Trademark Appeal Case
悪意の商標出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2015−900239(T2015−900239/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5756552号商標(以下「本件商標」という。)は、「英文法の神」の文字を標準文字により表してなり、平成26年12月4日に登録出願され、第9類「電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,電子出版物」を指定商品として、同27年3月5日に登録査定、同年4月10日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、登録異議の申立ての理由を要旨次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
(1)申立人商標について
申立人は、本件商標の登録出願日より前に「英文法の神」標章を、自己の提供するオンライン学習システムの中核を成す講座名として使用していた事実がある。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標権者は、申立人の提供する上記オンライン学習システムの教材を使用することに関し、申立人と契約を締結した者であり、本件の商標登録出願は、当該契約の直後になされたものである。
商標権者は、契約の当事者として、「英文法の神」の名称が、申立人のオンライン学習システムの講座の名称であることを、当然知っている立場にあるにもかかわらず、出願に及んだものであり、本件の商標登録出願が、剽窃的に不正の意図をもってなされたものであることは明らかである。
このような本件商標を登録することは、社会の一般的道徳観念に反し、また、商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ず、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。
3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものと認められる。」旨の取消理由を平成28年7月7日付けで通知した。
4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。
5 当審の判断
(1)申立人が使用する商標について
ア 申立人は、2006年(平成18年)6月に法人「株式会社ユナイテッド・インテリジェンス」を設立し(甲2)、以来、オンライン学習システムの「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」の運営等を業とする者である(甲2及び甲3)。
イ 申立人の運営する「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」は、塾や自宅、スマートフォン・タブレットPC等のスマートデバイスでも視聴可能なオンライン学習システムであり、その特長は、ITを駆使した効率化の実現によって、内容の濃い授業を効率良く自分のペースで好きなだけ学べ、短期間で学習効果を上げることを可能にするという点にあり、全国の多数の予備校や塾等で導入されている人気の学習システムとなっている(甲3)。
ウ 申立人が引用する標章(以下「使用標章」という。)は、「英文法の神」の文字を書してなるものであり、申立人の会社設立前の個人塾の時代である2004年より教材DVDについて使用開始され、2006年の「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」の立ち上げ及び会社設立後は、英文法の講座名として使用されていたものである(甲3ないし甲10)。
エ 企業PRのポータルサイト「ドリームニュース」の2010年1月12日付け記事には、「ネット予備校『ベリタスアカデミー』が提供する高校生向け、TOEICの基礎向け英文法動画講義・動画演習がシャープ製カラー電子辞書“Brain”で視聴可能に」の見出しの下、「ネット予備校、『ベリタスアカデミー』を運営する株式会社ユナイテッド・インテリジェンスは、2010年1月12日、シャープ株式会社が2010年1月22日に発売するカラー電子辞書“Brain”のダウンロード用コンテンツとして、高校生向け、TOEICの基礎向け英文法講義『英文法の神・入門編』の提供を開始いたしました。」とあり、「ベリタスアカデミーとは」の項には、「ベリタス・アカデミーは2006年に大手予備校講師が独立して立ち上げたネット予備校で、電子ホワイトボードを用いた効率の良いわかりやすい授業コンテンツ作成のパイオニアです。・・・2010年1月現在で全国の学習塾200教室への導入実績を誇ります。」と記載されている(甲11)。
オ アイティメディア株式会社によるIT関連ニュースサイト「IT media Mobil」の2011年7月20日付け記事には、「教育改革、塾で着々:ITで築く『学習の高速道路』−“定額見放題”のネット授業、iPhone/iPadでより便利に」の見出しの下、「ベリタス・アカデミーとは」の項には、「ベリタス・アカデミーは、大学受験生向け映像教材の開発と配信を手掛けるネット予備校。電子ホワイトボードを使ったライブ感あふれる授業が特徴で、現在、5教科1200コマ超の授業をネットで配信している(2011年7月時点)。・・・2011年6月時点で、300超の予備校や塾が同社の教材を採用。」と記載されている(甲13)。
カ 2014年1月20日付け大阪府和泉市の進学塾「啓学館ゼミナール」のブログ記事には、「高校生ベリタスアカデミーでの学習の様子」の見出しの下、「啓学館ゼミナールの高校部にはいくつかの映像教材が導入されています。・・・本日はその中の『ベリタスアカデミー』、通称『ベリタス』を学習している様子です。・・・写真のせいとが学習しているのは『英文法の神』という講座で、ベリタスの中でも非常に人気が高い講座です。」といった記載がある(甲14)。
(2)商標権者と申立人の関係について
本件商標の商標権者は、石川県小松市所在の「自立指導塾アデスト小松校」の代表者であり、申立人が企画・製作する「ベリタス・アカデミー(Veritas Academy)」の教材を、商標権者の塾で使用することに関し、平成26年11月24日付けで、申立人と「ベリタス・アカデミー授業配信に関する契約書」をもって契約を締結した者である(甲15)。該契約書には、「ベリタス・アカデミー」とは、申立人が企画・制作する映像教材を指し、申立人が企画立案し実施した授業の内容をデジタル化し、パソコン等の再生機器を使用することで閲覧可能にしたコンテンツや、コンテンツの内容に応じて冊子、プリント及びパソコンなどで閲覧可能な形式にしたデータなどの副教材(テキスト)を契約者に提供すること、また、それを用いて受講生にテキストとして交付すること、テキストは、原則としてネット上で配信し、契約者はプリントアウトして使用すること、契約者は、申立人の承諾なく、コンテンツの内容を録音、録画、複製してはならず、印刷物等に掲載してはならないこと、コンテンツ及びテキストの知的財産権は、すべて申立人が専有すること等が記載されている。
また、上記契約書と同日付けで、商標権者は、申立人が作成した「ベリタス・アカデミー新規契約登録申込照会票」に記入し、そこには、申込会社名として、「自立指導塾アデスト小松校」、代表者として商標権者の名称等が記載され、申立人のホームページにおいて「導入塾」であることを掲載することに同意しており(甲16)、これにより、申立人のホームページ中の北陸のページには、導入塾の一つとして「自立指導塾アデスト小松校」が掲載されている(甲3)。
そして、本件の商標登録出願は、上記契約締結直後の平成26年12月4日になされたものである(甲1)。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、前記1のとおり「英文法の神」の文字からなるものであり、また、使用標章は、上記(1)ウのとおり、本件商標と同一の文字構成からなる標章である。
そして、使用標章は、商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等について、申立人によって2004年から使用されていたことが推認されるものである。
他方、商標権者は、申立人の使用標章に係る商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等と密接な関連性を有する「自立指導塾アデスト小松校」と称する学習塾の代表者である。そして、商標権者は、本件商標の登録出願の直前である平成26年11月24日に申立人の運営するオンライン学習システム「ベリタスアカデミー」を導入することについて契約を交わしていたことからすると、申立人の存在並びに申立人の使用標章の存在を知悉していたものというべきである。
してみると、商標権者は、本件商標の登録出願前から、使用標章が申立人によって商品「学習用テキスト」及び役務「オンラインによる学習指導」等に使用されていたことを十分知っていながら、申立人の使用標章が商標登録されていないことを奇貨として、これと同一といえる本件商標を申立人に承諾を得ずに登録出願をし、登録を得たものであって、剽窃したものといわざるを得ない。
以上によれば、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるといわざるを得ないから、その登録は、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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