Trademark Appeal Case
周知商標との類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第2818号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「POLO SPORTS OF MANCHESTER」の文字を横書きしてなり、第14類「貴金属,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,時計」を指定商品として、平成6年3月14日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については同12年5月15日付けの手続補正書により「時計」に減縮補正されたものである。
2 当審において通知した拒絶理由の要点
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」及びサンケイマーケティング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド辞典’84ザ・ブランド」の記載によれば、次の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年ネクタイのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、巾広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立し、ポロ・ファッションズ社(以下、「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出し、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞したのをはじめ、数々の賞を受賞した。1974年に映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことから、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。その頃からその名前は我が国服飾業界においても知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる各商標(別掲参照。以下、これらをまとめて「引用商標」という。)が用いられ、これらは「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、株式会社洋品界昭和55年4月15日発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」「ポロ/Polo」の項及びボイス情報株式会社昭和59年9月25日発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」の項の記述並びに昭和63年10月29日付け日経流通新聞の記事によれば、我が国においては西武百貨店が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始したことが認められる。また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、昭和53年2月16日付け日本経済新聞(夕刊)の広告、前記「男の一流品大図鑑」、株式会社講談社昭和54年5月20日発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、株式会社チャネラー昭和54年9月20日発行別冊チャネラー「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年4月25日発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(昭和55年6月20日発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(昭和56年6月20日発行)、前記「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、株式会社講談社昭和60年6月25日発行「流行ブランド図鑑」のそれぞれにおいて、メガネについては、前記「世界の一流品大図鑑’80年版」、「ファッション・ブランド年鑑’80年版」、「男の一流品大図鑑’81年版」、「世界の一流品大図鑑’81年版」のそれぞれにおいて、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決(東京高裁平2(行ケ)183、平成3.7.11)があるほか、上記商標の周知性を認めた判決として、東京高裁平成11年(行ケ)250号、同251号、同252号、同267号、同290号(以上平成11年12月16日)、同268号、同289号(以上平成11年12月21日)、同288号(平成12年1月25日)、同298号、同299号(以上平成12年2月1日)、同192号(平成12年2月29日)がある。
以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として遅くとも本願商標の登録出願時までには既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は、現在においても継続しているというのが相当である。
一方、 本願商標は、上記のとおりの構成からなるところ、構成全体をもって常に一連一体にのみ認識されるべき格別の理由も見出し難いばかりでなく、看者の注意を強く惹く語頭部分に、取引者・需要者間に広く認識されている引用商標「Polo」と同一の綴り字からなる「POLO」の文字を有するものである。
また、本願商標の指定商品は、貴金属製のがま口及び財布、貴金属製喫煙用具、身飾品、カフスボタン、時計等を含むものであり、これらの商品と引用商標が使用されている被服類及び眼鏡類とは、共にファッションに関連した商品であって、統一ブランドの下にファッションをまとめようとする昨今にあっては少なからぬ関係を有するものといえる。
かかる実情の下に、本願商標をその指定商品に使用する場合には、本願商標は、引用商標と構成上相違する点があるとしても、時と処を別にしてこれに接する取引者、需要者は、「POLO」の文字部分に着目して、引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 拒絶理由に対する請求人の意見の要点
(1) 引用商標の著名性について
引用商標がある特定の分野で著名であることは別段否定はしない。
しかしながら、上記拒絶理由にいう書籍の多くは新聞社、出版社が、統一した基準の下に作成する書物ではなく、図鑑に一定の枠があってその枠を出展者が買うわけで、出展者の原稿をそのまま掲載した広告でしかない。上記拒絶理由には単なる広告記事に基づく内容のものしか開示されておらず、客観性を欠く資料といえる。
そして、もしそれら図鑑に商品「時計」に関して前記引用商標が使われているならば、下記の商標権(登録第1449456)の侵害となるものであり、少なくともその様な広告記事は掲載されていないはずであって、「POLO」、「ポロ」などは掲載され得ないものであるから、著名になりようがないのである。
つまり、本願の指定商品「時計」についてラルフローレン関連の会社が「ポロ」、「POLO」、「Polo」商標を使うことはない。引用商標が日本で知られる前、昭和50年10月31日出願に係る登録第1449456号商標「ポロ」(片仮名表記)(甲第6号証1〜2)が有効に存在するのであって、ラルフ・ローレン関連の会社が前記引用商標を使えば権利侵害となるものである。ラルフ・ローレン関連の会社は、商品「時計」については「ポロバイラルフローレン」(甲第14号証)商標を使うことになるのである。
商品「時計」に関しては、「ポロ」、「POLO」を含む商標が多数登録されていて(甲第6号証の1〜甲第14号証)「ポロバイラルフローレン」商標はその一つでしかない。
拒絶理由に示された判決に係る指定商品は、第21類「かばん 袋物 その他本類に属する商品」、第17類 「被服 その他本類に属する商品」、第25類「紙類、文房具類」などであって、第23類「時計 その他本類に属する商品」は平成11年(行ケ)第290号 審決取消請求事件 商標「ROYAL PRINCE POLO CLUB」に関するものであるが、該事件と本願商標は商標の構成を全く異にするもので、前記商標が「ROYAL PRINCE」部分と「POLO CLUB」部分の関連性のなさから、一連に称呼、認識されず「POLO CLUB」或いは「POLO」部分が主として認識され易い商標であるということが出来る一方、本願商標「POLO SPORTS OF MANCHESTER」は、称呼を「ポロスポーツオブマンチエスター」とし、その観念を「米国又は英国などに存在する「マンチェスターという町のポロスポーツ」とか「マンチェスター所属のポロスポーツ」という観念がでるものである。商標構成中の「OF」の存在により、本願商標は、称呼的には一連不可分に称呼され、観念的には上記意味合いを感得させるものであるから、特段、本願商標の一部を分離抽出しなければならない理由はなく、上記判決とは事案を異にするものといえる。
よって、例え引用商標が著名であっても本件審判事件に引用できるものではなく、上記審決取消請求事件の判断を本願商標について当てはめることは当を得たものとはいえない。
(2) ポロスポーツについての認識の誤りについて
本願に対する拒絶理由に引用された、判決は「ポロ」についてあまりにも不認識で、「ポロ」判断の妥当性を欠く。
つまり、東京高等裁判所の上記判決中においてはすべからく「球技としてのポロは、わが国においてはほとんどなじみのないものであることは当裁判所において顕著な事実である。」から、「ポロ」の文字を使用すると取引者・需要者はラルフ・ローレンに関係する商品と認識する蓋然性が高い、ということができる。」と判断しているが、「ポロ」、「ポロシャツ」等の語はかなり古い辞書でも、また日常使われる程度の日本語辞書(甲第2号証〜甲第5号証)において見付けることができる言葉である。
「ポロスポーツ」そのものは日本において競技大会などが開催されることは殆ど無いのであるが、「ポロ」がどのようなスポーツであるかは殆どの取引者・需要者が知っているといえる。
つまり、「ポロ」そのものは2千数百年の歴史をもつ世界的なゲームであり、日本で知られるようになったのは昭和の初期(1929年)(甲第3号証)といわれ70年以上の歴史があるのである。
また、競技方法が似ているものとして「ウオーターポロ」(水球)、「オートポロ」などの語が使われ、当然ながら「ポロ」競技に着るシャツを意味する「ポロシャツ」等の語はラルフ・ローレンがデザイナーになるずっと前から日本においては知られていたものであり(甲第3号証)、現在もスーパーマーケットの衣料品売場においては「Tシャツ」、「ポロシャツ」の看板が必ずといって良いほど有るはずである。毎日子供たちと共に買い物に行く需要者は毎日のように「ポロシャツ」、「ポロセーター」、「ポロコート」等の言葉を目にしているものであり、「ポロ」のことを何も知らずにその商品を買っているのではない。
英国は国王を頂く国であるが、チャールズ皇太子は大の「ポロ」好きであり、昔から英国のニュースがでれば「ポロ」競技が映し出されていたことはいうまでもない。
斯様に、「ポロ」競技が野球の様に日本では行われていない事をもって、一般取引者・需要者が「ポロ」について何も知らないかの如く判断する事は当を得たものとはいえない。「ポロ」及び「ポロ」の語を含む多くの言葉を知っておりそれらを截然と区別する術も知っているのである。
つまり、取引者・需要者は「ポロ」を聞いて必ずラルフ・ローレン関連企業の商品を認識するということはなく、単に衣料品について「横長四角形中に記載された「Polo」の文字や、「by RALPH LAUREN」の文字、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形からなる各商標」があれば、それはラルフ・ローレン関連企業の商品であろうと認識するだけで、「POLO」の語を含む商標であってもラルフ・ローレン関連企業の商品かそれ以外の者の商品かの判断は十分できるのである。
(3) 結論
如上の通り、本願商標は、一連不可分に称呼され、また、特定の観念を有する言葉であってわざわざ本願商標の「POLO」部分だけを抽出する理由は全くない。本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの拒絶理由は当を得た判断とはいえない
4 当審の判断
(1) 本願商標は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者がその構成中の「POLO」の文字部分に着目して、周知著名となっている引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした先の拒絶理由(上記2)は、妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見(上記3)は、以下の理由により、採用することができない。
(イ) 請求人は、「上記拒絶理由で引用する書籍の多くは、新聞社、出版社が統一した基準の下に作成する書物ではなく、出展者の原稿をそのまま掲載した広告にすぎず、客観性を欠く資料といえる」旨主張している。
しかしながら、上記書籍の多くは、各社の編集方針の下に各種商品を厳選して掲載しているものであって、単なる広告の寄せ集めでないことは、例えば、「世界の一流品大図鑑」では各種商品の紹介頁とは別に商品の広告頁が設けられていることからも明らかであるし、請求人の上記主張を裏付ける証左を見出すことはできない。
(ロ) 請求人は、「商品『時計』については登録第1449456号商標ほか、『ポロ』、『POLO』を含む商標が多数登録されており、ラルフ・ローレン関連の会社が引用商標を使用することはない」旨主張している。
しかしながら、本件は、本願商標がその指定商品に使用された場合に商品の出所について混同を生ずるか否かが問題にされているのであって、上記登録商標が存在していることや、引用商標が現実に時計に使用されているか否かは直接関係がない。
そして、上記拒絶理由に示したとおり、引用商標が周知著名となっており、引用商標が使用されている商品と本願商標の指定商品とが少なからぬ関連性を有するために、本願商標がその指定商品に使用された場合には、これに接する取引者、需要者は商品の出所について混同を生ずるおそれがあるのである。
(ハ) 請求人は、「上記拒絶理由で引用する判決は、商品及び商標の構成を全く異にするものであり、『ポロスポーツオブマンチェスター』の一連不可分の称呼、『米国又は英国などに存在するマンチェスターという町のポロスポーツ』、『マンチェスター所属のポロスポーツ』の観念を生ずる本願商標とは事案を異にし、本願商標は一部を分離抽出しなければならない理由はない」旨主張している。
しかしながら、引用商標が周知著名であること、及び被服類のみならず各種商品についても出所の混同を生ずるおそれがあることが上記の判決のいずれにおいても認定されているのである。加えて、本願商標が一連不可分にのみ認識される格別の理由があることを請求人は具体的に示していないし、上記拒絶理由に示したとおり、引用商標の周知著名性及び引用商標が使用されている商品と本願商標の指定商品との関連性からして、本願商標がその指定商品に使用された場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標の構成中の「POLO」の文字部分に着目して引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというのが相当であるから、本件の場合も上記の判決と本質において異なるところはない。
(ニ) 請求人は、「競技としての『ポロ』がどのようなものであるかは殆どの取引者・需要者が知っており、『ポロシャツ』等の語は、ラルフ・ローレンがデザイナーになるよりはるか前から日本において知られていた。取引者・需要者が『ポロ』を聞いて必ずラルフ・ローレン関連企業の商品を認識することはない」旨主張している。
しかしながら、競技としての「ポロ」が日本では殆ど行われず馴染みの薄いものであることは事実であるばかりでなく、引用商標の周知著名性及び引用商標が使用されている商品と本願商標の指定商品との関連性からすれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、これに接する取引者、需要者は競技としての「ポロ」よりはむしろ、周知著名になっている引用商標を連想、想起するというのが相当である。
(2) 以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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