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Trademark Appeal Case

著名商標と同一商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2017−900134(T2017−900134/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5921900号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5921900号商標(以下「本件商標」という。)は,「SWIFT」の欧文字を普通に用いられる態様で表してなり,2014年4月17日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づき,パリ条約第4条による優先権を主張し,平成26年10月17日に登録出願された商願2014−87717に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として,同27年9月10日に登録出願,第9類「アプリケーション開発用ソフトウェア,その他のソフトウェアアプリケーションの開発に使用されるコンピュータソフトウェア」を指定商品として,同29年1月27日に登録査定,同年2月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立てに引用する登録商標は,以下の2件であり(以下,これらをまとめて「引用商標」という。),いずれも現に有効に存続しているものである。

1 国際登録第1043456号商標(以下「引用商標1」という。)は,「SWIFT」の欧文字を普通に用いられる態様で表してなり,2010年(平成22年)5月11日に国際登録出願,第9類,第16類,第35類,第36類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成23年11月4日に設定登録されたものである。

2 国際登録第1048048号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,2009年11月16日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づいて,パリ条約第4条による優先権を主張し,2010年(平成22年)5月11日に国際登録出願,第9類,第16類,第35類,第36類,第38類,第41類及び第42類に属する国際登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成23年7月1日に設定登録されたものである。

第3 登録異議申立ての理由

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同項第8号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の3の規定により取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 商標法第4条第1項第15号について

(1)引用商標の我が国における著名性について

引用商標を構成する「SWIFT」の文字は,申立人の頭文字から構成され,申立人の略称として日本をはじめ世界中で広く知られている。申立人は,金融機関同士のあらゆる通信にクラウドサービス(オンラインシステム)を提供しており,あらゆる国際決済が申立人の業務に係るオンラインシステムを通じて行われている(甲3)。

当該オンラインシステムは,200力国以上,8,000以上の金融機関により利用されており,全世界のほぼ全ての金融機関を網羅している。申立人はこのような規模の通信サービスをグローバルに提供している唯一の存在であり,事実上独占的なサービス提供者としての地位を築いている(甲4の2)。

我が国においても,1981年の導入以後,着実にユーザーが増加し,2008年度末ではユーザー数が259に達している。当該ユーザーの中には,日本銀行や証券保管振替機構などの公的機関も含まれる(甲4の3,甲5)。

申立人は,自身の日本語版ウェブサイトや顧客向けのリーフレットにおいて,引用商標を継続的に使用している(甲6,甲7)。そして,申立人の略称「SWIFT」及びこれを日本語で表した「スイフト」の文字は,専門紙から一般紙まで幅広くそして頻繁にマスメディアに登場しており(甲8の1〜21),金融業界ではもちろんのこと,広く一般市民に認知されている。 なお,申立人は,金融業界における世界最大級の国際会議「Sibos(サイボス)」を2012年に大阪で開催しており,それに関連する報道が集中的になされた(甲8の22〜48)。

申立人の我が国における2010年から2014年までの売上は,それぞれ14,488,211ユーロ,15,046,929ユーロ,13,985,268ユーロ,13,071,991ユーロ,13,588,346ユーロである(甲9)。

これらの事実を総合的に判断すれば,引用商標は,本件商標の出願時及び登録時において,我が国において著名な商標であったということができる。

(2)本件商標と引用商標との類似性について

本件商標は,引用商標の文字部分「SWIFT」と同一の文字から構成される。そのため,本件商標と引用商標とが,称呼及び観念が共通する類似の商標であることは明らかである。

(3)本件商標の指定商品と申立人の役務との関連性

本件商標の指定商品は,前記第1のとおりである。他方,申立人の業務に係るオンラインシステムの利用に当たっては様々なソフトウェアが用いられる(甲4の4)。そのため,本件商標の指定商品と申立人の役務との間には技術的な関連性が認められる。

申立人は,ネットワーク運営や,ユーザーへのオンラインシステムの導入のアシストのために,多くの企業とパートナーシップを築いている。それらの企業は「パートナー」と呼ばれ,申立人の認定を受けた上で活動を行っているが,パートナーには,世界の名だたる企業が名前を連ねており(甲4の4),これらのパートナーと呼ばれる企業及び申立人の著名性・グローバル性を考慮すれば,本件商標がその指定商品に使用された場合,パートナーとして誤認される可能性がある。

また,「パートナー」のうち,申立人のオンラインシステムを利用するためのアプリケーションを提供する「ソリューション・プロバイダー」は,申立人の認定を受けたソフトウェアをユーザーに販売等している。そのソフトウェア製品には申立人の認定を示す「ラベル」(SwiftReady application label)が付されるところ,本件商標がその指定商品に使用された場合,申立人による認定がなされたソフトウェア製品であると誤認される可能性がある。

(4)小括

このように,引用商標の著名性,本件商標と引用商標の類似性並びに両者の商品・役務の関連性を総合的に考慮すると,本件商標が,その指定商品に使用された場合,これに接する取引者及び需要者は,申立人と何らかの関係のある営業主の業務に係る商品であるかのごとく,出所について誤認・混同を生じるおそれがあるといえる。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

2 商標法第4条第1項第8号について

本件商標を構成する「SWIFT」の文字は,申立人の著名な略称と同一であって,申立人の許諾を得たものではない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。

3 商標第4条第1項第7号について

上述のとおり,申立人は,世界中の金融機関を結ぶ重要な役割を担っている。申立人及び申立人に係る業務は,これがなければ国際金融取引は成り立たない,極めて公益性の高い組織・システムである。このような組織あるいはシステムを意味する著名な商標と同一の構成からなる本件商標は,市場に混乱を生じさせるものである。

したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害する商標として,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標および「SWIFT」の文字の周知著名性について

(1)申立人の主張及び提出した証拠によれば,以下の事実を認めることができる。

ア 申立人は,1973年に発足した,金融機関間の金融取引に関する通信を国際的に提供する組織であり,国際的な支払いメッセージの伝送サービス及び100以上の資金決済システムや証券決済システムなどにおけるネットワークを運営している(甲3,甲4の2,甲6の1〜3,甲8の1,甲8の4,甲8の6,甲8の10,甲8の21,甲8の24,甲8の33,甲8の41)。

イ 申立人の欧文字表記は,「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL」であり,「SWIFT」の文字は,申立人の欧文字表記の各単語の頭文字からなる略称と認められる(甲3,甲4の2,甲8の24,甲8の37)。

ウ 申立人に係る記事が,新聞,雑誌に掲載されているところ,該記事において申立人は,「SWIFT」又は「スイフト」と称されている。

そして,新聞,雑誌の掲載数は,2006年は1回,2008年は2回,2009年は1回,2011年は3回,2012年は27回,2013年は2回,2014年は3回,2015年は9回である(甲8)。

エ 申立人に係る業務の需要者は,世界200カ国以上8000以上の金融機関であり(甲4の2),我が国においても,2008年度末で259の金融機関が該業務の需要者となっている(甲4の3)。

オ 申立人のウェブサイトや顧客向けのリーフレットには,遅くとも2011年頃には引用商標が表示されている(甲6,甲7)。

カ 2012年10月には,申立人が主催する国際会議「Sibos(サイボス)」が大阪で開催され,国内外の金融機関や金融当局の関係者ら約6,000人が参加した(甲8の22〜48)。

キ 申立人の我が国における2010年から2014年までの売上は,2010年は,14,488,211ユーロ,2011年は,15,046,929ユーロ,2012年は,13,985,268ユーロ,2013年は,13,071,991ユーロ,2014年は,13,588,346ユーロである(甲9)。

ク 申立人に係る業務は,原則「金融機関」を対象にしており,限定的に事業法人の利用も認めているが,誰もが自由にその対象となるものではない(甲4の2)。

(2)前記(1)の事実によれば,申立人は,1973年に発足した,金融機関の金融取引に関する通信を国際的なネットワークにより提供する組織であり,引用商標は,2011年頃には申立人の略称として,又は申立人に係る業務を表示するものとして,申立人に係るウェブサイト及びパンフレット等で使用されている。

申立人に係る業務の需要者は,世界で8000以上の金融機関であり,2008年度末において,我が国でも259の金融機関が申立人に係る業務の需要者である。

また,申立人は,新聞,雑誌において取り上げられているところ,これらの記事では,申立人を「SWIFT」又は「スイフト」と称している。そして,2012年10月には申立人の主催する国際会議が,大阪で開かれ,世界中より金融機関等の関係者ら約6,000人が参加した旨が認められる。

しかしながら,申立人に係る業務の需要者は原則金融機関であり,我が国における需要者は,2008年度末で259金融機関であるところ,一般的な通信事業者の需要者に比してその数はわずかである。

そして,申立人は,申立人の主催する国際会議があった2012年には,新聞及び雑誌に27回掲載されたものの,その他の年の掲載は,年に10回を下回っており,多いものとはいえない。

さらに,申立人の提出した我が国での売上げは,申立人の作成したものであり,これを裏付ける証拠の提出はない。

そうすると,「SWIFT」の文字が「迅速な,即座の」の意味を有する親しまれた英語であって,独創的ともいえないことも併せて考慮すれば,引用商標又は「SWIFT」の文字が申立人に係る業務を表すもの又は申立人の略称として,我が国の金融機関においては,ある程度知られていると認めることはできるものの,金融機関を超えた一般の通信事業の取引者,需要者の間においてまで広く認識されていたものとまでは認めることはできないことから,引用商標又は「SWIFT」の文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国においてその周知,著名性が高いものであったとは認めることができない。

2 商標法第4条第1項第15号について

(1)本件商標と引用商標の比較

本件商標は,前記第1のとおり「SWIFT」の欧文字を普通に用いられる態様で表してなるものであり,該文字は,「迅速な,即座の」等の意味を有する親しまれた英語であるから,本件商標からは構成文字に照応して「スイフト」の称呼及び「迅速な,即座の」の観念を生ずるものである。

他方,引用商標は,前記第2のとおり「SWIFT」の欧文字からなるもの又はその構成中に「SWIFT」の欧文字を表してなるものであるから,引用商標からは本件商標と同様に「スイフト」の称呼及び「迅速な,即座の」の観念を生ずるものである。

そうすると,本件商標と引用商標の文字部分とは,同一の文字つづりの構成からなることから外観において近似し,称呼及び観念においても共通する類似の商標といえる。

(2)出所の混同のおそれについて

前記1のとおり,引用商標又は「SWIFT」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,申立人の業務を表すものとして,我が国の通信事業の一般的な取引者,需要者にまで周知であると認めることはできない。

そうすると,前記(1)のとおり,本件商標と引用商標が類似の商標であるとしても,本件商標をその指定商品について使用した場合,本件商標に接する取引者・需要者が引用商標を想起又は連想するとはいえず,本件商標の指定商品が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第8号について

「SWIFT」の文字は,前記1のとおり,申立人の略称を表示するものとして,本件商標の登録出願前より,我が国の一般の通信事業の取引者,需要者の間で著名であったとは認めることはできない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は,前記第1のとおり,「SWIFT」の欧文字を普通に用いられる態様で表してなるものであるから,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるものではないことは明らかである。

また,引用商標は,前記1のとおり,本件商標の登録査定時において,我が国において周知,著名であったということもできない。

そうすると,本件商標をその指定商品に使用しても市場に混乱を生じさせるものではない。

その他,本件商標が,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると認めるに足る証拠はない。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。

5 まとめ

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第8号及び同項第15号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。

よって,結論のとおり決定する。

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