Trademark Appeal Case
U-フコイダンの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第13725号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「U−フコイダン」の文字を横書きしてなり、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,みそ,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,食用香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、平成8年6月26日に登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、褐藻類に含まれている多糖類の一つで、抗腫瘍作用のあることが認められている『U−フコイダン』の文字を書してなるところ、近時の健康志向の高まりの中で、健康によいことを謳った食品が多数販売されている実情よりすれば、本願商標をその指定商品中『U−フコイダンを加味した商品』について使用するときは、単に商品の品質・原材料を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」と判断し、認定して本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張
本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当しない理由
(1)「U−フコイダン」が一般に不知の名称であること
イ)本願商標は、「U−フコイダン」の文字よりなるところ、たとえ「U−フコイダン」と称する褐藻類に含まれる多糖類が存するとしても、特殊専門分野の語であって、本願指定商品、ビール及び飲料の需要者である一般消費者においては、当該物質は全くその名も知られていないほど未知の範疇に属しているものである。
ロ)してみれば、本願商標は、需要者において、品質及び原材料としては理解され得ないものである。
(2)「U−フコイダン」が商品の品質及び原材料の表示たり得ないこと
イ)甲第1号証〜同第7号証に示す通り、多糖類の「U−フコイダン」は、請求人が発見し、「U−フコイダン」と命名したものであって、その製造及び応用は、請求人以外の者には実現できないものである。
以下、詳述する。
ロ)褐藻類に含まれている硫酸化多糖で、硫酸化フコースを主成分とするフコイダンは、分子量が数十万以上と非常に多いため、化学的に不安定で、その構造を保持して調製することが困難であり、未知な部分が多い。
製品への応用に関しても、そのまま利用することは難しく、また、分子量が多く、フコイダンの構造のどの部分が有効に作用するのか不明であるため、最小活性単位に分画することが望まれていた。
そこで、請求人は、フコイダンの構造と活性の関係を解明するとともに、フコイダンの自社調製、フコイダン分解酵素の探索を開始したのである。
ハ)これらの研究の結果、請求人は、フコイダンの分解酵素を開発し、これによってフコイダンの分離方法を確立することに成功し、フコイダンには2種類が存在することを発見した。
これは、硫酸化フコース・グルクロン酸・マンノースの3糖の繰り返し構造からなるグルクロン酸含有フコイダンと、ほとんど硫酸化フコースのみからなるグルクロン酸非含有フコイダンであり、請求人は、前者を「フコース硫酸含有多糖−U]すなわち「U−フコイダン」、後者を「フコース硫酸含有多糖−F]すなわち「F−フコイダン」と命名した。
この独自に発見・開発した分解酵素によってはじめて、「U−フコイダン」を調製することができるのである。
なお、これらの物質、製造方法等については、特許出願済みである(甲第7号証)。
ニ)上記の通り、「U−フコイダン」自体、請求人以外には調製できないことに加え、製品への応用は、請求人によって初めてなされた画期的なものであり、かつ「U−フコイダン」を製品へ応用するには、蓄積したノウハウが必要とされるため、事実上、唯一請求人の支配下にあり、第三者が追随できない状態にあるから、「U−フコイダン」の本願指定商品への応用は、請求人以外には実現し得ないものである。
ホ) してみれば、本願商標は、本願の指定商品について、品質または原材料の表示たり得ず、かつ、現実に本願商標が商品の品質及び原材料の表示として普通に使用されている事実も存しない。
(3)「フコイダン」が第1類「化学品」を指定商品として登録されていること
甲第8号証に示す通り、「フコイダン」商標が、多糖類そのものを含む第1類「化学品」を指定商品として登録されている事実よりみても、本願商標について物質名としての理解はないと言わざるを得ないものである。
まして、本願商標が、多糖類の「U−フコイダン」とは異質な分野の商品であり、かつ一般消費者を需要者とする本願指定商品について使用される商標であってみれば、自他商品識別機能を発揮し得ることは明白である。
(4)結論
本願商標を本願の指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、本願商標を商品の品質・原材料を表示したものと理解することはなく、むしろ特定の観念を生じない造語よりなる商品名として理解し、取引にあたるとみるのが自然である。
したがって、本願商標は、十分自他商品識別力を有し、商品の品質の誤認を生じさせるおそれもない。
4 当審の判断
本願商標は、「U−フコイダン」の文字を横書きしてなるところ、「フコイダン」とは、「海藻のヌメリ成分の一つ。フコースという糖がいくつも鎖状につながり、ところどころのフコースに硫酸基やグルクロン酸が結合した多糖類」を理解、認識させるものであることは、原審の認定と同様である(年鑑事典編集部編集「朝日現代用語・知恵蔵」2000年1月1日、朝日新聞社発行、795頁)。
しかして、1988年4月29日付け日本経済新聞の地方経済面(四国)の12頁に「□□食品、香り自慢ワカメの茶−芽株を粉末化し開発。」の見出しで、「ワカメ製品メーカー、□□食品はワカメの芽株を粉末化した製品を開発した。コンブ茶のようにお湯を入れて「わかめ茶」としても良い香りがするほか、ふりかけなどにも応用できるとしている。県内や京阪神などでの市場調査をしたうえで販売に踏み切る考え。・・・芽株はワカメの根の部分でワカメ全体の栄養源。血圧降下作用のあるアルギン酸やフコイダンなどが、通常、食用に供しているワカメの葉の部分よりはるかに多く含まれている。・・・」の記事が掲載されている。
また、1996年10月7日付け日経産業新聞の5頁に「××××大と#####、多糖使いがん転移抑制−立体構造が ”かぎ穴”役(解説)」の見出しで、「多糖類の医薬品への応用がここにきて注目されている。・・・○○○○社は多糖の一種フコイダンを経口投与すると胃かいようを防げることを見付けた。フコイダンは胃かいようを引き起こすヘリコバクター・ピロリという細菌のまわりにびっしりとまとわりつき、ピロリ菌が胃の内壁にくっつくのを防ぐ。課題もある。・・・××××大学の硫酸化多糖は食用のらん藻の一種スピルリナから、#####のフコイダンは海藻のモズクからそれぞれ抽出するなど天然物に頼っている。合成しにくい多糖を別の物質で代用する試みもある。◇◇◇◇◇大学のグループは、多糖に構造を似せたべブチドを作成し、血管内皮のかぎ穴をふさいでがん細胞の転移を抑制することに成功した。がんの転移抑制や細菌・ウイルスの感染防止などに多糖を利用する試みは今後も盛んになっていくだろう。まず基礎試験としてアルギン酸やフコイダンなど血圧降下に良いなどとされる有効成分の含有量が、季節によってどう変わるかを分析しデータを収集する。」の記事が掲載されている。
さらに、1999年1月20日付け日本経済新聞の地方経済面(九州B)の14頁に「健康成分、モズクから抽出−TTC、△△△△に技術移転。」の見出しで、「A県の第三セクター、TTCは、沖縄特産のモズクから有用物質「フコイダン」を粉末の形で抽出して量産する技術を確立し、冷凍食品卸の△△△△に技術移転した。△△△△は四月にも製造ラインを整備して、六月以降からフコイダンを利用した健康食品や医薬品の開発・販売を進めていく。TTCの民間企業への技術移転は今回が初めて。フコイダンはモズクや昆布など海藻類に含まれる物質で、胃かいようの防止や血栓予防、抗ガン作用などの効能が確認されている。粉末にすることで原料や食品への用途が広がり、食用に適さなかったくずモズクも利用できる利点がある。△△△△では技術移転を応用して、沖縄そばや菓子にフコイダンを添加した健康食品、栄養ドリンク、錠剤などの商品を企画中。一方で、フコイダンそのものを食品や医薬品、化粧品の原料として本土企業に販売することも検討している。」の記事が掲載されている。
一方、インターネットのホームページhttp://www.kigyo.co.jp/elm/elm_fucoid.htm には、「▽▽のフコイダン+3 これは素晴らしい! フコダインの持つ生理作用 フコイダンは海からの贈り物。オキナワモズクから抽出された成分で人体にとって優れた働きが明らかに成ってきております。フコダインには、体内中の有害物質の吸収を阻害・排出する作用とともに、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、抗高血圧作用などがあることが確認されています。」が掲載されている。
上記の事実よりすると、モズクや昆布など海藻類に含まれる物質(多糖類)について「フコイダン」と呼ばれるものがあり、フコイダンを原材料とする医薬品や健康食品が開発されていることが認められる。
そうとすれば、「U」が商品の品番、種類等を表示するための符号・記号として類型的に採択、使用されるアルファベットの1文字であることからして、「U−フコイダン」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品に使用しても、前記の事実より、これに接する取引者、需要者をして、「フコイダンの一種類を含有した商品」を理解、認識させるに止まり、単に商品の品質、原材料を表示するにすぎないものと認める。
請求人は、「フコイダン」が第1類「化学品」を指定商品として登録されている旨主張するが、「化学品」で登録になった時点と、現審決時とでは自他商品の識別力の判断時点が相違し、上記のように取引の実情が同じでないものであるから、前示のように判断するを相当とする。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品について使用するときは商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって取り消す理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
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