Trademark Appeal Case
称呼の類似性と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2017−685009(T2017−685009/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件国際登録第1296278号商標(以下「本件商標」という。)は,「WIEV」と「wiev」の欧文字を2段に表してなり,2016年(平成28年)2月24日にRepublic of Koreaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,同年3月17日に国際商標登録出願,第12類「Automobiles;electric cars.」を指定商品として,平成28年10月5日に登録査定,同29年1月6日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立てに引用する登録商標(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第4913872号商標(以下「引用商標1」という。)は,「MIEV」の欧文字と「ミーブ」の片仮名を2段に表してなり,平成17年2月22日に登録出願,第12類「自動車並びにその部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),乗物用盗難警報器」を指定商品として,同年12月9日に設定登録されたものである。
2 登録第5256539号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成21年4月2日に登録出願,第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品(エアクッション艇を除く。),航空機並びにその部品及び附属品,動力伝導装置,緩衝器,ばね」を指定商品として,同年8月14日に設定登録されたものである。
第3 登録異議申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の3第2項によりその登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第216号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標権者について
本件商標の商標権者は,申立人と関係のある法人ではない。
2 申立人の商標について
(1)申立人について
申立人は,昭和45年に三菱重工業株式会社から分社した自動車メーカーである。
申立人は,環境・エネルギー対策の一環として,分社前から,電気自動車の研究・開発を行ってきた。近年では,電気自動車の製造等に必要となるモーターや電池の分野における技術の発展,また,消費者の環境意識の高まり等を背景として,電気自動車の量産と,一般市場における電気自動車の販売・普及・展開を行っている。
申立人が製造・販売する電気自動車は,「Mitsubishi innovative Electric Vehicle」の頭文字からなる「MiEV」/「ミーブ」との名称を冠しており,「MiEV」/「ミーブ」の語は,下記のとおり,本件商標の国際登録時には,申立人の製造販売する自動車の名称として,需要者・取引者に広く知られていたものである。
(2)「MiEV」/「ミーブ」の使用
ア 申立人による「MiEV」/「ミーブ」シリーズの展開
申立人は,従来,電気自動車技術の研究開発を行ってきたところ,電気自動車の本格的な市場投入を目指して,既存車種である「i」をベースに「i−MiEV」(以下「申立人商品1」という。)を開発し,平成18年に発表した。そして,政府,地方公共団体,電力会社等と共同で実証走行試験を行う等した後,平成22年より,一般消費者向けの販売を開始した。さらに,「i−MiEV」の技術を活用し,平成23年には,既存車種である「ミニキャブ」をベースに開発した「MINICAB−MiEV」(以下「申立人商品2」という。)を,平成24年には,既存車種である「ミニキャブトラック」をベースに開発した「MINICAB−MiEV Truck」(以下「申立人商品3」という。)も製造・販売している(甲3。以下,申立人商品1ないし3をまとめて「申立人商品」という。)。
また,申立人は,申立人商品から家電製品等に給電するための「MiEV power BOX」を製造・販売する他,申立人商品を家庭の電力原として利活用するというコンセプト「MiEV HOUSE」を発表する等している(甲4)。
このように,「MiEV」/「ミーブ」の名称は,申立人が製造販売する自動車のシリーズの名称の一つであるとともに,電気自動車分野における様々な製品,コンセプトに付されており,申立人の商標として周知・著名である。
イ 「MiEV」/「ミーブ」シリーズの売上,広告宣伝費,販売台数について
申立人商品の売上,広告宣伝費,販売台数は,下記のとおりである。
(ア)2009年 売上:約62億円,宣伝広告費:約3千2百万円,販売台数:約1400台
(イ)2010年 売上:約96億円,宣伝広告費:約7億円,販売台数:約2500台
(ウ)2011年 売上:約120億円,宣伝広告費:約15億円,販売台数:約4500台
(エ)2012年 売上:約140億円,宣伝広告費:約13億円,販売台数:約4700台
(オ)2013年 売上:約280億円,宣伝広告費:約1億5千万円,販売台数:約2200台
(カ)2014年 売上:約360億円,宣伝広告費:約2億3千万円,販売台数:約1700台
(キ)2015年 売上:約210億円,宣伝広告費:約7千3百万円 販売台数:約1000台
(3)広告について
ア テレビCMの放送
申立人は,申立人商品を登場させたテレビCMを放送した(甲5〜甲16)。
いずれのCMも,全国規模で放映されるとともに,その放送時間帯並びに番組は,一般に視聴率が高いとされる時間帯で,民放キー局の人気番組の中で放送されていたことから,非常に多数の消費者が,申立人のテレビCMに接したことが窺える。
イ 新聞・雑誌における広告
(ア)申立人商品1に関する広告
申立人は,新聞及び雑誌に,申立人商品1に関する広告を掲載した(甲17〜甲31)。掲載された新聞は一紙を除いて,全国誌である。また,自動車専門誌において広告を行い,一般誌おける広告も読者の目に付きやすい方法で行っている。そして,広告の頻度も高いことから,非常に多数の消費者が接したことが窺える。
また,いずれの広告においても,ロゴ化された「i」と「MiEV」を組み合わせた標章,又は標章「MiEV」が,車体に付されているか,広告中に含まれている。
(イ)申立人商品2に関する広告
申立人は,新聞及び雑誌に,申立人商品2に関する広告を掲載した(甲32〜甲40)。新聞においては,いずれも全国紙であることから,非常に多数の一般需要者が接したことが窺える。また,雑誌においては,実際に申立人商品2を導入した農業関係者を紹介する体裁を採っており,頁数も多く,読者の目につきやすいものであった。
また,いずれの広告においても,標章「MINICAB−MiEV」が広告中に含まれているか,標章「MiEV」が車体に付されていた。
(ウ)その他の広告
申立人は,新聞及び雑誌に,申立人商品1と申立人商品2の双方を含む広告を掲載した(甲41〜甲42)。このような広告に接した需要者は,申立人が製造・販売する電気自動車である申立人商品1と申立人商品2の両車種名に共通する「MiEV」の語の存在から,「MiEV」シリーズに属するものであると容易に認識できる。また,明確に「三菱のミーブシリーズ」と記載した広告もあることから,これらに接した需要者は,これらの車種が「MiEV」/「ミーブ」シリーズと称する,申立人の製造・販売する電気自動車のシリーズに属するものと認識する。また,これらの広告は,非常に多数の一般需要者が接したことが窺える。
その他,申立人は,新聞に,「MiEV power BOX」の広告を掲載した(甲43〜甲45)。これらの広告では,標章「MiEV power BOX」とともに,申立人商品1と申立人商品2の一方又は双方が掲載されていることから,これらに接した需要者は,標章「MiEV」が,申立人の電気自動車,並びにこれに関係する商品に共通して使用される名称であると認識し得るものである。また,これらの広告は非常に多数の一般需要者が接したことが窺える。
ウ 店頭ポスター
申立人は,全国の販売店において,ポスターを掲示していた(甲46〜甲49)。いずれの広告においても,ロゴ化された「i」と「MiEV」を組み合わせた標章,又は標章「MiEV」が,車体に付されているか,広告中に含まれている。
エ 展示会への出展
申立人は,申立人商品を各種展示会に出展していた(甲50〜甲62)。いずれも,自動車産業,環境技術関連産業等で広く知られた展示会であることから,非常に多数の需要者・取引者が接したことが窺える。
(4)受賞歴
申立人商品のうち,特に申立人商品1は,多数の賞を受賞している(甲63〜甲65)。
(5)政府,地方自治体,公的機関に準ずる企業との協働
申立人商品やその給電システムは,その環境性能の高さから,環境問題に関心の高い政府や地方自治体,電力会社や空港,鉄道会社等の公的な性質を帯びた企業においても採用される,あるいは,市場投入前における実証実験を協働して行う等していた(甲66〜甲85)。
(6)マラソン大会への伴走車の提供
申立人は,宣伝広告の一環として,申立人商品1を,マラソン大会における伴走車として提供した(甲86〜甲89)。
マラソン大会における伴走車は,テレビ放送で,非常に目立つ態様で映されるとともに,大会参加者,関係者,観覧者等,非常に多数の一般消費者の目に触れるものである。
(7)一般企業との提携等
申立人は,電気自動車の普及促進や宣伝広告を目的として,従来,自動車業界とは直接には関係していなかったような分野の企業等とも,提携関係を構築し,申立人商品を提供してきた(甲90〜甲100)。これらの提携先企業はいずれも,一般需要者が慣れ親しんだ企業であって,非常に多数の需要者・取引者が接したことが窺える。
(8)外国における展示等
申立人は,申立人商品を,多数回にわたり,外国で開催された展示会へ出展している(甲101〜甲159)。その環境性能の高さは,外国でも高く評価され,外国政府や地方自治体等の政府関係機関への提供や,それらとの連携も活発に行われてきた。
(9)申立人商品に対する評価・注目
申立人は,申立人商品を市場投入するよりも前から,積極的に外部の企業等と連携し,実証実験等を行うとともに,その搭載技術についても,積極的に情報発信を行ってきた。そして,このような電気自動車の一般市場への投入は,当時,非常に斬新であったことから,申立人による情報発信には,新聞,一般誌,経済誌,技術専門誌等でも大きく取り上げられてきた(甲160〜甲178)。
その他,我が国の自動車の総合年鑑である『自動車ガイドブック』にも,申立人商品1及び申立人商品2が掲載されている(甲179号〜甲181)。
また,申立人商品1の市場投人後も,生産体制の変更やマイナーチェンジ,給電装置「MiEV power BOX」の発売等の際にも,新聞や雑誌等で取り上げられており(甲182〜甲192),「MiEV」/「ミーブ」に対する,市場における関心度の高さが窺える。
(10)まとめ
以上のとおり,申立人は,申立人商品について,その市場投入の前から,全国規模で,CM,新聞広告,雑誌広告,展示会への出展を通じて,一般需要者から取引者まで幅広い層を対象として,宣伝広告を行ってきた。また,申立人商品は,全国で販売されており,発売開始から現在に至るまで,その数量・売上台数ともに,非常に多数に上る。さらには,その性能の高さから,数々の賞を受賞するとともに,政府,自治体,多数の企業において採用される等してきた。
申立人商品の実際の名称は,「i−MiEV」,「MINICAB−MiEV」,「MINICAB−MiEV TRUCK」等である。しかしながら,いずれの車種についても,一様に全国規模で宣伝広告,販売がなされており,売上台数も相当規模であって,いずれの車種の名称も,需要者・取引者の間で広く認識されている。また,申立人商品1には,充電やエアコンの沿革操作を可能にする装備「MiEVリモコン」が搭載されていること,申立人の電気自動車に関連する給電装置の名称「MiEV Power BOX」,申立人商品を中心としたスマートハウスの名称「ミーブハウス」等における「MiEV」/「ミーブ」の語の使用も相まって,需要者・取引者は,これらの名称に共通する「MiEV」/「ミーブ」の語が,申立人の電気自動車の名称を指すものと容易に認識することが可能である。
また,これらの車種は,既存車種「i」や「MINICAB」をベースに開発されたものであるが,既存車種「i」及び「MINICAB」もまた,需要者・取引者の間で一般的に認知されているものである。
以上の事実に鑑みると,需要者・取引者の間では,これらの車種の名称に共通する「MiEV」/「ミーブ」の部分を独立して捉えて,申立人の電気自動車を表す標章として認識することが十分に可能である。
その他,宣伝広告に使用する写真の車体に「MiEV」のロゴが大きく記載されていること,申立人が提供する車体の色やデザインを変更できる「デザインラッピング」旨のサービスを提供していること(甲193〜甲197)及び広告においては,「MiEV」の文字部分とその他の文字部分が容易に区別ができるように表示されていること等より,「MiEV」/「ミーブ」の語は,申立人の製造・販売する自動車を示すものとして,需要者・取引者の間で,周知・著名である。
3 第4条第1項第11号について
(1)引用商標について
引用商標は,いずれも欧文字及び/又は片仮名からなる文字商標であって,その構成文字に相応して,「ミーブ」の称呼が生ずる。また,その周知・著名性から,これらの引用商標に接した需要者・取引者は,申立人商品を,観念として直ちに想起するものである。
(2)商標の類否
本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似である。
本件商標は,「W」/「w」に始まり,中央に「IE」/「ie」,最後に「V」/「v」の各欧文字から構成されるところ,中央の「IE」/「ie」は双方とも母音であって,英単語では,「I」(i)と「E」(e)が組み合わさって,単語の途中に存在している場合には,「イー」と伸ばして発音することが頻繁に見られることから,本件商標全体からは「ウィーブ」との称呼が生じるのが通常である。また,「WIEV」/「wiev」は,いずれも辞書等に掲載されている単語ではなく,特に観念を生じない。
そこで,本件商標と引用商標を対比すると,外観について,本件商標と引用商標はともに,4文字の欧文字からなるところ,4文字中3文字を共通としている。また,引用商標が周知・著名であることからは,本件商標と引用商標の双方に接した需要者・取引者は,両商標の頭文字「W」と「M」の差異点に強く注意を払うというよりも,むしろ,このような差異点を看過し,共通している3文字に注意を惹かれると思料される。よって,外観において,両商標は近似した印象を与える。
また,称呼についても,語頭音「ウィ」と「ミ」が相違するものの,他の音は共通としている。さらにその相違音も,母音「i」を共通としており,「ウィ」は両唇接近音で,「ミ」は両唇音と,調音方法も極めて近似している。特に,引用商標が周知・著名であって,その称呼に耳馴染みがあることから,両商標の称呼に接した需要者は,それらを聴き誤るおそれが十分にある。よって,両商標は,称呼についても極めて近似している。
以上の通り,本件商標と引用商標は,その外観及び称呼において,非常に近似している。また,本件商標からは特に観念が生じないことからは,引用商標のそれとは比較の対象とはならず,外観及び称呼の類似性を覆すには至らない。
したがって,本件商標と引用商標は,相互に類似する商標であるというべきである。
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 第4条第1項第10号について
上述のとおり,「MiEV」は,申立人の業務に係る商品を示す表示として,周知・著名である。
本件商標と申立人の周知な商標「MiEV」/「ミーブ」(以下「申立人商標」という。)は,上記のとおり,外観及び称呼において非常に近似しており,また,本件商標からは特段の観念を生じ得ないことから,観念上の相違がその近似性を覆すには至らない。したがって,本件商標と申立人商標は類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
5 第4条第1項第15号について
申立人商標が著名であることは,前述のとおりである。
また,本件商標からは「ウィーブ」との称呼,申立人商標からは「ミーブ」との称呼が生じるところ,語頭音が相違するとはいえ,これらの相違音は母音を共通とする上,調音方法も,近接両唇音と両唇音と非常に近似している。
外観についても,両商標とも4文字の欧文字から構成されるところ,4文字中3文字を共通としている。また,本件商標は,申立人商標の第一文字「M」を「W」に,単に逆さまにした構成からなる。
さらには,本件商標の指定商品は「電気自動車,自動車」であるところ,申立人は,その著名な商標を「電気自動車」に使用しているものであって,商品においても一致しており,その用途等の関連性の程度は高く,むしろ,需要者・取引者を共通にするものである。このようなことからは,商標権者には,申立人の周知・著名な商標に化体した名声,信用,顧客吸引力にただ乗りしようとする意図も窺える。
そして,自動車分野が一般消費者向けの市場であることからは,自動車分野における需要者は,当該分野に非常に通暁している者から,知識に乏しい者まで幅広く存在している。申立人が,一般消費者向けの宣伝広告を幅広く,長期に,膨大に行っていたことからは,特に,あまり自動車分野の知識に詳しくない一般需要者にとっては,日常的に接することの多い申立人の著名な商標と,それとの類似性の高い本件商標とを誤認する,あるいは,申立人と経済的,組織的に何らかの関係を有するものであると認識する可能性が高いと考えられる。
以上のとおり,本件商標に接した需要者は,本件商標に係る商品ついて,申立人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがあることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 第4条第1項第19号について
上述のとおり,本件商標の指定商品と申立人商品とは,完全に一致している。そして,その需要者には,特別な専門的知識経験を有しない者も含まれており,これらを購入するに際して払われる注意はさほど緻密なものではないことも多いと考えられ,本件商標と申立人の周知・著名な商標の高い類似性からは,一般需要者の間で誤認・混同が生じるおそれが高い。さらに,本件商標は,造語である申立人商標の第一文字「M」を「W」に,単に逆さまにした構成からなり,商標権者には,申立人の周知・著名な商標に化体した名声,信用,顧客吸引力にただ乗りしようとする意図も窺える。
また,商標権者は韓国法人であるが,前述の通り,申立人は,周知・著名な商標「MiEV」を使用した電気自動車を,海外においても非常に積極的に宣伝広告し,実際に販売も行っていた。すなわち,商標権者は,「電気自動車」を指定商品として本件商標の出願を行っている以上,当該分野において事業を行っている,又は行おうとしており,当然に,申立人商標を知悉していたものといえる。
このように,本件商標が,申立人商標の顧客吸引力を利用し,自己の電気自動車について使用する行為は,申立人商標の顧客吸引力を利用(フリーライド)した商品が市場に蔓延することとなり,その結果として,申立人が長年の営業努力によって築いた当該周知・著名商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等の毀損を招来させていることが明らかである。
よって,商標権者は,申立人商標の顧客吸引力を利用(フリーライド)することを意図して,本件商標を取得したことが明らかであって,すなわち,不正の目的をもって使用をするものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
7 第4条第1項第7号について
本件商標は,上述のとおり,申立人商標と極めて類似しており,本件商標に接した一般需要者は,申立人の商標と誤認・混同を生ずるおそれがある。
のみならず,商標権者は韓国法人であるが,前述のとおり,申立人は,周知・著名な商標「MiEV」を使用した電気自動車を,海外においても非常に積極的に宣伝広告し,実際に販売も行っていたことから,「電気自動車」を指定商品として本件商標の出願を行い,当該分野において事業を行っている,又は行おうとしている商標権者は,当然に,周知・著名な申立人の商標を知悉していたものといえる。
さらには,本件商標は,造語である申立人商標の第一文字「M」を「W」に,単に逆さまにした構成からなり,商標権者には,申立人商標に化体した名声,信用,顧客吸引力にただ乗りしようとする意図も窺える。
したがって,商標権者が,本件商標を独占的に使用することは,公正な取引秩序を乱し,公の秩序又は善良の風俗を害するものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人の主張及び提出した証拠によれば,以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は,昭和45年に三菱重工業株式会社から分社した,自動車メーカーである。
イ 申立人は,軽自動車の車両をベースに申立人商品1を開発し,平成18年に発表し,平成22年4月より,一般消費者向けに販売開始した(甲23,甲28,甲53,甲66,甲67,甲69,甲70,甲74〜甲81,甲83,甲88,甲123,甲165〜甲170,甲172〜甲175,甲178,甲179,甲183)。さらに,平成23年には,軽の商用ワゴン車の車両をベースに開発した申立人商品2を販売開始し(甲32〜甲34,甲62,甲73,甲97,甲187),平成24年には,軽トラックの車両をベース開発したに申立人商品3を販売開始し,現在も申立人商品を販売している(甲3)。
ウ 申立人は,平成19年より同24年の企業広告に関するテレビCMにおいて申立人商品1を使用し(甲6〜甲8),同22年より同26年まで申立人商品に関するテレビCMを全国各地のテレビ局で放送している(甲5,甲9〜甲12)。テレビCMに使用される車両には「MiEV」の文字が付されており,テレビ画面において表示される,「三菱の電気自動車/MiEVシリーズ」の文字及び車両の下には,「ミニキャブ・ミーブ トラック」,「アイ・ミーブ」,「ミニキャブ・ミーブ バン」の文字が表示されている(甲11)。
エ 申立人は,平成20年に,企業広告に関する新聞広告に申立人商品1を使用した(甲17〜甲19)。また,平成20年より同24年までに申立人商品及び申立人の開発した電源供給装置に関する新聞広告を行った(甲20〜甲25,甲32〜甲36,甲41,甲43〜甲45)。広告に使用されている車両には「MiEV」の文字が単独で又は「i」の文字と一連に付されている。
オ 申立人は,平成20年に,企業広告に関する雑誌広告に申立人商品1を使用した(甲30)。また,平成21年より同27年に申立人商品に関する雑誌広告を行った。(甲26〜甲29,甲31,甲37〜甲40,甲42)。
広告の記事中には「・・・ミーブを家庭用の蓄電池代わりにして・・・」,「昼間はミーブのバッテリーに蓄えた・・・」旨の記載がある(甲39)。また,広告に使用されている車両には「MiEV」,「i MiEV」,「miniCAB/MiEV」等の文字が付されている。そして,「三菱のミーブシリーズ」と題する広告に表示されている車両の下には「アイ・ミーブ/iMiEV」,「ミニキャブ・ミーブ/mInICAB/MiEV」等の文字が表示されている(甲42)。
カ 申立人は,平成22年,同23年,同25年,同26年に,申立人商品に関するポスターを自己の販売店の店頭において掲示した(甲46〜甲49)。「三菱の電気自動車/MiEV/シリーズ」とのポスターに表示されている申立人商品の各車両の下には,「mInICAB/MiEV」,「iMiEV」,「mInICAB/MiEV」の文字がそれぞれ表示されている。また,ポスターの中央にも「MiEV」の文字が付されている(甲46)。
キ 申立人は,平成18年より,国内外の各種展示会への出展,海外政府への納車等のプロモーション活動を行い(甲50〜甲62,甲100〜甲113,甲115〜甲159),申立人商品について,自動車関連の賞を受賞し(甲63〜甲65,甲114),政府,自治体及び企業との協働(甲66〜甲85,甲90〜甲99)及びマラソン大会への伴走車の提供(甲86〜甲89)を行った。それらの記事が掲載されている申立人のプレスリリースには,使用に係る車両の車種名として,「i MiEV」,「i−MiEV」,「アイ・ミーブ」,「MINICAB−MiEV」,「MINICAB−MiEV VAN」,「ミニキャブ・ミーブ バン」及び「MINICAB−MiEV TRUCK」等の表示がある。
ク 申立人商品及び申立人の開発した電源供給装置は新聞,雑誌に掲載された(甲160〜163,甲165,甲167,甲168,甲170,甲171,甲173〜甲176,甲178〜甲183,甲185〜甲192)。記事中には,「『MIVE(ミーブ)』の開発に取り組んでいる。」(甲160)「商用『ミーブ』も対象」(甲182)等の記載もあるが,表示されている車両の車種名として,「i−MiEV」,「アイ・ミーブ」,「MINICAB−MiEV」,「MINICAB−MiEV VAN」,「ミニキャブ・ミーブ バン」及び「MINICAB−MiEV TRUCK」等の表示がある。
ケ 申立人は,雑誌において電気自動車に関する,プレゼンテーション資料及び記事を掲載している(甲164,甲166,甲169,甲172,甲177,甲184。なお,甲172は申立人が発行している雑誌である。)。これらの書証中には,「今後,MIEV技術を・・・」(甲164)等との記載もあるが,表示されている車両の車種名として,「i―MiEV」等の表示がある。
(2)前記(1)の事実によれば,申立人は,平成22年(2010年)4月より申立人商品を一般消費者向けに順次販売開始し,申立人商品に係る広告として,平成22年より同27年において全国の放送局においてテレビCMの放映,新聞及び雑誌における宣伝広告,販売店の店頭におけるポスター広告を行った。
また,これらの商品の発売に際しては新聞,雑誌において記事が掲載された。
しかしながら,申立人商品に使用されている標章は,「i−MiEV(アイ・ミーブ)」,「MINICAB−MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」,「MINICAB−MiEV Truck(ミニキャブミーブトラック)」であるところ,「MiEV」のみあるいは「ミーブ」のみの文字は,新聞及び雑誌記事の文中において使用され,申立人の広告において「MiEVシリーズ」と表示されている又は広告に使用する自動車の車体に付されていることは認められるが,申立人商品の名称として,その全てに「MiEV」あるいは「ミーブ」の文字が,使用されているとは,認めることはできない。
また,申立人の主張によれば,「MiEV」の文字を車種名に含む,申立人商品の一般消費者向けの販売が開始された2010年(平成22年)度から2015年(平成27年)度の申立人商品販売台数は,多い年で約4,500台,少ない年では,約1,000台であり,自動車全体の年間の販売台数から見れば多いとはいえない。
そうすると,申立人が提出した証拠をもっては,本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において,少なくとも自動車に詳しい需要者にとっては,「i−MiEV(アイ・ミーブ)」,「MINICAB−MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」及び「MINICAB−MiEV Truck(ミニキャブミーブトラック)」の文字が申立人商品の車種名として一定程度知られおり,「MiEV」及び「ミーブ」の文字が,これらの車種名の一部であることを認識したとしても,申立人商標が,申立人の業務にかかる商品を表示するものとして,我が国において広く知られていたものとまでは認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標について
ア 本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり「WIEV」と「wiev」の欧文字を2段に表してなるところ,該文字は一般的に使用されている英語等の辞書等には記載されていない文字であり,特定の意味合いを想起させない造語と認められる。そして,このような文字に接する取引者,需要者は,我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語読みに倣って称呼するのが自然であるから,本件商標からは「ウィーブ」の称呼が生じるというのが相当である。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1について
引用商標1は,前記第2の1のとおり,「MIEV」の欧文字と「ミーブ」の片仮名を2段に表してなるところ,下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表しているものと無理なく認識できるから,「ミーブ」の称呼を生ずるものである。また該文字は,一般的に使用されている英語等の辞書等には記載されていない文字であり,特定の意味合い想起させない造語と認められる。
(イ)引用商標2について
引用商標2は,別掲のとおり,「MiEV」の欧文字を表してなるところ,該文字は一般的に使用されている英語等の辞書等には記載されていない文字であり,特定の意味合い想起させない造語と認められるところ,我が国で親しまれているローマ字読み又は英語読みに倣って称呼するのが自然であるから,引用商標2からは「ミーブ」の称呼が生じるというのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とは,それぞれ上記ア及びイの構成からなるところ,外観において明らかに相違し,相紛れるおそれはない。
また,それぞれを構成している欧文字部分を比較しても,比較的目に付きやすい語頭の「W(w)」と「M」が相違していることから,外観上区別できるものである。
そして,本件商標から生ずる「ウィーブ」の称呼と引用商標から生ずる「ミーブ」の称呼とは,語頭の「ウィ」の音と「ミ」の音に差異を生じ,その余の2音を同じくするところ,両音は,称呼において重要な要素を占める語頭において差異を有するものであるから,それが全体の称呼に及ぼす影響は大きく,それぞれを一連に称呼したときは,「ウィ」と「ミ」の母音が同じ「i」であっても両音は明瞭に聴取され,互いに聞き誤るおそれはないものというのが相当である。
観念については,両者は特段の観念が生じるものではないところ,これらが観念上紛れるおそれがあるという特段の事情は見いだせない。
そうすると,本願商標と引用商標とは外観,称呼,観念のいずれにおいても相紛れることのない非類似の商標である。
(2)小括
本願商標と引用商標とは,前記(1)ウのとおり非類似の商標であるというべきであるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
申立人商標は,前記1のとおり,本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において,我が国において広く知られていたものと認めることはできない。
また,申立人商標の欧文字及び片仮名の綴りは引用商標と同一であり,本件商標と引用商標とは,前記2(1)ウのとおり非類似の商標であるから,本件商標と申立人商標も同様に非類似の商標であるといえる。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人商標は,前記1のとおり,本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において,我が国において広く知られていたものと認めることはできない。
また,本件商標と申立人商標とは,前記3のとおり,非類似の商標であって別異のものと認められる。
そうすると,本件商標の指定商品が申立人商標に係る商品と同一又は類似であっても,商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する需要者,取引者が申立人商標を連想,想起し,申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人商標は,前記1のとおり,本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において,我が国において広く知られていたものと認めることはできない。
また,申立人の提出した,外国における宣伝広告等に係る証拠は,申立人の作成したプレスリリース及び国内向けの雑誌の写しであり,これによっては,申立人商標が外国において広く認識されていると認めることはできない。
そして,本件商標と申立人商標とは,前記3のとおり,非類似の商標であって別異のものと認められる。
したがって,申立人商標が日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されている商標であり,本件商標が申立人商標と同一又は類似であることを前提に,本件商標は不正の利益を得る目的をもって使用されるとする申立人の主張は,その前提を欠くものである。
また,本件商標が申立人商標の顧客吸引力にただ乗りしたり,不当に利用したりするなど,不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠は見当たらない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,前記第1のとおりの構成よりなるものであるから,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,挟激又は他人に不快な印象を与えるものではないことは明らかである。
申立人は,本件商標が,電気自動車について使用するときは,申立人商標の顧客吸引力に便乗するものであり,取引者・需要者に混乱を生じさせ,申立人の利益を害する剽窃的な行為である旨主張する。
しかしながら,申立人商標は,前記1のとおり,本件商標の国際商標登録出願時及び登録査定時において,我が国において広く知られていたものと認めることはできない。また,本件商標と申立人商標は前記3のとおり非類似の商標であって別異のものと認められるから,かかる者の剽窃的な行為と認めることはできない。
その他,申立人が提出した全証拠を勘案しても,本件商標をその指定商品に使用することが,公正な取引秩序を乱し,社会公共の利益に反するものとすべき具体的事情等は見いだすことはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第19号に違反してされたものでないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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