403本、5Lを2012年度は、1,266本、2013年度は、1,375本、2014年度は、1,635本、2015年度は、1,977本、10Lを2012年度は、1,681本、2013年度は、3,945本、2014年度は、4,082本、2015年度は、4,246本、北海道を中心とした全国各地の病院、薬局等に販売した(甲11の1)。

ケ 申立人は、申立人の製造した「ハイポアルコール液2%『ヤクハン』500ML」を2012年度は、26,981本、2013年度は、32,167本、2014年度は、36,987本、2015年度は、36,275本、北海道を中心とした全国各地の病院、薬局等に販売した(甲11の4)。

コ 申立人は、申立人の製造した「消毒用イソプロパノール液50%『ヤクハン』」について、18Lを2012年度は、1,589本、2013年度は、2,698本、2014年度は、2,869本、2015年度は、3,051本、500MLを2012年度は、32,693本、2013年度は、76,498本、2014年度は、78,608本、2015年度は、76,959本、5Lを2012年度は、715本、2013年度は、785本、2014年度は、731本、2015年度は、633本販売した(甲11の3)。

サ 申立人は、申立人の製造した「オキシドール『ヤクハン』(減容容器)500ML」を2012年度は、11,887本、2013年度は、45,275本、2014年度は、52,881本、2015年度は、52,400本、北海道を中心とした全国各地の病院、薬局等に販売した(甲11の2)。

シ 北海道をはじめ国内各地の病院等において、申立人の業務に係る商品「70%イソプロ液『ヤクハン』」は2012年〜2016年に手指・皮膚の消毒、医療機器の消毒のため使用されていた(甲12)。

(2)上記(1)により認定した事実によれば、申立人は、製薬会社であり、1958年(昭和33年)8月には製品ラベルに引用商標を付した商品を販売し、昭和53年(1978年)4月版から平成28年(2016年)8月版までの保険薬事典(甲5)には、申立人の業務に係る商品「外皮用殺菌消毒剤」(以下「申立人商品」という。)について、引用商標を使用した商品名が掲載されていた。そして、申立人商品の容器の商品ラベルには、「製造販売元 ヤクハン製薬株式会社」の記載とともに商品名と引用商標が併記されている。

また、申立人は、2012年度から2015年度の間、申立人商品のうち「70%イソプロ液『ヤクハン』」を866,795本、「ハイポアルコール液2%『ヤクハン』500ML」を132,410本、「消毒用イソプロパノール液50%『ヤクハン』」を277,829本、「オキシドール『ヤクハン』(減容容器)500ML」を162,443本、北海道を中心とした全国各地の病院、薬局等に販売したものであって(甲11の1〜4)、その需要者は、主に医療関係者であると認められる(甲12)。

以上を総合すると、引用商標は、申立人によって、申立人商品について使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、医療用薬剤の需要者の間に広く認識されていたものということができる。

(3)本件商標と引用商標との類否について

本件商標は、「ヤクハン」の片仮名を標準文字で表してなるものであり、引用商標もまた、「ヤクハン」の片仮名からなるものであるから、両商標は、「ヤクハン」の称呼を共通にするものであり、また、外観については、同一又は類似のものである。

そして、観念については、両商標は構成文字を同一にするものであるから、生じる観念に異なるところはない。

そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

(4)本件商標の指定商品と申立人商品の類否について

本件商標の指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」には、申立人商品が含まれる。

(5)上記(1)から(4)のとおり、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標に類似するものであって、その指定商品は、申立人商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

2 むすび

以上のとおり、本件商標の指定商品中、第5類「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」についての登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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