Trademark Appeal Case
音商標の補正と要旨変更
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 補正2017−500004(T2017−500004/J5) |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第9類及び第28類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年9月2日に登録出願され,その後,本願商標を別掲2のとおりの構成からなる商標並びに指定商品を別掲3のとおりの商品に補正する手続補正書が,同28年12月28日付けで提出されたものである。
2 原決定の理由の要点
原審において,「平成28年12月28日付けで提出された手続補正書により補正された商標は,願書に記載された商標とその構成態様を異にする。したがって,この補正は,本願について,その要旨を変更するものである。」旨認定し,商標法第16条の2第1項の規定に基づき,同29年5月10日付けで補正の却下の決定をしたものである。
3 当審の判断
(1)補正前の商標と補正後の商標の同一性について
願書に記載した商標登録を受けようとする商標についてした補正が,その商標の要旨を変更する補正に当たるかどうかは,当該補正が,出願された商標につき商標としての同一性を実質的に損ない,競願者等の第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるものと認められるかどうかによって決せられるべきものであり,その判断は,音の商標の場合には,願書記載の当該補正前の商標と補正後の商標とを,構成する音の要素(音楽的要素等)及び言語的要素(歌詞等)等を総合的に比較検討して,全体的な考察の下になされることを要するものというべきである。
これを本件についてみると,本願商標(以下「補正前の商標」ということがある。)は,別掲1のとおり,「本商標は、だんだん小さくなる『ファン』という音が10回連続で聞こえるとともに、『ヒュインヒュイン・・・』という音が聞こえ、開始から約1秒後に『チロリロリロリーン』という音が聞こえる構成となっており、全体で約3秒間の長さである。」との記述から構成されるところ,本件手続補正に係る商標(以下「補正後の商標」という。)は,別掲2のとおり,(ア)補正前の商標中の「音」の記述を「電子音」との音の種類を表す記述に変更し,かつ,(イ)「約3秒間の長さである。」の記述を「約3秒間の長さであり、かつ前記『チロリロリロリーン』の電子音は、音楽的要素を認識させる『ラ♭』、『シ♭』、『ド』、『レ♭』、『ミ♭』、『ファ』、『ソ』、『ラ♭』の音階を認識される各音から構成されている。」として,音楽的要素を含む記述を追記したものであると認められる。
まず,上記(ア)の変更点については,「音」の文字から想起される音の種類は,人の声,動物の鳴き声,風等の自然界の音等様々であり,「音」の文字は,音の種類としては極めて抽象的なものであるところ,当該文字を「電子音」の文字に変更することは,「音」の文字のみでは特定し得ない音の種類を,「電子音」という具体的な音の種類に特定するものであるから,補正前の商標と補正後の商標とは,音の種類という要素において,別異のものであるというのが相当である。
また,上記(イ)の変更点については,補正前の商標に,それまで存在しなかった音階等を含む音楽的要素を含む記述を追記することは,新たな音の要素を追加するものであるから,補正前の商標と補正後の商標とは,音階等の音楽的要素の有無において,別異のものであるというのが相当である。
そうすると,補正前の商標と補正後の商標とは,「ファン」等の擬音語,その聞こえる回数・間隔及び音の大きさの変化,全体の長さ(秒数)が共通するものの,音の種類の相違及び音階等の音楽的要素の有無の点において顕著な差異を有するものであるから,これらを全体的に考察すると,両者は別異のものであるというのが相当である。
してみれば,補正前の商標を補正後の商標に変更することは,両者の同一性を実質的に損ない,第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるというべきである。
(2)請求人の主張について
請求人は,音商標出願に係る「音商標」の「特定」は,願書の「商標登録を受けようとする商標」の「商標記載欄の記載」と,願書の添付物件である「商標登録を受けようとする商標」を記録した「音声ファイル」とによってなされるものであり,本件補正にあっては,願書の商標記載欄の文字による「表記」を出願と同時に提出した音声ファイルに収録された「音声」に基づいてその内容の範囲内で補正したものであるから,いずれも,本願商標について出願されかつ同時に添付された同一の商標資料を基礎とするので,補正前後における本願商標としての同一性を実質的に損なうことはなく,また,競願者等の第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるものとは認められないことからすれば,本件補正は要旨変更に該当しない旨主張する。
しかしながら,登録商標の範囲は,願書に記載した商標に基づいて定めなければならない(商標法第27条第1項)ものであり,音声ファイルは「物件」として提出され(同法第5条第4項,同法施行規則第4条の8),願書記載の商標登録を受けようとする商標を特定するものであって(同法第5条第5項),願書に記載した商標の記載の意義を解釈する役割を担うものであるが(同法第27条第3項),願書記載の商標登録を受けようとする商標そのものではない(同法第5条第1項第2号,同法第27条第1項)。
そうすると,音声ファイルに含まれる内容であるか否かにかかわらず,商標登録を受けようとする商標の記載欄の記載に,変更又は記述を加えることは,要旨の変更に該当するというべきである。そして,上記(1)で述べたとおり,補正前の商標と補正後の商標は,両者の同一性を実質的に損なうものであるというのが相当である。
したがって,請求人の主張は,その前提において失当である。
(3)まとめ
以上より,本願商標についてした平成28年12月28日付け手続補正書による商標の補正は,本願商標の要旨を変更するものであるから,これを商標法第16条の2第1項の規定により却下した原決定は,妥当なものであって,これを取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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