結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 異議2017−900185(T2017−900185/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5935022号商標(以下「本件商標」という。)は、「サイバーセキュリティソリューションズ」の文字を標準文字で表してなり、平成28年9月29に登録出願、第35類「商品の販売の媒介・仲介・取次,商品の売買契約の仲介又は取次,ダウンロード可能な画像・映像・音声の売買契約の媒介及び取次ぎ,外注業務に関する契約の仲介,商取引の媒介・取次ぎ又は代理,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,コンピュータによるファイルの管理,画像・映像・音声等のデータを記録したファイルのコンピューターによる管理,文書又は磁気テープのファイリング,人材の紹介及びこれに関する情報の提供,職業のあっせん及びこれに関する情報の提供,人材の紹介及び職業のあっせんの媒介又は取次ぎ並びにこれらに関する情報の提供,求人情報の提供,広告業,インターネットによる広告,広告宣伝物の企画及び制作,広告の企画,広告文の作成,マーケティング,コンピュータデータベースへの情報編集」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),バックアップ用コンピュータプログラムの提供,電子計算機の貸与,コンピュータソフトウェアの貸与,電子データの保存用記憶領域の貸与,コンピュータの記憶領域の貸与,サーバの記憶領域の貸与,オンラインコンテンツの共有のための他人のためのオンラインウェブサイトのホスティング,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータソフトウエアの環境設定・インストール・故障診断・修理・改良及び保守,ウェブサイトの作成又は保守,検索エンジンの提供,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」を指定役務として、同29年2月13日に登録査定、同年3月24日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。
本件商標の構成文字中「サイバーセキュリティ」とは、サイバーセキュリティ基本法(甲2)の第2条において定義されている。また、「サイバーセキュリティ」及び「サイバー」について「デジタル大辞泉」(甲3、甲4)、「セキュリティ」について「ASCII.jpデジタル用語辞典」(甲5)、そして、「ソリューション」について「ASCII.jpデジタル用語辞典」(甲6)、「デジタル大辞泉」「IT用語がわかる辞典」でそれぞれ解説している事実から本件商標は識別力を有さないものといわなければならない。
コンピュータについて考察すると、企業における業務遂行から一般家庭における生活まで、幅広いあらゆる分野においてコンピュータへの依存度が増してきている状況であるなか、最近では国・公共団体・企業・個人に関係なく無差別にサイバー攻撃にさらされている状態であり、政府は「サイバーセキュリティ基本法」を制定し、平成28年4月1日に施行された(甲2)。
コンピュータ関連企業は、「サイバーセキュリティ基本法」の目的(第1条)にもあるように、世界的規模で生じているサイバーセキュリティに対する脅威の深刻化その他の内外の諸情勢の変化に伴い、情報の自由な流通を確保しつつ、サイバーセキュリティの確保を図るために、サイバーセキュリティのための情報システムを構築しているところ、この情報システムを一般に「サイバーセキュリティソリューション」と称している。
なお、「SOLUTIONS」の文字について識別力が無いと判断している審決(不服2013−16062)がある(甲7)。
「サイバーセキュリティソリューション」と「サイバーセキュリティソリューションズ」を外観・観念・称呼・全体観察で比較してみると、
(1)外観について前者は、カタカナで「18文字構成(長音・促音を1文字と数えた。)」からなるのに対して本件商標は「19文字構成」からなり両者とも非常に長い語数となり、異なる点は語尾の1文字のみであることから、外観上区別のつかないものとみるのが相当である。
(2)観念からみると単数、複数の違いはあるものの両者はともに同一の意味をなすものである。
(3)称呼についてみても、両者は「18音」と「19音」と非常に冗長な音構成であり、語尾の音の差異は聴者をして彼此聴別し難いものである。
(4)そして、両者を総合的に見た場合は類似するというより、むしろ同一といっても差支えないものである。
本件商標の登録が維持された場合、商標法第25条により登録商標の持つ独占排他的権利を有することになり、第三者がこの登録商標と同一又は類似の商標を使用した場合は商標法第37条により「侵害とみなす行為」とされ、その登録商標の侵害を構成することとなり得るものである。そして、この弊害については、商標法26条に規定する「商標権の効力が及ばない範囲」の存在で片づけられるものではなく、そもそもこのような商標に独占排他的権利を与えることは我が国商標法の存在意義に関わるものである。
商号とは、商人が営業を行う際に自己を表示するために使用する名称のことであり、商法や会社法において規定され、法務局で登記することができるが、同一の所在場所において同一の商号を重ねて登記することはできない。つまり、所在場所さえ異なっていれば、他人の商号と同一の商号を登記することができ、商号は会社等の名前であり、同一の住所に同一の名前が存在しないことが保証されているだけで、日本中に同一の商号や類似する商号が多数存在する場合がある。
これに対して、登録商標は日本全国において権利がおよび、他人は、その権利の同一又は類似の商品・役務について同一又は類似の商標を登録することはできない。
本件商標の権利者が商号としての「サイバーセキュリティソリューションズ株式会社」の権利を主張することはやぶさかではないが、本件商標「サイバーセキュリティソリューションズ」を権利行使することは許されない。
出願人の商号中、法人格を除いて商標出願し、審決で識別力が無いと判断された例として、拒絶査定不服審判2007−28789(甲8)及び拒絶査定不服審判2007−28790(甲9)があり、この審決では、出願人名が「ネットワーク ソリューションズ、エルエルシー」であり、出願商標が「NetworkSolutions」であったが、他人が使用する複数形ではない「NetworkSolution」又は「ネットワークソリューション」等の使用事実をもって本願商標が商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号に該当すると審決している。
本件商標は、商号と商標とを混同して登録したとも思えないが、「サイバーセキュリティソリューション」を善意で使用している第三者にしてみれば、まさに特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであることは自明の理である。
(1)商標登録の要件について最高裁では、「商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決(判例時報927号233頁))」と判示している。
(2)本件商標は、何人も使用を欲する「サイバーセキュリティソリューション」と同一視されるものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであり、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるから商標登録の要件を欠き、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。また、「サイバーセキュリティ基本法」の存在からも「サイバーセキュリティ」以外の役務について使用する場合は、商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
本件商標をその指定役務に使用してもこれに接する取引者、需要者は、単に役務の質を表示した語と認識するにとどまるから、該文字は自他役務識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、かつ、その役務以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがある。
(3)「サイバーセキュリティソリューション」又は「サイバーセキュリティ」が一般に使用されている取引の実情として各企業の使用の事実(甲10〜甲23)を確認すれば、本件商標は、その役務について質を表示するにすぎないものであることは明らかである。
さらに、本件商標の登録が維持された場合には、各企業における使用は本件商標権の侵害を構成することとなる。この観点からも、多くの者が使用または使用を欲している商標を一権利者に独占権を与えるべきでない。
したがって、本件商標は、その役務の取引者、需要者に役務の質として認識されるものであり、これを特定人に独占使用させることを不適当とする公益上の理由がある場合には、同号にいう役務の質の表示に当たると解するのが相当である。
(4)参考資料として、商標中に本件商標を構成する語が含まれ、商品の品質または役務の質を表示するものとして商標法第3条第1項第3号に該当すると判断された審決例(甲8、甲9、甲24〜甲31)を挙げる。
当審においては、商標権者に対し「本件商標は、第42類の指定役務中の『サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための役務』、例えば、第42類『サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子計算機用プログラムの提供』等との関係において、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、その登録査定時において、商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の第42類の役務に使用するときは、その役務が『サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための役務』」であるかの如く、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。」旨の取消理由を平成29年11月7日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を提出する機会を与えた。
上記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。
(1)本件商標は、「サイバーセキュリティソリューションズ」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、「サイバー攻撃に対する防御行為」の意味を有する「サイバーセキュリティー」(甲3)の語と、「問題などの解決」の意味を有する「ソリューション」(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)の複数形「ソリューションズ」の語とを組み合わせてなるものであって、その構成文字全体として、「サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決する」程の意味合い認識させるものである。
そして、別掲の、申立人の提出に係る証拠及び職権調査による「サイバーセキュリティ(サイバーセキュリティー)」、「ソリューション」及び「サイバーセキュリティソリューション」の文字の使用の事実によれば、コンピューター関連やコンピューターネットワーク関連業界においては、「サイバーセキュリティ」の文字は、サイバー攻撃に対する防御行為の表示として、また、「サイバーセキュリティソリューション」の文字は、「サイバー攻撃に対する防御行為やコンピューターやコンピューターネットワークの安全対策としてコンピューターへの不正侵入、データの改ざんや破壊、情報漏えい、コンピューターウイルスの感染などの問題を解決すること」の意味を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、広く一般に使用されていたものと認められる。
そうすれば、コンピューター関連やコンピューターネットワーク関連業界においては、「サイバーセキュリティソリューション」の文字は、「サイバー攻撃に対する防御行為やコンピューターやコンピューターネットワークの安全対策としてコンピューターへの不正侵入、データの改ざんや破壊、情報漏えい、コンピューターウイルスの感染などの問題を解決すること」の意味を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、広く一般に使用されていたものと認められるものである。
してみれば、末尾の「ソリューション」の語を英単語の複数形の読み方で書したにすぎない「サイバーセキュリティソリューションズ」の文字からなる本件商標は、その指定役務中、「サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための役務」、例えば、第42類「サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子計算機用プログラムの提供,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのオンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのバックアップ用コンピュータプログラムの提供,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子計算機の貸与,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのコンピュータソフトウェアの貸与,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子データの保存用記憶領域の貸与,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのコンピュータの記憶領域の貸与,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのサーバの記憶領域の貸与,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのオンラインコンテンツの共有のための他人のためのオンラインウェブサイトのホスティング,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのコンピュータプログラムの設計・作成又は保守,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのコンピュータソフトウエアの環境設定・インストール・故障診断・修理・改良及び保守,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するためのウェブサイトの作成又は保守,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための検索エンジンの提供,サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、当該役務が「サイバー攻撃に対する防御行為やコンピューターやコンピューターネットワークの安全対策としてコンピューターへの不正侵入、データの改ざんや破壊、情報漏えい、コンピューターウイルスの感染などの問題を解決するための役務」であることを表したものと理解、認識するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定役務中、第42類の上記役務との関係において、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、その登録査定時において、商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の第42類の役務に使用するときは、その役務が「サイバー攻撃に対する防御行為の問題を解決するための役務」であるかの如く、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。
(2)小括
してみれば、本件商標は、その指定役務中、第42類「全指定役務」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
申立人は、第35類の役務についても、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであると申立ている。
しかしながら、第35類の指定役務については、申立人提出の甲各号証はコンピューター関連やコンピューターネットワーク関連業界に係わるものであり、職権をもって調査するも、第35類の指定役務の分野において、取引者、需要者に、本件商標が役務の質等を表示するものとして認識されるとすべき事情を見出すことはできない。
そうすると、本件商標は、その指定役務中、第35類の役務については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものということはできない。
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定役務中、第42類「全指定役務」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきである。
また、本件商標の指定役務中、第35類の役務についての登録は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反してされたものということはできないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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