Trademark Appeal Case
記述的長文の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2017−7865(T2017−7865/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,「次の世代に、明るい未来を届けたい。」の文字を標準文字で表したものであり,別掲1に掲げる,第7類,第9類,第11類,第12類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成28年5月20日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願商標は,「次の世代に、明るい未来を届けたい。」の文字を標準文字で表してなるところ,全体として「次世代に明るい未来を届ける決意がある」ないし「次世代に明るい未来を届けることを希望する」程の意味合いを容易に把握,認識させるものである。
そして,「次世代に」,「明るい未来」又は「より良い未来」等の文字は,企業の理念や自治体の施策を表す際に一般的に使用されている。
また,請求人は,本願商標を,企業の理念を表すスローガンとして使用している。
そうすると,本願商標は,これに接する需要者及び取引者をして,企業理念の1つを表してなるものにすぎないというべきで,自他商品及び役務の識別力を有するものではなく,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当する。
3 当審における証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて,職権により証拠調べをした結果,別掲2及び3に掲げる事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,その結果を請求人に通知し(平成29年11月27日付け証拠調べ通知書),意見を求めた。
4 職権証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は,上記3の通知に対して,要旨以下のとおり意見を述べた。
(1)上記3で提示された事例は,「経営理念」等の見出しの下に,明るい未来や,次世代又は子供の世代などの将来に向けて明るい未来を届けることに関する言及が,たまたま文章中に含まれているにすぎない。
(2)本願商標は,全体を称呼したとしても冗長感なく一気に発音され,一種の造語的フレーズとして認識されるもので,全体から生じる「次世代に明るい未来を届けることを希望する。」の意味合いは,その指定商品及び指定役務と一義的,直接的な関連性を有するものではない。
(3)請求人は,本願商標を自社コーポレートブランドに準ずる固有のブランドとして継続して使用し,本願商標を表示したテレビCMも,2012年12月から日本全国で放映している。
(4)以上を踏まえると,本願商標は,単なる宣伝広告や企業理念,経営方針等を表示するものを超え,その指定商品及び指定役務との関連において,出所識別標識として,我が国の取引者,需要者に認識,把握され得るものであり,商標法第3条第1項第6号に該当しない。
5 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性
ア 本願商標について
本願商標は,「次の世代に、明るい未来を届けたい。」の文字を標準文字で表してなるところ,それぞれの構成文字は意味合いの理解が容易な語及び句読点を組みあわせてなるもの,すなわち,「順序がすぐあと(のもの)」の意味を有する「次」の語及び「親・子・孫と続いてゆくおのおのの代」の意味を有する「世代」の語を,向かっていく時・所を示す格助詞「の」でつなぎ,対象を指定する格助詞「に」を語尾に配置した「次の世代に」の文字と,「将来の見通しなどについて楽観できる」の意味を有する「明るい」の語,「過去・現在とともに時の流れを三区分した一つで,まだ来ていない部分」の意味を有する「未来」の語,「先方へ持って行く」の意味を有する「届ける」の語尾に願望を示す助動詞「たい」を結合させ活用変化した「届けたい」の語を,対象を示す格助詞「を」でつないだ,「明るい未来を届けたい」の文字を,両文字の間に読点を配置し,語尾には句点を配してなるものである(広辞苑第6版)。
そうすると,本願商標全体としては,その構成中の句読点の存在が,全体として記述的な文章を表してなるものとの印象を与えることもあり,それぞれの構成文字の語義に相応して,「次世代に,明るい未来を届ける」という程度の願望を表した記述的な文章であると容易に認識,理解できるものである。
以上のとおり,本願商標は,その文字構成及び意味合いからすれば,構成中の特定部分が独立して要部として認識され得るものとは考え難いから,その構成全体をもって把握されるべきものであるところ,その外観は,句読点を含む上記17文字をありふれた書体で横一連に表示した記述的な一文として看取されるものであって,その称呼は「ツギノセダイニアカルイミライヲトドケタイ」の20音で冗長であり,その観念においても「次世代に,明るい未来を届ける」という程度の願望を表明したものと理解させるものである。
イ 取引の実情について
近年,企業活動に際して,企業理念や経営方針等を策定し,企業の宣伝広告の一環として,ウェブサイトやインタビュー記事などにおいて,会社や経営者からのメッセージとして表明することは一般的に行われており,中でも,「明るい未来」の実現に寄与することを企業理念,経営方針等として採択する事例もあり,例えば「健康で明るい未来を創る」,「明るい未来を共に創る」,「明るい未来を創造します」,「明るい未来の実現に貢献します」,「明るい未来に貢献する」,「『断つ・保つ』で明るい未来へ」,「明るい未来を,次世代に遺すべく・・・」,「働く喜び 明るい未来」等のような表現が採択されている(別掲2)。
加えて,次世代又は子供の世代などを含めた将来に向けて「明るい未来」を「届ける」ことを企業理念,経営理念等と関連したメッセージとして採択する事例もあり,「子供達へ明るい未来を届けられるよう社会貢献活動を行っていきます」,「子供たちに明るい未来を届けたいと考えています」,「次世代の子どもたちに明るい未来を届けたい」,「そして次の世代の子供達に明るい未来を届けたい」,「元気で明るい未来を次世代に,そして世界にお届けすること」,「心の豊かさと明るい未来をお届けします」,「お客様に明るい未来を届けたい」,「安全・安心・明るい未来を届けたい」等のような表現が採択されている(別掲3)。
そうすると,「明るい未来」及び「届ける」の語は,「次の世代」に相当する次世代又は子供の世代などに関する言及を伴いつつ,企業の経営理念や経営方針等を表示するために類型的に採用されているものであり,それらの語を結合して,将来に向けて明るい未来を届ける旨を企業理念や経営方針として表現することも,少なからず行われている実情がうかがえる。
ウ 請求人による本願商標の使用について
(ア)当審において請求人から提出された甲各号証及び請求人の主張によれば,請求人による本願商標の使用と関連して,以下のような事実が認められる。
a 請求人は,本願商標を自社コーポレートブランドに準ずる固有の自社ブランドとして採用し,2014年2月より,「次の世代に、明るい未来を届けたい。」の文字を横一連に表示するシーンのあるテレビCMを製作,放映しており,本願商標以外の商標を表示するものも含めたテレビCM費用は,2016年の全国及び東海地区において約6.2億円であり(甲2,3),宣伝広告費の総計は35億円を超える。
b 請求人の「アニュアルレポート2016」には,「SLOGAN」の見出しの下,「地球と生命を守り、」,「次世代に明るい未来を」及び「届けたい。」の文字を三段に,「長期方針/スローガン」の見出しの下,「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」の文字を横一連に,「デンソー基本理念/長期方針」の見出しの下,「『地球と生命を守り、」,「次世代に明るい未来を」及び「届けたい。』」の文字を三段に表示している(甲1)。
c 本願商標を表示した広告を「中部科学技術センター情報誌(CSTCニュース)」(2016年7月号,10月号及び2017年1月号)に掲載した旨を請求人は主張するが,本件商標の表示の有無及びその表示態様は確認できない(甲4)。
(イ)上記(ア)の認定事実よりすれば,本願商標と構成文字が共通する文字を表示するテレビCMが,2014年以降に放映されたことが確認できるとしても,本願商標を表示するテレビCMのみの広告規模,頻度及び期間も明らかではなく,本願商標が,請求人又はその商品との関係において,日本全国における需要者の間において広く知られるようなフレーズとなっているかは明らかではない。なにより,提出された証拠によっては,本願商標と同一の構成文字,書体及び態様の商標が一貫性をもって使用されていたものとはいい難く,本願の指定商品及び指定役務についての宣伝広告であったか,本願商標が出所識別標識として看者の印象に残るような態様で表示されていたかなど,いずれも明らかではない。
したがって,本願商標について,請求人による上記のような広告宣伝の実績があるとしても,その指定商品及び指定役務に係る需要者の間において,請求人又は請求人商品との具体的関係を連想,想起させるに至っているものとはいえず,その他,本願商標が,需要者の間において,出所識別標識として認識,理解されていることを具体的に示す証拠もない。
エ 小括
上記を踏まえると,本願商標は,上記アのとおり,「次世代に,明るい未来を届ける」という程度の願望を表した記述的な文章であり,上記イのとおり,その構成文字である「明るい未来」及び「届ける」の語は,「次の世代」に相当する次世代又は子供の世代などに関する言及を伴いつつ,企業の経営理念や経営方針等を表示するために類型的に採用されている実情があり,上記ウのとおり,請求人による本願商標と関連した広告宣伝も,本願商標をして使用による識別性を獲得したというに十分ではないから,これに接する需要者は,自他商品役務の識別標識として認識するのではなく,上記意味合いを有する企業理念や経営方針等を表示した一類型として認識,理解するというべきである。
そうすると,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というべきであり,商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,本願商標は,全体を称呼したとしても冗長感なく一気に発音され,一種の造語的フレーズとして認識されるもので,全体から生じる「世界にある命を技術で守ることを希望する」の意味合いは,その指定商品及び指定役務と一義的,直接的な関連性を有するものではなく,また,上記3で提示された事例は,「経営理念」等の見出しの下に,人の命を守ることやそのための技術に関する言及が,たまたま文章中に含まれているにすぎないから,本願商標全体として,企業理念を表してなるものとはいえない旨を主張する。
しかしながら,上記(1)アのとおり,本願商標は,平易な語と句読点を組みあわせてなるものであるから,全体として「次世代に,明るい未来を届ける」という程度の願望を表してなる記述的な文章であると容易に理解できるものであり,上記(1)イのとおり,本願商標の構成文字でもある「明るい未来」及び「届ける」の語は,「次の世代」に相当する次世代又は子供の世代などに関する言及を伴いつつ,企業の経営理念や経営方針等を表示するために類型的に採用されているといえるから,全体として企業理念や経営理念等を表したものと理解されるというべきである。
イ 請求人は,自社の固有の特徴やメッセージを取引者,需要者に分かりやすく伝えるため,本願商標を自社コーポレートブランドに準ずる固有の自社ブランドとして継続して使用してきており,本願商標は,単なる宣伝広告や企業理念,経営方針等を表示するものを超えた,本願指定商品,役務との関連において,自他識別機能を発揮し得る商標として,我が国の需要者の間において認識,把握され得る旨を主張する。
しかしながら,上記(1)ウのとおり,本願商標が,請求人と関連するフレーズとして日本全国において周知となっているものとはいえず,その他,本願商標から請求人又は請求人商標を連想,想起させるような実情を示す具体的な証拠もないのであるから,その主張は採用できない。
ウ 請求人は,一見,企業理念や経営方針等と思われるような構成からなる商標が登録されている事例があるため(甲5〜18),これらを本願商標の自他商品・役務識別力の判断において考慮すべきである旨を主張する。
しかしながら,過去の登録例や審決例に関わらず,商標の識別性の有無の判断は,商標の構成文字や構成態様等に則して,事案に応じて判断すべきところ,本願商標は,上記(1)のとおり,「次世代に,明るい未来を届ける」という程度の願望を表した企業理念や経営方針を表示したものと認識,理解されるのであるから,請求人の援用する事例と同様の判断をする理由はない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第6号に該当するため,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
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類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。